前節で、構造に関する推論規則をいくつか掲げましたが、この中のいくつかは、具体的に与えられた理論の中では、推論規則として敢えて規定しなくても、導出できてしまうことがあります。
例えば、( 同 一 ) という推論規則は、前節で与えられた推論規則の全部又は一部のみを推論規則に持つような理論では自動的に成り立ちます。
なぜなら、sequent
Φ が既に証明されている場合、その証明をもう一度全部コピーして書き加えれば、それが同じ Φ の証明になるからです。
本節では、推論規則に関するこのような性質を体系的に調べます。
なお、証明文 P やsequent
Φ の中の変数 x を項 T で一斉に置き換えたものに対しても (T | x)
| メタ定理1 | P を、前節で与えられた推論規則の全部又は一部のみを推論規則に持つ理論における証明文とし、x を変数、y を P に現れず、x と異なる変数とすれば、( y | x)P |
実際、P を構成する各sequent
Φ に対し、( y | x)
Φ( y | x)
P
この主張が Φ より手前のsequent
までは成り立つものと仮定します。
Φ が 1 ,
Pn¼, ® R( y | x)
Pi( y | x)
Q( y | x)
Φ1' ,
Pn'¼, ® R' " 導入), ( " 消去), ( $ 導入), ( $ 消去) 以外の場合は明らかです。
次に、Φ が sequent
Ψ に ( 代 入 ) を適用して得られる (T | z)
Ψ( y | x)
T( y | x)
Ψ
ここで z が x と同じ変数なら ( y | x)
Φ(T' | z)
Ψ(T' | y)
Ψ'
また z が x と異なり y と同じ変数なら、仮定により y すなわち z は Ψ に現れないので Φ は Ψ そのものです。ゆえに ( y | x)
Φ(T' | x)
Ψ'
また z が x とも y とも異なる変数なら、( y | x)
Φ(T' | z)
Ψ'
以上で、使った推論規則が ( 代 入 ) の場合には成り立つことが確認できました。
次に、用いた推論規則が " 又は $ に関する推論規則である場合を統一的に考察しましょう。
まず、κ が " 又は $ で、Φ が ® κzP( y | x)
P( y | x)
Γ
ここで z が x と同じ変数なら、前節の退避変換のところで述べたように、( y | x)
Φ ® κyP'
また z が x と異なり y と同じ変数なら、同様に ( y | x)
Φ ® κxP'
また z が x とも y とも異なる変数なら、同様に ( y | x)
Φ ® κzP'
次に、Φ が ® (T | z)
P( y | x)
P( y | x)
T( y | x)
Γ
ここで z が x と同じ変数なら、上記の ( 代 入 ) のときの議論により、( y | x)
Φ ® (T' | y)
P'
また z が x と異なり y と同じ変数なら、同様に ( y | x)
Φ ® (T' | x)
P'
また z が x とも y とも異なる変数なら、同様に ( y | x)
Φ ® (T' | z)
P'
次に、Φ が ® P( y | x)
P( y | x)
Γ( y | x)
Φ ® P'
次に、¢
Γ( y | x)
Γ
ここで z が x と同じ変数なら、¢
Γ¢
Γ'
また z が x と異なり y と同じ変数なら、x と y は異なる変数ですから ¢
Γ'
また z が x とも y とも異なる変数なら、しかも ¢
Γ¢
Γ'
以上の結果と、最後から2番目の段落で P のかわりに Q としたもの、Γ のかわりに ,
P,
Q" 又は $ に関する推論規則の場合にも成り立つことがわかり、これですべての場合について検証できました。
このメタ定理1のような証明文の変数の置き換えを、証明文の退避変換とよぶことにしましょう。
| メタ定理2 | 前節で与えられた推論規則の全部又は一部のみを推論規則に持つ理論では、構造に関する推論規則 ( 代 入 ) は導出可能である。すなわちsequentΦ が定理、x が変数、T が項なら (T | x)Φ |
実際、P を証明文、Φ をそこに現れる任意の定理、P に、T に現れない変数への退避変換を何回か(0回でもよい)施したものを (T | x)
Φ'*
この主張が Φ より手前のsequent
までは成り立つものと仮定します。
まず、Φ が ® P*
*
® P'*
" 導入) , ( " 消去) , ( $ 導入) , ( $ 消去) 以外の場合は明らかです。また、( 代 入 ) については、考えている理論がこれを推論規則に持つなら結論は自明です。ゆえにあとは、用いた推論規則が " と $ に関する推論規則である場合について確かめれば十分です。
そこで、Φ が ® P " 導入) によって得られた ® "zP¢
Γ
このとき、メタ定理1により、¢
Γ' ® "z'P'
