数学の基礎


8.集合の圏

 本節では、具体的な圏の例として、任意に与えられた理論 t 上の再帰的集合論 t' 上の集合論 t'* における集合の圏について考察します。

 集合のことを対象とよび、集合 A から集合 B への写像を A から B へのとよべば、これは一つの圏になりますが、本稿で前提としている集合論には、通常の数学における外延性公理に相当するものが無いため、この圏には余完備性が成り立たないという欠点があります。そこで、この欠点を補うため、以下のような工夫をします。

 集合 AA 上の同値関係 E の組 (A, E) のことを対象とよび、対象 (A, E)(B, F) に対し、A から B への写像 f のうち、それぞれの同値関係と両立する、すなわち

(8-1)  (x, y)ÎE  Þ  ( f(x), f( y))ÎF

を満たすものを (A, E) から (B, F) へのと呼び、(A, E) から (B, F) への射 f , g の間の同値関係 =

(8-2)  f = g  :º  "xÎA : ( f(x), g(x))ÎF

で定義し、合成射を合成写像で定義すれば、これは一つの圏を定めます。これを集合の圏とよんで (Set) と書くことにします。
 また、集合の圏の対象のことを同値関係を持つ集合、射のことを構成主義数学の創始者 Bishop に従って関数とよぶことにし、f が同値関係を持つ集合 X から Y への関数であることを、f : X ® Y とも書くことにします。

 なお、記法の簡略化のため、同値関係を持つ集合 (A, E) のことを単に A と略記したり、同値関係 E を単に = と書いて、(x, y)ÎE のかわりに x = y と書いたりすることがあります。

 さて、d を集合の圏の (D)-図式とし、vÎOD に対して d(v) º (Av , =v ) と書きます。
 このとき、対象 d(v) から、Æ のみからなる集合 pt と等号 º の対として定義される対象 ( pt, º) への射の集合を考えれば、図式の定義により、集合 S が存在して、すべての vÎOD に対して

(8-3)  {{ {{a}, {a, Æ}} | aÎAv }} = {{ (a, Æ) | aÎAv }} = { Av ´ pt } = HSet(d(v), ( pt, =pt )) Ì S

が成り立ちます。ゆえに集合 ÈÈÈSA と書けば

(8-4)  "vÎOD : Av Ì A

が成り立ちます。

 さて、任意の選択写像 ( xvÎAv )vÎOD は、それをグラフと同一視したとき集合 OD ´ A に含まれるので、その冪集合 P (OD ´ A) には、すべての選択写像に対してそれと相等なある集合が属します。ゆえに分出公理により、この冪集合の元のうち、選択写像だけを集めた集合 P が存在します。
 そこで、各選択写像 x( xvÎAv )vÎOD に対して x(v) º xvÎAv であることに注意して

(8-5)  L { xÎP  |  "u, vÎOD : "iÎHD(u, v) : i(x(u)) =v x(v) }

と置き、L 上の2項関係 =

(8-6)  x = y  :º  "vÎOD : x(v) =v y(v)

で定義し、各 vÎOD に対し、L から Av への標準写像 pv

(8-7)  pvx |® x(v)

で定義します。このとき (L, =)(pv )vÎOD の組は、集合の圏における d の極限になることを証明しましょう。

 実際、まず明らかに (8-6) で定義される = は同値関係です。
 また、x, yÎLx = y を満たせば pv(x) º x(v) =v y(v) º pv( y) ですから pvL から Av への関数です。
 また、任意の u, vÎODHD(u, v)xÎL に対し、i(pu(x)) º i(x(u)) =v x(v) º pv(x) つまり i ° pu = pv が成り立ちます。
 次に、同値関係を持つ集合 (B, =B ) と、関数族 ( jv : B ® Av )vÎOD で、任意の u, vÎODHD(u, v) に対して i ° ju = jv を満たすものが与えられたとすると、任意の zÎB に対し、P の定義により

(8-8)  "vÎOD : x(v) º jv(z)

を満たす xÎP が存在します。
 このとき、任意の HD(u, v) に対して i(x(u)) º i(ju(z)) =v jv(z) º x(v) ですから xÎL がわかります。そこで、z にこのような x の一つを対応させる写像を y と置きます。すなわち

(8-9)  "vÎOD : y(z)(v) º jv(z)

