「時間内に解き終えることができない」ということ

このやり方では時間内に解き終えることができないのではないかというご質問をいただきます。

はじめに
今までの経験では、入学試験のその日に「間に合わなかった」というお子さんは一人もいませんでした。「漢字と知識問題をやって、大問1が終わったら、あと12〜13分しかなくて、あせったよ。すっごい集中して急いで解いたよ。」というお子さんは確かにいました。でも良い結果を見ることができました。
入試の日までに集中力を高める訓練をしてきたから、当日に最高の集中力を出せたのでしょう。秋口の過去問演習に入るまでの練習段階で、設問を見ながら、あるいは、解答用紙に書き込みながらの「ながら読み」ではなく一気に読み通すことを毎回してきたのです。一気に読み通すことに関しては私は相当厳しく、「どうして設問を見るの!」と注意します。

「音読をしながら、印つけとメモ書き」を練習することで、丁寧に読み取る力は必ずつきますが、さらに、集中力を鍛えなければ、時間内に長文を正確に読み取り、解答するという実践力にはつながりません。この集中力は、練習段階での「一気に読み通す」ことで養われます。

@「音読をしながら、印つけとメモ書き」で丁寧に読む練習をすること。
A「一気に読み通すこと」で、集中力を鍛えること。
この二点が子どもたちの指導の柱となります。

時間が足りないということが本当の原因かどうか
時間内に解けないという悩みをお持ちの方は、本当に時間が足りないからできなかったのかどうか、今一度、検討なさってみてください。

時間が足りないことだけが原因ならば、手をつけたところの多くは正答しているはずです。後半が白紙の状態でも、手をつけたところができているならば、良い答案と言えます。練習してきた「印つけとメモ書き」をして一生懸命に解いたけれど時間が足りなかったのです。このような子どもたちは、秋までの練習段階で「正確に読むこと」と「集中して読むこと」をコツコツ続けていれば、底力が必ずつきます。秋口、志望校の過去問をやり始め、制限時間内に解けないことを知ると、自分で「どうしよう」と考えるようになります。その時に
「大問は
15〜20分で解くこと」を意識すれば、スピードは必ず上がっていきます。時間内に解き、合格基準点に達するのです。

「時間が足りない」という答案を見て、どの問題も虫食いの様子の場合は気をつけなければなりません。時間が足りないと思うあまり、あせって問題文も設問も正確に読むことができなくなっているのです。まだ丁寧に読むことが身に付いていないと判断します。
この段階でスピードを要求しても無理です。結果として、スピードも上がらず、せっかく丁寧に読めるようになってきていたものも後戻りしてしまいます。勇気を持って段階を一段下げて練習し直しましょう。

皆様のお悩みごとを伺い、実際の子どもの答案を見て思うこと
模試や組み分けテストで良い点数を取ることに重きを置きすぎているように感じます。
まだ丁寧な読み方が定着していないのに、次の段階に進み、時間内に素早く解けることを要求しているのではないでしょうか。時間内に解けても正答率が上がらなければ、時間を早めたメリットはありません。

少し丁寧に読めるようになり、正答率が上がったところで、一足飛びにスピードを上げることを要求すれば、またあわてて読むようになり、元に戻ってしまいます。すると、「このやり方はよくないからあのやり方にしよう」ということになります。あちらこちらから集めたテクニックをどうにか子どもたちに当てはめて、強引にやらせることになります。その結果子どもたちは不安定になり、さらに読めなくなっていきます。

少なくとも夏前のこの時期は偏差値の枠をすっかり取り払って、もう一度丁寧な読みの練習をなさって下さい。下記の「段階を踏まえた読解練習 1段階 2段階」を充分になさりじっくりと力を熟成することが、秋からの大きな力になります。

この指導法はすぐには点数に結びつきません。目先の偏差値を上げることが目的ではないことを心にしっかりと置き、たゆまずコツコツ練習を積み上げれば、結果はついて来るものと私は考えています。

どうしても気になる模擬試験と偏差値
模擬試験での偏差値はあくまで目安です。「偏差値的には合格ラインにいつもいたのに・・・」という話をよく耳にします。
国語の過去問を解いてごらんになればおわかりのように、国語の問題にはそれぞれ学校ごとの特色があります。それは担当の先生のご性格を映し出すものかもしれません。他教科よりも明らかに問題文も、設問の形式も違います。
相性ということばでは申しませんが、子どもたちは偏差値と関係なく、自分なりに解きやすい学校、解きにくい学校があるようです。それは、模試にしても同じです。模試の問題が解きにくく、過去問が解きやすいこともあります。模試はあくまでも目安と考えていただきたいと思います。

全ての模試が終了する時期になると、緊張感は高まりますが、親子共に一種の平安を感じるようにもなります。目先の点数にこだわる必要がなくなるからです。子どもたちはひたすら志望校の過去問を解き、一歩でも合格に近づこうとする気持ちを素直に表すようになり、親も必死に応援するという気持ちになるのが12月です。


段階を踏まえた読解練習・・子どもが自転車に乗れるようになるまでを例に挙げます
「お母さんが教える国語」にも書いておりますので、ポイントだけを述べます。

1段階  丁寧に読む初めてのトレーニング

補助輪つきの自転車の練習を始める。ハンドルに手を添えてあげる。
補助輪つきの自転車に慣れて自由に乗れるようになるまで、充分に時間をかける時期

・文章に向き合わせるために、「音読をしながら、印つけとメモ書き」で本文も設問も丁寧
 に読む練習をします

・シンプルな「印つけとメモ書き」を短い文章から始め、少しずつ段階をあげます
・読み終えたら「印つけとメモ書き」を中心に、丁寧に内容の確認をします。
「印つけとメモ書き」を具体的に点数に結びつけるためには、この内容確認が必須です
・解答は一人でさせます。
・答合わせのときに、自分の「印つけとメモ書き」を活用しているかをチェックし、印つけ
 がしてあるから正答したという経験を多くさせます。


