数学の基礎


23.実数

 第15節で定義した有理数体 Q に対し、

(23-1)  ] r, s [  º  { xÎQ | r < x < s }

(23-2)  V fil { ] r, s [ | r, sÎQ ; r < 0 < s }

と置きます。このとき、V(22-19) を満たすことを確かめましょう。
 まず (22-19a) は明らかです。以下 ] r, s [ Ì U とします。
 次に (22-19b) は、r < 0 < s  Þ  - s < 0 < - rxÎ] - s, - r [  Û  - s < x < - r  Û  r < - x < s  Û  - xÎ] r, s [ から - U É - ] r, s [  =  ] - s, - r [ÎV が導かれるので明らかです。
 次に (22-19c) は、V] r/2, s/2 [ と置けば、x, yÎV  Þ  r/2 < x, y < s/2  Þ  r < x + y < s  Þ  x + yÎU ですから明らかです。
 また (22-19d) は、r'max { - 1, r, - s } < 0 及び s'min { 1, - r, s } > 0 と置いて V] r', s' [ と置けば、VÎV であり、x, yÎV のとき、- 1 £ y £ 1 かつ r < x < s かつ - s < x < - r ですから、x ³ 0 なら r < - x = x(- 1) £ xy £ x1 = x < s となり、x < 0 なら r < x = x1 £ xy < x(- 1) = - x < s となり、いずれにせよ xyÎU が成り立つので明らかです。
 また (22-19e) は、a = 0 なら VU と置けば成り立ちます。また a > 0 のときは V] r/a, s/a [ と置き、a < 0 のときは V] s/a, r/a [ と置けば明らかに VÎV であり、xÎV  Þ  axÎU が成り立つので明らかです。
 最後に (22-19f) は、Q が可換環なので (22-19e) から明らかです。

 また、上記の U に対し、任意の有理数 x に対して x(15-32a) を満たすので x £ s  Ú  s < xx < r  Ú  r £ x が成り立ち、これは xÎU  Ú  xÏU を意味しますから、VU と置けば、条件 (22-8) が成り立ちます。
 ゆえに QV を原点の近傍系に持つ強位相可換環になります。ゆえに Q はその加法群により導入される一様構造 U を持ち、r < s に対して

(23-3) U(r, s) { (x, y)ÎQ² | r < x - y < s }

と置くと、U

(23-4) U fil { U(r, s) | r, sÎQ ; r < 0 < s }

で与えられます。
 このとき、Q における (2-1) の形の任意の集合 ] a, b [ と任意の U(r, s) に対し、I{ nÎZ | 2(a - s)/(s - r) < n < 2(b - r)/(s - r) } と置くと、任意の nÎZ に対して nÎI 又は nÏI ですから I は有限集合であり、したがって F{ n(r - s)/2 | nÎI } も有限集合です。また、

(23-5)  ] a, b [  Ì  F + ] r, s [

が成り立ちます。
 実際、有理数 xa < x < b を満たすとき、整数 q と正の整数 p2(x - s)/(s - r) = q/p と書いて q = np + t ( 0 £ t < p ) と表わせば、mn + 12(x - s)/(s - r) = q/p < m を満たす最小の自然数です。
 よって m - 1 £ 2(x - s)/(s - r) となるので m < 2(x - s)/(s - r) + 2 = 2(x - r)/(s - r) ですから x - s < m(s - r)/2 < x - r つまり x = m/(s - r)/2 + ] r, s [ となり、しかも 2(a - s)/(s - r) < 2(x - s)/(s - r) < m < 2(x - r)/(s - r) < 2(b - r)/(s - r) ですから mÎI がわかり、(23-5) は証明されました。
 この (23-5)Q局所プレコンパクトであることを示しています。

 さて、Q は強位相環ですから、その完備化 R を考えることができます。上に示したことから、R局所コンパクトな強位相可換環であることがわかりますが、その元を実数とよびます。
 また、集合 R \\ Q { aÎR | "rÎQ : a ¹ r } の元、すなわちすべての有理数と異なる実数を無理数といいます。

