数学の基礎


26.擬距離

 X を集合とするとき、X ² で定義された非負上半拡張実数値の写像 d は、次の条件(ただし e , d 等のギリシャ小文字は実数を表します):

(26-1a)  d(x, x) = 0

(26-1b)  d(x, y) = d( y, x)

(26-1c)  d(x, z) £ d(x, y) ·
+
d( y, z)

(26-1d)  "x, yÎX : "e > 0 : $d > 0 : ( d(x, y) < e  Ú  d(x, y) ³ d )

を満たすとき、X擬距離といいます。特にすべての d(x, y) が実数のとき、これを距離とよび、距離の与えられた集合 X距離空間といいます。距離の場合は、実数の性質 (23-15b) により (26-1d) は自動的に成り立つことに注意します。

 さて、dX の擬距離とするとき、

(26-2)  U fil { { (x, y)ÎX ² | d(x, y) £ e } | e > 0 }

は、可算基底を持つ X の一様構造を定めます。
 実際、Be{ (x, y)ÎX ² | d(x, y) £ e } と置くと、(26-1a) により DX Ì Be が成り立ち、(26-1b) により Be-1 = Be が成り立ち、(26-1c)(25-30c) により Be/2 ° Be/2 Ì Be が成り立ち、(26-1d)e , d に対して Be È (X ² \ Ud/2) = X ² が成り立つので、UX の一様構造を定め、{ B1/n | nÎN }U の可算基底になります。 Be のかわりに Be{ (x, y)ÎX ² | d(x, y) < e } とした場合も同様です。
 なお、aÎX に対して Be(a){ xÎX | d(x, a) < e }Be(a){ xÎX | d(x, a) £ e } をそれぞれ a を中心とする開球および閉球といいます。これらはいずれもこの一様構造に伴う位相における a の近傍を生成します。また一般に、X の部分集合 A に対して Be[A ]Ae(開)近傍といい、Be[A ]Ae閉近傍といいます。

 逆に、可算基底 { Un | nÎN } を持つ一様構造 U は、ある擬距離から (26-2) によって構成される一様構造と同型であることを証明しましょう。
 明らかに Un は対称で減少列であると仮定しても一般性を失いませんが、更に n > 1 のとき、Un2n - 1 個合成したものは Un-1 に含まれると仮定しても一般性を失わないので、そのように仮定することにします。
 さて、ある正整数 k に対する正整数の有限列 { ni | 1 £ i £ k } と正整数 m

(26-3)  k
å
i=1
 1 

 ni
< 1

 m

を満たすとき、n ³ max { ni | 1 £ i £ k } である限り

(26-4)  Un ° Un1 ° Un ° Un2 ° Un ° Un3 ° Un ° ¼ ° Un ° Unk ° Un Ì Um

が成り立つことを n に関する帰納法で証明しましょう。
 まず n = 1 となることは (26-3) によりありえません。
 次に n - 1 まで正しいと仮定すると、{ n'i | 1 £ i £ k' } º { ni | ni £ n - 1 } と置けば、帰納法の仮定により

(26-5)  Un-1 ° Un'1 ° Un-1 ° Un'2 ° Un-1 ° Un'3 ° Un-1 ° ¼ ° Un ° Un'k ° Un-1 Ì Um

となります。一方 { n"i | 1 £ i £ k" } º { ni | ni = n } と置けば、(26-3) により

(26-6)   k"
å
i=1
 1 

  n"i
=   k"

 n
< 1

 m
£ 1

すなわち k" < n ですから、Un に対する仮定により

(26-7)  Un ° Un"1 ° Un ° Un"2 ° Un ° Un"3 ° Un ° ¼ ° Un ° Un"k ° Un = ( Un2k" + 1 個の合成 ) Ì ( Un2n - 1 個の合成 ) Ì Un-1

となるので、(26-5) の左辺のすべての Un-1(26-7) の左辺で置き換えれば、(26-4) が得られます。
 以上で (26-4) が証明されました。また DX Ì Un ですから、(26-4) により

(26-8)  Un1 ° Un2 ° Un3 ° ¼ ° Unk Ì Um

となることがわかります。そこで x, yÎX に対して

(26-9)  d(x, y) º inf  ì
í
î
k
å
i=1
 1 

 ni
½
½
½
(x, y)ÎUn1 ° Un2 ° Un3 ° ¼ ° Unk ü
ý
þ

と置きます。まず、この d が擬距離になることを確かめましょう。
 実際、任意の n に対して (x, x)ÎUn ですから (26-1a) は明らかです。
 また、Un の対称性により (26-1b) も明らかです。
 また、有理数 r , s について

