数学の基礎


25.拡張実数

 Q の部分集合 a- , a+ からなる順序対 (a-, a+ ) は、条件:

(25-1a)  rÎa-  Þ  "s < r : sÎa-

(25-1b)  rÎa-  Þ  $s > r : sÎa-

(25-1c)  rÎa+  Þ  "s > r : sÎa+

(25-1d)  rÎa+  Þ  $s < r : sÎa+

(25-1e)  a-Ça+ = Æ

を満たすとき拡張実数といい、その全体を R と書くことにします。任意の拡張実数 (a-, a+ ) に対し、

(25-2)  ( rÎa- Ù  sÎa+ )  Þ  r < s

が成り立ちます。実際、r ³ s と仮定すると、(25-1c) により sÎa- となって (25-1e) に反するので、r , s は有理数ですから r < s が得られます。
 また、2つの拡張実数 a º (a-, a+ )b º (b-, b+ ) に対し、

(25-3a)  a < b  :º  a+Çb- ¹ Æ

(25-3b)  a £ b  :º  a-Ì b- Ù  b+Ì a+

(25-3c)  a ¹ b  :º  a < b  Ú  b < a

(25-3d)  a = b  :º  a £ b  Ù  b £ a

(25-3e)  a + b  :º  (a- + b-, a+ + b+ )

(25-3f)  - ¥  :º  (Æ, Q)

(25-3g)  ¥  :º  + ¥  :º  (Q, Æ)

と定義します。a + babとよび、¥- ¥ をそれぞれ正負の無限大とよびますが、これらが拡張実数であることを確かめておきましょう。
 正負の無限大については明らかですから、和 a + b について確かめます。
 まず rÎa- , sÎb- かつ t < r + s ならば、t - s < r なので、t - s < r' < r となる有理数 r' が存在します。そこで s't - r' と置くと、s' < s となるので、(25-1a) により r'Îa- かつ s'Îb- となり、t = r' + s'Îa- + b- となります。
 同様に、rÎa+ , sÎb+ かつ t > r + s なら tÎa+ + b+ となります。
 また rÎa- , sÎb- なら、(25-1b) により、ある有理数 r'Îa- , s'Îb- が存在して r' > r , s' > s となり、r' + s' > r + s かつ r' + s'Îa- + b- となります。
 同様に rÎa+ , sÎb+ なら、(25-1d) により、ある有理数 r'Îa+ , s'Îb+ が存在して r' < r , s' < s となり、r' + s' < r + s かつ r' + s'Îa+ + b+ となります。
 また任意に rÎa- , sÎb- , r'Îa+ , s'Îb+ を取ると、(25-2) により r < r' かつ s < s' となり、r + s < r' + s' となるので (a- + b- )Ç(a+ + b+ ) = Æ がわかります。
 以上で a + b が拡張実数になっていることが証明されました。

 さて、拡張実数 a , b , c に対し、

(25-4a)  a £ a

(25-4b)  Ø a < a

(25-4c)  a < b  Þ  a £ b

(25-4d)  a £ b £ c  Þ  a £ c

(25-4e)  a < b £ c  Þ  a < c

(25-4f)  a £ b < c  Þ  a < c

(25-4g)  a < b < c  Þ  a < c

(25-4h)  Ø ( a < b  Ù  b £ a )

(25-4i)  a = a

(25-4j)  a = b  Þ  b = a

(25-4k)  ( a = b  Ù  b = c  )  Þ  a = c

(25-4l)  ( a = a'  Ù  b = b' )  Þ  ( a < b  Û  a' < b' )

(25-4m)  ( a = a'  Ù  b = b' )  Þ  ( a £ b  Û  a' £ b' )

(25-4n)  ( a = a'  Ù  b = b' )  Þ  ( a ¹ b  Û  a' ¹ b' )

(25-4o)  a + b = b + a

(25-4p)  ( a + b ) + c = a + ( b + c )

