数学の基礎


13.代数系

 以下、同値関係を持つ集合の同値関係を一般に = で表わします。同値関係を持つ集合 A に対し、自然数 n と関数 j : An ® A が与えられたとき、jA 上のn項演算といいます。y を同値関係を持つ集合 B 上の n項演算とするとき、関数 f : A ® B がこれらの演算と両立するとは

(13-1)   f ° j = y ° f(n)

が成り立つことをいいます。ただし f(n) は、xÎAn(x1 ,¼, xn ) と表すとき

(13-2)   f(n)(x1 ,¼, xn ) = ( f(x1) ,¼, f(xn ))

で定義される An から Bn への関数を表します。したがって (13-1) の条件は

(13-3)   f(j(x1 ,¼, xn )) = y( f(x1 ) ,¼, f(xn ))

と書くことができます。明らかに、同値関係を持つ集合 C 上のn項演算 c 及び y, c と両立する関数 g : B ® C に対し、

(13-4)  (g ° f )(n) = g(n) ° f(n)

が成立しますから、

(13-5)  (g ° f ) ° j = g ° ( f ° j) = g ° (y ° f(n) ) = (g ° y) ° f(n) = (c ° g(n) ) ° f(n) = c ° (g(n) ° f(n) ) = c ° (g ° f )(n)

となるので、g ° fj, c と両立することがわかります。

 さて、集合 ΩΩ から N への写像 | · | が与えられたとき、Ω| · | の組を演算系とよび、Ω の元 w演算の型w| · | を施したもの |w|w項数ということにします。また、各 nÎN に対して Ωn{ Ω | |w| º n } と置きます。
 同値関係を持つ集合 A と、各 Ω に対して A 上の |w|項演算 jw を与える写像 j の組 (A, j)対象とよび、対象 (A, j)(B, y) に対し、すべての Ω に対して jw , yw と両立する A から B への関数 f(A, j) から (B, y) へのとよべば、これは一つの圏を構成します。この圏を、演算系 (Ω, | · | ) の圏といいます。また、演算系の圏の対象を (Ω, | · | )-空間、射を (Ω, | · | )-準同型とよびます。
 集合の圏は、Ω = Æ の場合の演算系の圏に他なりません。

 演算系の圏の対象 (A, j)A を対応させ、射 f にそれ自身を対応させると、これは演算系の圏から集合の圏への関手を定めますが、この関手を忘却関手といいます。忘却関手は明らかに忠実です。

 ここで、同値関係を持つ集合 A の、演算系 (Ω, | · | ) の圏における普遍構造を求めてみましょう。
 0 :º Æ , 1 :º {Æ} と置き、Ω に対して wº(0, w) と置き、aÎA に対して a¹ (1, a) と置き、S{ wº | Ω }È{ a¹ | aÎA } と置いて、S長さ 1 以上の有限列、すなわちある n ³ 1 に対する Nn から S への写像の全体からなる集合を Fin S と書き、xÎFin S に対して一意的に定まるこの nlen x と書くことにします。また、x, yÎFin S結合とよぶ長さ len x + len y の有限列 x#y を、

(13-6)  (x#y)(i) ì
í
î
x(i)                 ( 0 £ i < len x )

 y(i - len x)     ( len x £ i < len x + len y )

で定義し、sÎS に対して s だけからなる長さ1の有限列を (s) と書くことにします。明らかに、x, y, zÎFin S に対して結合律:

(13-7)  (x#y)#z = x#( y#z)

が成り立ちます。そこで、3個以上の結合については括弧を省略することにします。

 さて、Fin S の部分集合 C は、任意の aÎA に対して

(13-8a)  iA(a) (a¹) Î C

かつ任意の nÎNΩnx1 ,¼, xn Î C に対して

(13-8b)  jw(x1 ,¼, xn ) (wº)# x1# ¼ # xn Î C

が成り立つとき演算に対して閉じているということにします。
 そこで、演算に対して閉じているすべての集合の共分を A* と書きます。明らかに A* も演算に対して閉じていますから、(A*, j)(Ω, | · | )-空間になります。

