数学の基礎


6.順序対と写像

 理論 s と理論 t が与えられたとき、sStT を括弧でくくった文字列 (S, T ) を考え、これを積項とよぶことにし、積項 U(S, T ) の左側の項 S のことを πLU 、右側の項 T のことを πRU と表わすことにすると、明らかに次の性質が成り立ちます。

(6-1a) Ss項、Tt 項ならば、(S, T ) は積項であり、πL(S, T )SπR(S, T )T はそれぞれ同じ記号列である。
(6-1b) U が積項ならば、πLUs 項であり、πRUt 項である。

 もちろん積項は項でも命題でもありませんし、πRπR も正式な記号ではありませんが、もし積項が通常の項のように変数で表すことができて、量化記号が使えたら便利です。
 そこで、前節の冪項の場合と同様に、積項の概念を正式にとみなすように形式化してみましょう。すなわち2変項関数記号 ( ·, · ) と1変項関数記号 πLπR と1変項述語記号 s´t を新規に追加して、U が積項であるという概念を s´t(U )形式化し、更に (6-1) も推論規則の形に形式化することにします。すなわち

( s´t 導入) s(S )
t(T )
—————
s´t((S, T ))
( πL 導入) s(S )
t(T )
——————
πL(S, T )
º S
( πR 導入) s(S )
t(T )
——————
πR(S, T )
º T
( s´t 消去) s´t(U )
————
sLU )
s´t(U )
————
tRU )

を推論規則として追加します。
 この場合も s´t(T ) は項 T が「積項」という“実体を持った項”であることを意味しているので、1変項述語記号 s´t は新たな存在述語記号になっています。従って、理論 s´t というものを考えることができますが、これを理論 s と理論 t積理論とよび、s´t 項のことを順序対とよび、順序対 U に対する πLUU左成分 πR UU右成分といいます。すなわち積項の概念を形式化したものが順序対です。

 2つの順序対 xy に対し、πLx º πLy  Ù  πR x º πR y のことを x =p y あるいは紛れのない場合は単に x = y と書けば、明らかにこれは順序対間の同値関係になります。これを順序対の相等とよぶことにします。
 この = を用いると、( πL 導入) と ( πR 導入) により、任意の順序対 zsxty に対して z = (x, y)  Û  ( x º πLz  Ù  y º πRz ) ですから

(6-2)  "s´t z $!s x $!t y : z = (x, y)

が成り立ち、また

(6-3)  (x, y) º (u, v)  Û  ( x º u  Ù  y º v )

が成り立ちます(ただし $!t xP$!x ( t(x)  Ù  P ) を意味します)。そこで、$s x $t y : T º (x, y) のことを 't(T ) と書けば、

(6-4a)  't(z)  Þ  s´t(z)

(6-4b)  "s´t z $!'t w : z = w

(6-4c)  "'t z $!s x $!t y : z º (x, y)

が成り立ち、従って 't のことを改めて s´t と書けば、これも上記の推論規則群を満たし、更に (6-2) のかわりに

(6-5)  "s´t z $!s x $!t y : z º (x, y)

すなわち任意の順序対は (x, y) と一意的に書けることになります。以下、こちらの方が便利なので、順序ついについては (6-5) が成り立つと仮定することにします。

 なお、3つ組 (x, y, z) を、順序対の順序対によって (x, ( y, z)) で定義することができ、4つ組やそれ以上についても同様にして定義できます。

 さて、前節で解説した集合論においては、わざわざ上記のような理論の拡大を行わなくても、上記の推論規則を満たす順序対関係の諸関数を、集合論の概念だけを使って構成することができます。
 実際、理論 (sÚt)** において、

(6-6a)  (x, y)  :º  {{x}, {x, y}}

(6-6b)  s´t(z)  :º  $s x $t y : z º (x, y)

(6-6c)  πLz  :º  εs x ( $t y : z º (x, y) )

(6-6d)  πRz  :º  εt x ( $s y : z º (x, y) )

と置きます。ただし、簡便のため、集合も、集合の集合も同じ記号で表しています。
 これらが ( s´t 導入) を満たすことは定義から明かですが、残りの ( πL 導入) , ( πR 導入) , ( s´t 消去) を満たすことを示すには、(a, b) = (x, y) なら a º x かつ b º y であること、すなわち

