【 
私が大切にしている一文 】 

 
―― 根を養って、樹を育てる ――  

 2007年6月10日掲載 読売ウイークリー カリスマ講師の教え
          第
6回「青葉に『桜』を思う」から抜粋

                   
  (2015年2月9日 一部変更)


   枯れかけてはよみがえり、あるいは、折れた部分から芽吹き、力強く
伸びる山高の神代桜(山梨県北杜市・実相寺)。
13メートルの太い幹。
2000年の命をつなげる。強い生命力を持つ桜ではあるが、 その樹勢
回復には人の手が必要だと言う。 枝に茂る青葉の勢いを見て、それに
対応する根の様子を推し量る。 葉つきの悪い枝を回復させるには、根
をいたわりつつ養い、伸ばさなければならない。 丁寧に木の周辺を調
べて根の張り方を分析し、土壌の入れ替えを行う。 酸素を取り込みや
すいように、硬い土を丁寧にほぐし、肥料をやり・・。  根を養って、
樹を育てる。


 桜の青葉を見て、子どもたちを想う。すぐに花が咲くことや、だれよ
りも見事に、美しく咲くことを望むのではなく、また、水不足で枯れか
けた木に、あわてて水や肥料をどんどんやるのでもない・・・。

 成績が不安定になったときは「樹勢の回復工事」が必要。こどもの学
習の足跡を丁寧に観察し、分析する。何が不足していたのか、どの単元
の基本が抜けていたのか。ここは親の出番。励ましの言葉だけではなく、
工事を請け負うという気持ちで、身をもって守り、導いてあげる。子ど
もが解いた足跡を丁寧に見て、ミスの原因を一つだけでもよいから探す。
根はどうか。水や肥料を与えすぎて疲れさせていないか。風通しはよい
か。


 迷った時にはあれこれ新しいものに手を伸ばすのではなく、目の前の
一つのものを正確に丁寧にやる。この単元の基本を本当に吸収できてい
るか。根がしっかりと張ったのだろうかと気づかう。

 基本を定着する前に応用を要求すれば、伸びかけた根は成長を止める。
「この前できたでしょ!」でも、根がしっかり張っていなかった。急が
ずに、丁寧に根を見て。根の張った枝には花が咲く。



では、学年別に簡単なアドバイスを。

5年生、6年生>
 この時期には成績が上のクラス、高い偏差値をとることを目的とするの
ではなく、基本の定着を徹底させる。量に追われる勉強をすると夏休み明
けに成績が下がる。6年生の秋以降の志望校に合わせた学習をスムーズに
するためには、ここでひと踏ん張りが必要。国語の基本は丁寧に読むこと。
漢字、知識はしっかり。


3年生、4年生>
 一人で勉強する習慣と、読書の習慣をつける。読書が嫌いならば積極的
に読み聞かせをする。生まれてからまだ
10年。あたたかい親鳥の羽のもと
で、ぬくぬくと充分に育む。目には見えないが、安定した情緒は子どもの
性格、生活、さらに学習の土台となる。根を育てることが樹を育てること。