数学の基礎


12.除法と素数

 n を自然数、m0 でない自然数とするとき、

(12-1)  n º mk + r       ( r < m )

となる自然数 kr が唯一組存在します。これを、n に関する帰納法で証明しましょう。
 まず 0 º m0 + 0 であり、逆に 0 º mk + r ならば (11-1),(11-3) により k º r º 0 がわかるので、(12-1)0 に対して成立します。
 また、特定の n に対して (12-1) を仮定すると、s(n) º mk + s(r) で、しかも r < m ですから (11-22b) により s(r) £ m です。そこで、もし s(r) < m なら kk's(r)r' と置き、もし s(r) º m なら s(k)k'0r' と置けば、

(12-2)  s(n) º mk' + r'       ( r' < m )

が成り立ちます。また、自然数 k"r" < m に対して

(12-3)  mk' + r' º mk" + r"

となったとすると、(11-20) により k' £ k" 又は k" £ k' が成り立ちます。どちらでも同じなので前者が成り立つとすると、

(12-4)  k" º k' + l

となる自然数 l が存在します。これを (12-3) に代入すると、分配律と加法の結合律により

(12-5)  mk' + r' º mk' + (ml + r")

となるので、(11-2) により

(12-6a)  r' º ml + r"

となります。ここで Ø l º 0 と仮定すると、(10-6),(10-24) により$iÎN : l º s(i) º 1 + i すなわち l ³ 1 となるので、(11-23),(10-42) により

(12-6b)  r' º ml + r" ³ m1 + r" ³ m1 º m

となって r' の取り方に反します。ゆえに (11-7a) により l º 0 がわかり、(12-4) により k' º k" が、(12-6a) により r' º r" が得られ、(12-1) の表現の一意的存在が証明されました。
 そこで、(12-1) を満たす km による nとよんで [n/m] と書き、r余りとよんで rem(n, m) と書くことにします。
 また、余りが 0 のとき、nm割り切れるといって m | n と書き、商も単に n/m と書き、nm倍数mn約数といいます。特に 2 の倍数であることを偶数であるといい、偶数でない、言い換えると 2 で割ると 1 余るとき奇数であるといいます。
 さて、明らかに

(12-7)  m | n  Û  $k : n º km

が成り立つので、m0 の場合も左辺を右辺で定義することにします。このとき明らかに 0 | n  Û  n º 0 であり、m > 0 なら m | n  Û  rem(n, m) º 0 ですから、(11-7a) により、m | n という命題に対して排中律が成り立ちます。
 また、自然数 l , m , n に対して明らかに

(12-8a)  1 | n

(12-8b)  n | n

(12-8c)  ( l | m  Ù  m | n )  Þ  l | n

(12-8d)  ( l | m  Ù  l | n )  Þ  l | (m + n)

(12-8e)  l | m  Þ  l | (mn)

が成り立ちます。また、m | n なら n º km と書けるので、ここで n > 0 なら k º 0 と仮定すると矛盾するので (10-6) により k º s(i) と書け、n º im + m となるので n ³ m であることがわかります。すなわち

(12-8f)  ( m | n  Ù  n > 0 )  Þ  m £ n

 また、m | n かつ n | m なら n º km かつ m º ln と書けるので、n º kln となり、n > 0 のときは (11-10b) により kl º 1 が成り立ちます。ゆえに (11-4) により k º l º 1 となって m º n が成り立ちます。すなわち

(12-8g)  ( m | n  Ù  n | m )  Þ  m º n

が得られ、これは n º 0 の場合も明らかに成り立ちます。

 自然数からなる集合 A ¹ Æ に対し、A のすべての元の約数になっている正の自然数を A公約数といい、A のすべての元の倍数になっている正の自然数を A公倍数といいます。特に A が有限集合 { ni | iÎN Ù 0 £ i < k }(ただし k > 0)の場合、A の公約数全体の集合:

(12-9a)  CD(A) { nÎN+ | "mÎA : n | m } { nÎN+ | "i < k : n | ni }

と、A の公倍数全体の集合:

(12-9b)  CM(A) { nÎN+ | "mÎA : m | n } { nÎN+ | "i < k : ni | n }

は、共に判定可能な集合です。
 さて、A0 でない元を持つ自然数の有限集合とします。(12-8a) により CD(A) が成り立ちます。一方 A0 でない元 m を取ると、nÎCD(A) なら n | m なので、(12-8f) により n £ m が成り立ちます。これは CD(A) が有界であることを示していますから、(11-41) により最大値を持ちます。これを A最大公約数とよんで、gcd(A) と表わすことにします。なお、A{l, m ,¼, n} のように書かれるとき、gcd(A) のことを gcd(l, m ,¼, n) と略記します。以下で定義する lcm についても同様です。
 次に、A とします。(11-5)(12-8b),(12-8e) により n0n1¼nk-1ÎCM(A) が成り立ちます。ただし

(12-10)  n0n1¼nr  r
Õ
i=0
ni 

と置きました。ゆえに (11-39) により、CM(A) は最小値を持ちます。これを A最小公倍数とよんで、lcm(A) と表わすことにします。

 さて、(12-1) において、mi > 0 で割り切れる、すなわち m º pi と書けたとします。もし更に ri で割り切れれば、r º qi と書けるので n º pik + qi º i( pk + q) すなわち ni で割り切れます。
 逆に ri で割り切れなければ r º qi + j   ( 0 < j < i ) と書け、n º pik + qi + j º i( pk + q) + j となるので ni で割り切れないことがわかります。これは CD({m, r}) = CD({m, n}) であることを意味しています。したがって特に

(12-11)  gcd(m, n) º gcd(m, r)       ( m > 0 , r º rem(n, m) )

が成り立つことがわかります。このことを利用して、任意の自然数 mn > 0 に対し、ggcd(m, n) と置くとき、

(12-12)  in º jm + g

を満たす自然数 i , j が存在することを min{m, n} に関する帰納法で証明します。
 まず min{m, n} º 0 なら、n > 0 なので m º 0 、したがって g º n なので、この場合は i º 1 と置けば、任意の j について (12-12) が成り立ちます。
 次に min{m, n} £ k のとき成り立つと仮定して min{m, n} º s(k) のときを考えます。(11-20) により n £ m 又は m £ n です。
 n £ m のときは、(12-1)nm の役割を入れ替えれば、m º ln + r となる自然数 lr < n が存在し、min{n, r} º r < n º s(k) となるので (11-22a) により min {n, r} £ k となります。また (12-11) により gcd(n, r) º g ですから、帰納法の仮定により in º jr + g を満たす i , j が存在します。両辺に jln を加えれば、(i + jl )n º in + jln º jr + g + jln º j(ln + r) + g º jm + g となって帰納法が成立します。
 また n ³ m のときは、(12-1) により n º lm + r となる自然数 lr < m が存在し、min{m, r} º r < m º s(k) すなわち min {m, r} £ k となります。
 しかも m º min{m, n} º s(k) > 0 ですから、もし m | n なら、仮定 n > 0 により n º ( j + 1)m となる j が存在し、g º m ですから、i º 1 と置けば (12-12) が成り立ちます。したがって、nm で割り切れないと仮定してかまいません。
 ゆえに r > 0 であり、(12-11) により gcd(r, m) º g ですから、帰納法の仮定により ir º jm + g を満たす i , j が存在します。両辺に ilm を加えれば、in º ilm + ir º ilm + jm + g º ( j + il )m + g となって帰納法が成立します。

 さて、自然数 mn は、gcd(m, n) º 1 であるとき互いに素であるといいます。互いに素な mn > 0 に対しては、(12-12)g1 と置いた式:

(12-13)  in º jm + 1

が成り立ちます。このことを用いると、lm が互いに素で mnl で割り切れるならば nl で割り切れる、すなわち

(12-14)  ( gcd(l, m) º 1  Ù  l | (mn) )  Þ  l | n

が成り立つことが証明できます。
 実際、(12-13) により il º jm + 1 を満たす自然数 i , j が存在するので、両辺に n を乗じ、mn º lk と書けるのでこれを代入すれば、iln º jlk + n が得られます。
 ここで in < jk と仮定すると、l > 0 なので、iln < jlk £ jlk + n º iln となって矛盾するので (11-11) により in ³ jk です。ゆえに in º jk + r と書けます。ゆえにこの両辺に l を乗じれば iln º jlk + lr が得られ、(11-2) により n º lr 、すなわち nl で割り切れることがわかりました。

 また、(12-14) により

(12-15)  ( gcd( p, q) º 1  Ù  p | n  Ù  q | n )  Þ  ( pq) | n

が証明できます。実際、p | n ですから n º kp と書け、q | nq | (kp) と書けるので、(12-14) を適用すれば q | k がわかります。ゆえに k º lq と書けるので n º kp º lpq となり、( pq) | n が証明されました。

 さて、1 より大きい自然数は、1 とそれ自身以外に約数を持たないとき素数であるといいます。(12-8f) により、「p は素数である」という命題は

(12-16)  p > 1  Ù  "k £ p : ( k | p  Þ  ( k º 1  Ú  k º p ))

と書けるので、この命題に対しては排中律が成り立ちます。1 より大きい素数でない自然数を合成数といいます。

 合成数は、必ず素数を約数に持ちます
 実際、n を合成数とし、n 未満の合成数については成り立つとします。このとき (12-16) の否定により、n 以下の自然数 k で、n の約数になっていて、かつ 1 でも n でもないものが存在します。ゆえに帰納法の仮定により、k はある素数 p を約数に持ちますが、これは明らかに n の約数にもなっています。

 さて、p が素数なら、

(12-17)  p | (nm)  Þ  ( p | n  Ú  p | m )

が成り立ちます。なぜなら、n0 なら明らかなので、n は正とし、pnm を割り切るのに m を割り切らないとすれば、p は素数なので pm は互いに素です。ゆえに (12-14) により pn の約数です。関係 p | m について排中律が成り立つので、以上で (12-17) は証明されました。

 次に中国剰余定理というものを証明しましょう。
 自然数の有限列 pi > 0 ( i < n ) が与えられ、異なる i , j に対して pipj は互いに素であるとし、これら n 個の積を p と書きます。このとき、すべての i について qi < pi であるような任意の自然数の有限列 qi ( i < n ) に対し、

(12-18)  rem(q, pi ) º qi       ( i < n )

を満たす自然数 q < p が唯一つ存在します。
 実際、j ¹ i であるような j に対する pj の積を p'i と書くと、これと pi は互いに素です。なぜなら、これらが 1 より大きい共約数を持ったとすると、その約数であるような素数 r が存在し、これも p'ipi の共約数です。ゆえに (12-17) を繰り返し用いることにより、r はある j ¹ i に対する pj を割り切りますが、これは pipj が互いに素であることに反するからです。ゆえに (12-13) により

(12-19)  ai p'i º bi pi + 1       ( i < n )

を満たす自然数 ai , bi が存在します。

(12-20)  q rem( n-1
å
 j=0
aj p'jqj , p)

と置けば、これが求めるものです。
 実際、ij が異なれば p'jpi で割り切れるので、右辺の和のうち ji と異なる項はすべて pi で割り切れます。
 一方、残る j º i の項については、(12-19) により ai p'iqi º bi piqi + qi ですから、これを pi で割った余りは qi になります。また pi | p ですから、以上で (12-18) は証明されました。
 最後に一意性を確かめましょう。q, q' < p が共に (12-18) を満たすとします。q < q' とすると、q"q' - q はすべての pi で割り切れ、(12-15) を繰り返し用いれば、q"p でも割り切れることがわかり、0 < q" < p なので矛盾です。同様に q' < q と仮定しても矛盾するので q º q' が得られます。

 さて次に、素数が無限にあることを示すための準備として、帰納的構成の式 (10-7)c1F(n,x)xs(n) としたときの j(n)n! と書いて、これを n階乗とよびます:

(12-21a)  0! º 1

(12-21b)  s(n)! º n!s(n)

 帰納法と (11-3) から明らかなように、n!0 になりません。さて、

(12-22)  "k £ n : k! | n!