 さて、R の一様構造 U は、

(23-6) U(r, s) { (x, h)ÎR² | U(r, s)Îfil(xÏh) } = { (x, h)ÎR² | $AÎx : $BÎh : A ´ B Ì U(r, s) } = { (x, h)ÎR² | $AÎx : $BÎh : r < A - B < s }

と置いたときの(ただし r < A - B < s"xÎA : "yÎB : r < x - y < s の略記です)

(23-7) U fil { U(r, s) | r, sÎQ ; r < 0 < s }

で与えられます。ただし、R の元を Q 上のコーシー・フィルターとして表現しています。

 さて、第19節の議論により、R にはその一様構造に伴う不等号 ¹ が定義できて、

(23-8)  x ¹ h  Û  $UÎU : (x, h)ÏU  Û  $UÎU : UÏfil(xÏh)

を満たしますが、この右辺の条件を満たす U に対して V ° V ° V Ì U となる VÎU 及び A², B² Ì V となる AÎx , BÎh を取れば、(A ´ B)ÇV = Æ となります。
 なぜなら、(a, b)Î(A ´ B)ÇV と仮定すると、任意の (x, y)ÎA ´ B に対して (x, a)ÎA² Ì V , (a, b)ÎV , (b, y)ÎB² Ì V ですから (x, y)ÎV ° V ° V Ì U となるので A ´ B Ì U が得られ、これは UÎfil(xÏh) を意味するので矛盾するからです。
 逆に (A ´ B)ÇV = Æ なら VÏfil(xÏh) です。なぜなら VÎfil(xÏh) と仮定すると Æ = (A ´ B)ÇVÎfil(xÏh) となって矛盾するからです。ゆえに

(23-9)  x ¹ h  Û  $AÎx : $BÎh : $UÎU : (A ´ B)ÇU = Æ

が成り立ちます。
 更に、この右辺を満たす A , B , U に対し、U(- 3r, 3r) Ì U となる有理数 r > 0A' ², B' ² Ì U(- r, r) となる A'Îx , B'Îh が存在するので、AÇA' , BÇB' をそれぞれ改めて A , B と書いて aÎA , bÎB を取れば、(a, b)ÏU(- 3r, 3r) すなわち Ø (- 3r < a - b  Ù  a - b < 3r) となりますが、有理数間の関係 < は排中律 (15-33c) を満たすので、- 3r ³ a - b 又は a - b ³ 3r となります。
 一方、任意の xÎA と任意の yÎB に対し、- r < x - a < r かつ - r < y - b < r ですから

(23-10a)  - 3r ³ a - b  Þ  y - x = ( y - b ) + ( b - a ) + ( a - x ) > - r + 3r - r = r

(23-10b)  a - b ³ 3r  Þ  x - y = ( x - a ) + ( a - b ) + ( b - y ) > - r + 3r - r = r

となるので、"xÎA : "yÎB : x - y > r"xÎA : "yÎB : y - x > r のいずれかが成り立つことがわかります。
 そこで、実数 xh に対する二項関係 x < h

(23-11)  x < h  :º  h > x  :º  $r > 0 : $AÎx : $BÎh : B - A > r

で定義すると、上で示したことは、

(23-12)  x ¹ h  Û  ( x < h  Ú  h < x )

が成り立つことを意味しています。また、実数同士の二項関係 £

(23-13)  x £ h  :º  h ³ x  :º  Ø h < x

で定義すると、(23-12) の対偶を取ることにより、R の一様構造に伴う同値関係 = について

(23-14)  x = h  Û  ( x £ h  Ù  h £ x )

が成り立つことがわかりますが、更に任意の実数 x , h , z に対して

(23-15a)  Ø ( x < h  Ù  h < x )

(23-15b)  x < h  Þ  ( z < h  Ú  x < z )