 さて、まず S の元 s に対し、自然数 l(s)

(13-9a)  l(wº) |w|       ( Ω )

(13-9b)  l(a¹) :º 0         ( aÎA )

で定義し、A* の元 x と正の自然数 i £ len x に対し、自然数 m(x, i) を、i について帰納的に

(13-10a)  m(x, 1) :º l(x(0)) + 1

(13-10b)  m(x, i + 1) pd( m(x, i) + l(x(i)) )

で定義し、A* の元 x と正の自然数 k £ m(x, 1) に対し、自然数 n(x, k)

(13-11)  n(x, k) min{ i £ len x |  i ³ 1  Ù  m(x, i) º k }

で定義します。このとき、任意の xÎA* に対して

(13-12a)  m(x, i) ³ 1       ( 1 £ i £ len x )

(13-12b)  n(x, 1) º len x

が成り立つことを証明しましょう。そのためには、(13-12) を満たす xÎA* の全体 C が演算に対して閉じていることを示せば十分です。

 まず、xa¹ のときは、(13-10a) により m((a¹), 1) º l(a¹) + 1 º 1 となるので、len (a¹) º 1 により (13-12a) が成り立つことがわかります。
 また、これと (13-11) により n((a¹), 1) º 1 となるので (13-12b) が成り立つこともわかります。以上で (a¹)ÎC がわかりました。

 次に x(wº)# xn # ¼ # x2 # x1 で、各 xkC に属す場合を考えます。この場合は、各 xk(13-12) を満たすことと (13-11) により

(13-13a)  m(xk , i) ³ 2       ( 1 £ i < len xk )

(13-13b)  m(xk , len xk ) º 1

が成り立ちます。更に、xxk の関係から、(13-9a) により

(13-14)  l(x(1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i)) º l(xk(i))       ( 1 £ k £ n , i < len xk )

が成り立ちます。さてここで、1 £ k £ n のとき

(13-15a)  m(x, 1) º n + 1

(13-15b)  m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i) º m(xk , i) + k - 1       ( 1 £ i £ len xk )

(13-15c)  m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk ) º k

が成り立つことを、k について n から降順に確かめていきましょう。
 まず、(13-15a) は、(13-9a) により l(x(0)) º l(wº) º |w| º n なので、これと (13-10a) により明らかです。
 次に、(13-15b) が、ある正の自然数 i < len xk に対して成り立つと仮定すると、ii + 1 に置き換えても成り立つことを示しましょう。実際、m の定義 (13-10b) と仮定と (13-14) により

(13-16a)  m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i + 1) º pd( m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i) + l(x(1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i)) )

º pd( m(xk , i) + k - 1 + l(xk(i)) )

º pd( m(xk , i) + l(xk(i)) ) + k - 1

º m(xk , i + 1) + k - 1

となって証明されました。
 ゆえに、i に対する帰納法により、(13-15b) は、i º 1 に対して成り立てば、すべての正の i £ len xk についても成り立ち、従って特に、(13-15b)ilen xk を代入して (13-13b) を用いることにより、(13-15c) も成り立つことがわかります。
 ゆえに、まず (13-15b) を、 k º n かつ i º 1 の場合について証明し、次に (13-15c)1 < k £ n のとき成り立つと仮定して、(13-15b)kk - 1 を、i1 を代入して成立することを証明すれば十分です。
 まず k º n かつ i º 1 のときは、n º k ³ 1 ですから、(13-10b),(13-15a),(13-10a) により

(13-16b)  m(x, 2) º pd( m(x, 1) + l(x(1)) ) º pd( n + 1 + l(xn(0)) ) º pd( n + m(xn , 1) ) º m(xn , 1) + n - 1

となるので成立します。また、正の k £ n に対して (13-15c) を仮定すると、(13-10b),(13-14),(13-10a) により

(13-16c)  m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk + 1) º pd( m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk ) + l(x(1 + len xn + ¼ + len xk )) )

º pd( k + l(xk-1(0)) )

º pd( k + m(xk-1 , 1) - 1 )