が成り立つことを n に関する帰納法で証明します。まず n0 のときは k0 でなければならないので明らかに成り立ちます。
 次に n で成り立つと仮定し、k £ s(n) と仮定します。
 このとき k £ n 又は k º s(n) ですが、前者の場合、帰納法の仮定により k! | n! であり、(12-21b) により n! | s(n)! ですから、(12-8c) により k! | s(n)! が成り立ちます。また後者の場合は証明すべき式は s(n)! | s(n)! となり明らかです。ゆえに帰納法が完成しました。
 また、帰納法により k ³ 1 なら k | k! が成り立つことは明らかですから、これと (12-8d),(12-22) により

(12-23)  1 £ k £ n  Þ  k | n!

がわかります。

 さて、n!(12-23) により 2 以上 n 以下の任意の整数で割り切れるので、n! + 12 以上 n 以下の整数では割り切れず、したがって特に n 以下の素数では割り切れません。ところが n! + 1 は自然数ですから、前段で示したように、ある素数 p で割り切れます。すると p > n でなければなりません。以上により、任意の自然数 n に対し、n より大きい素数が存在することがわかりました。よって、前節 (11-38)(11-39) により、n より大きい素数の中で最小のものが存在します。これを仮に l(n) と書くことにし、帰納的構成の式 (10-7)c1F(n,x)l(x) としたときの j(n)pn と書いて、n > 0 のとき、これをn番目の素数とよびます:

(12-24a)  p0 º 1

(12-24b)  ps(n) º l( pn )

 さて、{ pn | nÎN+ } はすべての素数を含んでいます。実際、定義から pn < ps(n) であって、しかもこの両者の間には素数はありません。従って帰納法で明らかなように、任意の自然数 n に対して pn > n が成り立ちます。よって特に、任意の素数 p に対して pn > p となる最小の n が存在します。これは p = pn-1 であることを示しています。
 以上の結果から、特に素数の全体は可算集合であることがわかります。

 次に、自然数の素因数分解の一意的存在:

(12-25)  n º  k
Õ
i=1
piei       ( ei > 0 )

を帰納法で証明しましょう。
 p1 º 2 ですから、n º 2 のときは k º 1 , e1 º 1 とすれば (12-25) は成り立ちます。また、e1 > 1 あるいは ei > 0 となる i > 1 が存在したとすると、右辺は 2 より大きくなってしまうので、一意性も明らかです。
 次に、(12-25) の存在と一意性が n より小さい自然数に対しては成り立つと仮定します。n が素数のときは、n º pk となる k が存在しますから、ek º 1 , ei º 0 ( i < k ) と置けば存在は明らかで、もし k と等しくない j に対して ej > 0 となったとすれば、素数 n º pk がこれと等しくない素数 pj を約数に持つことになるので矛盾します。よって一意性も証明されました。
 他方、n が合成数のときは、ある素数で割り切れますから、ある j に対して n º pjm と書け、m < n なので、帰納法の仮定により m(12-25) の右辺の形に一意的に書けます。ゆえに nej1 増やした形の同様な表示を持つことがわかります。
 逆に n(12-25) の形に書けたとすると、ij と等しくなければ pjpi は互いに素で、しかも pj | n ですから、(12-14) を繰り返し用いることにより、pj | pjej であることがわかり、これより ej > 0 がわかります。ゆえに m に対して (12-25)ejej - 1 に置き換えた式が成り立ちますが、帰納法の仮定により、その表示は一意的です。ゆえに n の表示も一意的であることがわかり、主張は証明されました。

 次に、k £ n に対し、k に関する帰納的構成 (11-30) によって nPk を次のように定義します:

(12-26a)  nP0 º 1

(12-26b)  nPs(k) º (n - k) nPk       ( k < n )

 この nPk は、#A º n であるような集合 A における、長さ k の一対一な有限列全体の個数に他ならないことが k に関する帰納法で証明できます。
 実際、長さ s(k) の一対一有限列は、長さ k の一対一有限列と、残る n - k 個の中から任意に選んだ s(k) における値によって定まるからです。

 また、

(12-27)  (n - k)! nPk º n!