(25-4q)  a £ b  Þ  a + c  £ b + c

(25-4r)  a = b  Þ  a + c  = b + c

(25-4s)  a + c  < b + c  Þ  a < b

(25-4t)  a + c  ¹ b + c  Þ  a ¹ b

(25-4u)  - ¥ < ¥

(25-4v)  - ¥ £ a £ ¥

(25-4w)  a , b < ¥  Þ  a + b < ¥

(25-4x)  - ¥ < a , b  Þ  - ¥ < a + b

(25-4y)  - ¥ < a  Þ  ¥ + a = ¥

(25-4z)  a < ¥  Þ  - ¥ + a = - ¥

が成り立ちます。
 実際、(25-4a) は定義式 (25-3b) から、(25-4b) は定義式 (25-3a)(25-1e) からそれぞれ明らかです。

 また (25-4c) については、a < b なら (25-3a) により a+Çb- の元 s が存在し、rÎa- なら (25-2) により r < s ですから、sÎb-(25-1a) により rÎb- となるので a-Ì b- がわかります。
 同様に、rÎb+ なら (25-2) により s < r ですから、sÎa+(25-1c) により rÎa+ となるので b+Ì a+ となります。
 以上により a £ b が得られ、(25-4c) は証明されました。

 次の (25-4d) は定義式 (25-3b) から明らかです。

 次の (25-4e) については、a < b(25-3a) により a+Çb- の元 s が存在し、b £ c(25-3b) により b-Ì c- ですから sÎa+Çc- ¹ Æ となって a < c がわかります。

 次の (25-4f) については、b < c(25-3a) により b+Çc- の元 s が存在し、a £ b(25-3b) により b+Ì a+ ですから sÎa+Çc- ¹ Æ となって a < c がわかります。

 次の (25-4g) は、(25-4e) 又は (25-4f)(25-4c) から明らかです。

 また (25-4h) は、a < b  Ù  b £ a と仮定すると、(25-4e) により a < a となり、(25-4b) に反するので明らかです。

 また (25-4i)(25-4a)(25-3d) から、(25-4j)(25-3d) から、(25-4k)(25-4d)(25-3d) から明らかです。

 また (25-4l),(25-4m)(25-3d)(25-4d)~(25-4f) から、(25-4n)(25-4l)(25-3c) から明らかです。

 また (25-4o) は、a± + b± = b± + a± により、(25-4p) は、( a± + b± ) + c ± = a± + ( b± + c ± ) により、それぞれ明らかです。

 また (25-4q) は、左辺の仮定から a-Ì b-b+Ì a+ が得られ、これから a- + c- Ì b- + c-b+ + c+ Ì a+ + c+ が得られ、これは (25-4q) を意味します。

 また (25-4r)(25-4q)(25-3d) から明らかです。

 また (25-4s) は、左辺を仮定すると、(25-3a) により r + t = s + t' となる rÎa+ , tÎc+ , sÎb- , t'Îc- が存在しますが、(25-2) により t' < t ですから r < s となり、(25-1c) により sÎa+ となるので sÎa+Çb- ¹ Æ となり、これは (25-4s) の右辺が成り立つことを意味します。

 また (25-4t) は、(25-4s)(25-3c) から明らかです。

 また (25-4u),(25-4v) は、正負の無限大の定義 (25-3f),(25-3g) と大小関係の定義 (25-3a),(25-3b) から明らかです。

 また (25-4w) は、a < ¥a+ ¹ Æ と同値であることから明らかです。

 同様に、(25-4x) は、- ¥ < aa- ¹ Æ と同値であることから明らかです。

 また (25-4y) は、Æ + a+ = Æ と、- ¥ < a すなわち a- ¹ Æ なら Q + a- = Q となることから明らかです。

 同様に、(25-4z) は、Æ + a- = Æ と、a < ¥ すなわち a+ ¹ Æ なら Q + a+ = Q となることから明らかです。

 拡張実数間の二項関係 £ は、(25-4a),(25-4d) により R 上の擬順序になりますが、(25-3d) により、= はこの擬順序に伴う同値関係になります。
 ここで、R の任意の部分集合 A は、この擬順序に対して上限と下限を持つことを証明しましょう。
 実際、