 このとき、z, z'ÎBz =B z' を満たせば、各 vÎOv に対して、jv が関数であることから、(8-9) により y(z)(v) º jv(z) =v jv(z' ) º y(z' )(v) が成り立ち、これは (8-6) により y(z) = y(z' ) が成り立つことを意味しますから、y(B, =B ) から (L, =) への関数です。
 また、任意の zÎBvÎOD に対し、(8-7)(8-9) により pv(y(z)) º y(z)(v) º jv(z) すなわち pv ° y = jv が得られます。
 また y'pv ° y' = jv を満たす (B, =B ) から (L, =) への関数なら、任意の zÎBvÎOD に対し、y'(z)(v) º pv(y'(z)) =v jv(z) =v pv(y(z)) º y(z)(v) すなわち y'(z) = y(z) となるので、y' = y すなわち射の一意性も示され、(L, =)(pv )vÎOD の組は d の極限であることが証明されました。
 以上により、集合の圏は完備であることがわかりました。

 また、OD = Æ の場合、OD ´ A = Æ なので Æ が唯一の選択写像になります。ゆえに P = {Æ} が、従って L = {Æ} が得られ、集合の圏では終対象は1点からなる集合であることがわかります。

 なお、上記の構成において、特に d の極限がのときは、(8-5)L は選択写像の全体 P に他ならず、更に対象 AIAI は、I を等号を同値関係に持つ集合とみなしたときの、関数の相等 (8-2) を同値関係に持つ、関数 f : I ® A 全体の集合に他なりません。

 次に、同じ図式 d に対し、OD ´ A の部分集合 C

(8-10)  C { (v, a) | vÎOD , aÎAv }

と置きます。次に C 上の同値関係 R のうち、(x, h)ÎR のことを x =R h と書くことにして、条件:

(8-11a)  "vÎOD : "x, yÎAv : ( x =v y  Þ  (v, x) =R (v, y) )

(8-11b)  "u, vÎOD : "iÎHD(v, u) : "xÎAv : (u, i(x)) =R (v, x)

を共に満たすもの全体からなる類を E と書くとき、C 上の2項関係 =

(8-12)  x = h  :º  "RÎE : x =R h

で定義し、各 vÎOD に対し、Av から C への標準写像 iv

(8-13)  ivx |® (v, x)

で定義します。このとき (C, =)(iv )vÎOD の組は、集合の圏における d の余極限になることを証明しましょう。

 実際、(8-13)= は、各 R が同値関係なので同値関係であることがわかります。
 また、x, yÎAvx =v y を満たせば、任意の RÎE に対して iv(x) º (v, x) =R (v, y) º iv( y) ですから iv(x) = iv( y) となり、iv(Av , =v ) から (C, =) への関数であることがわかります。
 また、任意の u, vÎODHD(v, u)xÎAvRÎE に対して iu( i(x)) º (u, i(x)) =R (v, x) º iv(x) ですから iu( i(x)) = iv(x) となり、iu ° i = iv が成り立つことがわかります。
 また、同値関係を持つ集合 (B, =B ) と、関数族 ( jv : Av ® B )vÎOD で、任意の u, vÎODHD(v, u) に対して ju ° i = jv を満たすものが与えられたとすると、各 xÎAv に対して

(8-14)  ju( i(x)) =B jv(x)

が成り立ちます。一方、各 (v, x)ÎC に対し、xÎAv ですから jv(x)ÎB となるので、(v, x)ÎCjv(x) を対応させる写像 y : C ® B を考えることができます。そこで、C 上の2項関係 =R

(8-15)  (u, x) =R (v, y)  :º  ju(x) =B jv( y)   ( Û  y(u, x) =B y(v, y) )

