提言 145
JARLはD−STARを再検討すべきだ
2005−7−8 

JARLはD−STARを再検討すべきだ
提言143にも書いたが、郵政省の委託研究の段階ではアマチュア無線として自作も可能な方式を取り入れるべきだと報告書で書かれている。
無線機も次第にその心臓部が電子デバイスに集約されてきてなかなかその全てを自作するということが難しくなってきた。 しかし、アマチュア無線家はアイデアを持っていろいろと新たな取り組みを行っている。 日本では報道されていないがアメリカなどでは新技術の開発がアマチュアの手で行われ、それがプロに使われ発展したものは今でも多くある。 しかし、日本ではそのようなものはもはや現れることもない。 それには日本におけるアマチュア無線を取り巻く環境も影響しているようだ。
 D−STARにおける音声コーデックがAMBEに決まった。 これがどのような経緯を経て決まったかは公表されていない。 
それよりも、JARLがD−STARの前段階で行った委託研究の成果をアマチュア全てが共有できるように公開していないということ自体が驚かされる。
平成11年度から3年間に渡っておこなわれたこの研究には多額の国費が投じられJARLも相当の時間を割いていたはずだ。 私はJARLに対してこの研究結果を公表するように求めたがJARLは「研究結果は国のものでありJARLで公表するわけにはいかない」という返事だった。 これにはたまげた、驚いた。 というのはこの研究結果をまとめた報告書は「情報公開」の対象文書なのである。 即ち、国民は誰でも入手できるし、それを公開することには問題は起きない。  それなのに頑なに公開を拒むのはどういう理由なのだろうか。 この研究結果を全てのアマチュアが共有してこそ意味があるのではないのか。  JARLが公開しないのであればと、情報公開法に基づいて公開請求をして2年前にその全文を入手した。 提言143に書いたのもその報告書の一部である。
JARLが本当に「アマチュアが自作できるデジタル技術」というものを意識しているのであれば直ちにその研究結果を公表するはずだと思う。 このあたりから不審が生まれてくる。
さて、報告書段階ではAMBEともITU方式とも結論づけていないが、報告書にもはっきり書いているように「アマチュア無線家でも自作できる方式」を取り入れるのであればITU方式が選ばれて当然ではなかったのだろうか。 それがD−STARの仕様が決まった時点ではAMBEが採用されてしまった。
G723.1に比べて遥かにアマチュアが関与しにくいAMBEなった経緯も公開されていない。
確かにAMBEは占有周波数帯域が狭いというメリットはある。 これが意味のあることだとは思うがアマチュア無線の本質そして現状を見た場合それが優先される条件だとは思わない。 それよりも、アマチュアが少しでも参入できる可能性のある方式を採用してしかるべきだと考えるのはアマチュアとして普通の感覚ではないのか。
この経緯が一切公にされないので推測するしかないが、そもそもこの委託研究は総務省の意向である、周波数の有効利用とVHF以上のデジタル化というものに沿って行われ、本来のアマチュア無線の為の研究ではなかったということにも関係するのだろうか。
「アマチュア無線家でも自作できる方式
と言っておきながらD−STARを推進したJARLでは驚いたことにこれに関わる無線機を製作などどころか設計さえもしていないのである。 D−STARを推進したアマチュアがこのようなことで我々が自作などできるわけがないだろう。 聞いた話では仕様書段階までは関わるが設計、製作は全てあるメーカーに丸投げだったそうだ。 私たちがレピータを作るうえでJARLにきっとあるはずの蓄積されている技術を教えてもらおうとしたら、JARLには一切そういうものがないと言われてしまった。 設計、製作まで丸投げ、挙句にアマチュアにはメーカー製を買って遊びなさいとはアマチュア無線家の代表たる団体の対応として適切なのだろうか。

ご存知のようにアナログレベルではVoIP技術を使ったインターネットを介した巨大なネットワークが形成されつつある。 日本で代表的なものと言えばEcholinkとWiRESだろう。 特にEcholinkにあっては既に世界中で30万局が登録して完全な世界ネットワークが構築されている。 それも、このようなシステムがアマチュア無線に取り入れられたのが4−5年前だということを考えれば、委託研究をやっていた頃にはまだ無かった方式だ。 D−STARが計画したインターネットとの融合も既に全世界レベルで行われている。 さらに、今インターネットで話題になっているのはこれを使った音声伝送のクオリティーだ。電波における占有周波数も大事だが通信の品質を上げることに世界の目が移ってきている。
さらに、以下を見てもわかるようにアマチュア局数は激減している。 
http://www.jarl.or.jp/Japanese/2_Joho/2005_news-2.htm#0707-3
この状況から占有周波数帯域を狭くするということは大きな命題とは思えない。
JARLはこのまま頑固にAMBEにこだわらずにG723.1など他の方法も積極的に取り入れていくべきであろう。
AMBEの音をコンピュータそれも古いモデルを通してインターネットを経由したらさらに音質は低下する。 これは多くの人が認めていることでインターネットとの融合ではG723.1のほうが優れているし、自作の可能性も高い。
このままAMBEにこだわって今まで投じた金、時間そしてエネルギーが無駄になってしまうよりもう一度現在の状況そしてアマチュア無線にとって何が重要かを見て再検討することを強く望みたい。