(6-7)  {{a}, {a, b}} = {{x}, {x, y}}  Þ  ( a º x  Ù  b º y )

が成り立つことを証明すれば十分です。そこで左辺を仮定し、場合分けを考えれば、

(6-8a)  {a} = {x}  Ù  {a, b} = {x, y}

(6-8b)  {a} = {x, y}  Ù  {a, b} = {x}

(6-8c)  {a} = {x} = {a, b} = {x, y}

のいずれかが成り立つことがわかります。そこでこれらを更に場合分けすれば、それぞれ

(6-9a)  a º x  Ù  ( ( a º x  Ù  b º y )  Ú  ( a º y  Ù  b º x )  Ú  ( a º y º b º x ) )

(6-9b)  a º x º y  Ù  a º b º x

(6-9c)  a º x º b º y

となるので、いずれにせよ (6-7) の右辺が成り立ちます。

 さて、以下しばらく理論 s と理論 t の積理論 s´t 上の集合論 (s´t)* を考えます。
 命題 R と変数 x , y が与えられた場合、R は変数 xy の間の2項関係を表しています。そこで R に現れず、x とも y とも異なる変数 z を選んで

(6-10)  R { (x, y) | R } { z | $s x $t y ( z º (x, y)  Ù  R ) }

と置いて、R と相当な集合を、xy の2項関係 Rグラフといいます。
 逆に、順序対からなる集合 R が与えられれば、変数 xy の関係 (x, y)ÎR は、R と相等な集合をグラフに持つ2項関係です。
 そこで、以下、順序対からなる集合のことを、その集合をグラフに持つ2項関係と同一視することにします。

 さて、R(s´t)* の2項関係とします。このとき (t´s)* の2項関係 R-1

(6-11)  R-1{ ( y, x) | (x, y)ÎR }

で定義して、これを R逆関係といいます。明らかに

(6-12)  (R-1 )-1 = R

が成り立ちます。また、理論 r に対する (r´s)* の2項関係 Q に対して、(r´t)* の2項関係 R ° Q

(6-13)  R ° Q{ (x, z) | $s y ( (x, y)ÎQ Ù ( y, z)ÎR )}

で定義し、これを2項関係 QR合成関係といいます。明らかに

(6-14)  (R ° Q)-1 = Q-1 ° R-1

が成り立ちます。また、理論 p に対する (p´r)* の2項関係 P に対して

(6-15)  R ° (Q ° P) = (R ° Q) ° P

が成り立つこともわかります。また、一般に (t´t)* の2項関係を

(6-16)  Dt { (x, x) | t(x) }

で定義し、これを理論 t対角関係とよびます。このとき明らかに

(6-17)  Dt ° R = R ° Ds = R

が成り立ちます。

 次に、理論 s 上の集合 A と、(s´t)* の2項関係 R に対し、理論 t 上の集合 R[A]

(6-18)  R[A] { y | $s x ( xÎA  Ù  (x, y)ÎR )}

で定義します。明らかに理論 s 上の空集合 Æ と集合 A , B に対して

(6-19a)  R[Æ] = Æ

(6-19b)  R[A] Ì [t]

(6-19c)  A Ì B  Þ  R[A] Ì R[B]

が成り立ちますが、(6-19c) により特に、R[AÇB] Ì R[A]R[AÇB] Ì R[B] が導かれるので

(6-20a)  R[AÇB] Ì R[A]ÇR[B]

が成り立ちます(古典論理であっても Ì= になるとは限りません)。一方、

(6-20b)  R[AÈB] = { y | $s x (( xÎA Ú xÎB ) Ù (x, y)ÎR )}

= { y | $s x (( xÎA Ù (x, y)ÎR ) Ú ( xÎB Ù (x, y)ÎR ))}

= { y | $s x ( xÎA Ù (x, y)ÎR ) Ú $s x ( xÎB Ù (x, y)ÎR ))}

= R[A]ÈR[B]

が成り立ちます。
 次に、yÎR[B] \ R[A] と仮定すると、ある xÎB に対して (x, y)ÎR となりますが、ここで xÎA と仮定すると yÎR[A] となって矛盾するので xÏA すなわち xÎB \ A が得られます。ゆえに

(6-20c)  R[B] \ R[A] Ì R[B \ A]