º m(xk-1 , 1) + k - 2

となって、確かに (13-15b)kk - 1 を、i1 を代入したものが成立します。以上で (13-15) は証明されました。
 さて、(13-13)(13-15b) の右辺に用いると、

(13-17a)  m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i) ³ k + 1       ( 1 £ i < len xk )

(13-17b)  m(x, 1 + len xn + ¼ + len xk+1 + i) ³ k             ( 1 £ i £ len xk )

が成り立つので、(13-17b)kk < l £ n であるような l に置き換えたものと、(13-17a)(13-15a) により

(13-18)  m(x, i) > k       ( 1 £ i < 1 + len xn + ¼ + len xk )

が成り立つことがわかります。ゆえにこれと (13-15c) を使えば、(13-11) で定義される n について

(13-19)  n(x, k) = 1 + len xn + ¼ + len xk       ( 1 £ k £ n )

が成り立つことがわかります。
 この (13-19) を用いると、x(13-12) を満たす、すなわち xÎC となることは明らかです。以上で C が演算に対して閉じていることが証明され、A* の元が (13-12) を満たすことが証明されました。

 ところで、xÎA*ΩnxkÎA* によって (wº)# xn # ¼ # x2 # x1 と書ける場合は、w = x(0) ですから n º |w| により、まず nx に対して一意的に定まります。
 しかも (13-19) により、各 k に対する len xkx に対して一意的に定まり、これは、各 k に対する xkx に対して一意的に定まることを意味しています。言い換えると、A* の元 xx = (wº)# x1 # ¼ # xn と表す方法が一意的であることが証明されたことになります。

 さて、以上の準備のもとに、(A*, j)iA : A ® A* の組が、演算系 (Ω, | · | ) の圏における A の普遍構造になっていることを証明しましょう。

 実際、(B, y) を勝手な (Ω, | · | )-空間、f : A ® B を勝手な関数とします。f* : A* ® Bf = f* ° iA を満たす (Ω, | · | )-準同型であるための必要充分条件は、

(13-20a)  f*((a¹)) = f(a)       ( aÎA )

(13-20b)  f*((wº)# x1# ¼ # xn ) = yw( f*(x1 ) ,¼, f*(xn ))       ( Ωn ; x1 ,¼, xnÎA* )

が成り立つことですから、これらを満たす関数 f* : A* ® B が唯一つ存在することを示せば十分です。

 まず存在を証明しましょう。A* の元のうち、長さが n であるようなもの全体の集合 A*n から B への関数 fn を、n に関する帰納的定義で次のように定義します。
 まず、A*1 の元 x は、aÎA に対する (a¹)Ω0 に対する (wº) のいずれかなので、前者なら f1(x)f(a) 、後者なら f1(x) :º yw と定義します。
 次に n > 1 に対する fn は、xÎA*ny = (wº)# x1# ¼ # xk と一意的に表示されるので、l(i)len xi と置くと l(i) < n ですから

(13-21)  fn(x) :º yw( fl (1)(x1 ) ,¼, fl (k)(xk ))

と定義することができます。
 最後に f*(x) を、xÎA*n となる n に対する fn(x) と定義すれば、f*(13-20) を満たすことは明らかです。以上で存在証明が完成しました。

 また、一意性については、g* : A* ® B(13-20) を満たすとして

(13-22)  C { xÎA* |  f*(x) = g*(x) }

と置くと、明らかに C は演算に対して閉じていることがわかるので、A* の定義により A* Ì C であることがわかりますが、これは f* = g* を意味しています。
 こうして存在の証明された演算系 (Ω, | · | ) の圏における普遍構造を自由演算系とよびます。なお、言葉の濫用により、(A*, jw ) あるいは A*A の自由演算系とよぶことがあり、その場合は iA をその標準写像とよぶことにします。