で定義すると、これは明らかに C 上の同値関係です。
 一方、任意の vÎODx =v y であるような任意の x, yÎAv に対し、jv は関数なので jv(x) =B jv( y) となるので、(8-15) により (v, x) =R (v, y) が得られます。
 他方、任意の u, vÎODiÎHD(v, u)xÎAv に対し、(8-14)(8-15) により (u, i(x)) =R (v, x) が成り立ちます。
 これは、同値関係 R(8-11) を満たす、すなわち E の元であることを意味していますから、(8-12) により、任意の x, C に対し、x = h Þ x =R h が成り立ちます。
 ところが (8-15) により x =R hy(x) =B y(h) を意味しますから、これは y(C, =) から (B, =B ) への関数であることを意味しています。
 また、vÎODxÎAv に対して y(iv(x)) º y(v, x) º jv(x) ですから y ° iv = jv が成り立ちます。
 また y'y' ° iv = jv を満たす (C, =) から (B, =B ) への関数なら、任意の vÎODxÎAv に対し、y'(v, x) º y'(iv(x)) =B jv(x) =B y(iv(x))) º y(v, x) ですから y' = y すなわち射の一意性も示され、(C, =)(iv )vÎOD の組は d の余極限であることが証明されました。
 以上により、集合の圏は余完備でもあることがわかりました。

 また、OD = Æ の場合の余極限を求めると、C = Æ となりますから、集合の圏における始対象は空集合であることがわかります。

 さて、以上で集合の圏における極限と余極限の作り方を一般的に解説しましたが、次に具体的な図式に対する(余)極限を、別の形で構成してみましょう。

 最初は同値関係を持つ集合 (A, =A )(B, =B )です。

(8-16a)  PA ´ B

と置き、P 上の2項関係 =P

(8-16b)  (x, y) =P (x', y' )  :º  ( x =A x'  Ù  y =B  y' )

で定義し、P から A への写像 pLC から B への写像 pR

(8-16c)  pL (x, y) |® x

(8-16d)  pR (x, y) |® y

で定義すれば、PpL , pR の組は (A, =A )(B, =B ) の積になります。
 実際、(8-16b)~(8-16d) により、pLpR は共に関数です。
 また、任意の (C, =C ) と、(C, =C ) から (A, =A ) への関数 j と、(C, =C ) から (B, =B ) への関数 y に対し、(C, =C ) から (P, =P ) への写像 c

(8-17)  c :º z |® (j(z), y(z))

で定義すると、jy が関数であることと (8-16b) により、c は関数であることがわかります。しかも pL(c(z)) º j(z) により pL ° c = j が得られ、同様に pR ° c = y が得られます。
 逆に、この c と同じ関係を満たす関数 c' があれば、任意の zÎC に対して pL(c(z)) =A pL(c'(z)) 及び pR(c(z)) =B pR(c'(z)) が成り立つので、これは (8-16b) により、c(z) =P c(z) すなわち c = c' が成り立つことがわかり、以上で証明は完成しました。

 次に、(A, =A )(B, =B ) の積 P , pL , pR を使って、(A, =A ) から (C, =C ) への関数 f(B, =B ) から (C, =C ) への関数 g引き戻しを構成してみましょう。

(8-18a)  R { xÎP |  f(pL(x)) =C g(pR(x)) }

と置き、R 上の同値関係 =R

(8-18b)  x =R  y  :º  x =P  y

で定義し、R から A への写像 aR から B への写像 b

(8-18c)  l :º pL |R

(8-18d)  r :º pR |R

で定義すると、R @ Pull( f, g) および (l, r) @ pull( f, g) が成り立ちます。
 実際、まず (8-18b)=R が同値関係であることや、l , r が関数であることは明らかです。
 また、任意の xÎR に対して f(l(x)) º  f(pL(x)) =C g(pR(x)) º g(r(x)) ですから f ° l = g ° r が成り立ちます。
 次に、(D, =D ) から (A, =A ) への関数 j(D, =D ) から (B, =B ) への関数 yf ° j = g ° y を満たすとします。
 このとき、P , pL , pR の組が (A, =A )(B, =B ) の積であることから、j = pL ° c 及び y = pR ° c を満たす (D, =D ) から (P, =P ) への関数 c が唯一つ存在します。
 このとき、任意の zÎD に対して f(pL(c(z))) =C  f(j(z)) =C g(y(z)) =C g(pR(c(z))) ですから、(8-18a) により c(z)ÎR がわかります。
 ゆえに、c(D, =D ) から (R, =R ) への写像にもなっていて、しかも (8-18b) により、これは関数で、しかも j = l ° cy = r ° c が成り立ちます。
 逆に、この c と同じ関係を満たす関数 c' があれば、これは (D, =D ) から (P, =P ) への関数ともみなせ、しかも j = pL ° c'y = pR ° c' が成り立ちます。ゆえに積における一意性条件により c = c' が得られ、証明は完成しました。