が得られます。
 また、理論 s 上の集合族 Ai ( I ) に対し、各 I に対して ÇI Ai Ì Ak ですから、(6-19c) により R[ÇI Ai ] Ì R[Ak ] となるので

(6-21a)  R[ÇI Ai ] Ì ÇI R[Ai ]

が成り立ちます(これも、古典論理であっても Ì= になるとは限りません)。一方、

(6-21b)  R[ÈI Ai ] = { y | $s x ( $i ( I Ù xÎAi ) Ù (x, y)ÎR )}

= { y | $s x $i ( I Ù xÎAi Ù (x, y)ÎR )}

= { y | $i $s x ( I Ù xÎAi Ù (x, y)ÎR )}

= { y | $i ( I Ù $s x ( xÎAi Ù (x, y)ÎR ))}

= { y | $i ( I Ù yÎR[Ai ] )}

= ÈI R[Ai ]

が成り立ちます。また、理論 r 上の集合 A に対して

(6-22)  (R ° Q)[A] = { z | $r x ( xÎA Ù $s y ( (x, y)ÎQ Ù ( y, z)ÎR )}

= { z | $r x $s y ( xÎA Ù (x, y)ÎQ Ù ( y, z)ÎR )}

= { z | $s y $r x ( ( y, z)ÎR Ù xÎA Ù (x, y)ÎQ )}

= { z | $s y ( ( y, z)ÎR Ù $r x ( xÎA Ù (x, y)ÎQ ))}

= { z | $s y ( ( y, z)ÎR Ù yÎQ[A] )}

= R[Q[A]]

が成り立ちます。また、

(6-23a)  R(R) { y | $s x : (x, y)ÎR } = R[[s]]

(6-23b)  D(R) { x | $t y : (x, y)ÎR } = R-1[[t]]

と置いて、それぞれ R値域および定義域といいます。

 さて、理論 s に対し、(s´s)* 上の2項関係 E に対する3種類の条件:

(6-24a)  Ds Ì E

(6-24b)  E-1 Ì E

(6-24c)  E ° E Ì E

を考え、順に反射律対称律推移律といいます。(6-24b) の両辺の逆関係を取れば、(6-12) により E Ì E-1 となるので、対称律は

(6-24b)'  E-1 = E

と同値です。また、E反射律を満たすときは、(6-17) により E = E ° Ds Ì E ° E が成り立ちますから、推移律は

(6-24c)'  E ° E = E

と同値になります。
 反射律と推移律を満たす2項関係を理論 s 上の擬順序といい、更に対称律も満たす場合同値関係といいます。
 E が擬順序なら、明らかに EÇE-1 は同値関係になりますが、これを擬順序 E に伴う同値関係といいます。擬順序 E は、EÇE-1 Ì Ds を満たすとき、単に順序とよびます(ただし、本稿のような構成主義数学ではこれはあまり重要な概念ではありません)。

 理論 s 上の集合 A は、理論 s 上の同値関係 E に対して

(6-25)  E[A] Ì A

を満たすとき同値関係 E両立するといいます。また、(s´t)* 上の2項関係 R は、理論 s 上の同値関係 E に対して

(6-26a)  R ° E Ì R

を満たすとき同値関係 E両立するといい、理論 t 上の同値関係 F に対して

(6-26b)  F ° R Ì R

を満たすとき同値関係 F両立するといいます。
 また、(s´t)* 上の2項関係 R は、理論 s 上の同値関係 E と理論 t 上の同値関係 F に対して

(6-27a)  R ° E ° R-1 Ì F

すなわち ( (x, y), (x', y' )ÎR  Ù  (x, x' )ÎE )  Þ  ( y, y' )ÎF が成り立つとき、R は同値関係 EF に対して一価であるといいます。
 逆に R-1 が同値関係 FE に対して一価、すなわち

(6-27b)  R-1 ° F ° R Ì E

が成り立つとき、R は同値関係 EF に対して逆一価であるといいます。

 D , E , F をそれぞれ理論 r , s , t 上の同値関係とします。
 このとき、Q(r´s)* 上の一価関係、R(s´t)* 上の一価関係とすれば、

(6-28)  (R ° Q) ° D ° (R ° Q)-1 = R ° Q ° D ° Q-1 ° R-1 Ì R ° E ° R-1 Ì F

が成り立ちますから R ° Q も一価関係です。
 同様に、Q(r´s)* 上の逆一価関係、R(s´t)* 上の逆一価関係とすれば、R ° Q も逆一価関係です。