 さて、演算系では演算は定義されていますが、演算の満たすべき規則(例えば交換律、結合律等)というものは与えられていませんでした。そこで、このような規則を一般的に、自由演算系を使って規定してみましょう。
 演算系 (Ω, | · | ) において、V を同値関係を持つ集合、(V*, c)V の自由演算系、xhV* の元とするとき、3つ組 (V, x, h) のことをとよぶことにします。
 (Ω, | · | )-空間 (A, j) は、任意の関数 h : V ® A に対し、h*(x) = h*(h) が成り立つとき、 (V, x, h) を満たすということにします。
 演算系 (Ω, | · | ) と、律からなる集合 Λ が与えられたとき、すべての律 Λ を満たす (Ω, | · | )-空間を対象とよび、(Ω, | · | )-準同型をとよべば、これも一つの圏を構成します。この圏を、(Ω, | · |, Λ )-代数系とよび、その対象を (Ω, | · |, Λ )-空間、射を (Ω, | · |, Λ )-準同型とよぶことにします。演算系は、Λ が空の場合の代数系とみなすことができます。今後 (A, j) から (B, y) への (Ω, | · |, Λ )-準同型の全体を、紛れがない限り Hom(A, B) と書くことにします。
 また、代数系の圏から集合の圏への関手を、演算系の場合と同様に考えることができますが、この関手も忘却関手といいます。

 Ω'Ω の部分集合、| · |'| · |Ω' への制限とすると、(Ω, | · | )-空間は (Ω', | · |' )-空間とみなすことができます。従って V(Ω', | · |' )-自由演算系 V'* から V(Ω, | · | )-自由演算系 V* への (Ω', | · |' )-準同型 jV が存在して iV = jV ° i'V が成り立ちます。ただし i'V : V ® V'* は標準写像です。
 また Λ(Ω, | · | )-空間の律からなる集合、Λ'(Ω', | · |' )-空間の律からなる集合で、(V, x, h)ÎΛ' ならば (V, jV(x), jV(h))ÎΛ が成り立っているものとします。このとき (Ω', | · |', Λ' )-代数系は (Ω, | · |, Λ )-代数系より弱いということにします。

 さて、(Ω, | · |, Λ )-空間 (A, j)(Ω', | · |', Λ' )-空間でもあるとみなすことができます。
 なぜなら h : V ® A に対し、h = h'*° i'V となる (Ω', | · |' )-準同型 h'* が存在しますが、h = h*° iV = h*° jV ° i'V ですから、普遍構造の一意性条件により h'* = h*° jV が成り立ち、(V, x, h)ÎΛ' ならば、(V, jV(x), jV(h))ÎΛ なので h'*(x) = h*( jV(x)) = h*( jV(h)) = h'*(h) が成り立つからです。
 ゆえにこの“見なし”は関手になることがわかりました。しかもこの関手は明らかに忠実です。

 ここで、代数系も普遍構造を持つ、あるいはもっと一般に、(Ω, | · |, Λ )-代数系より弱い (Ω', | · |', Λ' )-代数系が与えられたとき、任意に与えられた (Ω, | · |, Λ )-空間の族 ( (Ai, ji ) )iÎI(Ω', | · |', Λ' )-空間 (B, j' )(Ω', | · |', Λ' )-準同型の族 (  fi : Ai ® B )iÎI に対して (B, j' )余導入構造が存在することを証明しましょう。
 実際、(B*, y)B(Ω, | · | ) に対する自由演算系とします。ここで、B* ´ B* の部分集合 E , Iw ( Ω' ) , Fiw ( iÎI, Ω ) , Ll ( Λ )

(13-23a)  E { (x, y)ÎB* ´ B* | x = y }

(13-23b)  Iw { ( iB(j'w(x1 ,¼, x|w | )) , yw( iB(x1) ,¼, iB(x|w |)) )  |  x1 ,¼, x|w |ÎB }

(13-23c)  Fiw { (  fi˜(jiw(x1 ,¼, x|w | ) , yw( fi˜(x1) ,¼, fi˜(x|w |)) )  |  x1 ,¼, x|w |ÎAi }       (  fi˜ iB ° fi )

(13-23d)  Ll { (h*(x), h*(h))  |  h : V ® B* }       ( l = (V, x, h) )

