提言 143
デジタル通信用レピータ
2005−7−4 
2005−7−6 追記

デジタル通信用レピータ

JARLによるデジタルレピータの公募は1200MHzの第一回に続き、その結果も見ないうちに1200MHzの第二回公募そして430MHz帯の第一回公募が行われ6月30日にそれが締め切られた。
まず考えてみなければならないのはレピータに関しては法律ではないが法律のような効力を発するという奇妙な「審査基準」というもので現在はJARLのみに免許を与えるとなっている。  そもそも「審査基準」とは法律に基づく免許を行う場合にその審査をスムーズに行うものとして定められたものである。 即ち、その運用は少なくとも法の趣旨を反映していなければならないものである。  本来法律とは立法府が作るものである。 しかし、行政を柔軟に運用するために通達とか告示のようなものが作られている。 それぞれには法的意味があり、さらにこの「審査基準」なるものが存在する。
総務省から見れば電波法で規定されているアマチュア局の運用を社会的、公共的な見地からスムーズに行われるようにこのような「準法律」を作って運用していることになる。
レピータに関しては、電波法、そして運用規則に適合する運用を担保するために「審査基準」によってその免許人をJARLとすることにしている。
これは、日本においてアマチュアレピータを認める苦肉の策とも言える。  その趣旨に沿って独占的に免許をうけることができるJARLは全てのアマチュア局に使ってもらえるレピータ局を設置する義務が生ずるわけである。
今回JARLはアナログレピータに続いてデジタルレピータを開設することになった。 これは当然レピータのステップのひとつだろう。 しかし、その方式がJARLが推進するD−STARプロジェクトに限定いていることは大きな問題ではないだろうか。 そもそもアマチュア無線とは個々の個人的考えでいろんなことを実験していくことにその存在意義がある。  即ち、デジタルに関してもD−STARという特定の団体そして企業が行っているものに限定して公募するということは法の趣旨そして「審査基準」の趣旨に反するものではないだろうか。
さて、今回の公募に対して我々のグループは3局のデジタルレピータの設置を求めることにした。 勿論、公募条件に合致することは基本であるがさらに「アマチュア無線」というものの存在意味を踏まえて、
今、アマチュア無線で最も広く実験されているボイスコーデック方式であるG723.1、G729などにも対応するマルチパーパスレピータを製作することにした。  ご存知のように今回のJARLのレピータ公募に合致する製品はICOMのみが市販している。 JARLも公募のタイミングをこの発売に合わせたようだ。
しかし、我々はアマチュアである。 勿論プロではないので何から何まで自作しろということは到底無理である。 しかし、すこしでもアマチュアスピリットを発揮していくのがアマチュアとしての努めだと思う。
そこで、ICOM社製のレピータを使わずに、他社のトランシーバを改造し、 D−STARならびに現在広くアマチュアが実験している方式にも対応するレピータを作り上げることにした。
この詳細は「マルチパーパス・デジタルレピータ装置に紹介してある。

そもそも私がJARLのD−STARプロジェクトに異論を唱えるのはこのD−STARがアマチュアを幸せにするものではないという観点からであり、何度も書くようにデジタル通信そのものを否定するものではない。 それどころかアマチュアがデジタル通信にチャレンジすることは大いに推進されるものだと思っている。
JARLの行うD−STARが本来のアマチュアの発想ではなく郵政省(現総務省)の周波数の効率的運用というものにその原点があることに問題があると思っている。 
現在D−STARが利用している音声コーディックのAMBEも、周波数の効率的な利用には適しているものかも知れないが、アマチュアが取り入れて実験するには障害もある。 この方式は広くプロでも使われてうるのでありそれなりのものだが、これはタクシー無線などのようなものならともかく。アマチュアがその音声をさらにインターネット回線などを経由して扱うとその音質はさらに劣化してしまう。
こういうことなどを考慮して世界のアマチュアはG723.1またG729というコーディックでの実験が主になっている。
D−STARにおいても当初この方式が検討され、さらにバックボーン回線には5GHzが考えられたが結論としてAMBE方式そして10GHzになったことに何か総務省の意思を感じる。