 次に、(s´t)* 上の2項関係 R を理論 s 上の同値関係 E と等号 º に対する逆一価関係とし、A , B を、その少なくとも一方が E と両立するような理論 s 上の集合とします。
 このとき yÎR[A]Ç R[B] ならば xÎAx'ÎB が存在して (x, y), (x', y)ÎR となりますが、R が逆一価であることから (x, x' )ÎE となり、AE と両立すれば x'ÎAÇB が、BE と両立すれば xÎAÇB が成り立つので、いずれにせよ yÎR[AÇB] となります。したがって、これと (6-20a) により

(6-29)  R[AÇB] = R[A]Ç R[B]

が成り立ちます。

 次に、AE と両立すると仮定します。このとき任意の yÎR[B \ A] に対して xÎB \ A が存在して (x, y)ÎR となりますが、yÎR[A] と仮定すると zÎA が存在して (z, y)ÎR となりますが、R が逆一価なので (x, z)ÎE となり、AE と両立することから xÎA となって矛盾します。ゆえに、yÎR[B] \ R[A] がわかり、これと (6-20c) により

(6-30)  R[B] \ R[A] = R[B \ A]

が成り立つことがわかります。

 次に、理論 s 上の集合族 Ai ( I ) の各 AiE 及び º と両立するとします。
 このとき、任意の yÎR(R)Ç ÇI R[Ai ] に対して (x, y)ÎR となる xÎ[s] をとると、各 I に対して (xi , y)ÎR となる xiÎAi が存在しますが、R が逆一価なので (x, xi )ÎE となり、AiE と両立するので xÎAi となります。ゆえに yÎR[ÇI Ai ] となり、これと (6-21a) により

(6-31)  R[ÇI Ai ] = R(R)Ç ÇI R[Ai ]

が成り立ちます。特に I が元を持てば、ある I に対して ÇI R[Ai ] Ì R[Ak ] Ì R(R) ですから

(6-31)'  R[ÇI Ai ] = ÇI R[Ai ]

が成り立ちます。

 さて、理論 t 上の同値関係 F と両立する (s´t)* 上の2項関係 R に対して F Ì R ° R-1[t] Ì R(R) と同値なので、R ° R-1 = FR(R) = [t] かつ R が等号 ºF に関して一価であることと同値です。このとき F と両立する理論 t 上の任意の集合 B に対し、(6-22) により

(6-32a)  R[R-1[B]] = B

が成り立ちます。
 同様に、理論 s 上の同値関係 E と両立する (s´t)* 上の2項関係 RE と等号 º に関して逆一価であることは R-1 ° R = E と表現でき、このとき E と両立する理論 s 上の任意の集合 A に対して

(6-32b)  R-1[R[A]] = A

が成り立ちます。

 また、関係 R の理論 s 上の集合 A への制限

(6-33)  R|A { z | zÎR  Ù  πR zÎA }

で定義します。このとき明らかに

(6-34)  R|A[B] = R[AÇB]

が成り立ちます。

 さて、次に数学の議論において集合の概念と同様に重要な写像の概念について考察します。

 理論 s と理論 t が与えられ、x を変数、Txs 項であるとき t 項であるような項とするとき、新しい文字 |® を導入して文字列 |®T を作り、冒頭の |®T の中に出てくる x をすべて鎖で結び、x のところを文字 £ で一斉に置き換えて得られる文字列を x |®T と表すことにしましょう。
 これはもちろん命題でも項でもありませんが、もし |® が項型量化記号であったとすれば項になります。そこで、このような文字列を便宜的に配置項とよぶことにしましょう。
 また、F を配置項、Ss 項とするとき、F の冒頭の文字 |® とそれに繋がれていた鎖を除去し、これらの鎖で繋がれていた £S で置き換えて得られる文字列のことを F(S) と表すことにすれば、明らかに次の性質が成り立ちます:

(6-35a) x が変数で、これが s 項のとき Tt 項ならば、x |®T は配置項である。
(6-35b) Ss 項で、変数 xs 項のとき Tt 項ならば、(x |®T )(S)(S | x)T は同一の項である。