(26-10a)  rÎd(x, y)+  Þ  ${ ni | 1 £ i £ k } : æ
ç
è
(x, y)ÎUn1 ° Un2 ° Un3 ° ¼ ° Unk  Ù  r > k
å
i=1
 1 

 ni
ö
÷
ø

(26-10b)  sÎd( y, z)+  Þ  ${ mi | 1 £ i £ l } : æ
ç
è
( y, z)ÎUm1 ° Um2 ° Um3 ° ¼ ° Uml  Ù  s > l
å
i=1
 1 

 mi
ö
÷
ø

ですから

(26-11)  (x, z)ÎUn1 ° Un2 ° Un3 ° ¼ ° Unk ° Vm1 ° Um2 ° Um3 ° ¼ ° Uml  Ù  r + s > k
å
i=1
 1 

 ni
+ l
å
i=1
 1 

 mi

すなわち r + sÎd(x, z)+ となるので、(25-30d) により (26-1c) が得られます。
 また (26-9) により

(26-12)  (x, y)ÎUn  Þ  d(x, y) £ 1

 n

が成り立ちます。逆に (26-3),(26-8),(26-9) により

(26-13)  d(x, y) < 1

 m
 Þ  (x, y)ÎUm

が成り立つので、対偶を取ると、(25-28e) により

(26-14)  (x, y)ÏUm  Þ  d(x, y) ³ 1

 m

が成り立ちます。一方、一様構造の定義 (19-2d) から、任意の n に対して

(26-15)  (x, y)ÎUn  Ú  (x, y)ÏUm

を満たす m が存在するので、(26-12),(26-14) により

(26-16)  d(x, y) £ 1

 n
 Ú  d(x, y) ³ 1

 m

が成り立ち、従って (26-1d) も成立し、dX 上の擬距離になることがわかりました。
 また、(26-12),(26-13) により、d の定める一様構造は U と同型であることもわかります。

 一般に擬距離の族 { dl | Λ } に対して、各 dl の生成する一様構造の Λ に対する上限一様構造を、この擬距離族の生成する一様構造ということにします。

 さて、一般の一様空間 ( X , U ) を考えます。任意の UÎU に対して U É U1 É U2 É ¼ を満たし、Un2n - 1 個合成したものは Un-1 に含まれ、かつ対称な族 { Un | nÎN } Ì U を構成することができ、これから (26-9) によって定義された ddU と書けば、これは X 上の擬距離を定めます。この擬距離によって生成される X 上の一様構造は fil { Un | nÎN } に他なりません。ゆえに U は擬距離の族 { dU | UÎU } の生成する一様構造と同型になることがわかります。

 また、不等号 ¹ を持つ集合 X 上の一様構造 U が強Hausdorffであるための必要十分条件は、x ¹ y なら (x, y)ÏU となる UÎU が存在することですが、{ dl | Λ }U を生成する擬距離の族とすれば、これは (26-14) により、ある Λ に対して dl(x, y) ³ 1/m となる正整数 m が存在することと同値、言い換えると x ¹ y  Þ  $lÎΛ : dl(x, y) > 0 がその必要十分条件になります。

 また、同値関係 = を持つ集合 X 上の一様構造 UHausdorffであるための必要十分条件は、すべての UÎU に対して (x, y)ÎU なら x = y となることですが、{ dl | Λ }U を生成する擬距離の族とすれば、これは (26-12) により、すべての Λ とすべての正整数 n に対して dl(x, y) £ 1/m なら x = y となることを意味するので、[ "lÎΛ : dl(x, y) = 0 ]  Þ  x = y がその必要十分条件になります。

 さて、ここで距離について考えます。任意の距離について、それと同一の一様構造を導入する有界な距離が存在することを証明しましょう。任意の距離 d に対し、d'

(26-17)  d'(x, y) d(x, y)
————–
1 + d(x, y)

で定義します。この d' が距離になっていることを確かめましょう。
 まず、d'0 以上 1 以下の値を取ることと、(26-1a),(26-1b) が成り立つことは明らかです。また (26-1c) は、a :º d(x, y) , b :º d( y, z) , g :º d(x, z) と置けば、

(26-18)  d'(x, y) + d'( y, z) - d'(x, z)
= a
——–
1 + a
+ b
——–
1 + b
- g
——–
1 + g

= a(1 + b + g + bg) + b(1 + a + g + ag) - g(1 + a + b + ab)
————————————————————————
(1 + a)(1 + b)(1 + g)

= a + b - g + 2ab + abg
——————————
(1 + a)(1 + b)(1 + g)

³ 0

 ただしここで a, b, g ³ 0a + b ³ g を用いました。よって d'(26-1c) も満たします。
 また、d(x, y) £ e なら d'(x, y) £ e であり、逆に d'(x, y) £ sup {e, 1/2} なら d(x, y) = d'(x, y)/{1 - d'(x, y)} £ 2e なので、(26-1d) が成り立つことがわかり、d' が距離になっていることが証明されるとともに、dd' が同じ一様構造を定めることもわかりました。