 次に、同値関係を持つ集合 (A, =A ) から (B, =B ) への関数 f , g等化子を考えます。

(8-19a)  E { xÎA |  f(x) =B g(x) }

と置き、E 上の2項関係 =E

(8-19b)  x =E y  :º  x =A  y

で定義し、E から A への写像 i

(8-19c)  i idE

で定義すると、(E, =E ) @ Eq(j, y) および eq(j, y) @ i が成り立ちます。
 実際、xÎE に対して j(i(x)) º j(x) =B  y(x) º y(i(x)) ですから j ° i = y ° i が成り立つことがわかります。また明らかに i : E ® B は関数です。
 次に h を、j ° h = y ° h を満たす (C, =C ) から (A, =A ) への関数とします。すると、任意の xÎC に対し、f(h(x)) =B g(h(x)) ですから h(x)ÎE がわかるので、h(C, =C ) から (E, =E ) への関数とみなすことができ、i ° h = h が成り立ちます。
 また、(C, =C ) から (E, =E ) への関数 h'i ° h' = h を満たせば、明らかに h' = h ですから、一意性もわかり、以上で証明は完成しました。

 次に、集合の圏における射の余像を求めてみましょう。

 最初にについて考えることにし、f を同値関係を持つ集合 (A, =A ) から (B, =B ) への関数とします。
 互いに等しくない2元 a , b を任意に選び、

(8-20a)  C {a, b} ´ B

と置き、C 上の2項関係 =

(8-20b)  (i, x) =C ( j, y)  :º  ( i º j  Ù  x =B  y )  Ú  ( ( Ø i º j )  Ù  $aÎA : x =B  y =B  f(a) )

で定義します。また B から C への写像 j , y

(8-20c)  j :º x |® (a, x)

(8-20d)  y :º y |® (b, y)

で定義すると、(C, =C ) @ Push( f, f ) および (j, y) @ push( f, f ) となることを証明しましょう。

 実際、まず (8-20b)=C が同値関係であることを確かめましょう。これが反射律と対称律を満たすことは明らかですから、推移律を証明すれば十分です。
 C の元が (i, x) =C ( j, y) かつ ( j, y) =C (k, z) を満たすとします。このとき (8-20b) により、x =B  y =B z なので x =B z となることに注意します。また ab は等しくないので、関係 i , j , k の任意に選んだ2個が等しいかどうかについて排中律が成り立ちます。
 もし ik が等しければ、i º k  Ù  x =B z なので (i, x) =C (k, z) となります。
 また ik が等しくなければ、j はこれらの一方と等しく、他方と等しくありません。ゆえに (8-20b) により、いずれにせよ y =B  f(a) となる aÎA が存在し、x =B z =B  f(a) となるので、やはり (i, x) =C (k, z) が成り立ちます。
 以上で =C は推移律を満たすことが分かったので、これは C 上の同値関係です。
 次に、任意の aÎA に対して j( f(a)) º (u, f(a)) =C (v, f(a)) º y( f(a)) となるので、j ° f = y ° f が成り立つことがわかります。
 次に、m , n(B, =B ) から (D, =D ) への関数で m ° f = n ° f を満たすとします。このとき、各 (i, x)ÎC に対し、ia なら m(x) を、ib なら n(x) を対応させる写像を l と書くと、l ° j = m 及び l ° y = n が成り立ちます。
 次に l(C, =C ) から (D, =D ) への関数であることを確かめます。C の元 x :º (i, x)h :º ( j, y)x =C h を満たすとします。
 このとき (8-20b) により x =B  y ですが、i º j º a のときは m が関数であることから l(x) º m(x) =D m( y) = l(h) となります。
 同様に、i º j º b のときは n が関数であることから l(x) º n(x) =D n( y) = l(h) となります。
 また、i º a かつ j º b のときは、aÎA が存在して x =B  y =B  f(a) となりますが、m , n は関数ですから m(x) =D m( f(a)) 及び n( y) =D n( f(a)) が成り立ちます。一方 m ° f = n ° f により m( f(a)) =D n( f(a))) ですから、l(x) º m(x) =D n(x) º l(h) が成り立ちます。i º b かつ j º a のときも同様ですから、これで l が関数であることが証明されました。
 なお、l の一意性は、C の任意の元が、ある xÎB によって j(x) 又は y(x) と書けることから明らかです。以上で証明は完成しました。

