数学の基礎


16.可換環論と多項式

 整域 R は、その同値関係について排中律が成り立つ、すなわち任意の元 a , b について

(16-1)  a = b  Ú  a ¹ b

が成り立つとき可識整域とよび、可識整域であるような体を可識体とよぶことにします。R が可識整域なら、その商体 q[R] は可識体です。また順序環であるような整域は可識整域であり、順序体は可識体です。従って特に Z は可識整域で、Q は可識体です。

 単位的可換環 R の元 a , b に対し、b = ac となる cÎR が存在するとき ab割り切る、あるいは ab約元である、あるいは ba倍元であるといって a | b と書きます。明らかに

(16-2a)  a | a

(16-2b)  a | 0

(16-2c)  1 | a

(16-2d)  ( a | b  Ù  b | c )  Þ  a | c

が成り立ちます。すなわち割り切るという関係 a | b は最小値 1 と最大値 0 を持つ擬順序関係です。そこで a | b かつ b | a であるとき ab同伴であるといって a ~ b と書きます。これは明らかに同値関係で、関係 | は同値関係 ~ と両立します。
 R の部分集合 A に対し、順序関係 | に対する下限が存在するとき、これを A最大公約元とよんで gcd A と書き、上限が存在するとき、これを A最小公倍元とよんで lcm A と書きます。また gcd A ~ 1 のとき A互いに素であるといい、{a, b} が互いに素であるというかわりに ab は互いに素であるともいいます。

 単位的可換環 R に対し、

(16-3a)  gcd{a} ~ a

(16-3b)  a | b  Û  gcd{a, b} ~ a

(16-3c)  ( $cÎR´ : a | c )  Û  aÎR´  Û  a | 1  Û  a ~ 1

(16-3d)  A Ì R , R´Ç A ¹ Æ  Þ  gcd A ~ 1

(16-3e)  ( $cÎR´ : a = bc )  Þ  a ~ b

が成り立ち、更に R が可識整域なら (16-3e) は逆も成り立ちます
 実際、まず (16-3a)(16-2a) により明らかです。
 次に (16-3b) は、左辺を仮定すると、a の約元であることと a , b の共通の約元であることが同値になるので、(16-3a) により (16-3b) の右辺が得られます。逆に右辺を仮定すると、特に ab を割り切るので明らかです。
 次に (16-3c) は、a が可逆な元 c を割り切れば、c = ab となるので abc-1 = 1 となり、これは a が可逆であることを意味します。また a | 1ac = 1 となる c の存在と同値であり、これもまた a が可逆であることと同値です。最後の同値性は (16-2c) から明らかです。
 次に (16-3d) は、A Ì R が可逆な元 c を持てば、(16-3c) により c の約元は 1 と同伴なので、これが A のすべての元に対して共通な唯一の約元になります。
 最後に (16-3e) は、R の可逆元 c によって a = bc と書ければ、b = ac-1 となるので、ab は互いに他の約元で、従って a ~ b となります。
 また R が可識整域のときは、右辺を仮定すると b | a により、a = bc となる cÎR が存在し、a | b により、b = ad となる dÎR が存在するので a = adc すなわち a(1 - dc) = 0 となります。
 ここで、R は可識整域ですから a = 0 又は a ¹ 0 ですが、前者なら b = ad = 0 なので、この場合は a = b1 と書けます。また後者の場合は、R が整域であることから 1 - dc ¹ 0 と仮定すると a(1 - dc) ¹ 0 となって矛盾するので 1 - dc = 0 すなわち dc = 1 となり、これは cR の可逆元であることを意味しています。

 さて、可識整域 R は、次数とよばれる R \ {0} から Z への関数 deg が与えられ、任意の a, bÎR に対して

(16-4a)  | deg(ab) | ³ | deg b |       ( a, b ¹ 0 )

(16-4b)  $!c, dÎR : [ a = bc + d  Ù  ( d = 0  Ú  0 £ deg d < | deg b | ) ]       ( b ¹ 0 )

が成り立つとき準ユークリッド整域といいます。
 なお、(16-4b)cd の一意性は、どちらか一方を示せば十分です。なぜなら、c の一意性から d の一意性が出ることは明らかですが、逆に d が一意的なら a = bc + d = bc' + d すなわち b(c - c' ) = 0 なら、b ¹ 0R が整域であることから c - c' ¹ 0 と仮定すると矛盾するので c = c' が得られるからです。
 また、0 でない任意の元 a に対し、その約元の全体を A とするとき、同値関係を持つ集合 ( A , ~ ) が有限集合になるような可識整域を有限可約であるということにし、有限可約な準ユークリッド整域をユークリッド整域とよびます。