アマチュア無線として周波数帯が割り当てられていることはその周波数帯において自由な発想で個々のアマチュアがアマチュア無線を実践していくことにある。 もし、そこに何か別の意思が働いていたとすれば忌々しきものではないか。
今回の公募に際してはAMBEだけでなく他のコーデックの電波も中継できる自作(完全な自作ではない)レピータをもって応募した。  JARLはこの装置に対してどのような判断を下すかに興味を持っている。
もし、他のコーデックの中継を否定でもするのであればそれはもはやJARLがアマチュア無線家の団体ではなく総務省の御用団体であるという証明かも知れない。
さて、インターネットで奇妙なページを見つけた。
http://www.aesham.com/display_pages/d-star.pdf
これはアメリカの通販会社であるAESのページとはなっているが、原典はICOMのものだろうということは分かる。
まず、ID−1のVOICE CODECを見て見よう。 そこにはG723.1と書かれている。
またD−STARの仕様にもAMBEとG723.1が併記されている。
ところがJARLが公開しているD−STARの仕様には当然AMBEしかない。
いったいこれは何を意味するものなのだろうか。
アマチュア無線のための
デジタル化技術に関する調査検討
報告書
(抜粋)

(抜粋
第4章 アマチュア無線のデジタルシステムの概要

周波数の有効利用
(略)
周波数有効利用において、音声信号、データ信号のデジタル化および圧縮技術で得られた、効率化サレタベースバンド信号の偏重方式の検討も大きな課題である。
一般のアマチュア無線家が製作可能な方式または部品の入手が可能なことも考慮する必要がある

4.1.2 音声コーデックの効率化
(1) ITU G723.1
 平成12年度の「デジタル送受信装置」の試験では、平成11年度に調達した機器も利用するため、音声コーデックはITU G723.1(変換速度5.3kbps)のコーデックを音声系通信に使用している。
 平成11年度で報告したように、この方式は音声、データ、画像等を複合的に扱うことができるものである。 また、マルチメディア多重化における音声、データ画像等の関係(プロトコルスタック)について第4-1図(略)に示す。 この方式は低速の変換にもかかわらずコーデックとして効率が良く、図のようにインターネットとの共通性もある。 またインターネット電話方式の音声通信としても有効であり、デジタル携帯電話と比較しても音質が良好である。
(2)その他の方式
 ITU G723.1より低速度のコーデックが米国業務用無線通信、TIAのAPCC25プロジェクトに採用されている。 これはIMBE(Improved Multi-Band Excitation) あるいはAMBE(Advanced Multi-Band Excitation)とも呼ばれ CELP(Code Exited Linear Predicition), RELP(Residual Excited Linear Prediction), VSELP(Vector-Sum Excited Linear Prediction)等と同様なLinear Prediction Speech Model系のもので、伝送速度を2.4kbpsまで落としてもITU G723.1の音質と比較して遜色ないことを確認している。
 この低速度コーデック方式は、占有周波数帯域が狭く周波数の有効利用上効率が良いとされるSSBと同等以下の占有周波数帯域でデジタル音声通信が可能となる。
 この方式は現状ではインターネットとの整合性がないため、音声系の通信に限って採用を検討すべきと思われる。 また、コーデックの変換速度と伝送速度が同一であるため、同期信号等の挿入ができずアマチュア無線特有の通話の途中から受信することができない欠点を持っている。(以下略

4.6.1
 アマチュア無線のデジタルシステムは、全体として高度な技術を必要とすることは異論はないものと思われる。 しかしながら、本来のアマチュア無線の精神に基づき一般的な技術を持つアマチュア無線家が、製作可能な基準にすることは既に述べたとおりである。
 音声コーデックのように、ITU G723.1で規格として公表されているが、このコーデックの回路を構成することは、一般のアマチュア無線家には困難と思われる。 しかしながらこのコーデックはICとして手に入れることが可能であり、その意味で一般のアマチュア無線家でも機器の製作が可能と言える。


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注釈)
このようにG723.1を先行して実験し、その後周波数の利用効率を考慮したAMBEが登場したが、その音質性能の差を無視し、さらに最も重要な部分である
「アマチュア無線家の精神」を犠牲にしてまでもAMBEを採用したことは禍根を残すのではないか。







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