が成り立ちます。
 これらを証明する前に、下で (23-16k) として掲げている ( x < h  Ù  h < z )  Þ  x < z を先に証明しておきましょう。
 まず x < h により B - A > r となる AÎxBÎh と有理数 r > 0 が存在し、h < z により C - B' > r' となる B'ÎhCÎz と有理数 r' > 0 が存在しますが、h はフィルターなので bÎBÇB' が存在し、C - A = C - b + b - A > r + r' > 0 となって、x < z がわかります。
 さて、この結果を用いると、(23-15a) は、x < h  Ù  h < x なら x < x となるので (23-12) により x ¹ x となり、¹ の性質 (8-33a) に反します。
 次に (23-15b) は、x < h なら x ¹ h なので、¹ の性質 (8-33c) により z ¹ x  Ú  z ¹ h が成り立ちます。
 ここで z ¹ x の場合は、(23-12) により x < z 又は z < x となりますが、後者の場合は z < x かつ x < h ですから z < h となります。
 また z ¹ h の場合は、(23-12) により z < h 又は h < z となりますが、後者の場合は x < h かつ h < z ですから x < z となります。

 この (23-15) は、構成主義数学において、古典論理における実数の全順序性の代わりになる性質で、一般に (23-15) を満たす2項関係を強順序とよぶことにしましょう。
 一般に、強順序 < から (23-12),(23-13),(23-14) によってそれぞれ2項関係 ¹ , £ , = を定義すると、次の性質:

(23-16a)  x £ x

(23-16b)  ( x £ h  Ù  h £ z )  Þ  x £ z

(23-16c)  Ø x ¹ x

(23-16d)  x ¹ h  Þ  h ¹ x

(23-16e)  x ¹ h  Þ  ( z ¹ x  Ú  z ¹ h )

(23-16f)  x = h  Û  Ø x ¹ h

(23-16g)  x < h  Û  ( x £ h  Ù  x ¹ h )

(23-16h)  x < h  Þ  x £ h

(23-16i)  ( x £ h  Ù  h < z )  Þ  x < z

(23-16j)  ( x < h  Ù  h £ z )  Þ  x < z

(23-16k)  ( x < h  Ù  h < z )  Þ  x < z

(23-16l)  Ø ( x < h  Ù  x = h )

(23-16m)  ( x < h  Ù  x = x'  Ù  h = h' )  Þ  x' < h'

が成り立つことが証明できます。
 実際、(23-16a) は、(23-15a)hx を代入すれば Ø x < x が得られ、これは (23-16a) に他なりません。
 また (23-16b) は、(23-15b) の対偶を取り、h , z , x を一斉に x , h , z に置き換えれば明らかです。
 また (23-16c) は、(23-12)hx を代入すれば Ø x < x と同値ですから (23-16a) に他なりません。
 また (23-16d) は定義から明らかです。
 また (23-16e) は、x < h の場合と h < x の場合に分けて考えれば (23-15b) により明らかです。
 また (23-16f) は、(23-12) の右辺の否定が (23-14) の右辺と同値なので明らかです。
 また (23-16g) は、右辺が ( Ø h < x  Ù  ( x < h  Ú  h < x ) ) すなわち (23-16f) の右辺と同値ですから明らかです。
 また (23-16h)(23-16g) から明らかです。
 また (23-16i) は、h < z なら (23-15b) により x < z 又は h < x ですが、後者は x £ h と矛盾するので前者が成り立ちます。
 また (23-16j) は、x < h なら (23-15b) により z < h 又は x < z ですが、前者は h £ z と矛盾するので後者が成り立ちます。
 また (23-16k) は、(23-16i) 又は (23-16j) と、(23-16h) とから明らかです。
 また (23-16l) は、x = h なら h £ x すなわち Ø x < h ですから明らかです。
 最後に (23-16m) は、左辺を仮定すると、x' £ x < h £ h' となるので (23-16i),(23-16j) により明らかです。