(25-5a)  u-È{ a- | aÎA }

(25-5b)  u+ ( Ç{ a+ | aÎA } )° = { rÎQ | $sÎÇ{ a+ | aÎA } : r > s }

(25-5c)  u  :º  (u-, u+ )

と置くと、明らかに u は拡張実数になります。
 また aÎA ならば、(25-5a) により a-Ì u- となり、(25-5b) により u+Ì a+ となるので、(25-3b) により a £ u が得られます。
 一方、拡張実数 b が任意の aÎA に対して a £ b すなわち a-Ì b-b+Ì a+ を満たせば、(25-5a) により、まず u-Ì b- がわかります。
 また b+Ì Ç{ a+ | aÎA } で、(25-1d) により任意の rÎb+ に対して s < r であるような sÎb+ が存在しますから、sÎÇ{ a+ | aÎA } 、従って rÎu+ が言え、b+Ì u+ が成り立ちます。
 以上で u ÎRA の上限になっていることがわかりました。

 対称的に、

(25-6a)  l  +È{ a+ | aÎA }

(25-6b)  l  - ( Ç{ a- | aÎA } )° = { rÎQ | $sÎÇ{ a- | aÎA } : r < s }

(25-6c)  l  :º  (l  -, l  + )

と置くと、l ÎR であって、これが A の下限になることがわかります。

 さて、上で定義した ul は実はそれぞれ強い上限あるいは強い下限になっている、すなわち (24-1b)'(24-2b)' を満たすことに注意します。
 実際、b < u なら、定義により b+Çu- は元 r を持ち、(25-5a) により、rÎa- となる aÎA が存在します。これは rÎb+Ça- を、従って a < u を意味しますから、uA の強い上限になっていることがわかります。
 lA の強い下限になっていることの証明も同様です。

 さて、任意の実数 a に対して

(25-7a)  a- { rÎQ | r < a }

(25-7b)  a+ { rÎQ | r > a }

と置いて、

(25-7c)  a (a- , a+ )

と定義します。明らかに a は拡張実数ですが、実数 a , b に対して

(25-8a)  a < b  Û  a < b

(25-8b)  a £ b  Û  a £ b

(25-8c)  a ¹ b  Û  a ¹ b

(25-8d)  a = b  Û  a = b

(25-8e)  a + b = a + b

(25-8f)  - ¥ < a < ¥

が成り立ちます。
 実際、(25-8a) の左辺は (23-30) により a < r < b となる有理数 r の存在と同値であり、これはまた rÎa+Çb- と同値であり、このような r の存在は a < b すなわち (25-8a) の右辺と同値です。

 次に (25-8b) の左辺を仮定すると、rÎa- なら r < a £ b ゆえ r < b すなわち rÎb- ですから a-Ì b- が成り立ちます。また、rÎb+ なら r > b ³ a ゆえ r > a すなわち rÎa+ ですから b+Ì a+ が成り立ちます。これは a £ b すなわち (25-8b) の右辺が成り立つことを意味しています。
 また、(25-8b) の右辺を仮定し、更に a > b を仮定すると、(25-8a) により a > b となり、これは (25-4h) により (25-8b) の右辺と矛盾します。ゆえに実数に関する (23-13) により (25-8b) の左辺が成り立ちます。