 ところで (16-4b)deg b = 0 なら、d = 0 でなければならないので a = bc となります。従って特に a = 1 の場合を考えれば、これは b が可逆であることを意味します。すなわち b を改めて a と書き換えることにより、

(16-5)  deg a = 0  Þ  aÎR´

が成り立ちます。

 さて、負の整数 n に対して deg nn + 1 、正の整数 n に対して deg nn - 1 と置けば、| deg n | = | n | - 1 ですから (16-4a) が成り立ち、(15-52) により (16-4b) も成り立ちます。
 しかも 0 でない整数 n の約元は、絶対値が | n | 以下なので、その個数は有限ですから、Z はユークリッド整域であることがわかりました。

 一般に、単位的可換環 A において、A の有限列 { aiÎA | 1 £ i < k } に対し、

(16-6)  ( a1 , ¼ , ak ) { åi aibi | biÎA , 1 £ i £ k }

と置くと、これは明らかに { ai | 1 £ i < k } を含む最小のイデアルになります。これを { aiÎA | 1 £ i < k }生成するイデアルといい、特に k = 1 のとき単項イデアル又は主イデアルといいます。

 そこで、可識整域 R は、割り切るという関係 | に関して排中律:

(16-7)  a | b  Ú  Ø a | b

が成り立ち、かつ任意の2元が生成するイデアルは主イデアルである、すなわち

(16-8)  "a, bÎR : $cÎR : ( a, b ) = ( c )

が成り立つとき、準主イデアル整域又はPIDといい、更に有限可約であるとき主イデアル整域又はPIDといいます。

 条件 (16-7) を満たす可識整域 R が準PIDであるためには、任意の 0 でない2元 a, bÎR に対して cgcd{a, b} が存在して、しかもある p, qÎR によって

(16-9)  c = pa + qb

と書けることが必要十分です。
 実際、まず (16-9) を仮定して R が準PIDであることを証明しましょう。
 任意の a, bÎR に対し、もし a = 0 なら ( a, b ) = ( b ) で、b = 0 でも同じことですから、ab0 でないと仮定すれば十分です。このとき仮定により ab の最大公約元 c が存在して (16-9) が成り立つので、まず ( c ) Ì ( a, b ) が成り立ちます。一方、cab を割り切るので、a = cg , b = ch となる g, hÎR が存在するので ( a, b ) Ì ( c ) が成り立ちます。
 逆に R が準PIDであると仮定すると、0 でない任意の a, bÎR に対して ( a, b ) = ( c ) となる cÎR が存在し、従って特に cÎ( a, b ) なので、(16-9) の形に書けます。また a, bÎ( c ) なので cab の約元ですが、もし dab の約元なら a = gd , b = hd と書けるので、これを (16-9) に代入すれば、c = pgd + qhd = ( pg + qh)d と書けるので dc の約元となり、c ~ gcd{a, b} であることがわかります。

 ここで、一般に(準)ユークリッド整域は(準)PIDであることを証明しましょう。
 実際、まず (16-7) が成り立つことを証明します。
 b = 0 なら、a = 0 のとき b | a が成り立ち、a ¹ 0 のとき Ø b | a が成り立つので b ¹ 0 の場合のみを考えれば十分です。
 このとき (16-4b) において、d = 0 なら明らかに b | a が成り立つので d ¹ 0 と仮定します。
 ここで更に b | a と仮定すると、(16-4b) により b | d となるので d = br と表され、r = 0 と仮定すると d = 0 となって矛盾し、r ¹ 0 と仮定すると (16-4a) により | deg d | = | deg(br) | ³ | deg b | となって、今度は (16-4b) に反します。従って Ø b | a が導かれ、(16-7) は証明されました。
 あとは、準ユークリッド整域 R0 でない2元 a , b に対して、その最大公約元 c が存在して (16-9) の形に書けることを示せば十分です。従ってこれを、nmin{ | deg a | , | deg b | } に関する帰納法で証明しましょう。
 まず n = 0 なら、(16-5) により a 又は bR の可逆元ですから、例えば a が可逆であるとすれば、(16-3d) により gcd{a, b} ~ 1 ですから、c :º 1 , pa-1 , q :º 0 と置けば (16-9) が成り立ちます。
 次に、n まで正しいとして min{ | deg a | , | deg b | } = n + 1 の場合を証明しましょう。
 どちらでも同じですから | deg b | = n + 1 とすると、(16-4b) を満たす c , d が存在します。
 もし d = 0 なら a = bc すなわち b | a なので、(16-3b) により b ~ gcd{a, b} ですから cb , p :º 0 , q :º 1 と置けば (16-9) が成り立ちます。
 次に d ¹ 0 の場合を考えます。
 このとき a = bc + d ですから、任意の rÎR に対して、これが ab を共に割り切ることと、bd を共に割り切ることは同値です。
 ところが min{ | deg b | , | deg d | } = deg d £ n ですから、帰納法の仮定により rgcd{b, d} が存在し、かつ