 ◎この1段階目には充分に時間をかけます。

2段階   集中力を鍛える時期 
補助輪を外す練習を始める。
「後ろを持っていてあげるから、頑張ってこいでごらんなさい」と言いながら、少しずつ手を離す時期。

本文→設問→解答の段階。
・音読をしながらの手作業がスムーズにできるようになったら、本文を一気に読み通す練習
 をします。もちろん設問にも「音読をしながら、印つけとメモ書き」をします。

・一気に読み通したら、「印つけとメモ書き」を中心とした内容の確認をします。
 
あいまいな記憶ではなく文中の「印つけとメモ書き」にもどり、根拠をはっきりつかんで
 から解答をするようにと導きます。


3段階  集中力を鍛える時期 

補助輪を外し、一人乗りができる。
相当自由に乗れるが、まだスピードは出せない時期

設問→本文→解答の段階
・問題文を読むときには「鉛筆で読む」という習慣がつき、正答率が上がってきた時にこの
 ステップに進みます。

・設問から先に読み、問われていることやミスをしやすいところに印つけをします。このと
 きに設問を覚えようという気持ちで集中させます。(選択肢問題の一つ一つの文章は読み
 ません)

・次に本文に「印つけとメモ書き」をしながら一気に読み通し、解答します。
・この頃には黙読でよい場合もありますが、正答率が高くない場合はまだまだ音読が必要で
 す。

・3段階目に入るのは、6年生の夏休み頃が適切な時期でしょう。

4段階  点数に結びつける時期 
二輪車のスピードを上げて自由に操作できる。
止まり方、カーブの曲がり方を自分で考えて乗りこなす時期
スピードを上げて乗り回し、大人の自転車も立ちこぎができる子もでてくる。この時期は、もう親は伴走できない。

実践の過去問演習の時期
・秋口からで良いでしょう。
・時間制限を守ります。
・「丁寧に読むこと」、「内容確認をすること」、「鍛えた集中力」を統合して、点数とし
 て表す時です。


過去問演習の取り組み方
過去問演習という実践の取り組み方と、集中力を鍛えることを目的とした一気に読み通し解答する練習段階の問題への取り組み方は違います。ここにあらためて実践の取り組み方を載せます。

@試験問題の全体を見渡す。時間制限の確認をする

A漢字、知識問題を先にやる

B設問に印つけをしながら読む
   読みながらできるものと全文読んでから解くものの見極めをして、問題の番号に自分
  なりの印をつけておく

   設問は覚えることはなかなかできないが、ぐっと頭に入れるようにと意識する
   選択肢問題の設問は選択肢の文章の一つ一つは読まない

C印つけ、メモ書きをしながら本文を読む
  
段落分けの問題、つなぎ言葉、指示語の問題など、読み進めながらすぐに解答できるも
  のは解答用紙にどんどん書き込む

  記述問題など、全文読まなければできないものは、なにを聞かれているのかをもう一度確
  認しながら読み進めていく。記述に必要と思った文章や語句に「印つけとメモ書き」を
  してはっきりさせながら読んでいく


D選択肢問題は選択肢の文章に○、×、△をつけ、本文と検証する。選択肢の文章が長い場
 合は読点で区切り上下に分けそれぞれ検証する

 あわてて読むとミスをする。気をつけよう、丁寧に読もうと意識する

E抜き書きの問題は凡ミスをしないように、文中に[ ]をつける 

F難しいと思った問題で立ち止まらない
  時間をかけすぎると、先にある易しい問題に手をつけられない可能性がある

子どもたちは過去問を実践することで、時間制限、あるいは、学校ごとの問題の傾向、解答の仕方を自分で身につけていきます。このときに「丁寧に読むこと、集中力を鍛えてきたこと」の二点が、「集中して、素早く正確に読み解くこと」に結びついていくのです。
入試と同じ時間枠の中で、一人で真剣に問題に取り組む姿勢が養われます。50分経つと、
「もう時間だぁ。もっと早くやらなくちゃぁ」、「これくらい集中できれば大丈夫だね」など、感想が聞かれます。一人で厳しい試練に向かうことで、今まで培ってきた「丁寧さ」と「集中力」の二つがしっかり結びつきます。


余談
入試の日を目指しての子どもたちの指導でしたが、中学、高校と成長した子どもたちの毎年の報告を受け、結果として、このやり方がそれ以降の授業にも充分対応できているということを理解いたしております。

まとめ
「音読をしながら、印つけとメモ書き」の読解法には、即効性はありません。しかし、「段階を踏まえた丁寧な読み方」が「丁寧な内容確認」及び「読み通すことで鍛えた集中力」と結びついた時には、具体的な点数となって表れます。その時に「時間内に解けない」という大きな壁を乗り越えることができます。どうぞあせらずに待っていてください。
HPや本を読んでこのやり方を始めたけれど、点数に結びつかないとお思いの方に、「時間がかかりすぎる」、「スピードがないから点数が上がらない。もっと早く!」と先に先に進むのではなく、12段階が定着しているかどうかを今一度確かめて、夏休みまでの一ヵ月半、目を離さずに寄り添って練習をなさっていただきたいという思いで本日ここに著しました。

どうぞあせらず、コツコツと丁寧な学習をなさって下さい。後半3ヶ月の子どもたちの集中力に大いに期待してください。                    07/06/02
    
     

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