が成り立つことを k に関する帰納法で証明しましょう。実際、k0 のときは (12-26a) により明らかです。
 また k で正しいと仮定し、2項演算 +- が連続していてしかも演算が左から順に行われる場合は括弧を省略することにすれば、

(12-28)  (n - s(k))! nPs(k) º (n - (k + 1))!(n - k) nPk º (n - k - 1)!s((n - k) - 1) nPk º s(n - k - 1)! nPk º (n - k)! nPk º n!

となって帰納法が完成し、証明されました。
 次に、(12-27)nk をそれぞれ s(n)s(k) に置き換えれば、s(n) - s(k) º (n + 1) - (k + 1) º n + 1 - 1 - k º n - k ですから

(12-29)  (n - k)! s(n)Ps(k) º (s(n) - s(k))! s(n)Ps(k) º s(n)! º n!s(n) º (n - k)! nPk s(n)

 階乗は 0 にならないので、これと (11-10b) により

(12-30)  s(n)Ps(k) º s(n) nPk

が成り立つことがわかります。そこで

(12-31)  "m £ n  :  m! | nPm

が成り立つことを n に関する帰納法で証明しましょう。
 まず n0 のときは、m0 なので明らかです。
 次に、(12-31)n で成り立つと仮定し、ns(n) に置き換えた場合について考えます。m0 のときは明らかですから、m º s(k) と書ける場合を考えれば十分です。(12-30)(12-26b) により

(12-32)  s(n)Ps(k) º s(n) nPk º s(n - k + k) nPk º (n - k + s(k)) nPk º (n - k) nPk + s(k) nPk º nPs(k) + s(k) nPk

 ここで帰納法の仮定により nPs(k)s(k)! で割り切れ、nPkk! で割り切れるので s(k) nPks(k)! で割り切れ、従って (12-32) の左辺も s(k)! で割り切れることがわかり、帰納法が完成しました。
 そこで、nPkk! で割った商を nCk と書くことにします:

(12-33)  nCk nPk
——
 k
! 
 nPk / k!

 そこで、一般に j | i のとき k > 0 に対して (ik)/( jk) º i/j が成り立つことに注意して、(12-32)s(k)! º k!s(k) で割れば、

(12-34)  s(n)Cs(k) º nCs(k) + nCk       ( k < n )

という公式が得られます。また、(12-27),(12-33) により

(12-35a)  nCk º n!
————
 k!(n - k)!
º nCn-k

(12-35b)  nC0 º nCn º n!
——
 n!0
º 1

が成り立ちます。

 さて、個数 n の集合 A に対し、Sub(A) の元のうち判定可能な集合の全体を Dec(A) と書くことにし、これを集合の相等を同値関係に持つ集合とみなすと、これは可識な集合です。
 実際、B, CÎDec(A) のとき、xÎA に対し、命題 xÎBxÎC について排中律が成り立つので、命題 xÎB  Û  xÎC についても排中律が成り立つことがわかり、しかも A は有限集合ですから、"xÎA ( xÎB  Û  xÎC ) すなわち B = C という命題に対して排中律が成り立ちます。

 そこで更に、各 k £ n#A に対し、Dec(A) の元 B のうち #B = k であるようなものの全体を Deck(A) と書くとき、この集合は可識で

(12-36)  #Deck(A) º nCk       ( k £ n º #A )