(16-10)  r = pb + qd

となるような p, qÎR が存在します。このとき r ~ gcd{a, b} で、しかも (16-10)a = bc + d により

(16-11)  r = pb + q(a - bc) = qa + ( p - qc)b

となり、これは (16-9) の形に書けています。以上で帰納法が完成しました。

 単位的可換環 R0 でも可逆元でもないp は、約元が 1 とそれ自身のみである、正確に言うと

(16-12)  "aÎR : [ a | p  Þ  ( a ~ 1  Ú  a ~ p )]

を満たすとき既約であるといいます。Ø 1 ~ p ですから、この条件は p の約元の個数がちょうど 2 であることを意味しています。

 同伴でない2つの既約元 pq は互いに素です。
 実際、a | p かつ a | q なら a ~ 1 又は a ~ p で、しかも a ~ 1 又は a ~ q です。条件により Ø p ~ 1 , Ø q ~ 1 , Ø p ~ q ですから a ~ 1 の可能性しかないことがわかり、これは gcd{ p, q} ~ 1 すなわち pq が互いに素であることを意味しています。

 もし R有限可約で (16-7) が成り立つならば、同値関係 ~ は排中律を満たすので、この同値関係のもとで、p の約元の全体からなる有限集合 A は個数 n を持ちます(第11節参照)。
 従ってこの場合、p が既約であることと n = 2 であることは同値になるので、p既約であるか既約でないかどちらかです。また、n ³ 3 のとき、p可約であるといいます。ちなみに n の最小値は 1 で、n = 1p が可逆元であることは同値です。

 さて、一般にPID R において、0 でない pa互いに素なら

(16-13)  p | ab  Þ  p | b

が成り立ちます。実際、gcd{ p, a} ~ 1 なので

(16-14)  1 = rp + qa

を満たす r, qÎR が存在しますが、両辺に b を乗じれば b = rbp + q(ab) となり、右辺各項は p で割り切れるので、左辺の bp で割り切れます。

 この結果を用いると、pPID R既約元なら

(16-15)  p | ab  Þ  ( p | a  Ú  p | b )

が成り立つことがわかります。
 実際、a = 0 なら p | a となり (16-15) は自明ですから a ¹ 0 とします。ここで cgcd{ p, a} と置くと、p は既約なので c ~ p 又は c ~ 1 となります。
 前者の場合は p ~ gcd{ p, a} ということですから、これは (16-3b) により pa を割り切ることを意味します。
 また後者の場合は pa が互いに素ということですから、(16-13) により pb を割り切ることがわかります。

 可識整域 R は、(16-7) を満たし、かつ 0 でない任意の元 a が、互いに同伴でない有限個の既約元 pi ( 1 £ i £ k ) の組と正整数の組 ei ( 1 £ i £ k ) によって、順序を除いて同伴関係に関して一意的に

(16-16)  a ~  k
Õ
i=1
piei

と表されるとき、一意分解整域あるいはUFDとよびます。
 UFDでは、b | a なら、a = bc と書けるので、既約元による分解の一意性により、a の既約元による分解は、b のそれと c のそれの単純な積になります。つまり言いかえると、a の約元 b は、a を分解した (16-16) の右辺の一部からなる積でなければなりません。
 従って、UFD でも有限集合は最大公約元と最小公倍元を持ち、(16-13)(16-15) が成り立ちます。また、明らかに有限可約ですから、任意の元は、その約数の個数が定まり、従って特に、既約であるかないかどちらかです。