 さて、(8-20)(8-19) を組み合わせると、

(8-21a)  Im( f ) º Eq(push( f, f )) @ Eq(j, y) @ (A f, =' )       ( A f { yÎB | j( y) =C y( y) } = { yÎB | (a, y) =C (b, y) } = { yÎB | $xÎA : y =B  f(x) } )

(8-21b)  im( f ) º eq(push( f, f )) @ eq(j, y) @ idA f

が得られます。
 ただし、=' は、x ='  y  :º  x =B  y で定義される A f 上の同値関係(これを同値関係 =B から誘導される同値関係といいます)を表します。
 すなわち、f の像 Im( f ) とは、f [A] の元と同値な xÎB の全体からなる集合に =B から誘導される同値関係を入れたものに他なりません。

 次に余像について考えることにし、f を同値関係を持つ集合 (A, =A ) から (B, =B ) への関数とします。
 そこで、(8-16)BA を、gf を代入して得られたものを (8-18) に代入したときの RRf と書くと、

(8-22a)  Rf  º { (x, y)ÎA ´ A |  f(x) =B  f( y) }

となりますが、これは明らかに A の同値関係です。そこで、この同値関係を =f とも書くことにし、A からそれ自身への写像 p

(8-22b)  p idA

で定義すると、(A, =f ) @ Coeq(l, r) および p @ coeq(l, r) が成り立つことを証明しましょう。
 実際、f が関数であることから、x, yÎAx =A  y を満たせば f(x) =B  f( y) となるので x =f  y となり、p(A, =A ) から (A, =f ) への関数であることがわかります。
 また f ° l = f ° r ですから、任意の zÎRf に対して f(l(z)) =B  f(r(z)) となりますから、p(l(z)) º l(z) =f  r(z) º p(r(z)) となり、これは p ° l = p ° r を意味します。
 次に g を、g ° l = g ° r を満たす (A, =A ) からある (C, =C ) への関数とします。すると、x, yÎAx =f  y を満たせば (x, y)ÎRf なので、(x, y)lr の定義域に属し、g(x) º g(l(x, y)) =C g(r(x, y)) º g( y) となります。これは、g(A, =f ) から (C, =C ) への関数であることを意味しています。ゆえに、また g ° p = g が成り立ちます。
 またもし g' ° p = g となる (A, =f ) から (C, =C ) への関数 g' があれば、任意の xÎA に対し、g'(x) º g'( p(x)) =C g(x) ですから g' = g となり、一意性も成り立ち、以上で証明は完成しました。

 以上の結果により、

(8-23a)  Coim( f ) º Coeq(pull( f, f )) @ Coeq(l, r) @ (A, =f ) = (A, Rf )

(8-23b)  coim( f ) º coeq(pull( f, f )) @ coeq(l, r) @ idA

が得られます。すなわち、f の余像 Coim( f ) とは、f の定義域 A(8-22a) で定義される同値関係 Rf を与えたものに他なりません。

 さて、(A, =A ) から (B, =B ) への関数 f全射であるためには

(8-24)  "yÎB : $xÎA :  y =B  f(x)

が成り立つことが必要十分です。
 実際、f が全射なら、(8-20c),(8-20d)j , y に対して j ° f = y ° f なので j = y となり、(8-21a) により A f = B となるので (8-24) が得られます。
 逆に (8-24) が成り立てば、(8-21a) により A f = B となり、従って ='=B となり、(8-21b) の右辺の射は idB となるので、これは明らかに同型射です。ゆえに (8-21b) の左辺の射 im( f ) も同型射となり、(7-12a) により f は全射です。

 条件 (8-24) は、B の同値関係が等号である場合は f が上への写像であることと同値です。そこで一般に、集合の圏における全射のことを上への関数とよぶことにします。

 次に、(A, =A ) から (B, =B ) への関数 f単射であるためには

(8-25)  "x, yÎA (  f(x) =B  f(x)  Þ  x =A  y )