 これらのうち、(23-16a),(23-16b) は2項関係 £擬順序であることを、(23-16c)~(23-16e) は2項関係 ¹ が第8節 (8-33)不等号であることを、(23-16f) は2項関係 =¹ に伴う同値関係であることを、最後の (23-16m) は2項関係 < が他の £¹ と同様に同値関係 =両立することを意味しています。
 ちなみに強順序関係 <排中律を満たす、すなわち x < h  Ú  Ø x < h が成り立つ場合は、(23-13)(23-16h) により x £ h  Ú  h £ x が成り立つので、排中律を満たす強順序 < に伴う2項関係 £ は全順序になることがわかります。

 次に R の加法・減法と大小について、

(23-17a)  x < h  Û  x ± z < h ± z

(23-17b)  x £ h  Û  x ± z £ h ± z

(23-17c)  x < h  Û  x - h < 0  Û  - h < - x  Û  0 < h - x

(23-17d)  x £ h  Û  x - h £ 0  Û  - h £ - x  Û  0 £ h - x

(23-17e)  x > 0  Û  - x < 0

(23-17f)  x < 0  Û  - x > 0

(23-17g)  x ³ 0  Û  - x £ 0

(23-17h)  x £ 0  Û  - x ³ 0

(23-17i)  x, h ³ 0  Þ  ( x + h = 0  Û  x = h = 0 )

(23-17j)  x + h > 0  Þ  ( x > 0  Ú  h > 0 )

が成り立つことを確かめましょう。
 まず x < h とすると、B - A > 2r となる AÎx , BÎh と有理数 r > 0 が存在し、R はコーシー・フィルターですから C - C < r となる CÎz が存在します。このとき (B ± C ) - (A ± C ) = (B - A) ± (C - C ) > 2r - r = r が成り立ちますが、Q の加法と減法は一様連続なので fil { A ± C | AÎx , CÎz }fil { B ± C | BÎx , CÎz } はそれぞれ x ± zh ± z に等しく、従って (23-17a) が成り立つことがわかります。
 また、xh をそれぞれ x ± zh ± z に置き換えれば、(23-17a) の右辺から左辺が得られます。
 次の (23-17b)(23-17a) の対偶を取れば明らかです。
 また (23-17c)(23-17d) は、左から順に、両辺に - h , - x , h を加えて (23-17a) 又は (23-17b) を用いれば得られます。
 また (23-17e)(23-17c)x = 0 とすれば得られ、(23-17f)(23-17c)h = 0 とすれば得られ、(23-17g)(23-17h) は、それぞれ (23-17f)(23-17e) の対偶から得られます。
 また (23-17i) は、x + h = 0 なら (23-17g) により 0 £ x = - h £ 0 ですから x = - h = 0 すなわち x = h = 0 が得られます。逆は明らかです。
 最後に (23-17j) は、(23-15b) により x > 0 又は x < x + h ですが、後者は (23-17a) により h > 0 と同値です。

 実数 a は、a > 0 のとき正の実数a < 0 のとき負の実数a ³ 0 のとき非負実数といい、特に非負実数の全体を R+ と書き、正実数の全体を R++ と書くことにします。

 次に、Q++{ rÎQ | r > 0 } と書くと、任意の実数 R に対し、

(23-18a)  "eÎQ++ : $rÎQ : $AÎx : r - e < A < r + e

(23-18b)  x > 0  Û  $rÎQ++ : $AÎx : r < A

(23-18c)  x < 0  Û  $rÎQ++ : $AÎx : A < - r

が成り立つことを確かめます。
 まず (23-18a) ですが、x はコーシー・フィルターで ] - e, e [ÎV ですから - e < A - A < e となる AÎx が存在し、A ¹ Æ ですから rÎA を取れば、- e < A - r < e すなわち (23-18a) が成り立つことがわかります。
 次に (23-18b) ですが、この左辺に出て来る 0 は、有理数の 0 を使えば V (0) と書けるので、この左辺は (23-11) により