 また、(25-8c)(23-12)(25-8a),(25-3c) から得られ、(25-8d)(23-14)(25-8b),(25-3d) から得られます。

 次に (25-8e) ですが、rÎa- かつ sÎb- なら r < a かつ s < b ですから、r + s < a + b すなわち r + sÎ(a + b)- が成り立ちます。これは (25-3e) により ( a + b )- = a- + b- = a- + b- Ì (a + b)- = ( a + b )- が成り立ちます。
 同様に、rÎa+ , sÎb+ つまり r > a , s > b から r + s > a + b つまり r + sÎ(a + b)+ が得られ、( a + b )+ = a+ + b+ = a+ + b+ Ì (a + b)+ = ( a + b )+ が成り立ちます。
 また、rÎ( a + b )- = (a + b)- すなわち r < a + b なら、r - b < a ですから、(23-30) により r - b < s < a となる有理数 s が存在します。このとき r - s < b ですから、sÎa- かつ r - sÎb- となり r = s + (r - s)Îa- + b- = ( a + b )- が得られ、( a + b )- Ì ( a + b )- が得られます。
 同様に、rÎ( a + b )+ = (a + b)+ すなわち r > a + b なら、r - b > a ですから、(23-30) により r - b > s > a となる有理数 s が存在します。このとき r - s > b ですから、sÎa+ かつ r - sÎb+ となり r = s + (r - s)Îa+ + b+ = ( a + b )+ が得られ、( a + b )+ Ì ( a + b )+ が得られます。
 以上により (25-8e) は証明されました。

 最後に (25-8f) は、a± ¹ Æ ですから明らかです。

 この (25-8) により、任意の実数は、その加法 + と大小関係 < , £ 及び相等 = 、不等号 ¹ も含めて R の元とみなせることがわかります:

(25-9)  R Ì R

 なお、a > 0 あるいは a < 0 である拡張実数 a はそれぞれあるいはであるといいます。また a ³ 0 のとき非負であるといいます。

 さて、拡張実数 a と有理数 r に対して

(25-10a)  a < r  Û  rÎa+

(25-10b)  r < a  Û  rÎa-

が成り立ちます。
 実際、a < r と仮定すれば、ある sÎa+Çr- が存在します。ゆえに s < r ですから (25-1c) により rÎa+ が得られます。逆に rÎa+ なら、(25-1d) により s < r となる sÎa+ が存在し、これは sÎa+Çr- ¹ Æ すなわち a < r を意味するので、これで (25-10a) は証明されました。
 a+a- に置き換え、不等号の向きを逆にすれば (25-10b) が得られます。

 また任意の拡張実数 a に対して

(25-11)  a + 0 = a

が成り立ちます。
 実際、0- = { sÎQ | s < 0 } , 0+ = { sÎQ | s > 0 } ですから、rÎa- , sÎ0- なら r + s < r となるので (25-1a) により r + sÎa- となります。同様に、rÎa+ , sÎ0+ なら r + s > r となるので (25-1c) により r + sÎa+ となります。
 逆に、任意の rÎa- に対し、(25-1b) により s > r となる sÎa- が存在するので、er - s と置けば、e < 0 すなわち eÎ0- かつ r = s + e となります。
 同様に、任意の rÎa+ に対し、(25-1d) により s < r となる sÎa+ が存在し、er - s と置けば、e > 0 すなわち eÎ0+ かつ r = s + e となります。
 以上で (25-9) は証明されましたが、これは実数の 0R における加法 + の単位元になっていることを示しています。

 次に拡張実数 a が加法の逆元を持つための必要十分条件を求めてみましょう。
 まず、(25-8e) により a + ( - a ) = 0 ですから、任意の実数 a は加法の逆元 - a を持つことがわかります。
 逆に、拡張実数 a が加法の逆元 b を持てば、0 = a + b ですから、0- Ì a- + b- かつ 0+ Ì a+ + b+ が成り立つので、任意の自然数 n > 0 に対して

(25-12a)  - 1
—–
 n
= rn + sn

(25-12b)  1
—–
 n
= r'n + s'n

を満たす rnÎa- , snÎb- , r'nÎa+ , s'nÎb+ が存在します。(25-2) により、任意の自然数 n, m > 0 に対して rn < r'm , sn < s'm が成り立つので、