 さて、PIDUFDであることを証明しましょう。
 実際、既約性について排中律が成り立つので、a の約元のうち、既約なもののみを選んで、その全体を { pi | 1 £ i £ k } ( i ¹ j  Þ  Ø pi ~ pj ) と書くことができますが、自然数 e < e' に対し、Ø pie ~ pie' です。
 なぜなら、pie ~ pie' と仮定すると、cpie = pie' となる可逆元 c が存在し、pie(c - pie'-e ) = 0 で、pie ¹ 0 ですから pie'-e = c ~ 1 となって pi は可逆となり、矛盾するからです。
 ゆえに同値関係 ~ のもとでの a の約元の個数を n とすると、pie ( 0 £ e £ n ) はすべて互いに非同伴なので、これらがすべて a を割り切ることはありません。なぜならその場合、これらはすべて a の約元で、しかもそれらの個数 n + 1a の約元の個数を超えてしまうからです。
 ゆえに、各 i に対して pie | a となる最大の e < n が存在しますから、これを ei と書くと、明らかに ei ³ 1 です。このとき (16-16) が成り立つことを k に関する帰納法で証明しましょう。
 まず、k = 0 なら、a は既約な約元を持たないということですから、特に a は既約ではなく、従って n ¹ 2 です。
 もし n ³ 3 であると仮定すると、a とも 1 とも同伴でない a0a の約元 a1 が存在し、仮定によりこれは既約ではありません。ゆえにこれを繰り返せば ai と同伴でなく、可逆でも既約でもない ai の約元 ai+1 が存在し、 ai ( iÎN ) は互いに同伴でない a の無限個の約元となり、仮定に反します。
 以上により n = 1 であることがわかり、a は可逆であることが示され、この場合は (16-16) の右辺が 1 なので、この式は成立します。
 次に k より小さいとき (16-16) が成立すると仮定すると、pkek | a ですから a = bpkek と書けます。
 pk と同伴でない既約元 pb を割り切れば a の約元ですが、逆に a を割り切れば、ppk は互いに素なので (16-13) を繰り返し用いることにより pb の約元であることがわかります。また、pkb を割り切ると仮定すると ek の定義に反します。
 ゆえに、b の既約な約元の全体は { pi | 1 £ i £ k - 1 } であることがわかります。
 しかも pieb を割り切れば、明らかに a を割り切りますが、逆に a を割り切れば、pipk は互いに素なので bpi で割り切れますが、R が整域であることから、次々に両辺から因子 p を落としていくことにより、結局 bpie で割り切れることがわかります。ゆえに pie | b となる最大の eei であることがわかります。ゆえに帰納法の仮定により

(16-17)  b ~ k-1
Õ
i=1
piei

となり、従って (16-16) が得られます。
 なお、一意性は、

(16-18)    k
Õ
i=1
piei ~  l
Õ
j=1
qje'j

とすると、(16-15) により pi はある qj を割り切り、どちらも既約元なので実は両者は同伴です。ゆえに pi の全体と qj の全体は順序を除いて一致します。pi ~ qj のとき、もし ei > e'j とすると、両辺の一方のみ piei で割り切れ、他方は割り切れないことになるので矛盾です。不等号が逆でも同様です。以上で一意性も証明されました。

 さて、次に R を単位的可換環、S を集合とするとき、単位的可換環 XR から X への環準同型 fS から X への写像 j からなる3つ組 (X, f, j)対象とよび、そこから別の対象 (Y, g, y) へのを、X から Y への環準同型 F で、g = F ° f 及び y = F ° j を満たすもののことであると定義すれば、これは一つのを構成します。そこで、この圏の始対象を、S を変数の族とする R 上の多項式環とよび、それ(あるいはその第1成分)を R[S] と書きます。特に S が1個の元からなるとき、1変数の多項式環とよび、R[x] と書きます。
 R 上の1変数多項式環とは、単位的可換環 R[x] と環準同型 i : R ® R[x] と元 xÎR[x] の組 (R[x], i, x) で、任意の単位的可換環 X と環準同型  f : R ® X と元 X に対し、f = F ° i かつ a = F(x) となる環準同型 F : R[x] ® X がただ一つ存在するようなもののことに他なりません。

