提言 192
JARLが残ってアマチュア無線が消える
2007−7−20


JARLが残ってアマチュア無線が消える

CQ誌を見ればアマチュア無線の現状がはっきりと見えてくる。 一昔前は広告が非常に多く雑誌なのか広告誌なのか判別がつかないほどだった。   しかし最近は殆どが本文であり雑誌は当時の1/5以下にまで減ってしまっているように思える。  広告はそれを掲載して効果があるから出すのであっていくら広告を出しても商品の売り上げが増えないのであれば自然と消滅してくる。
CQ誌を見る限りマーケットは極端に細っていることが読み取れる。  この状況はアマチュア無線にとって危機的な状況である。 これをなんとかしようと活動することがJARLの使命であるはずなのだがここ10年ほどJARLの活動を見ていてもそんな姿勢は感じられない。 JARLは今社団法人格を維持することにその多くのエネルギーを費やしているように見える。 その間もアマチュア局は減少を続けており、新しい人が参入することも少なくいまだに平均年齢は上昇を続けている。 人間の生命には限りがあるのだしこのまま推移していけば当然局数は更に減りついにはアマチュア無線というものすら消え去る運命になるだろう。  JARLは必死になって社団法人を維持させることに夢中だがいまそんなことに夢中になっている時間があるのだろうか。
日本のアマチュア無線は時代が変ろうがその基本的な姿はちっとも変わっていない。 ここが欧米と大きく違うことだ。 そもそもアマチュア無線が生まれてきた時代においては青少年の未知への興味を具体化させるものに「無線通信」があっただけのことで、そういう意志のある青少年を引き付けこの世界に新しいエネルギーが注入されたのだ。  彼らにとってはそれが「無線通信」である必然性はなかったのである。  時代は変わりその意識を持つ若者はコンピュータそしてロボットなどにそのエネルギーを向けている。 ほぼ完成された「無線通信」などに興味を抱く人はそんなにはいない。 まして完成された無線機を使ってまで不特定多数の人と話をすることに興味を持つなどという若者はどれだけいるのだろうか。  今では地球のどこにいようと電話やネットがつながる時代にわざわざ巨大なアンテナを建てて近所に白い目を向けられてまでやろうなどという人は新しくは出てくるわけがない。  しかしJARLはいまだにこのようなノスタルジックなことが「アマチュア無線」だと思っている。  世界を見てみればいい。 時代が進んだのは日本だけではない。 世界も同様だ。 確かに日本以外の国においてもアマチュア人口は増えているところは少ない。 しかしここまでドラスティックに減っている国は無い。 ではどうしてなのだろうか。  インターネットで先進国のアマチュア無線を見てみるともはや「無線通信」に拘っている姿は少なくなっている。  通信全般、科学技術全般・・・というようにもはや「無線」というものに拘らず通信そして社会との共生をその道としている。 特に社会貢献については活発に行動している姿が見える。  一方日本は依然としてアマチュア無線を狭義に捉えて「無線通信」こそがアマチュア無線だと頑なにグローバルに捉えることを否定している。  VoIP無線が流行っているがこれに対しても依然として「あんなものはアマチュア無線ではない」と豪語するOMが実に多い。  無線と有線の複合がいまの通信であるというのに。  
APRSというものが最近ブームになりつつある。 これはAutomatic Position Reporting Systemと呼ばれるもので基本プロトコルはアマチュアが開発した。 当時はAutomatic Packet Reporting Systemと呼ばれていたがこれをアマチュアに関わらず一般の人にまで普及させることに成功したので呼称のPacketをPositionと読み変えた。 このプロトコルは単にアマチュア無線のパケット通信に限らず多くの情報交換が可能にしてあってこれがWeather Stationネットを構築させた。 日本のAPRSネットの殆どはアマチュア無線家によって組まれているがそれと情報を共有する世界ではもはやアマチュア無線家のほうが少数なのである。 このWeather Stationというのは個人などが自宅や事業所に気象観測装置を設置しそれを有線(インターネット)そして無線(パケット通信)で情報を共有しようというものでNOAAとも情報を共有するシステムが構築されている。 世界中のどこかで地震や津波が発生したらそのアラート情報が瞬時にこのネットを通じて流されてくる。 アマチュアだけでなくスマトラ沖地震の津波で大きな被害を受けたタイではこれをアマチュアと行政が協力してアラートシステムを構築しようとしている。  既に世界では1万局ほど設置されさらに急激に増えようとしているのだがこれだけアマチュア無線家がいる日本ではせいぜい10局というのはいかにも寂しい。  
このようにアマチュア無線家はその卓越した通信技術や知識をもって社会に貢献するというのがこれからのアマチュア無線の姿になりつつあるのに日本ではJARLが自分の組織の生き残りに必死で時代そして社会が求めるアマチュア無線に目を向けようとしていない。  JARLがそうであれば総務省だってそれに合わせた法整備などするわけがない。
JARLは今社団法人の生き残りなどにうつつをぬかす時間があったのなら21世紀のアマチュア無線の生き残る道を明確に示しその法整備に向けて全エネルギーを注入すべきだ。  新しい時代に受け入れられるアマチュア無線の環境が整えば若い人たちだって必ず入ってくるものだ。 50年前のアマチュア無線はもはや今では化石でありそんなものは博物館にしまっておいて新しい世界を切り開くべきだろう。  こう言うとJARLはD-STARがあるじゃないかときっと言うことだろう。 しかし、D-STARはアマチュア無線イズムなどもっていない単にメーカーに与えられたツールに過ぎないのである。 もしこれがアマチュア無線だと言うのであれば個々のアマチュアがどのように関われるのかを示すべきだろう。