(25-13)  0 < r'm - rn = 1
—–
 m
+ 1
—–
 n
- s'm + sn < 1
—–
 m
+ 1
—–
 n

が成り立ちます。これは { rn | n > 0 }{ r'm | m > 0 } が同値なコーシー列であることを意味していますから、R の完備性により、実数 a が存在して、共に a に収束します。
 そこで、任意に pÎa- , qÎa+ を取ると、p < a < q ですから、] p, q [a の近傍なので、p < rn , r'm < q となる自然数 n , m が存在します。ゆえに (25-1a),(25-1c) により pÎa- , qÎa+ がわかります。
 逆に任意に pÎa- , qÎa+ を取ると、(25-1b),(25-1d) により p < p' , q' < q となる p'Îa- , q'Îa+ が存在します。
 ここで p' > a すなわち p'Îa+ と仮定すると、上で示したように p'Îa+ となって (25-1e) と矛盾するので p' £ a が得られ、p < p' £ a すなわち pÎa- がわかります。
 同様に、q' < a すなわち q'Îa- と仮定すると、上で示したように q'Îa- となって (25-1e) と矛盾するので q' ³ a が得られ、q > q' ³ a すなわち qÎa+ がわかります。
 以上で a = a が証明され、拡張実数 a が加法の逆元を持つためには、a が実数であることが必要十分であることがわかりました。

 なお、今後は a が加法の逆元 b を持つとき b- a と書き、c- a を加えたものを c - a と書くことにすれば、(25-4p)(25-11) により、任意の拡張実数 a と任意の実数 x に対して

(25-14)  ( a + x ) - x = a + ( x - x ) = a + 0 = a

が成り立ちます。
 一方、実数 x に対し、(25-4q)(25-4s)c- x を代入すれば、a £ b  Þ  a - x  £ b - xa - x  < b - x  Þ  a < b が得られますが、ここで ab をそれぞれ a + xb + x に置き換えれば、a + x £ b + x  Þ  a £ ba < b  Þ  a + x < b + x が得られるので、結局

(25-15a)  a £ b  Û  a + x  £ b + x

(25-15b)  a < b  Û  a + x  < b + x

が成り立ち、従って

(25-15c)  a = b  Û  a + x  = b + x

(25-15d)  a ¹ b  Û  a + x  ¹ b + x

が成り立つことがわかります。すなわち実数を加える演算は順序を保つので、R の任意の部分集合 A と任意の実数 x に対して

(25-16a)  sup ( x + A ) = x + sup A

(25-16b)  inf ( x + A ) = x + inf A

が成り立ちます。
 また一般に A , B Ì R に対して aÎA , bÎB なら inf A £ a £ sup A , inf B £ b £ sup B ですから、(25-4q) により inf A + inf B £ a + b £ sup A + sup B となるので

(25-17a)  inf A + inf B £ inf ( A + B )

(25-17b)  sup A + sup B ³ sup ( A + B )

が成り立ちますが、更に inf A Î R かつ B Ì R なら

(25-18a)  inf A + inf B = inf ( A + B )

が成り立ちます。
 実際、左辺が A + B の下限であることを示せばよいのですが、(25-17a) により、まず下界になっていることがわかります。
 更に、任意の aÎAbÎB に対して c £ a + b となる任意の拡張実数 c に対し、bÎR ですから、その加法の逆元 - b を両辺に加えれば、c - b £ a となり、aÎA は任意ですから c - b £ inf A が得られます。
 ここで両辺に b を加え、更に inf A Î R なのでその加法の逆元 - inf A を両辺に加えれば c - inf A £ b となり、bÎB は任意なので c - inf A £ inf B が得られ、更に両辺に inf A を加えれば c £ inf A + inf B となりますが、これは (25-18a) の左辺が A + B の下界の最大値、すなわち下限であることを意味しています。
 同様にして、sup A Î R かつ B Ì R なら

(25-18b)  sup A + sup B = sup ( A + B )

が成り立つことがわかります。

 さて、拡張実数 a , b に対して

(25-19a)  a < b  Þ  $rÎQ : a < r < b

(25-19b)  a < b  Þ  $eÎQ+ : a + e < b

(25-19c)  a < b  Þ  $eÎQ+ : a < b - e

(25-19d)  ( "eÎQ+ : a £ b + e )  Þ  a £ b

(25-19e)  ( "eÎQ+ : a - e £ b )  Þ  a £ b

が成り立つことを証明しましょう。
 まず (25-19a) ですが、a < b ならば、有理数 rÎa+Çb- が存在しますが、(25-1) により、p < r < q となる 有理数 pÎa+qÎb- が存在します。これは pÎr- 及び qÎr+ を意味するので、a+Ç r- ¹ Æ かつ r+Çb- ¹ Æ すなわち a < r かつ r < b となります。