そこで、P にも T にも現れず、上記の退避変換に登場する変数とも x とも異なる変数 y を取ると、*
(T | x)( y | z')Γ'
P' ® "y(T | x)( y | z')*
*
® "yP"*
一方、メタ定理1により ® P"*
® P"*
¢Γ"*
" 導入) により *
次に、κ を " 又は $ とし、 ® κzP ® (S | z)
P ® κz'P' ® (S' | z')
P'
ゆえに、x と異なり T にも P' にも現れない変数 y を取れば、*
*
P' ® κy(T | x)( y | z')( y | z')
P'*
® κyP"*
一方、*
*
P' ® (T | x)(S' | z')*
P' ® (S'* | y)(T | x)( y | z')*
® (S'* | y)P"*
ゆえに、κ が " で、Φ が既に証明されていて、用いた試論規則が ( " 消去) のときは、仮定から *
" 消去) により *
また、κ が $ で、Ψ が既に証明されていて、用いた試論規則が ( $ 導入) のときは、仮定から *
$ 導入) により *
最後に、Φ が ® $zP,
P ® Q $ 消去) によって得られた ® Q¢Q,
Γ
このとき、メタ定理1により、変数 ¢
Q',
Γ' ® $z'P',
P' ® Q'
ゆえに、仮定により (T | x)( Γ'
® $z'P')(T | x)Γ'
P' ® $y(T | x)( y | z')( y | z')
P'*
® $yP"*
また、(T | x)( Γ", P"
® Q")¢Q',
Γ'(T | x)Γ', (T | x)( y | z')P'
Q' ® (T | x)*, P"*
® Q'*
ここで ¢Q'*, Γ'*
$ 消去) により、*
® Q'**
以上でメタ定理2の成立が確かめられました。
| メタ定理3 | 前節で与えられた推論規則の全部又は ( 換 ) を含む一部のみを推論規則に持つ理論では、構造に関する推論規則 ( 増 ) は導出可能である。すなわちsequent ,P |
実際、P を任意の命題、P を任意の証明文とし、P に出てくる全ての変数 1 ,
xn¼, 1 ,
zn¼, (z
P1 | x1)¼(zn | xn)
次に、 ® Q',
P ® Q' ® Q',
P ® Q'
このことを使って、証明文 ® Q',
P ® Q'
まず、 ® Q' " 導入), ( $ 消去) 以外の推論規則によって導かれたもである場合は、,
P ® Q'sequent
に対応するsequent
から、同じ推論規則と ( 換 ) の組み合わせによって導くことができます。
また、 ® Q' ® R' " 導入) によって導かれた ® "zR'
しかも z が R' に現れる場合は、仮定により ¢
P"zR'"R'"z'R'¢
P
ゆえに、,
P ® Q',
P ® "zR',
P ® R' " 導入) によって導くことができます。
また、 ® Q' ® $zR',
R' ® Q' $ 消去) によって導かれた場合を考えると、z は
しかも z が R' に現れる場合は、仮定により ¢
P$zR'$R'$z'R'¢
P
ゆえに、,
P ® Q',
P ® $zR',
R',
P ® Q' $ 消去) によって導くことができます。
以上により (x
P "1 | z1)¼(xn | zn) ® Q,
P ® Q
| メタ定理4 | 前節で与えられた推論規則の全部又は ( 換 ) を含む一部のみを推論規則に持つ理論では、構造に関する推論規則 ( 切 断 ) は導出可能である。すなわちsequent ,P |
実際、メタ定理2とメタ定理3により、,
P ® Qsequent
の仮定は、上段のsequent
の仮定と順序を除いて同じか、それより少ない仮定を持っています。言い換えると、推論するたびに、仮定は減りこそすれ、増えることはありません。
従って、P から、必要なら推論に使わないsequent
をすべて削除することにより、P に現れるすべてのsequent
Φ は、仮定の並べ方の順序を除いて , P ,
Δ¼, P, ® R
このとき、sequent
,
Δ ® R,
P ® Q ® Q
そこで、この主張が Φ より手前のsequent
までは確認できたと仮定します。
まず Φ が推論規則 ( 仮 定 ) を使って得られたものである場合は、R は P であるか、Γ か Δ に現れるかのいずれかです。
ここで R が P のときは、仮定により ® P,
Δ ® P,
Δ ® R
また、R が Γ 又は Δ に現れるときは、推論規則 ( 換 ) と ( 仮 定 ) により ,
Δ ® R
また Φ がsequent
, P ,
S¼, P, Δ, ® R
ここで S が P の場合、仮定により ,
Δ ® R
また、S が Γ か Δ に現れる場合は、( 仮 定 ) を用いることにより ,
Δ ® R