 R[S] は次のようにして構成できます。
 まず、RS の集合の圏における余積を Q と書き、R から Q への標準写像を j , S から Q への標準写像を k と書きます。そこで、j : R ® Q による Q の余導入構造を R[S] と書き、jQ から R[S] への標準写像 J を合成したものを i と書き、kJ を合成したものを i と書けば、(R[S], i, i) が求めるものです。
 実際、X を任意の単位的可換環、f : R ® X を任意の環準同型、j : S ® X を任意の写像とすると、Q が集合の圏における RS の余積であることから、写像 c : Q ® X が存在して f = c ° j , j = c ° k が成り立ちます。ゆえに余導入構造の定義により、R[S] から X への環準同型 F が存在して c = F ° J となり、これは f = F ° i 及び j = F ° i が成り立つことを意味します。
 逆にこのような準同型 F が存在すれば、c ° j = F ° J ° j 及び c ° k = F ° J ° k が成り立つので、集合の余積に関する一意性条件から c = F ° J となり、余導入構造に関する一意性条件により F は一意的であることがわかります。
 以上で F(R[S], i, i) から (X, f, j) への唯一の射になっていることがわかり、証明は完成しました。

 なお、1変数多項式環については次のような構成方法もあります。
 まず R の点列 p{ pi | iÎN } のうち、ある n から先が 0 、すなわち "i ³ n : pi = 0 を満たすものの全体を R[x] とし、その上に加法と乗法を

(16-19a)  ( p + q)ipi + qi

(16-19b)  ( pq)i i
å
 j=0
pj qi-j 

で定義すれば、

(16-20a)  (( pq)r)i = i
å
 j=0
( pq)j ri-j = i
å
 j=0
j
å
k=0
 pk qj-k ri-j = i
å
k=0
i
å
 j=k
 pk qj-k ri-j = i
å
k=0
i-k
å
 j=0
 pk qj ri-k-j = i
å
k=0
 pk(qr)i-k = ( p(qr))i

(16-20b)  ( pq)i i
å
 j=0
 pj qi-j = i
å
k=0
 pi-k qk = (qp)i

等により、R[x] が、01 、その他で 0 を取る元 e を乗法の単位元とする単位的可換環になることがわかります。
 そこで、i : R ® R[x] を、i(a)0 º a かつ i(a)i º 0 ( i > 0 ) で定義し、xÎR[x] を、x1 º 1 かつ xi º 0 ( i ¹ 1 ) で定義すれば、(R[S], i, x)R 上の1変数多項式環になります。
 実際、まず x(xk )k = 1 かつ (xk )i = 0 ( i ¹ k ) を満たすので、任意の pÎR[x] に対して (i( pk ) xk )k = pk かつ (i( pk ) xk )i = 0 ( i ¹ k ) が成り立ち、従って p

(16-21)  p = ¥
å
k=0
i( pk ) xk

という形に書けることに注意します。ただし右辺の和は実は有限和です。
 次に、任意の単位的可換環 X と環準同型 f : R ® X と元 X が与えられたとき、もし環準同型 F : R[x] ® X が存在して f = F ° i かつ a = F(x) となったとすれば、任意の pÎR[x] に対し、これを (16-21) の形に書いて、F が環準同型であることを用いれば、

(16-22)  F( p) = ¥
å
k=0
F(i( pk ))F(x)k = ¥
å
k=0
 f( pk )ak

が成り立つので、そのような F は存在すれば一意的です。
 逆に任意の pÎR[x] に対し、F( p)(16-22) の右辺で定義すれば、F は明らかに和を和に写し、

(16-23)  F( pq) = ¥
å
k=0
 f(( pq)k )ak = ¥
å
k=0
k
å
l=0
 f( pl ) f(qk-l )ak = ¥
å
l=0
¥
å
m=0
 f( pl ) f(qm )al+m = ¥
å
l=0
 f( pl )al ¥
å
m=0
 f(qm )am = F( p)F(q)

となって積を積に写すので、環準同型です。更に f = F ° ia = F(x) も成り立っています。

 さて、R[x] の元は x の多項式とよばれますが、f : R ® XX が与えられたとき、f = F ° ia = F(x) を満たす環準同型 F : R[x] ® X が唯一つ存在しますが、pÎR[x] の像 F( p)ÎX のことを、多項式 pa を代入したものとよんで、紛れのない限りこれを p(a) と書くことにします。特に X 及び a として R[x]x を取ると、F は恒等写像になりますから、p 自身が p(x) とも書けることになります。
 この記法のもとで、

(16-24)  p = ¥
å
k=0
pk xk  Þ  p(a) = ¥
å
k=0
pk ak

が成り立ちます。また、pkÎR を、1変数多項式 pk 次の係数とよびます。また、上の構成方法における定義から明らかに

(16-25)  p = 0  Û  "kÎN : pk = 0

が成り立ちます。

 1変数多項式 pÎR[x] は、任意の k > n に対する k 次の係数が 0 であるとき高々nであるといい、更に pn が可逆なとき nであるといいます。このとき任意の多項式 g と任意の n多項式 p に対し、多項式 q高々n - 1の多項式 r唯一組存在して