(23-19)  $r, p, qÎQ++ : $AÎx : A - ] - p, q [ > r

と同値ですから、特に (23-18b) の右辺が成り立ちます。
 逆に (23-18b) の右辺が成り立てば、U] - r/2, r/2 [ÎV (0) に対して A - U > r/2 となるので (23-11) により x > 0 となります。
 最後に (23-18c) については、- x :º { - A | AÎx } について (23-18b) を適用すれば明らかです。

 さて、Q の乗法は、] r, s [ のプレコンパクト性と第22節最後の主張により、(2-1) の形の集合の積 ] r, s [  ´  ] r', s' [ 上で一様連続で、(23-18a) により任意の実数は Q における (2-1) の形の集合上のコーシー・フィルターの生成するフィルターの形に表わせますから、

(23-20)  xh = fil { AB | AÎx , BÎh }

が成り立ちます。また、任意の r, eÎQ++ に対して、dr²e と置けば、

(23-21)  [ x, yÎQ  Ù  ( x, y > r  Ú  x, y < - r )  Ù  - d < x - y < d ]  Þ  - e = - d
—–
r
²
<  x - y
——–
 xy
= 1
—–
 y
- 1
—–
 x
< d
—–
r
²
= e

ですから、Q´ で乗法の逆元を取る演算は、{ xÎQ | x < - r } および { xÎQ | x > r } 上で一様連続であることがわかるので、これと (23-18b),(23-18c) により、実数 x ¹ 0 に対して

(23-22)  x-1fil { (A \ {0})-1 | AÎx }

で定義されるフィルターは、コーシー・フィルター、すなわち一つの実数を定めることがわかります。この x-1 が、R における x逆数、すなわち乗法に関する逆元になっていることを確かめましょう。
 x ¹ 0 なら (23-12) により x > 0 又は x < 0 ですが、前者の場合は (23-18b) を満たす rA が存在します。
 そこで任意の eÎQ++ を取ると、der に対して - d < A' - A' < d となる A'Îx が存在し、A"AÇA' と置けば、

(23-23)  x, yÎA"  Þ  - e = - dr-1 < - dy-1 < (x - y) y-1 = xy-1 - 1 < dy-1 < dr-1 = e

すなわち 1 - e < A"A"-1 < 1 + e となりますから、(23-20) により、xx-1 の積が Q に収束するフィルター、すなわち R における乗法の単位元であることがわかります。
 同様に、x < 0 の場合は (23-18c) を満たす rA を取れば、あとは全く同様に (23-23) が導かれるので、やはり xx-1 の積が R における乗法の単位元であることがわかります。

 以上により、Rであることがわかりました。また、R の乗法と順序の関係として

(23-24a)  x > 0  Û  x-1 > 0

(23-24b)  x < 0  Û  x-1 < 0

(23-24c)  z > 0  Þ  ( x < h  Û  zx < zh )

(23-24d)  z < 0  Þ  ( x < h  Û  zx > zh )

(23-24e)  z > 0  Þ  ( x £ h  Û  zx £ zh )

(23-24f)  z < 0  Þ  ( x £ h  Û  zx ³ zh )

(23-24g)  0 < x < h  Û  0 < h-1 < x-1

(23-24h)  0 < x £ h  Û  0 < h-1 £ x-1

(23-24i)  xh > 0  Û  ( x, h > 0  Ú  x, h < 0 )

(23-24j)  xh < 0  Û  [ ( x > 0  Ù  h < 0 )  Ú  ( x < 0  Ù  h > 0 ) ]