で定義し、

(13-24a)  E, Iw , Fiw , Ll Ì R

(13-24b)  Ω , x º (x1 ,¼, x|w | ) , y º ( y1 ,¼, y|w | ) , (xi , yi )ÎR   ( 1 £ i £ n )  Þ  (yw(x), yw( y))ÎR

を満たす B* 上の同値関係 R の全体を R とし、その共分を =' で表わすことにし、同値関係として =' を与えた集合 B*B'* と書きます。
 このとき、(B'*, y)(Ω, | · |, Λ )-代数系の余導入構造であることを証明しましょう。

 実際、明らかに R の共分も (13-24) を満たし、(13-23d) により (B'*, j) はすべての律 Λ を満たすので (Ω, | · |, Λ )-空間です。
 また iB : B ® B'* は、(13-23a) により関数であり、(13-23b) により (Ω', | · |' )-準同型であることがわかります。
 同様に、
iB ° fi : Ai ® B'* は、(13-23a) により関数であり、(13-23c) により (Ω, | · | )-準同型であることがわかります。
 次に
(C, c)(Ω, | · |, Λ )-空間、g : B ® Cg ° fi がすべての iÎI に対して (Ω, | · | )-準同型になるような (Ω', | · |' )-準同型とします。
 すると、B*(Ω, | · | ) に対する B の自由演算系なので、(Ω, | · | )-準同型 g* : B* ® C が存在し、g* ° iB = g が、従って g* ° fi˜ = g* ° iB ° fi = g ° fi が成り立ちます。そこで

(13-25)  R { (x, y)ÎB* ´ B* | g*(x) = g*( y) }

と置くと、これは明らかに同値関係であり、しかも g* は関数なので、E Ì R が成り立ちます。また、g* ° iBg*(Ω', | · |' )-準同型ですから、Ω' に対して

(13-26)  g*( iB(j'w(x1 ,¼, x|w | )) = cw(g*(iB(x1 )) ,¼, g*(iB(x|w | ))) = g*(yw(iB(x1 ) ,¼, iB(x|w | )))

となるので Iw Ì R がわかります。また、g* ° fi˜g*(Ω, | · | )-準同型ですから、iÎI , Ω に対して

(13-27)  g*( fi˜(jiw(x1 ,¼, x|w | )) = cw(g*( fi˜(x1 )) ,¼, g*( fi˜(x|w | ))) = g*(yw( fi˜(x1 ) ,¼, fi˜(x|w | )))

となるので Fiw Ì R がわかります。また、任意の関数 h : V ® B* に対し、g* ° h* ° iV = g* ° h ですから g* ° h* = (g* ° h)* がわかり、C がすべての律 (V, x, h)ÎΛ を満たすことから

(13-28)  g*(h*(x)) = (g* ° h)*(x) = (g* ° h)*(h) = g*(h*(h))

となるので Ll Ì R がわかります。以上で R(13-24a) を満たすことがわかりました。また g* が準同型であることから (13-24b) も成り立ちます。
 よって x, yÎB* について x =' y なら (x, y)ÎR すなわち g*(x) = g*( y) となることがわかりました。これは、g*B'* から C への (Ω, | · | )-準同型でもあることを意味しています。また、g* ° iB = g となる g* の一意性は、B*B の自由演算系であることから従います。
 以上で (B'*, y)(B, j' ) の余導入構造になっていることが確かめられました。特に、Ω' = I = Æ すなわち関手が忘却関手で普遍構造の場合を、集合 B 上の自由代数系とよびます。
 一方、第8節によれば集合の圏は余完備であり、これと第9節の一般論によれば忘却関手が必ず余導入構造を持てば余完備ですから、任意の代数系の圏は余完備であることがわかりました。

 次に代数系の圏の極限について考察しましょう。(Av, jv )vÎOD(Ω, | · |, Λ )-空間の族、i : Au ® Av ( HD(u, v) )(Ω, | · |, Λ )-準同型の族とするとき、第8節 (8-5)~(8-7) によって集合の圏における極限:

(13-29a)  L { xÎP  |  "u, vÎOD : "iÎHD(u, v) : i(x(u)) =v x(v) }

(13-29b)  x = y  :º  "vÎOD : x(v) =v y(v)