 そこで、冪項のときと全く同様に、本来の対象である s 項や t 項とは別に、配置項を新しい種類のに“昇格”させるため、理論 t に、新規に引数が項の項型量化記号 |® と、2変項関数記号 · ( · ) と、1変項述語記号 ts を追加して、F が配置項であるという概念を ts(F )形式化し、更に (6-35) も推論規則の形に形式化することにします。すなわち

( ts 導入) s(x)t(T )
—————–
ts(x |® T )
( x¢As )
( |® 導入) s(x)t(T )
s(S)
—————————–
(x |®T )(S) º (S | x)
T
( x¢As )

を推論規則に追加します。( ts 導入) が (6-35a) を、( |® 導入) が (6-35b)形式化したものです。
 この場合も ts(F ) は項 F が「配置項」という“実体を持った項”であることを意味しているので、1変項述語記号 ts は新たな存在述語記号になっています。従って、理論 ts というものを考えることができますが、これを理論 s と理論 t配置理論とよび、ts 項のことを(理論 s から理論 t への)写像といい、x |®TxT を対応させる写像と読み、F(S) のことを 写像 FS における値と読みます。
 すなわち配置項を項として形式化した概念を写像とよぼう、というわけです。
 ちなみに、「命題」と「冪項」と「集合」の関係と、「項」と「配置項」と「写像」の関係が全くパラレルであることは明らかでしょう。

 さて、順序対の場合と同様に、集合論においては、わざわざ上記のような理論の拡大を行わなくても、上記の推論規則を満たす写像関係の諸記号を、集合論の概念だけを使って構成することができます。
 実際、s 項と t 項からなる順序対は (sÚt)** 項ですから、それらの集合である2項関係は (sÚt)*** 項として定義することができます。
 そこで2項関係 R のうち、D(R) = [s] で等号と等号に関して一価、すなわち "s x : $!t y : (x, y)ÎR が成り立つようなものを写像とよんで、R が写像であることを ts(R) と書くことにし、

(6-36a)  x |® T  :º  { z | $s x ( t(T )  Ù  z º (x, T ) )}

(6-36b)  F(S)  :º  εt y( (S, y)ÎF )

と置けば、これらは上記の推論規則を満たします。
 実際、( ts 導入) の上段が成り立てば、項 x |® TF と書いて s(x) と仮定すると、t(T ) が成り立つので (x, T )s 項と t 項からなる順序対です。ゆえに (x, T )ÎF となって、D(F ) = [s] がわかります。また、(x, y)ÎF と仮定すると y º T が得られるので、これは ts(F ) が成り立つことを意味しています。
 次に ( |® 導入) の上段を仮定します。(6-36b) から (S, F(S))ÎF が得られますが、この Fx |® T を代入すれば、sx が存在して t(T ) が成り立ち、(S, F(S)) = (x, T ) となりますが、これは S º xF(S) º T を意味し、( º 消去) により F(S) º (S | x)T が得られ、これは ( |® 導入) の下段に他なりません。

 さて、理論 s から理論 t への写像 f に対し、(s´t)* 上の2項関係 G( f )

(6-37)  G( f ) { z | $s x : z º (x, f(x)) }

で定義して、これを写像 fグラフといいます。写像のグラフは、明らかに等号と等号に関して一価で、定義域は [s] です。
 逆に、(s´t)* 上の2項関係 R で、等号と等号に関して一価かつ定義域が [s] であるようなものが与えられたとき、写像 fR

(6-38)  fR x |® εt y( (x, y)ÎR )

で定義すれば、明らかに

(6-39)  G( fR ) = R

が成り立ちます。
 また、理論 s から理論 t への写像 f , g に対して "σ x  f(x) º g(x) のことを f =f g あるいは紛れがなければ f = g と書いて写像の相等とよべば、

(6-40)  f G( f ) = f

及び

(6-41)   f =f g  Û  G( f ) =s G(g)

が成り立ちます。

 このように、理論 s から理論 t への写像と、(s´t)* 上の2項関係 R で、等号と等号に関して一価かつ定義域が [s] であるようなものは同一視できるわけですが、(s´t)* 上の2項関係 R は、任意の sx に対して R[{x}] が唯一つの元からなるとき、そのときに限り写像 f のグラフになり、その元が f(x) になります。
 従って、理論 r から理論 s への写像 g と、理論 s から理論 t への写像 f が与えられたとき、rx に対して f(g(x)) を対応させる写像のことを gf合成写像とよべば、(6-22) により、この合成写像のグラフはそれぞれのグラフを合成したものになります。そこで、この合成写像も f ° g と書くことにすれば、