 次に (25-19b),(25-19c) ですが、上記の r , q に対し、0 < e < q - r となる有理数 e を取ると、q - rÎe+ ですから q = r + (q - r) Î a+ + e+ = (a + e )+ となり、これと qÎb- から a + e < b が得られ、この両辺に - e を加えれば、(25-15b)(25-14) により a < b - e が得られます。

 次に (25-19d),(25-19e) ですが、"eÎQ+ : a £ b + e と仮定して任意に rÎa- を取ると、(25-1b) により s > r となる sÎa- が存在するので、es - r と置くと、a- Ì b- + e- により s = p + q となる pÎb-qÎe- すなわち有理数 q < e が存在します。ゆえに r = s - e < s - q = p ですから、(25-1a) により rÎb- が得られます。
 また、(25-14)(25-15a) により、仮定 "eÎQ+ : a £ b + e と仮定 "eÎQ+ : a - e £ b が同値であることに注意して、任意に rÎb+ を取ると、(25-1d) により s < r となる sÎb+ が存在するので、er - s と置くと、b+ Ì a+ + ( - e )+ により s = p + q となる pÎa+qÎ( - e )+ すなわち有理数 q > - e が存在します。 ゆえに r = e + s > - q + s = p ですから、(25-1c) により rÎa+ が得られます。
 以上により、(25-19d)(25-19e) が同時に証明されました。

 次に、{ xi | I } を、有向集合 I を添字に持ち、R に値を持つ族とします。このとき

(25-20a)  limsupI xi  :º  inf { sup { xk | I , k ³ i } | I }

(25-20b)  liminfI xi  :º  sup { inf { xk | I , k ³ i } | I }

と置き、それぞれ { xi | I }上極限下極限といいます。
 任意の m, I に対し、I は有向集合ですから m, n £ l となる I が存在し、sup { xk | I , k ³ i }i について単調減少、inf { xk | I , k ³ i }i について単調増加ですから、

(25-21)  inf { xk | I , k ³ m } £ inf { xk | I , k ³ l } £ sup { xk | I , k ³ l } £ sup { xk | I , k ³ n }

 ゆえにまず I について上限を取り、次いで I について下限を取れば、

(25-22)  liminfI xm  £  limsupI xn

が成り立つことがわかります。ここで { xi | I } Ì R のとき、この族がある実数に収束するための必要十分条件は

(25-23)  liminfI xm  =  limsupI xn Î R

が成り立つことであることを証明しましょう。また、そのときの極限値が (25-23) の共通の値に等しいことも併せて証明します。
 まず a = limI xm ÎR とすると、任意の実数 e > 0 に対し、I が存在して、任意の i ³ l に対して a - e < xi < a + e ですから

(25-24)  a - e £ inf { xi | i ³ l } £ sup { xi | i ³ l } £ a + e

となるので、

(25-25)  a - e £ liminfI xm , limsupI xn £ a + e

が成り立ち、(25-19d),(25-19e) により、(25-23) が得られ、かつこの共通の値が a に等しいことがわかります。

 逆に (25-23) が成り立つと仮定して、その共通の値を a と置きます。任意の実数 e > 0 に対し、R では上限は強い上限、下限は強い下限であることに注意すれば、

(25-26a)  a - e < inf { xi | i ³ m }

(25-26b)  sup { xi | i ³ n } < a + e

となる m, I が存在します。I は有向集合ですから、m, n £ l となる I が存在し、

(25-27)  "i ³ l : a - e < xi < a + e

が成り立つことがわかり、これは { xi | I }a に収束することを意味しています。

 さて、拡張実数 a = ( a-, a+ ) は、a- = (a+)e が成り立っているとき上半拡張実数ということにし、その全体を R と書くことにします。このとき

(25-28a)  a , b ÎR  Þ  ( a £ b  Û  b+ Ì a+ )