(16-26)  g = pq + r

と書けることを証明しましょう。
 実際、多項式の定義により、g は、ある自然数 m が存在して高々m次ですから、まず存在m に対する帰納法で証明します。
 まず m < n なら q :º 0 , rg と置けばよいので明らかです。
 次に m ³ n - 1 まで正しいと仮定し、g は高々m + 1次であるとします。このとき、R の元 gm+1 と可逆元 pn と高々m次の多項式 g' と高々n - 1次の多項式 p' が存在して

(16-27a)  g = gm+1 x m+1 + g'

(16-27b)  p = pn x n + p'

と書けます。ゆえに g - g' = gm+1 x m+1 = gm+1 pn-1 x m-n+1 pn x n = gm+1 pn-1 x m-n+1( p - p' ) ですから、

(16-28)  g = gm+1 pn-1 x m-n+1 p + ( g' - gm+1 pn-1 x m-n+1 p' )

と書け、( ) の中は高々m次ですから、帰納法の仮定により pq' + r と書けるので、qgm+1 pn-1 x m-n+1 + q' と置けば、(16-26) の表示が得られ、帰納法が完成しました。
 次に一意性ですが、これは g = 0 のとき q = r = 0 となることを証明すれば十分です。そこで、qk次の係数を qk と書くとき、

(16-29)  [ "l > k : ql = 0 ]  Þ  qk = 0

が成り立つことを示せば十分です。
 そこで、(16-26) の両辺の n + k次の係数を比較すると、左辺は 0 , 右辺は pn qk ですから、pn の可逆性により qk = 0 が得られ、証明されました。

 この (16-26) の応用例として、R 上の多項式 g(x)R に対して

(16-30)  g(a) = 0  Þ  $!qÎR[x] : g(x) = (x - a)q(x)

が成り立つことが証明できます。
 実際、px - a と置いて (16-26) を満たす qr を取れば、r は高々0次なので、これは R のある元 d に他なりません。ゆえに (16-26)xa を代入すれば、左辺は 0 、右辺は d となり、r(x) = d = 0 がわかり、(16-30) が得られます。

 なお、g(a) = 0 となる R を、多項式 g あるいは方程式 g(x) = 0といい、(16-30) を、g の、根 a に対する因数定理といいます。

 さて、R強環とすると、R 上の1変数多項式環 R[x]強環です。
 実際、R[x]R の点列のうち、ある n から先のすべての i ³ n に対して 0 となるようなものの全体として表現したとき、R[x] 上の不等号 ¹

(16-31)  p ¹ q  :º  $i : pi ¹ qi

で定義すれば、これは明らかに (13-30) を満たし、しかも Ø p ¹ q は多項式の相等 p = q に一致します。
 更に、p ¹ q  Û  $i : pi ¹ qi  Û  $i : pi - qi ¹ 0  Û  $i : ( p - q)i ¹ 0  Û  p - q ¹ 0 となるので R[x] について (14-73) が成り立ちます。
 また、pq ¹ 0 なら、その第 i 成分が 0 と異なるような i が存在し、(16-19b) と、(14-75) を繰り返し用いれば、pj qi-j ¹ 0 となる j が存在し、従って (14-74) により pj ¹ 0 又は qi-j ¹ 0 すなわち p ¹ 0 又は q ¹ 0 が成り立つことがわかるので、R[x] について (14-74) が成り立ちます。以上で R[x] は強環であることが証明されました。

 また R が可識整域なら R[x] も可識整域です。
 実際、任意に a, bÎR[x] を取ると、"i ³ n : ai = bi = 0 を満たす n が存在することと、R の元が (16-1) を満たすことから、n に関する帰納法により "i : ai = bi 又は (16-31) の右辺が成り立ちます。これは R[x] の元について (16-1) が成り立つことを意味します。
 また、R[x] の2元 a, b ¹ 0 に対し、R の元が (16-1) を満たすことから、ai ¹ 0 を満たす最大の ibj ¹ 0 を満たす最大の j が存在します。このとき (ab)i+j = aibj ¹ 0 となるので、これは ab ¹ 0 が成り立つことを意味します。以上で証明されました。