また Φ が推論規則 ( 同 一 ), ( 換 ), ( " 消去), ( $ 導入) 又は論理接続詞に関する推論規則を使って得られたものである場合、Φ は、それより手前にある , P ,
Δ¼, P, ® B, P ,
A¼, P, Δ, ® Bsequent
から当該推論規則を用いて得られます。
従って、,
Δ ® R,
Δ ® B, Δ,
A ® Bsequent
から当該推論規則を用いて得られます。
次に、Φ が Φ より手前の , P ,
Δ¼, P, ® A " 導入) により得られた , P ,
Δ¼, P, ® "xA,
Δ
従って、,
Δ ® R,
Δ ® A " 導入) により導かれます。
最後に、Φ が Φ より手前の , P ,
Δ¼, P, ® $xA, P ,
A¼, P, Δ, ® R $ 消去) により得られた場合、x は前者の仮定にも R にも現れないので、もちろん , Δ,
R
従って、,
Δ ® R,
Δ ® $xA, Δ,
A ® R $ 消去) により導かれます。
以上でメタ定理4は証明されました。
ところで、推論規則 ( 減 ) は、( 仮 定 ) と ( 切 断 ) から導出可能です。
なぜなら、, P,
P ® Q,
P ® Psequent
から ( 切 断 ) により ,
P ® Q
以上の議論により、前節で与えられた推論規則の全部又は ( 仮 定 ), ( 換 ) を含む一部のみを推論規則に持つ理論では、構造に関する他の推論規則はすべて導出可能である(従って推論規則として規定する必要がない)ことがわかります。
今後、(P
Þ Q) Ù (Q Þ P) Û Q Û Q Ù 導入) と ( Ù 消去) により Þ Q Þ P Þ 導入) と ( Þ 消去) により、P と Q の一方から他方が得られることを意味しますから、このとき、P と Q は同値であるといいます。
また、 Þ Q
次の2つのメタ定理は、直観主義論理では、各論理記号の消去規則が導入規則に“共役”な推論規則であることを意味しています(付録2参照)。
| メタ定理5 | 論理記号 このとき、もし P から P' が、Q から Q' がそれぞれ導かれれば、 また、x が自由変数なら、 |
まず Ù Q Ù 消去) により P と Q が得られ、条件により P' と Q' が得られるので、( Ù' 導入) により Ù' Q'
次に Ú Q Ú' 導入) により Ú' Q' Ú' 導入) により Ú' Q' Ú 消去) により Ú' Q'
次に Þ Q Þ 消去) により Q が得られ、条件により Q' が得られるので ( Þ' 導入) により Þ' Q'
次に ^ と仮定すると、( ^ 消去) により ^' が得られます。
次に x を自由変数とし、"xP " 消去) により P が得られ、条件により P' が得られ、( "' 導入) により "' xP'
最後に $xP $' 導入) により $' xP' $ 消去) により $' xP'
このメタ定理5により、特に直観主義論理においては、いくつかの命題を論理記号で結んで作った命題の中に現れる特定の命題を同値な命題で置き換えたものは同値になることがわかります。
| メタ定理6 | 直観主義論理における |
| ( |
( |
|||
| P Q P |
の上段で |
P P |
の P |
すなわち、次に掲げる図式 ( Ù11 ) が、構造に関する推論規則のみによって導出可能であるという主張です。
他の組み合わせについても、論理記号 s の ( s 消去j ) の上段の最初の式を ( s 導入i ) の上段で入れ替えた図式を ( sij ) と書けば、それらの全体は次のようになります(ちなみに導入規則を持たない ^ に対するものはありません):
| ( |
( |
( |
( |
( |
( |
( |
| P Q P |
P Q Q |
P P├ R Q├ R R |
Q P├ R Q├ R R |
P├ Q P Q |
PP |
(T | x)P P├ Q (x¢As, Q )Q |
さて、これらのうち、左から1〜2番目のものは ( 同 一 ) により、左から3〜5番目のものは ( 切 断 ) により導出可能です。
また、右から2番目のものは、仮定を Γ として、sequent
による推論に書きなおせば、
Γ ®PP
Γ®(T | x)
となりますが、¢
Γsequent
は、上段のsequent
の x を T に置き換えたものに他なりません。すなわちこの推論は、構造に関する推論規則 ( 代 入 ) により導出可能です。
最後に一番右のものは、仮定を Γ として、sequent
による推論に書きなおせば、
Γ ®Q(T | x)PP ® Q
Γ,
Γ ®
となりますが、上段の2番目の式に構造に関する推論規則 ( 代 入 ) を用いて x に T を代入すると、¢Γ,
Q, (T | x)
P ® Qsequent
が導出可能であることがわかります。
以上でメタ定理6は証明されました。