-加群
R を単位的可換環とします。Abel
群 X がAbel
群としての演算に加えて ´ X(a, x)
(3-1a) |
(3-1b) a(bx)x |
(3-1c) a(x |
(3-1d) (ax |
を満たすとき、R-
加群といい、特に R が体 K のとき K-
線形空間、あるいは K がわかっているときは、単に線形空間といいます。R はそれ自身 R-
加群であることに注意します。
任意の R-
加群に対して
(3-2a) |
(3-2b) ( |
(3-2c) ( |
が成り立ちます(「数学の基礎」第14節 (14-57)
参照)。また、ÎR´(3-1a),(3-1b)
により (ax)
x= (ba) = 1x = x
(3-3) a |
が成り立ちます。
なお、任意のAbel
群 X は、ÎZ
ÎXZ
´ X(15-36)
により (3-1)
が成り立つことがわかるので、X は Z-
R-
加群 X の部分集合 Y は、部分群であって、かつ R の元を乗じる操作に対して閉じている、すなわち Ì Y-
加群といいます。また、R-
加群 X から R-
加群 Y への写像 f は、
(3-4a) f(x |
(3-4b) f(ax) |
を満たすときR-
線形写像、あるいは単に線形写像といい、X から Y への線形写像の全体を Hom(X, Y )
-
線形写像はAbel
群の準同型ですから、
(3-5a) f( |
(3-5b) f( |
及び準同型定理:
(3-6) X / Ker f |
が成り立ちます。また、Abel
群の任意の準同型は、ÎZ
(3-4b)
を満たしますから Z-
線形写像とみなすことができます。
また、R-
加群を対象、R-
線形写像を射とよべば、これは一つの圏を構成します。これをR-
加群の圏といいます。
R-
加群 X の部分集合 S について、R の元と S の元の積の有限和の全体は、S を含む最小の R-
加群ですが、これを sp
S-
加群といいます。特に sp
S = X
X , Y をR-
線形空間、, g
ÎHom(X, Y ) + g :
X ® Y
(3-7a) ( f |
で定義すると、X における加法の可換性により + g
また R は可換環なので、(bx)
= abf(x) = baf(x)ÎRÎHom(X, Y )
(3-7b) (af )(x) |
と定義すれば、-
線形写像になります。すなわち Hom(X, Y )
-
加群になります。特に Hom (X, R)
*
ÎHom (X, Y )
hÎY*
= Hom (Y, R)
(3-8) f *( |
と置けば、明らかに *(
h)ÎHom (X, R) = X*h に *(
h)*
(3-9) f |
となります。(3-8)
から特に、f が全射なら *
また、R-
加群の図式 = { Xi ( i
ÎI ) , fj ( jÎJ ) }*
= { Xi* ( iÎI ) , fj* ( jÎJ ) }(8-19)
参照)により、集合の圏として
(3-10) (colim D)* |
が成り立ちますが、R-
加群の圏から集合の圏への忘却圏手は極限保存圏手なので、これはR-
加群としても成立します(「数学の基礎」第13節参照)。特に、余積の双対は双対の積になります。
さて、R-
加群の族 { Xi | i
ÎI }
X を { Xi | i
ÎI }pi :
X ® Xiii :
Xi ® X
(3-11) |
が成り立つような唯一の線形写像として定義します。ただし dij = j ¹ j
(3-12) X' |
と置きます。このとき ÎX'
(3-13) x |
å iÎI |
( |
が成り立ちます。実際、まず右辺は有限和なので意味を持ちますが、両辺に pi(3-11)
により共に pi(x)
以下、有限個の ÎIpi(x)
= 0(3-11),(3-13)
のみを使って、X' は ii :
Xi ® X'{ Xi | i
ÎI }
任意のR-
線形空間 Y とR-
線形写像の族 :
Xi ® Y :
X' ® Y
(3-14) f(x) |
å iÎI |
fi( |
で定義します(右辺は有限和なので意味を持ちます)。ÎXj(3-14)
の x に ij(z)
(3-11)
により
(3-15) f( |
å iÎI |
fi( |
すなわち ° ij = fj ° ii = g ° iipi(x)
ÎI(3-13)
により = g{ Xi | i
ÎI }
特に添字集合 I が有限集合のときは、X' を X で置き換えても、(3-13)~(3-15)
は有限和なので、以上の証明がそのまま成立します。すなわちR-
加群の圏では有限個の余積は積と一致します。これを双積(biproduct
)といいます。
集合 S に対し、R-
加群 X と写像 :
S ® X-
加群 Y と任意の写像 :
S ® Y = j ° i-
線形写像 j Y:
X ® -
加群といいます(「数学の基礎」第13節 参照)。
S を集合、X をR-
加群とし、線形写像の族 is :
R ® X( s
ÎS ) :
S ® X(s)
= is(1)is = { R | s
ÎS }( X , i )
-
加群であることは同値です。
なぜなら、任意のR-
加群の族 :
R ® Y( s
ÎS ) :
S ® Y(
1) = g(s)-
線形写像 j Y:
X ® = j ° is( s
ÎS )-
線形性により (
1) = j(is(1))( s
ÎS )j(
is(1)) = j(i(s)) = j ° i
特に、g を特定の ÎS1 、それ以外の ÎS0 として定義すると、g に対する j によって j(i(s))