(25-28b)  ± ¥ÎR

(25-28c)  R Ì R

(25-28d)  A Ì R  Þ  inf A Î R

(25-28e)  ( aÎR  Ù  rÎR )  Þ  ( Ø a < r  Û  a ³ r )

が成り立つことを確かめましょう。ただし実数 a(25-7c) で定義された a を同一視しています。
 まず (25-28a) は、a £ b  Þ  b+ Ì a+ は明らかで、逆に b+ Ì a+ ならば、(18-6a) により a- = (a+)e Ì (b+)e = b- となるので a £ b がわかります。
 次に (25-28b) は、Qe = ư = Æ 及び Æe = Q° = Q により明らかです。
 次に (25-28c) は、a を実数とすると、rÎa-  Û  r < a  Û  $eÎQ+ : r + e £ a  Û  $eÎQ+ : ] r - e, r + e [ Ç a+ = Æ  Û  rÎ(a+)e から明らかです。
 次に (25-28d) は、(inf A)- = (Ç{ a- | aÎA })° = (Ç{ (a+)e | aÎA })° = (Ç{ (Q \ a+)° | aÎA })° = (Ç{ Q \ a+ | aÎA })° = (Q \ È{ a+ | aÎA })° = (Q \ (sup A)+)° = ((sup A)+)e が得られ、証明されました。
 最後に (25-28e)Ø a < r  Û  Ø $rÎa+ : r < r  Û  "rÎa+ : r ³ r  Û  "rÎa+ : $sÎa+ : ( s < r Ù s ³ r )  Û  "rÎa+ : r > r  Û  a ³ r から得られます。

 ここで、二つの上半拡張実数 a , b上半和

(25-29a)  a ·
+
b((a+ + b+)e, a+ + b+)

で、また二つの非負上半拡張実数 a , b

(25-29b)  ab ((a+b+)e, a+b+)

で定義します。明らかに上半和は上半拡張実数、積は非負上半拡張実数です。
 また、(25-28c) により、ab が実数のときは、それらの通常の和は実数、したがって上半実数ですから、それらの上半和と一致します。
 更に、非負実数 a , b に対し、r, sÎQr > a ³ 0 , s > b ³ 0 を満たせば rs > rb ³ ab です。逆に qÎQq > ab を満たせば、十分小さい e > 0 に対して q > ab + eb ですから a + e > 0 なので q/(a + e) > b すなわち q/(a + e) > s > b ³ 0 となる有理数 s が存在し、rq/s > a + e > a となります。すなわち { rs | r, sÎ Q  Ù  r > a  Ù  s > b } = { qÎQ | q > ab } が成り立ち、a , b が共に非負実数のときは、その積は実数の積に一致します。

 また、a+ + b+ = b+ + a+a+ + (b+ + c+) = (a+ + b+) + c+ により、上半和についても、交換律と結合律:

(25-30a)  a ·
+
b = b ·
+
a

(25-30b)  a ·
+
( b ·
+
c ) = ( a ·
+
b ) ·
+
c

が成り立つことがわかります。また、(25-28a)(25-29a) により、

(25-30c)  ( a £ a'  Ù  b £ b' )  Þ  a ·
+
b £ a' ·
+
b'

が成り立ち、また3個の拡張実数 a , b , c に対して、(25-28a),(25-29a) により

(25-30d)  a £ b ·
+
c  Û  "rÎb+ : "sÎc+ : r + sÎa+

が成り立つことがわかります。

 同様に、a+b+ = b+a+a+(b+c+) = (a+b+)c+ により、積についても、交換律と結合律:

(25-31a)  ab = ba

(25-31b)  a (bc ) = (ab )c

が成り立つことがわかります。また、(25-28a)(25-29b) により、

(25-31c)  ( 0 £ a £ a'  Ù  0 £ b £ b' )  Þ  ab £ a'b'

が成り立ち、また3個の非負拡張実数 a , b , c に対して、(25-28a),(25-29b) により

(25-31d)  a £ bc  Û  "rÎb+ : "sÎc+ : rsÎa+

が成り立つことがわかります。

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