(23-24k)  x, h ³ 0  Þ  xh ³ 0

(23-24l)  x, h £ 0  Þ  xh ³ 0

(23-24m)  ( x ³ 0  Ù  h £ 0 )  Þ  xh £ 0

(23-24n)  x² ³ 0

が成り立つことがわかります。
 実際、(23-24a) については、有理数 r > 0AÎx が存在して A > r となります。また (23-18a) により、有理数 sA'Îx が存在して A' < s となります。A"AÇA' と置くと、A"Îx でこれは元を持つので s > r > 0 がわかり、0 < s-1 < A"-1Îx-1 となり、これは x-1 > 0 を意味しています。
 逆に x-1 > 0 なら、x = (x-1)-1 > 0 となるので、(23-24a) は証明されました。
 次に、(23-24b) については、x < 0  Û  - x > 0- x-1 = (- x)-1 が成り立つので (23-24a) により明らかです。
 次に、(23-24c) を、まず x = 0 の場合について証明しましょう。
 h, z > 0 とすると、(23-18b) により、r, sÎQ++BÎh , CÎz が存在して B > r かつ C > s が成り立ちます。よって BC > rs(23-20) により BCÎhz ですから hz > 0 がわかります。
 逆に z, hz > 0 とすると、(23-24a) により z-1 > 0 ですから、今示したことから h = (hz)z-1 > 0 が得られ、x = 0 の場合が証明されました。
 一般の場合は、z > 0 のとき x < h  Û  h - x > 0  Û  zh - zx = z(h - x) > 0  Û  zx < zh となり、証明されました。
 次に、(23-24d) については、z < 0 のとき、(23-24c) により、x < h  Û  h - x > 0  Û  zx - zh = (- z)(h - x) > 0  Û  zx > zh となり、証明されました。
 また、(23-24e)(23-24f) は、それぞれ (23-24c)(23-24d) の対偶を取れば得られます。
 また、(23-24g) については、x, h > 0 なら xh > 0 であり、x < h  Û  h - x > 0  Û  (x-1 - h-1)xh = h - x > 0  Û  x-1 - h-1 > 0  Û  x-1 > h-1 ですから、これと (23-24a) により、左辺から右辺は導出できました。xh をそれぞれの逆数に置き換えれば、右辺から左辺も得られます。
 また、(23-24h)(23-24g)xh の関係に関する対偶を取れば得られます。
 次に (23-24i) の右辺から左辺は、(23-24c)x = 0 と置いたものと (23-24d)h = 0 と置いたものから得られます。
 また (23-24j) の右辺から左辺は、(23-24c)h = 0 と置いたものと (23-24d)x = 0 と置いたものから得られます。
 一方、R が強環であることから、xh ¹ 0 なら x ¹ 0 かつ h ¹ 0 となります。従って、(23-12) により、(23-24i),(23-24j) の左辺から x < 0  Ú  x > 0h < 0  Ú  h > 0 が得られますが、(23-24i),(23-24j) の右辺から左辺が成り立つことと (23-15a) により、場合分けによって (23-24i),(23-24j) の左辺から右辺が得られます。
 次に、(23-24k) 又は (23-24l) の左辺を仮定し、更に xh < 0 と仮定すると、(23-24j) の右辺が成り立ち、これは (23-24k) の左辺とも (23-24l) の左辺とも矛盾するので、(23-13) により xh ³ 0 が得られます。
 同様に、(23-24m) は、左辺を仮定し、更に xh > 0 と仮定すると、(23-24i) の右辺が成り立ち、これは (23-24m) の左辺と矛盾するので、(23-13) により xh £ 0 が得られます。
 最後に (23-24n) ですが、(23-24j)h = x と置き、その左辺を仮定すると、右辺が成り立ち、これは (23-15a)h = 0 と置いたものにより矛盾します。よって、(23-24j)h = x と置いたものの否定、すなわち xx ³ 0 が得られます。

 さて、rÎQ に対し、Q における r の近傍系 V (r) を対応させる写像を i と書けば、

(23-25a)  r < s  Û  i(r) < i(s)

(23-25b)  r £ s  Û  i(r) £ i(s)

(23-25c)  r ¹ s  Û  i(r) ¹ i(s)

(23-25d)  r = s  Û  i(r) = i(s)

が成り立ちます。
 実際、(23-25a) の右辺は、(23-11) により $eÎQ++ : $AÎi(r) : $BÎi(s) : B - A > e すなわち $e, e', e"ÎQ++ : ] s - e', s + e' [  -  ] r - e", r + e" [  >  e すなわち