が成り立つことを証明しましょう。
 実際、まず #B º 0B = Æ は同値なので、Dec0(A) = 1 です。ゆえにこれと (12-35b) により、k º 0 のときは証明されました。
 ゆえに #A º 0 の場合に成立することは明らかです。そこで A の個数に関する帰納法によることにし、#A º n のとき正しいと仮定し、#A º s(n) の場合について証明します。しかも k º 0 のときは既に証明されているので、ks(k) に置き換えて証明できれば十分です。
 さて、A ¹ Æ なので、任意に aÎA を選びます。このとき Decs(k)(A) の元 B は、a を元に持つか持たないかいずれかです。そこで、前者のような B の全体を A 、後者のような B の全体を B と書きます。
 ここで a{ xÎA | x =A a } と置き、BB \ a を対応させる写像は、A から Deck(A \ a ) への全単射であり、しかも #(A \ a ) º n ですから、帰納法の仮定により #A º #Dec(A \ a ) º nCk となります。
 また、B にそれ自身を対応させる写像は、B から Decs(k)(A \ a ) への全単射なので、帰納法の仮定により #B º #Decs(k)(A \ a ) º nCs(k) となります。
 ゆえに (12-34) により #Decs(k)(A) º #A + #B º s(n)Cs(k) が得られ、帰納法が完成しました。

 さて、(12-34),(12-35) を用いて二項定理を導いてみましょう。A を同値関係 = を持つ集合で、= と両立し、結合法則と交換法則を満たし単位元を持つ加法 + と乗法 · が与えられ、それらの間に分配法則が成り立っているものとします。このとき、任意の a, bÎA と任意の自然数 n に対して

(12-37)  (a + b)n = n
å
k=0
nCk ak bn-k

が成り立つことを n に関する帰納法で証明します。
 まず、n0 のときは、両辺共に乗法の単位元になりますから成立します。次に n で正しいと仮定すると、(12-34),(12-35),(11-24e),(11-24k) により

(12-38)  (a + b)s(n)
= (a + b)n (a + b)
= n
å
k=0
nCk ak bn-k (a + b)
= n
å
k=0
nCk as(k) bn-k + n
å
k=0
nCk ak bs(n-k)
= n
å
k=0
nCs(k)-1 as(k) bs(n)-s(k) + n
å
k=0
nCk ak bs(n)-k
= s(n)
å
k=1
nCk-1 ak bs(n)-k + n
å
k=0
nCk ak bs(n)-k
= as(n) + n
å
k=1
nCk-1 ak bs(n)-k + n
å
k=1
nCk ak bs(n)-k + bs(n)
= as(n) + n
å
k=1
s(n)Ck ak bs(n)-k + bs(n)
= s(n)
å
k=0
s(n)Ck ak bs(n)-k

となって帰納法が完成しました。特に (12-37)a º b º 1 とすれば、

(12-39)  n
å
k=0
nCk º 2n

が得られます。従って、(12-36)k について 0 から n まで加えて (12-39) を用いれば

(12-40)  #Dec(A) º n
å
k=0
#Deck(A)  º n
å
k=0
nCk º 2n       ( n º #A )

が得られます。

 さて、二項定理 (12-36) を拡張した多項定理

(12-41)  (a1 + ¼ + ar )n =  
å    
k1+¼+ kr= n
æ
è
n
k1 ¼ kr
ö
ø
a1k1 ¼ arkr

が成り立つことを r に関する帰納法で証明しましょう。ただし

(12-42)   æ
è
n
k1 ¼ kr
ö
ø
nCk1 · n-k1Ck2 · n-k1-k2Ck3 · ¼ · n-k1-¼-kr-1Ckr º  n! 
————
k1! ¼ kr
!

と定義し、これを多項係数といいます。
 定義により、この係数が、個数 n の集合から個数 ki の互いに交わらない部分集合 Ai を選んで作る列 ( Ai )1 £ i £ r 全体の個数に他ならないことがわかります。
 さて、(12-41) の証明ですが、r1 のときは明らかです。次に r で正しいと仮定すると、(12-37) により、

(12-43)  (a1 + ¼ + ar + as(r) )n = n
å
k=0
nCk (a1 + ¼ + ar )k as(r)n-k = n
å
k=0
n!
————
 k!(n - k
)!
 