(13-29c)  pvx |® x(v)

を作ります。このとき、Ω に対する L 上の演算 jw

(13-30)  jw(x1 ,¼ x|w | ) v |® jvw(pv(x1 ) ,¼, pv(x|w | ))

で定義すると、これが (Ω, | · |, Λ )-代数系における極限になることが証明できます。
 実際、HD(u, v) のとき、i が準同型であることから、x1 ,¼, x|w |ÎL に対して

(13-31)  i (juw(pu(x1 ) ,¼, pu(x|w | ))) = jvw( i (pu(x1 )) ,¼, i (pu(x|w | ))) = jvw(pv(x1 ) ,¼, pv(x|w | ))

となっているので jw(x1 ,¼ x|w |)ÎL がわかります。また、(13-30)

(13-32)  pv(jw(x1 ,¼ x|w | )) = jvw(pv(x1 ) ,¼, pv(x|w | ))

と書けますが、これは pv が準同型であることを意味しています。
 次に、律 (V, x, h)ÎΛ と任意の関数 h : V ® L に対し、h* : V* ® Lpv は準同型で、しかも pv ° h* ° iV = pv ° h ですから pv ° h* = (pv ° h)* がわかり、(Av, jv ) が律を満たすことから、

(13-33)  pv(h*(x)) = (pv ° h)*(x) = (pv ° h)*(h) = pv(h*(h))

となりますが、これと (13-29b) により h*(x) = h*(h) が得られ、(L, j) も律を満たすことがわかり、これが (Ω, | · |, Λ )-空間であることがわかりました。
 最後に (B, y)(Ω, | · |, Λ )-空間、(  fv : B ® Av )vÎODHD(u, v) に対して i ° fu = fv を満たす準同型の族とすると、L が集合の圏における極限であることから、関数 g : B ® L が存在して pv ° g = fv となりますが、更に pvfv が準同型であることから、

(13-34)  pv(g(yw(x1 ,¼ x|w | ))) = fv(yw(x1 ,¼ x|w | )) = jvw( fv(x1 ) ,¼,  fv(x|w | )) = jvw(pv(g(x1 )) ,¼, pv(g(x|w | ))) = pv(jw(g(x1 ) ,¼, g(x|w | )))

が成り立つので、(13-29b) により g(yw(x1 ,¼ x|w | )) = jw(g(x1 ) ,¼, g(x|w | )) が得られ、g が準同型であることがわかります。なお、g の一意性は、集合の圏における g の一意性から従います。
 以上で (L, j)(Ω, | · |, Λ )-代数系における極限になっていることがわかり、任意の代数系の圏は完備であること、及び忘却関手は極限保存関手であることがわかりました。
 また更に、第8節の結果と、第7節の極限保存関手は単関手であるという一般論により、代数系の圏では単射であることと一対一であることは同値であることがわかります。

 さて、ここで一対一かつ上への準同型は同型射であることに注意しておきます。実際、(13-3) において、f が一対一かつ上への関数であれば、集合の圏における逆射 f -1 が存在します。任意の y1 ,¼, ynÎB に対して xif -1( yi ) と置くと、(13-3) から

(13-35)  j( f -1( y1 ) ,¼, f -1( yn )) = j(x1 ,¼, xn ) = f -1(y( f(x1 ) ,¼, f(xn ))) = f -1(y( y1 ,¼, yn ))

となるので、f -1 は準同型です。これは f が代数系の圏においても逆射を持つ、すなわち同型射であることを意味しています。

 ところで、任意の準同型 f : A ® B に対して R f を、第8節 (8-22a) と同様に

(13-36)  R f { (x, y)ÎA ´ A |  f(x) = f( y) }

で定義すると、任意の Ωnx1 ,¼, xn , y1 ,¼, ynÎL に対して f(xi ) = f( yi ) ( 1 £ i £ n ) なら、f が準同型なので、B の演算を y とすれば、