(6-42)  ( f ° g)(x) = f(g(x))

(6-43)  G( f ° g) = G( f ) ° G(g)

が成り立つことになります。また、写像 f定義域値域を、それぞれ

(6-44a)  D( f ) D(G( f ))

(6-44b)  R( f ) º R(G( f ))

で定義します。また、理論 s から理論 t への写像 f と、理論 s 上の集合 A と、理論 t 上の集合 B に対し、

(6-45a)  f [A] º G( f )[A]

(6-45b)  f -1[B] º G( f )-1[B]

と置けば、特に

(6-46a)   f [[s]] = R( f )

(6-46b)   f -1[[t]] = D( f ) = [s]

が成り立ちます。
 また、理論 s 上の集合 A に対し、x に関する1変項述語 xÎAsA と書けば、f のグラフの A への制限は、明らかに理論 sA から理論 t への写像になります。ゆえにこの写像を f |A と書けば、

(6-47)  G( f |A ) = G( f )|A

が成り立ちます。
 理論 s から理論 t への写像は、そのグラフが等号と等号に関して逆一価のとき一対一写像、値域が [t] と相等なとき上への写像といいます。写像に対しても、既に証明した一価関係に対する性質がすべて成立します。
 たとえば、f を理論 s から理論 t への写像、AA' を理論 s 上の集合、Ai ( I ) を理論 s 上の集合からなる集合族、BB' を理論 t 上の集合、Bi ( J ) を理論 t 上の集合からなる集合族とし、G( f )G( f )-1 にそれぞれ (6-20b),(6-21b) を適用すれば、

(6-48a)   f [AÈA' ] =  f [A]È f [A' ]

(6-48b)   f [ÈI Ai ] = ÈI f [Ai ]

(6-48c)   f -1[BÈB' ] =  f -1[B]È f -1[B' ]

(6-48d)   f -1[ÈJ Bi ] = ÈJ f -1[Bi ]

 また、G( f )-1(6-29),(6-30),(6-31) を適用して (6-46b) を用いれば、

(6-49a)   f -1[BÇB' ] =  f -1[B]Ç f -1[B' ]

(6-49b)   f -1[B' \ B] = f -1[B' ] \  f -1[B]

(6-49c)   f -1[ÇJ Bi ] = [s]Ç ÇJ f -1[Bi ]

が得られ、特に (6-49b)B'[t] を代入し、(6-49c)I が元を持つ場合を考えれば

(6-50a)   f -1[[t] \ B] = [s] \  f -1[B]

(6-50b)   f -1[ÇJ Bi ] = ÇJ f -1[Bi ]       ( I ¹ Æ )

 また、G( f )(6-20a),(6-20c),(6-21a) を適用すれば

(6-51a)   f [AÇA' ] Ì  f [A]Ç f [A' ]

(6-51b)   f [A' ] \  f [A] Ì  f [A' \ A]

(6-51c)   f [ÇI Ai ] Ì ÇI f [Ai ]

 特に f一対一のときは、G( f )(6-29),(6-30),(6-31) を適用して (6-46a) を用いれば、

(6-52a)   f [AÇA' ] =  f [A]Ç f [A' ]

(6-52b)   f [A' ] \  f [A] =  f [A' \ A]

(6-52c)   f [ÇI Ai ] = R( f )Ç ÇI f [Ai ]

が得られ、特に (6-52b)A'[s] を代入し、(6-52c)I が元を持つ場合を考えれば

(6-53a)  R( f ) \  f [A] =  f [[s] \ A]

(6-53b)   f [ÇI Ai ] = ÇI f [Ai ]       ( I ¹ Æ )

が得られます。

 さて、理論 s と理論 t 上の順序対、2項関係、写像の各概念は、理論 sÚt 上の階層理論における概念として実現できますから、s 項をすべて元に持つ集合と t 項をすべて元に持つ集合が存在するような再帰的集合論においてもこれらの諸概念は実現できます。
 このとき、分出公理により s 項全体からなる集合 At 項全体からなる集合 B が存在しますが、このとき一般に