= g(s) = 1 ¹ 0 = g(s' ) = j(i(s' ))(s)
¹ i(s' )
R-
加群 X の部分集合 S は、 :
S ® X(X, i)
-
加群になっているとき、X の基底であるといいます。任意の ÎX(3-13)
の ps(x)
0 で、is(
ps(x)) = ps(x) is(1) = as i(s) = as s
(3-16)x |
å sÎS |
as s |
となります。また (3-11)
により ps(s' )
= ps(i(s' )) = ps(is' (1)) = dss'(3-16)
の両辺に psps(x)
= as
逆に任意の ÎX(3-16)
の形の有限和に一意的に表わされれば、isX :
R ® psR :
X ® is(a)
= aspsas(x)
= ps(x)
0 で、(3-11),(3-13)
を満たすので、X は R の余積です。更に is(
1) = s = i(s)( X , i )
(3-16)
の
また、X の部分集合 S は、部分空間 sp
S(3-16)
の右辺が 0 ならすべての係数 0 であることを意味します。
さて、一般の R-
加群は基底を持つとは限りません。例えば、ある 0 でない ÎR ÎX = 0(3-16)
の表示の一意性は成り立ちません。
ただし、R が体 K のときは、X には必ず基底が存在します。もっと一般に、X の一次独立な任意の部分集合 A に対し、A を含む基底 S が存在します。
実際、X を K-
線形空間とします。A を含む X の一次独立な部分集合の全体 S に包含関係で順序を入れます。
まず ÎS
次に (3-16)
の和が有限和であることから、sp
SZorn
の補題により、S は極大元 S を持ちます。以下 sp
S = X
もし ÎX \ sp
S = S È{ y}
sp
S'
(3-17)x |
å sÎS' |
as s |
å sÎS' |
bs s |
と書けたとすると、 = as - bs
(3-18) |
å sÎS' |
cs s |
å sÎS |
cs s |
となり、もし ¹ 0(3-18)
の両辺に乗じれば、
(3-19)y |
å sÎS |
dcssspS |
となって矛盾です。ゆえに = 00 であることがわかります。ところがこれは ÎS
さて、X がK-
線形空間なら、X の部分空間 Y から線形空間 Z への写像 f に対し、f の X への拡張、すなわち X から Z への線形写像 F で、その Y への制限が f に一致するものが存在します。
実際、Y の基底 A を取ると、A を含む X の基底 S が存在します。このとき任意の ÎX(3-16)
の形に表わし、
(3-20) F(x) |
å sÎA |
as f(s) |
と置けば、これは線形で、f の拡張になっています。
特に、 = KÎY*
ÎX*
(3-8)
により = F ° i = i*(F )
*
ÎHom (X, Y )
[X ]
*
また、X が線形空間の場合は、任意の ÎX*
ix
(3-21) |
で定義すると、ixixÎHom (X*, K )
= X**ix = 0 = 0
実際、 ¹ 0{x}
0 でない ÎK = 0 = 0sp {x}
(ax)
= axÎHom (X, K )
= X*ix(
x) = x(x) = l(x) = 1
ゆえに、x に ix
(3-22) X |
とみなせることがわかります。
さて、R-
加群 X が、更に環であって、ÎR,
yÎX
(3-23) a(xy) |
が成り立つとき、X を R-
環といいます。更に X が単位的環、あるいは可換環である場合、X を単位的R-
環、可換R-
環といいます。
また、R-
環からR-
環への写像は、R-
線形かつ環準同型であるとき、R-
環の準同型であるといいます。R-
環を対象、R-
環の準同型を射とよべば、これは一つの圏を構成します。これをR-
環の圏といいます。
さて、X をR-
加群とすれば、End (X )
-
加群ですが、この場合は更に、,
gÎEnd (X )
(3-24) ( fg)(x) |
で定義すると、End (X )
-
環になります。
自然数 n に対し、第 j 成分が と表わすことにします。また となるので、 が成り立つことがわかります。
が成り立ちます。
1 、それ以外の成分が 0 であるような { en j |
1 £ j £ n }-
加群になります。そこで Hom (R n, R m )
(R)
と書いて、その元をm行n列の行列といいます。ÎMmn(R)
に対する (i, j)-
(3-25) A
= ( aij | 1 £ i £ m ; 1 £ j £ n ) = ( bjk |
1 £ j £ n ; 1 £ k £ l )ÎMnl(R) ° B(i, k)-
(ab)
ik
(3-26)
m
å
i=1(ab)
ik em i = ABelk = An
å
j=1bjken j
= n
å
j=1bjk Aen j
= n
å
j=1m
å
i=1bjk aij em i
{ em j |
1 £ i £ m }
(3-27) (ab)
ik =n
å
j=1aij bjk
また、A と、A と同じ行数と列数を持つ行列 = ( cij |
1 £ i £ m ; 1 £ j £ n ) + C(a
ij + c)
(3-28) (a
ij + c) = aij + cij
さて、行と列が同じ行列、すなわちある自然数 n に対するn行n列の行列をn次正方行列といい、その全体を (R)
と書きます。これは End (R n )
-
環になります。このR-
環の単位元を単位行列とよびます。また Aut (R n )
GL(n, R)