(13-37)   f(jw(x1 ,¼, xn )) = yw( f(x1) ,¼, f(xn )) = yw( f( y1) ,¼, f( yn )) = f(jw( y1 ,¼, yn ))

となるので、A の同値関係 =R f に置き換えたものを A/R f と書けば、jwA/R f 上の演算にもなっています。これは (A/R f , j)(Ω, | · | )-空間であることを意味しますが、A が律を満たすので、当然 A/R f も律を満たし、実は (Ω, | · | , Λ )-空間にもなっていることがわかります。
 次に g を、R f 上で g ° πL = g ° πR を満たす A から (Ω, | · | )-空間 D への準同型とすると、(x, y)ÎRf なら g(x) = g( y) ですから、gA/Rf から D への関数とみなせ、しかも明らかに準同型です。一方、idA : A ® A/Rf は準同型で、g = g ° idA と分解されるので、これは (Ω, | · |, Λ )-代数系においても A/R f @ Coeq(pL , pR ) @ Coim( f ) が成り立つことを意味しています。
 一方、第8節の議論により、標準写像 i : A/R f  ® { yÎB | $xÎA : y = f(x) } は集合の圏の同型射であり、しかも i(x) = f(x) ですから i は準同型なので、(13-35) により、これは (Ω, | · | , Λ )-代数系の同型射です。すなわち

(13-38)   Coim( f ) @ { yÎB | $xÎA : y = f(x) }

が成り立ち、従って特に代数系の圏では効果的全射であることと上への関数であることは同値であることがわかりました。

 次に、部分空間商空間を定義しましょう。
 (Ω, | · | , Λ )-空間 A , S一対一の準同型 i : S ® A が与えられたとき、(S, i)A部分空間といい、特に i が正規であるとき正規部分空間といいます。
 また、(Ω, | · | , Λ )-空間 A , Q上への準同型 p : A ® Q が与えられたとき、(Q, p)A商空間といい、特に p が余正規であるとき余正規商空間といいます。

 さて、不等号を持つ集合 A に対し、不等号を持つ集合の圏における ANnAn を考えることができます。
 そこで、自然数 n強関数 j : An ® A が与えられたとき、jA 上のn項強演算といい、準同型である強関数を強準同型とよぶことにします。
 また、演算の型の集合 Ω も不等号を持つとき、代数系の定義において、同値関係を持つ集合を不等号を持つ集合に、準同型を強準同型に、演算を強演算にそれぞれ置き換えたものを強代数系とよべば、これは一つの圏を構成します。そこで (Ω, | · |, Λ )-強代数系の圏の対象を (Ω, | · |, Λ )-強空間とよぶことにします。

 強演算系に対しても、不等号を持つ集合の圏との間の普遍構造が存在します。
 具体的には、代数系 A に対する自由演算系 A* において、x, yÎA* に対して len x ¹ len y 又は x(i) ¹ y(i) となる i が存在するとき x ¹ y と定義すれば、これは A* の不等号となりますが、更にこれが A の自由強演算系になります。
 実際、(13-8a) で定義される iA は明らかに強関数ですが、(13-20) で定義される関数 f も強関数です。このことを示すには、そこで定義した各 fn が強関数であることを示せば十分ですが、これは (13-20) と帰納法により明らかです。
 こうして得られた普遍構造を自由強演算系といいます。

 また、強代数系も普遍構造を持つ、あるいはもっと一般に、(Ω, | · |, Λ )-強代数系より弱い (Ω', | · |', Λ' )-強代数系が与えられたとき、任意に与えられた (Ω, | · |, Λ )-強空間の族 ( (Ai, ji ) )iÎI(Ω', | · |', Λ' )-強空間 (B, j' )(Ω', | · |', Λ' )-準同型の族 (  fi : Ai ® B )iÎI に対して (B, j' )余導入構造が存在することを証明しましょう。
 実際、(B*, y)B(Ω, | · | ) に対する自由強演算系とします。ここで、B* ´ B* の部分集合 N , Iw ( Ω' ) , Fiw ( iÎI, Ω ) , Ll ( Λ )