(23-26)  $e, e', e"ÎQ++ : ] r + e - e", r + e + e" [  <  ] s - e', s + e' [

と同値です。(23-26) から r + e < s が、従って (23-25a) の左辺が導かれますが、逆に (23-25a) の左辺を仮定すると、ee'e"(s - r)/3 > 0 と置けば、r + e + e" = s - e' ですから、明らかに (23-26) が成り立ちます。
 また、(23-25b)(23-25a) の対偶により、(23-25c)(23-25a)(23-12) により、(23-25d)(23-25c) の対偶により得られます。

 この (23-25) により、以後 QR の部分集合 i[Q] と同一視して Q Ì R とみなすことにします。この同一視のもとで、R の一様構造と大小関係について、r, s, eÎQr < s かつ e > 0 のとき

(23-27)  { (x, h)ÎR² | r < x - h < s } Ì U(r, s) Ì { (x, h)ÎR² | r - e < x - h < s + e }

が成り立つことを証明しましょう。
 実際、r < x - h < s すなわち i(r) < x - h < i(s) と仮定すると、x - h = { A - B | AÎx , BÎh } ですから、(23-11) により A - B - ] r - d, r + d [  >  e 及び ] s - d', s + d' [ - A' + B'  >  e' を満たす d, d', e, e'ÎQ++A, A'ÎxB, B'Îh が存在します。
 ゆえに A"AÇA' , B"BÇB' と置けば、A"Îx , B"Îh で、r < r + e < A" - B" < s - e' < s となり、これは (23-6) により (x, h)ÎU(r, s) を意味しています。
 また、(x, h)ÎU(r, s) なら (23-6) により r < A - B < s となる A, BÎx が存在します。 従って、de/2 と置くと、A - B - ] r - e - d, r - e + d [  >  d かつ ] s + e - d, s + e + d [ - A + B  >  d が成り立ち、しかも ] r - e - d, r - e + d [ÎV (r - e) = i(r - e) , ] s + e - d, s + e + d [ÎV (s + e) = i(s + e) ですから、(23-11) により r - e < x - h < s + e が成り立つことがわかります。

 この (23-27) により、実数の開区間

(23-28a)  ] a, b [  :º  { R | a < x < b }

(23-28b)  ] ¬, b [  :º  { R | x < b }

(23-28c)  ] a, ® [  :º  { R | a < x }

(23-28d)  ] ¬, ® [  :º  R

で定義すれば、{ ] a, b [ | a, R ; a < x < b }R の近傍系の基底になることがわかります。
 一方 ] a, b [ なら a < x < b ですから ] a, b [x の近傍です。また、] ¬, b [ なら x - 1 < x < b ですから ] x - 1, b [ は、従ってそれを含む ] ¬, b [x の近傍です。同様に、] a, ® [ なら a < x < x + 1 ですから ] a, x + 1 [ は、従ってそれを含む ] a, ® [x の近傍です。
 以上により、実数の任意の開区間は R の開集合であることがわかりました。

 また、実数の閉区間

(23-29a)  [ a, b ]  :º  { R | a £ x £ b }

(23-29b)  ] ¬, b ]  :º  { R | x £ b }

(23-29c)  [ a, ® [  :º  { R | a £ x }

(23-29d)  ] ¬, ® [  :º  R

で定義すれば、] ¬, b ]  =  R  \  ] b, ® [[ a, ® [  =  R  \  ] ¬, a [[ a, b ]  =  ] ¬, b ] Ç [ a, ® [ が成り立ちますが、開集合の補集合は閉集合で、閉集合の共分も閉集合ですから、実数の任意の閉区間は R の閉集合であることがわかります。

 さて、QR で稠密であり、Q は可算集合ですから、R可分であることがわかります。また a < b のとき、x :º (a + b)/2 と置けば a < x < b ですから ] a, b [x の近傍で、従って ] a, b [R で稠密な Q の元、すなわちある有理数 r を元に持ちます。言い換えると、

(23-30)  "a, R : [ a < b  Þ  ( $rÎQ : a < r < b ) ]