å    
k1+¼+ kr= k
 k! 
————
k1! ¼ kr
!
a1k1 ¼ arkr as(r)n-k

となり、n - kks(r) と置けば、(12-41)rs(r) に置き換えたものが得られ、帰納法が完成しました。
 なお、(12-42) の記法は r º 1 に対して使うことはほとんどないので、紛れのない限り、2項係数

(12-44)  nCk º æ
è
n
k
ö
ø

とも書くことにします。

 さて、二項定理の応用として、r, nÎN に対する

(12-45)  sr(n) n
å
k=1
k r 

を、小さな r に対して n の式として具体的に表してみましょう。

(12-46)  (n + 1)r+1 - 1 º n
å
k=1
(k + 1)r+1  - n
å
k=1
k r+1 º n
å
k=1
r
å
i=0
æ
è
r + 1
i
ö
ø
ki º r
å
i=0
æ
è
r + 1
i
ö
ø
si(n) 

という関係式が成り立ちますから、r = 0, 1, 2, 3 についてこれを書き下せば、

(12-47a)  n º (n + 1) - 1 º s0(n)

(12-47b)  n² + 2n º (n + 1- 1 º s0(n) + 2s1(n)

(12-47c)  n³ + 3n² + 3n º (n + 1- 1 º s0(n) + 3s1(n) + 3s2(n)

(12-47d)  n4 + 4n³ + 6n² + 4n º (n + 1)4 - 1 º s0(n) + 4s1(n) + 6s2(n) + 4s3(n)

 ゆえに、これらを順に解いて、

(12-48a)  s0(n) º n

(12-48b)  s1(n) º n² + 2n - s0(n)
——————
 2 
=  n² + 2n - n
————–
2
= n(n + 1)
———–
2

(12-48c)  s2(n) º n³ + 3n² + 3n - s0(n) - 3s1(n)
————————————
 3 
= 2n³ + 6n² + 6n - 2n - 3n(n + 1)
————————————–
6
= 2n³ + 3n² + n
—————–
6
= n(n + 1)(2n + 1)
——————–
6

(12-48d)  s3(n) º n4 + 4n³ + 6n² + 4n - s0(n) - 4s1(n) - 6s2(n)
——————————————————
 4 
= n4 + 4n³ + 6n² + 4n - n - 2n(n + 1) - 2n³ - 3n² - n
————————————————————–
 4 
= n4 + 2n³ + n²
—————
 4 
= n²(n + 1
————
4

が得られます。

 この節の最後に、自然数の p進表示について解説します。
 p1 より大きい自然数とします。任意の自然数 n に対し、自然数の列 ( qk )kÎN を、

(12-49a)  q0 º n

(12-49b)  qs(k) º [qk / p]

で帰納的に定義し、自然数の列 r( rk )kÎN

(12-50)  rk rem(qk , p)

で定義します。qs(k) < qk ですから、帰納法により k £ n なら qk £ n - k となることがわかるので、k ³ n なら qk º 0 で、従って rk º 0 です。また

(12-51)  qk º pqs(k) + rk

ですから、n > 0 なら両辺に pk を乗じて k について辺々加えることにより

(12-52)  dig n
å
k=0
qk pk º dig n
å
k=0
qs(k) ps(k) + dig n
å
k=0
rk pk

が得られます。ただし、rk > 0 であるような最大の kdig n と書きました。ゆえに (11-2) により

(12-53)  n º q0 p0 º dig n
å
k=0
rk pk

が得られます。この (11-49) の右辺の表示を np進表示といい、特に p º s(9) の場合を十進表示といいます。
 そして、0 から 9 までの数字をいくつか並べたとき、この記号列は、並んでいる数字を右から順に rk としたときの十進表示における (11-49)n を意味するものと約束します。従って、10 と書いたら、これは s(9) を意味することになります。

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