(13-39)  N { (x, y)ÎB* ´ B* | x ¹ y }

及び (13-23b)~(13-23d) によって定義します。このとき

(13-40a)  R Ì N

(13-40b)  Iw , Fiw , Ll Ì CR

(13-40c)  Ω , x º (x1 ,¼, x|w | ) , y º ( y1 ,¼, y|w | ) , (yw(x), yw( y))ÎR  Þ  $i : (xi , yi )ÎR

を満たす B* 上の不等号 R の全体を R とし、その合併を ¹' で表わすことにし、同値関係として ¹' を与えた集合 B*B'* と書きます。
 このとき、(B'*, y)(Ω, | · |, Λ )-強代数系の余導入構造であることを証明しましょう。

 実際、明らかに R の合併も (13-40) を満たし、iB : B ® B'* は、(13-40a) により強関数であり、iB ° fi : Ai ® B'*f が強関数であることと (13-40a) により強関数です。
 次に (C, c)(Ω, | · |, Λ )-強空間、g : B ® Cg ° fi がすべての iÎI に対して (Ω, | · | )-強準同型になるような (Ω', | · |' )-強準同型とします。
 すると、B*(Ω, | · | ) に対する B の自由強演算系なので、(Ω, | · | )-強準同型 g* : B* ® C が存在し、g* ° iB = g が成り立ちます。そこで

(13-41)  R { (x, y)ÎB* ´ B* | g*(x) ¹ g*( y) }

と置くと、これは明らかに不等号であり、しかも g* は強関数なので、(13-40a) が成り立ちます。また、(13-26)~(13-28) の証明と同様にして (13-40b) が成り立つこともわかります。また g* が強準同型であることから (13-40c) も成り立ちます。
 以上により x, yÎB* について g*(x) ¹ g*( y) すなわち (x, y)ÎR なら x ¹' y となることがわかりました。これは、g*B'* から C への (Ω, | · | )-強準同型でもあることを意味しています。
 他の条件は、自由代数系の場合と同様に示されるので、(B'*, y)(B, j' ) の余導入構造になっていることが確かめられました。特に、Ω' = I = Æ すなわち関手が忘却関手で普遍構造の場合を、集合 B 上の自由強代数系とよびます。
 なお、強代数系の圏から不等号を持つ集合の圏への関手を、代数系の圏から集合の圏への関手と同様に考えることができますが、この関手もやはり忘却関手とよぶことにします。
 一方、第8節によれば、不等号を持つ集合の圏は余完備であり、これと第9節の一般論によれば忘却関手が必ず余導入構造を持てば余完備ですから、任意の強代数系の圏は余完備であることがわかりました。

 次に強代数系の圏の極限について考察しましょう。(Av, jv )vÎOD(Ω, | · |, Λ )-強空間の族、i : Au ® Av ( HD(u, v) )(Ω, | · |, Λ )-強準同型の族とするとき、(23-29a),(23-29c) により Lpv を定義し、L 上の不等号 ¹

(13-42)  x ¹ y  :º  $vÎOD : x(v) ¹v y(v)

で定義します。このとき、Ω に対する L 上の演算 jw(13-30) で定義すると、これが (Ω, | · |, Λ )-強代数系における極限になります。
 実際、これが (Ω, | · |, Λ )-強空間であることは、代数系の場合の証明と全く同様です。
 また (B, y)(Ω, | · |, Λ )-強空間、(  fv : B ® Av )vÎODHD(u, v) に対して i ° fu = fv を満たす強準同型の族とすると、準同型 g : B ® L が存在して pv ° g = fv となります。
 もし x, yÎBg(x) ¹ g( y) を満たせば、L の不等号の定義 (13-42) により、ある vÎOD に対して pv(g(x)) ¹ pv(g( y)) すなわち fv(x) ¹ fv( y) となるので、fv が強関数であることから x ¹ y となることがわかり、g は強準同型であることが証明されました。
 他の条件は、代数系の場合と同様に示されるので、(L, j)(Ω, | · |, Λ )-強代数系における極限になっていることがわかり、任意の強代数系の圏は完備であること、及び忘却関手は極限保存関手であることがわかりました。

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