 また、R可識整域なら、0 と異なる多項式 pÎR[x] は、各係数について pi = 0pi ¹ 0 かどちらかですから、pn ¹ 0 かつ "i > n : pi = 0 となる n が唯一つ存在します。この n は一意的に定まるので、これを deg p と書きます。この deg は明らかに (16-4a) を満たします。
 特に、K可識体なら、pn は可逆なので、deg pp次数に他なりません。しかも (16-26) により、deg(16-4b) を満たしますから、この場合、 K[x] は準ユークリッド整域になります。

 次に RUFDとします。このとき、多項式 p, qÎR[x] 及びそれらの積 rpqi 次の係数をそれぞれ pi , qi 及び ri とするとき

(16-32)  gcd{r0 , r1 ,¼, rdeg r } ~ gcd{ p0 , p1 ,¼, pdeg p } gcd{q0 , q1 ,¼, rdeg q }

が成り立つことを証明しましょう。

 実際、p の全係数の最大公約元を a として pi = ap'i と表し、q の全係数の最大公約元を b として qj = bq'j と表せば、(16-19b) により rk = abr'k と書けますから、p'i を係数に持つ多項式と q'j を係数に持つ多項式について (16-32) が成り立つことを示せば十分です。
 そこで p の全係数も、q の全係数もそれぞれ互いに素であると仮定します。ゆえに (16-32) の左辺が 1 と同伴であることを示せば十分ですが、RUFDなので、すべての ri を割り切る既約元 a が存在したと仮定して矛盾を導けば十分です。
 そこで、k に対する帰納法により

(16-33)  $l £ k : [ ( "i < l : a | pi )  Ù  ( "i < k - l : a | qi ) ]

が成り立つことを証明しましょう。
 まず k = 0 なら (16-33) は自明に成り立っています。
 次に、k のとき l £ k に対して (16-33) が成り立っているものと仮定して、(16-33)kk + 1 に置き換えたものを証明しましょう。
 このとき、仮定により a | rk であることと、i < l に対しては a | pi なので a | pi qk-i が成り立つことと、i > l に対しては a | qk-i なので a | pi qk-i が成り立つことにより、

(16-34)  pl qk-l = rk -  
å

 i< l
 pi qk-i -  
å

 i> l
 pi qk-i 

a で割り切れます。a は既約元なので、(16-15) により a | pl 又は a | qk-l が成り立ちますから、前者なら (16-33)[ ] の中の kl をそれぞれ k + 1l + 1 に置き換えたものが成り立ち、後者なら (16-33)[ ] の中の kk + 1 に置き換えたものが成り立ちます。以上で帰納法が完成しました。
 以上で (16-33) は任意の k について成り立つことがわかりましたが、特に k = n + m とすれば、l ³ n なら a はすべての pi ( i £ n ) を割り切ることになるので、p の係数が互いに素であることに反し、l £ n なら a はすべての qi ( i £ m ) を割り切ることになるので、q の係数が互いに素であることに反します。以上で証明は完成しました。

 さて、次に整域 R 上の多項式の因数分解について考察しましょう。
 pR 上の高々n次の多項式、aiÎR ( 1 £ i £ n )相異なる pとします。このとき pn個の1次式の積に因数分解される、すなわち

(16-35)  p(x) = pn(x - a1 )(x - a2 )¼(x - an )

と書けることが証明できます。ただし pnpn次の係数です。
 この証明のために、0 £ k £ n に対し、高々n - k次の多項式 gk が存在して

(16-36)  p(x) = (x - a1 )(x - a2 )¼(x - ak )gk(x)

と書けることを証明します。
 まず k = 0 のときは、g0p と置けば明らかです。
 次に k で成り立つと仮定すると、(16-36)xak+1 を代入すれば、

(16-37)  0 = p(ak+1 ) = (ak+1 - a1 )(ak+1 - a2 )¼(ak+1 - ak )gk(ak+1 )

となりますが、仮定により ak+1 - ai ¹ 0 ( 1 £ i £ k ) なので、R が整域であることから gk(ak+1 ) = 0 が得られます。ゆえに因数定理 (16-30) により、高々n - k - 1次の多項式 gk+1 が存在して

(16-38)  gk(x) = (x - ak+1 )gk+1(x)