(6-54a)  {a, b}C { xÎC | x º a  Ú  x º b }

(6-54b)  {a}C {a, a}C

と略記して、s 項と t 項からなる順序対を

(6-55)  (a, b) {{a}AÈB , {a, b}AÈB }P (AÈB)

で定義すれば、これらはすべて集合 P (P (AÈB)) の元になります。ゆえに s´t 項の全体からなる集合が存在するので、これを AB の積集合とよんで A ´ B と書き、f が理論 s から理論 t への写像であることを集合 A から集合 B への写像であるといい、f : A ® B と表します。

 また、集合 A に対し、xÎAx を対応させる A からそれ自身への写像を A恒等写像といい、idA と書きます。明らかに、この写像のグラフは A対角集合

(6-56)  DA { (x, x) | xÎA } { zÎA ´ A | πL(z) º πR(z) }

と相等です。

 さて、集合の積と写像を組み合わせて、積集合 A ´ B から集合 C への写像 f を考えると、これは実質的に、A の元 xB の元 y に対して C の元 f((x, y)) を対応させる2変数の写像になります。そこで、このような場合、二重括弧を使わず f(x, y) のように表記します。
 また、この2変数の写像は、各 xÎA に対し、「各 yÎBf(x, y)ÎC を対応させる写像 f(x, · ) 」を対応させる写像とみなすこともできます。
 変数の個数がもっと多い多変数の写像の場合でも同様です。

 また、集合論では、積理論 s´ts´t 項が (sÚt)** 項として実現でき、2項関係や写像は、そのグラフとして (s´t)* 項、すなわち (sÚt)*** 項として実現できるので、再帰的集合論では P (P ( P (AÈB))) の元として表現できることがわかります。多変数の写像についても同様です。

 一方、理論 r 自体がある理論 t 上の再帰的集合論である場合は、理論 r における順序対をそれ自身の中で r 項として定義することができるので、理論 r 上の2項関係や写像のグラフ、及びそれらの定義域や値域等は、r* 項、すなわちとして定義することができます。同様に、2つの類の積も類として定義することができます。
 この場合、類 A , B が共に集合なら、それぞれと“元”が共通な集合を a , b とすれば、AB の積を

(6-57)  A ´ B { {{x}aÈb , {x, y}aÈb }P (aÈb) | xÎa  Ù  yÎb } Ì { z | zÎP (P (aÈb)) }

と定義し直すことができ、この再定義のもとで、A ´ B も集合になります。
 逆に、2項関係 R が集合なら、それと“元”が共通な集合を r とすれば

(6-58a)  D(R) = { x | $t' y : {{x}, {x, y}}Îr } Ì { z | zÎÈÈr }

(6-58b)  R(R) = {  y | $t' x : {{x}, {x, y}}Îr } Ì { z | zÎÈÈr }

となるので、その定義域も値域も集合です。

 ところで、添字集合 I に対する集合族の概念を一般化して、集合とは限らない Ti ( I ) というものを考えることができますが、これは各 I に対して数学的対象 Ti を対応させる写像のことであるとみなすことができるので、今後は集合 I 上の写像のことも添字集合 I 上の族とよんで、この族を ( Ti )I と書くことにします。特にその値がすべて集合(写像)であるような族を集合族写像族)といいます。
 従って、再帰的集合論において、集合族が集合であるとは、それを写像とみなしたときの値 Ai をすべて元に持つ集合が存在することを意味します。これは、分出公理により、この写像の値域となるような集合の存在と同値ですが、この集合を { Ai | I } と書くことにします。
 この場合、各 I に対して Ai の元 ai を対応させる族 ( ai )I を考えることができますが、この写像の値域は和集合 È{ Ai | I } に含まれ、従って、この ( ai )I も集合として表現することができます。このような ( ai )I選択写像といい、( aiÎAi )I とも書くことにします。

 なお、理論 t'* において、各 ait' 項であるような族 ( ai )I は、I が有限集合なら有限集合です。
 実際、( ai )I が有限集合であるような集合 I の全体からなる類を A と書くと、

(6-59a)  ( ai )iÎÆ = Æ

(6-59b)  ( ai )I È{k} = ( ai )I È{(k, ak )}

が成り立つので、A(5-25) を満たすことがわかり、従ってすべての有限集合は A に属すからです。
 従って特に、有限集合を定義域とする写像の像も有限集合です。

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