が成り立つことが必要十分です。
 実際、f が単射なら、(8-18c),(8-18d)l , r の定義域は (8-22a)Rf で、しかも f ° l = f ° r ですから l = r となり、これは (8-25) を意味します。
 逆に (8-25) が成り立てば、(8-23a) の右辺の同値関係 =f=A に他なりませんから、明らかに (8-23b) の右辺の射 idA は同型射です。従って左辺の射 coim( f ) も同型射となり、(7-12b) により f は単射です。

 条件 (8-25) は、A , B の同値関係が等号である場合は f が一対一写像であることと同値です。そこで一般に、集合の圏における単射のことを一対一関数とよぶことにします。

 以上の結果により、特に (A, =A ) から (B, =B ) への関数 f は、全単射ならば同型射であることがわかります。
 実際、任意の yÎB に対し、f は全射ですから、(8-24) により y =B  f(x) となる xÎA が存在するので、y にこのような x の一つを対応させる写像を g と書けば、まず f(g( y)) =B  y が成り立ちます。
 ゆえに、y =B  y' なら f(g( y)) =B  f(g( y' )) ですから、f が単射であることから (8-25) により g( y) =A g( y' ) となり、これは g が関数であることを示しています。
 一方、任意の xÎA に対して f(g( f(x))) =B  f(x) となるので、(8-25) により g( f(x)) =A x がわかり、gf の逆射である、言い換えると f は同型射であることがわかります。

 次に、関数 f標準分解を考えると、Coim( f ) と同値な (A, =f )Im( f ) と同値な (A f, =' ) を繋ぐ関数 fabfab(x) f(x) で与えられますが、これは明らかに (8-24),(8-25) を共に満たすので全単射です。ゆえに上記の結果から fab は同型射であり、集合の圏では任意の射は全単射分解を持つことがわかります。
 従って特に、集合の圏では効果的全(単)射は全(単)射と同じ意味になります。

 さて、同値関係を持つ集合 A に対し、一対一関数 i : B ® A が与えられた同値関係を持つ集合 BA部分集合といいます。
 集合の圏では単射は効果的単射ですから、(7-13a) により i @ im(i) です。ゆえに (8-21a) により、A の任意の部分集合は (B i, =' ) の形の対象と同型になります。一方、集合 C Ì AB i の形の集合と相等であるための条件は、

(8-26)  "xÎA (( $yÎC : y =A x )  Þ  xÎC )

を満たすことです。
 そこで、集合 C Ì A は、条件 (8-26) を満たすとき、同値関係 =A両立するということにし、同値関係 =A と両立する CÎP (A) の全体からなる集合を Sub(A, =A ) と書くことにします。A の部分集合はすべて Sub(A, =A ) のある元 C から作った (C, =' ) と同型です。
 また、明らかに空集合 Æ 、全体集合 A 、及び Sub(A, =A ) の元(の族)の共分、合併、差集合、補集合は Sub(A, =A ) に属します。
 また、(A, =A ) から (B, =B ) への関数 f に対し、

(8-27a)   f +(X ) { yÎB | $xÎX : y =B f(x) }       ( XÎSub(A, =A ) )

(8-27b)   f -(Y ) { xÎA |  f(x)ÎY } =  f -1[Y ]       ( YÎSub(B, =B ) )

と定義します。
 =B が同値関係であることから f +(X )ÎSub(B, =B ) がわかり、f が関数で Y=B と両立することから f -(Y )ÎSub(A, =A ) であることがわかります。
 従って、Sub(A, =A ) 等を集合の相当を同値関係に持つ集合とみなせば、f +Sub(A, =A ) から Sub(B, =B ) への関数であり、f -Sub(B, =B ) から Sub(A, =A ) への関数であることがわかります。

 双対的に、同値関係を持つ集合 A に対し、上への関数 p : A ® B が与えられた同値関係を持つ集合 BA商集合といいます。
 集合の圏では全射は効果的全射ですから、(7-13b) により p @ coim(p) です。ゆえに (8-23a) により、A の任意の商集合は (A, Rp ) の形の対象と同型になります。一方、A 上の同値関係 R が、ある全射 p に対する Rp の形に書けるための条件は、

(8-28)  "x, yÎA ( x =A y  Þ  (x, y)ÎR )

を満たすことです。
 そこで、A 上の同値関係 R は、条件 (8-28) を満たすとき、同値関係 =A両立するということにし、同値関係 =A と両立する同値関係 RÎP (A ´ A) の全体からなる集合を Quot(A, =A ) と書くことにします。A の商集合はすべて Quot(A, =A ) のある元 R から作った (A, R) と同型です。