が成り立つことがわかります。

 更に、a , x を任意の実数、e を正の実数とすると、

(23-31)  $nÎZ : a + (n - 1)e < x < a + (n + 1)e

が成り立つことを証明しましょう。(x - a)/e を改めて x と書くことにより、a = 0 , e = 1 と仮定しても一般性を失いません。
 さて、x < x + 1 ですから (23-30) により x < q/p < x + 1 となる有理数 q/p が存在します( q , p は整数で p > 0 )。q/p £ q ですから、ある整数 N に対して x < N となることがわかりました。
 この結果を - x に対しても適用することにより、M < x < N となる整数 M , N が存在します。ここで x - M を改めて x と置くことにより、M = 0 と仮定しても一般性を失いません。ゆえに

(23-32)  0 < x < N  Þ  $nÎN : n - 1 < x < n + 1

を証明すれば十分です。そこで (23-32)N に関する帰納法で証明します。
 まず N = 0 なら仮定が偽なので成立します。N のとき成り立つと仮定し、0 < x < N + 1 と仮定すると、N < N + 1 なので、実数の性質 (23-15b) により N - 1 < x 又は x < N が成り立ちますが、前者なら nN と置けばよく、後者なら帰納法の仮定により成り立ちます。よって帰納法が完成して (23-32) は証明されました。

 さて、任意の e > 0 に対し、(23-31)x1/e を、a0 を、e1 を代入すれば、1/e < m となる整数 m の存在がわかり、従って

(23-33)  "k ³ m : 0 < 1
—–
 k
£ 1
—–
 m
< e

が成り立ち、これは、数列 { 1/k | kÎN }0 に収束することを意味しています。

 また、任意の自然数 n > 0 に対して

(23-34)  [ 0, 1 ] Ì È{  ] (i - 1)/n, (i + 1)/n [  | iÎN , i £ n }

で、右辺の開被覆のそれぞれの中央値 i/n[ 0, 1 ] に属すので、このことと (23-33) により、[ 0, 1 ] はプレコンパクトであることがわかりますが、これは完備空間 R の閉部分集合ですから完備、従ってコンパクトです。任意の実数の組 a < b に対する閉区間 [ a, b ] は、一様空間の圏の同型写像 f(t) :º a + (b - a)t により [ 0, 1 ] と同型ですから、閉区間 [ α, β ] はコンパクトであることがわかります。

 なお、開区間と閉区間を併せて区間とよび、特に (23-28a) 又は (23-29a) の区間を有界区間といいます。任意の開区間は

(23-35a)  ] a, b [  =  È{  [ a + (b - a)/n , b - (b - a)/n ]  |  n ³ 3 }

(23-35b)  ] ¬, b [  =  È{  [ b - n , b - 1/n ]  |  n ³ 2 }

(23-35c)  ] a, ® [  =  È{  [ a + 1/n , a + n ]  |  n ³ 2 }

(23-35d)  ] ¬, ® [  =  È{  [ - n , n ]  |  n ³ 1 }

というように、可算個の有界閉区間の和と表わされます。

 本節の最後に実数の極限操作に関してよく使う性質を証明しておきましょう。{ an | nÎN }{ bn | nÎN } を共に実数の収束列とすれば、

(23-36)  ( "nÎN : an £ bn )  Þ  limn®¥ an £ limn®¥ bn

が成り立ちます。
 実際、limn®¥ an > limn®¥ bn と仮定すると、両辺の平均値(すなわち和を 2 で除したもの)を c とすれば、] c, ® [ は左辺の近傍、] ¬, c [ は右辺の近傍ですから、十分大きな任意の n に対して an は前者の区間に、bn は後者の区間に属し、bn < c < an となって (23-36) の条件に反します。よって (23-13) により (23-36) の結論が得られます。
 また、

(23-37)  ( "e > 0 : a £ e )  Þ  a £ 0

が成り立ちます。実際、a > 0 と仮定すると、e :º a / 2 と取れば a £ e と矛盾するので、(23-13) により a £ 0 が得られます。

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