と書けることがわかります。しかも gk(x)n - k次の係数と gk+1(x)n - k - 1次の係数は一致します。
 ゆえに帰納法が完成し、(16-36) は証明されました。ここで k = n とすれば、gn は高々0次ですから R の元で、しかも gn0次の係数ですから、上の証明の中で示したように、これは g0 すなわち pn次の係数 pn に一致し、(16-35) は証明されました。

 次に、Kai ( 1 £ i £ n )K相異なる元、ci ( 1 £ i £ n )K の元とすると、p(ai ) = ci ( 1 £ i £ n ) を満たす高々n - 1次の多項式 pÎK[x]唯一つ存在して

(16-39)  p(x) n
å
k=1
ck  (x - a1 )¼(x - ak-1 )(x - ak+1 )¼(x - an )
———————————————————
(ak - a1 )¼(ak - ak-1 )(ak - ak+1 )¼(ak - an )

で与えられることを証明しましょう。
 実際、右辺に出てくる分数式は、xak を代入すると 1 となり、他の ai ( i ¹ k ) を代入すると 0 となるn - 1次式ですから、この p は条件を満たす高々n - 1次の多項式になっています。
 次に、一意性を証明するため、q も条件を満たす高々n - 1次の多項式とすると、その差 rp - qr(ai ) = 0 ( 1 £ i £ n ) を満たす高々n - 1次の多項式です。ゆえに (16-35) により

(16-40)  r(x) = rn(x - a1 )(x - a2 )¼(x - an )

と書け、rnrn次の係数です。ところが r は高々n - 1次なので、rn = 0 、従って r = 0 となります。

 次に可識体 K に対する準ユークリッド整域 K[x] がユークリッド整域になる、すなわち有限可約であるための十分条件を考えることにしましょう。

 RUFDで、R[x]有限可約であるとします。このとき R の商体を K と書くと、K[x]有限可約です。
 実際、R の任意の有限集合は最大公約元を持つので、任意に pÎK[x] を取ると、aÎK を、apÎR[x] かつ ap の全係数が R で互いに素になるように選ぶことができます。
 仮定により、R[x] の有限部分集合 { si | 1 £ i £ n } が存在して、apR[x] における任意の約元は、ある siR[x] において同伴になります。
 そこで、pK[x] における任意の約元 q を取り、ap = qr ( rÎK[x] ) とします。b, cÎK´ を、bq, crÎR[x] かつ bq の全係数と cr の全係数が R でそれぞれ互いに素になるように選びます。
 このとき abcp = (bq)(cr)R[x] に属し、(16-32) により、その全係数は R で互いに素です。ゆえに bc = g/h ( g, hÎR , h ¹ 0 ) と表すと、ag p は、R で互いに素な係数を持つ apÎR[x]gÎR を乗じたものですから R[x] の元で、しかもその全係数の R における最大公約元は g です。
 一方、ag p = aph(g/h) = h(abcp) と変形すると、これは R で互いに素な係数を持つ abcpÎR[x]hÎR を乗じたものですから R[x] の元で、しかもその全係数の R における最大公約元は h です。従って、ghR で同伴ですから、bc = g/hR に属し、しかも R の可逆元です。
 ゆえに R[x] において ap = qr ~ (bc)(qr) = (bq)(cr) と分解されるので、bqR[x] における ap の約元ですから、R[x] において、ある si と同伴です。これは、qK[x] において si と同伴であることを意味するので、pK[x] における任意の約元は、ある siK[x] において同伴になることがわかり、K[x] も有限可約であることがわかりました。

 最後に Z[x] が有限可約であることを証明しましょう。
 任意に pÎZ[x] を取り、ndeg p と置きます。a が整数なら p(a) も整数ですが、相異なる2n + 1個の整数を任意に取ると、(16-35) により、もし p の根となる整数がn + 1個以上あったとすると、p0 又は n + 1次となって矛盾するので、少なくともn + 1個の相異なる整数 ai ( 0 £ i £ n ) に対して p(ai )0 でない整数になります。
 さて、p(ai ) の約元の全体を Di Ì Z と書くと、これは有限集合です。
 一方、(16-39) により、各 ai であらかじめ指定した整数値 ci を取る Q[x] の元は唯一つなので、各 aiDi に値を取る Z[x] の元の全体 A は有限集合です。ところが pZ[x] における約元 q は各 ai で整数値を取り、しかも q(ai )p(ai ) を割り切るので Di に属し、従って qÎA となります。以上で証明されました。

 以上の結果を組み合わせれば、Q[x]有限可約で、従ってユークリッド整域、従ってPIDであり、UFDでもあることがわかりました。

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