 さて、次に一般の圏 (A) における (D)-図式 d を考え、その極限 ( Lim d , ( pvÎHA( Lim d , v ) )vÎOD ) が存在するものとします。
 このとき、任意に選んだ aÎOA に対し、各 vÎOD に対して v* HA(a, v ) と置き、各 HD(u, v) に対して HA(a, u ) から HA(a, v ) への写像 i*i*(j)i j で定義すると、これは、各 v* を射の同値関係を持つ集合とみなしたときに関数になります。
 ゆえに、この * は、集合の圏への (D)-図式を定めるので、この図式を d* と書くことにします。

 そこで、各 vÎOv に対する写像 pv* : HA(a, Lim d ) ® HA(a, v )pv*(j) :º pvj で定義します。すると (7-6) により

(8-29)  "u, vÎOD : "iÎHD(u, v) : i* ° pu* = pv*

が成り立ちますが、このとき

(8-30)  lim d* @ ( HA(a, Lim d ) , ( pv* )vÎOD )

が成り立つことを証明しましょう。
 実際、同値関係を持つ任意の集合 (Z, =Z )Z から HA(a, v ) への関数 fv の族 (  fv )vÎOD で、各 HD(u, v) に対して i* ° fu = fv を満たすものが与えられたとします。このとき、各 zÎZ に対して i fu(z) = fv(z) が成り立つので、唯一つ HA(a, Lim d ) が存在して fv(z) = pvy が成り立ちます。
 そこで、z に対してこのような y の一つを対応させる写像を f と書けば、fv(z) = pv f(z) すなわち fv = pv* ° f が成り立ちます。y の一意性により、f の一意性も従います。これは、(8-30) が成り立っていることを意味しています。

 双対的に、圏 (A) における (D)-図式 d を考え、その余極限 ( Colim d , ( ivÎHA( v, Colim d ) )vÎOD ) が存在するものとします。
 このとき、任意に選んだ aÎOA に対し、各 vÎOD に対して v*HA( v, a) と置き、各 HD(v, u) に対して HA( u, a) から HA( v, a) への写像 i*i*(j) :º j i で定義すると、これは、各 v* を射の同値関係を持つ集合とみなしたときに関数になります。
 ゆえに、この * は、(D) から集合の圏への反変関手、言い換えると (D) の双対圏 (D)* から集合の圏への (D)*-図式を定めるので、この図式を d* と書くことにします。

 そこで、各 vÎOv に対する写像 iv* : HA(Colim d , a) ® HA( v, a)iv*(j) :º j iv で定義します。すると (7-8) により

(8-31)  "u, vÎOD : "iÎHD(v, u) : i* ° iu* = iv*

が成り立ちます。従って、極限の場合と同様にして

(8-32)  lim d* @ ( HA(Colim d , a) , ( iv* )vÎOD )

が成り立つことがわかります(左辺は lim であって、colim ではないことに注意)。

 さて、次に不等号とよばれる2項関係について考察します。
 集合 A 上の2項関係 ¹ は、条件:

(8-33a)  Ø x ¹ x

(8-33b)  x ¹ y  Þ  y ¹ x

(8-33c)  x ¹ y  Þ  ( z ¹ x  Ú  z ¹ y )

を満たすとき不等号とよび、a ¹ b のとき ab異なるといいます。(第5節で定義した集合間の関係 ¹ は不等号ではないことに注意します。)
 任意の不等号 ¹ に対し、(8-33b),(8-33c) の対偶を取って第3節のメタ定理17と31を用いれば、2項関係 Ø x ¹ y は同値関係になることがわかります。これを不等号 ¹ に伴う同値関係といいます。
 不等号 ¹ は、それに伴う同値関係 = と両立します。すなわち

(8-34a)  ( x ¹ y  Ù  x = z )  Þ  z ¹ y

(8-34b)  ( x ¹ y  Ù  y = z )  Þ  x ¹ z

 実際、これらは (8-33c)(8-33b) により直ちに得られます。

 一方、逆に排中律 x = y  Ú  Ø x = y を満たす同値関係 = があれば、同値関係の条件 (5-4) の対偶を取り、メタ定理39 (d) を用いれば、2項関係 Ø x = y は不等号になることがわかります。また、不等号 ¹ を持つ集合 A から不等号 ¹ を持つ集合 B への写像 f

(8-35)  f(a) ¹ f(b)  Þ  a ¹ b       ( a, bÎA )

を満たすとき、強関数とよぶことにします。(8-35) の対偶を取れば、強関数は、¹ に伴う同値関係が与えられた集合間の写像として関数であることがわかります。また関数 f

(8-36)  a ¹ b  Þ  f(a) ¹ f(b)       ( a, bÎA )

を満たすとき、強い一対一関数とよぶことにします。対偶を取れば、強い一対一関数は一対一であることがわかります。
 強関数同士の合成は強関数で、恒等写像は明らかに強関数ですから、不等号を持つ集合を対象、強関数をとよべば、これは一つの圏を定めます。この圏を不等号を持つ集合の圏とよぶことにします。なお、この圏の射 f, gÎH(A, B) の同値関係 f = g は、¹B に伴う同値関係 =B によって "xÎA : f(x) =B g(x) で定義します。

 d を不等号を持つ集合の圏の (D)-図式とするとき、(8-5)~(8-7)(8-6) に替えて、L 上の不等号 ¹

(8-37)  x ¹ y  :º  $vÎOD : xv ¹ yv

で定義すれば、(L, ¹)d の不等号を持つ集合の圏における極限になっています。
 実際、各 vÎOD に対して pv(x) º xv ですから、(8-37) により、各 pv強関数です
 また、強関数の族 (  fv : B ® Av )vÎOD が任意の HD(u, v) に対して i ° fu = fv を満たすとすると、(8-37) の否定を x = y と定義すれば、L は集合の圏における d の極限になるので、唯一つ関数 f : B ® L が存在して、各 vÎOD に対して fv = pv ° f が成り立ちます。
 次に、x, yÎBf(x) ¹ f( y) を満たせば、(8-37) により fv(x) = pv( f(x)) ¹ pv( f( y)) = fv( y) となる vÎOD が存在します。
 ここで、¹= と両立するので fv(x) ¹ fv(x) となりますが、fv は強関数なので x ¹ y となり、これは f が強関数であることを意味しています。なお、f の一意性は、関数としても一意的なので明らかです。以上で証明されました。

 同様に、

(8-38a)  C { (v, a) | vÎOD , aÎAv }

(8-38b)  ivx |® (v, x)

と置いて、C 上の不等号 R のうち、(x, h)ÎR のことを x ¹R h と書いて

(8-39a)  (v, a) ¹R (v, b)  Þ  a ¹ b

(8-39b)  "u, vÎOD : "iÎHD(v, u) : "xÎAv : Ø (u, i(x)) ¹R (v, x)

を満たすものの全体の集合を R と書くと、明らかに R の合併は (8-39) を満たす不等号になります。そこでこの不等号を ¹ と書けば、(C, ¹) は、不等号を持つ集合の圏における d の余極限になっています。
 実際、まず iv強関数であることは、¹(8-39a) を満たすことから明らかです。
 また、強関数の族 (  fv : Av ® B )vÎOD が任意の HD(v, u) に対して fu ° i = fv を満たすとします。このとき写像 f : C ® Bf(v, x) fv(x) で定義すれば、明らかに、各 xÎAv に対して fv(x) = f(iv (x)) が成り立ちます。
 そこで R{ (x, h)ÎC ´ C |  f(x) ¹ f(h) } と置きます。これは明らかに C の不等号になっています。
 また、もし (v, a) ¹R (v, b) なら fv(a) º f(v, a) ¹R f(v, b) º fv(b) ですから、fv が強関数であることにより a ¹ b が成り立ちます。
 また、ある HD(v, u)xÎAu(u, i(x)) ¹R (v, x) すなわち f(u, i(x)) ¹ f(v, x) となったとすると、これは fu( i(x)) ¹ fv(x) を意味し、矛盾します。
 ゆえに R は条件 (8-39) を満たすので、C の不等号 ¹ に含まれることがわかり、これは f が強関数であることを意味しています。f の一意性については明らかですから、以上で証明されました。

 以上により、不等号を持つ集合の圏も完備かつ余完備であることがわかりました。

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