 以上の結果を用いて、可算個の距離が定める一様構造は、一個の距離で定まる一様構造と同型であることを証明しましょう。
 距離の可算族 { dn | nÎN } の定める一様空間を ( X, U ) とします。上に示したことから、各 dn01 以下の値を取ると仮定することができますが、更に 2-n を乗じることにより、dn0 以上 2-n 以下の範囲に値を取ると仮定することができます。このとき

(26-19)  d(x, y) ¥
å
n=1
dn(x, y)

と置きます。この右辺は、自然数 N に対し、k, l ³ N までの部分和を取ったものをそれぞれ Sk , Sl と書くと、その差の絶対値は 2-N で押さえられるので、Sk はコーシー列を定め、従って収束し、ある実数を定めます。また、部分和の段階で (26-1a)~(26-1c) を満たすので、極限においても成り立ち、結局 d は距離になります。

 次に (26-19) で定義された距離が一様構造 U を定めることを証明しましょう。任意の UÎU に対し、N の有限部分集合 I と有限個の正実数 ei ( iÎI ) が存在して、

(26-20a)  [ "iÎI : di(x, y) < ei ]  Þ  (x, y)ÎU

が成り立ちます。そこで e :º inf { ei | iÎI } と置けば、d(x, y) < e ならすべての n に対して dn(x, y) < e が成り立ち、特に iÎI に対して di(x, y) < ei が成り立つので、(26-20a) により (x, y)ÎU となります。
 逆に任意の e > 0 に対し、2-N < e となるように N を取り、実数 d > 0Nd < e - 2-N となるように取れば、

(26-20b)  [ "n £ N : dn(x, y) < d ]  Þ  d(x, y) = N
å
n=1
dn(x, y) + ¥
å
n=N+1
dn(x, y) £ N d + 2-N < e

となり、両者の同値性は証明されました。このことから特に、距離空間の可算個の積は距離空間になることがわかります。

 また、可分な距離空間の可視的な部分集合は可分です。
 実際、S を距離空間 ( X, d ) の稠密な可算部分集合、AX の可視的部分集合とすれば、任意の正整数 k に対し、正実数 d £ 1/k が存在して、すべての xÎX に対して AÇBd(x) = Æ 又は AÇB1/k(x) ¹ Æ が成り立ちます。
 そこで j(x) εr[( AÇBd(x) = Æ  Ù  r = 0 ) Ú ( AÇB1/k(x) ¹ Æ  Ù  r = 1 )] と置き、j(x) = 1 となる xÎS に対して aÎAÇB1/k(x) を任意に一個選び、それらを集めた集合を Ck とします。明らかにこれは A の可算部分集合です。更に任意の zÎA に対し、S は可分ですから zÎBd(x) となる xÎS が存在します。すなわち AÇBd(x) ¹ Æ となるので j(x) = 0 と仮定すると矛盾し、j(x) = 1 となります。
 ゆえに Ck の定義により aÎAÇB1/k(x) を満たす aÎCk が存在し、d(z, a) £ d(z, x) + d(x, a) £ d + 1/k £ 2/k となりますが、これは { Ck | kÎN } の和集合が A で稠密な可算集合であることを意味しています。

 さて、一様空間 X が、距離の族 { dl | Λ } により生成されるとします。このとき (26-1c) により | dl(x, y) - dl(x', y' ) | £ dl(x, x' ) + dl( y, y' ) が成り立つので、各距離 dlX ´ X で一様連続です。ゆえにこれらは、X完備化 X の積における一様連続関数 dl に一意的に拡張でき、しかも X 上の距離になっています。
 更に、Ul e{ (x, y)ÎX² | dl(x, y) < e }Ul e = { (x, h)ÎX² | $AÎx : $BÎh : "xÎA : "yÎB : dl(x, y) < e } Ì { (x, h)ÎX² | dl(x, h) £ e } Ì Ul 2e を満たすので、距離の族 { dl | Λ }X の一様構造を定めることがわかります。

 ところで X 上の距離の族 { dl | Λ }Λ は有向集合で、l £ l' なら dl £ dl' が成り立っているものと仮定することができます。実際、Λ の元の有限個の組の全体からなる集合を Λ' と書き、任意の l'ÎΛ' に対して dl ( lÎl' ) の和を dl' と書けば、{ dl' | Λ' } は、包含関係を £ とみなせばこの条件を満たし、X の一様構造を定める距離の族になるからです。
 さて、この条件が成り立っているものとし、各 Λ に対し、X に距離 dl を与えた距離空間を Xl と書くことにします。
 このとき、X から Xl への恒等写像は一様連続なので、それぞれの完備化 X から Xl への一様連続写像 pl が構成されます。また l £ l' のとき、Xl' から Xl への恒等写像は一様連続なので、それぞれの完備化 Xl' から Xl への一様連続写像 pll' が構成され、

(26-21a)  pll' ° pl' = pl       ( l £ l' )

(26-21b)  dl(x, pll'(h)) = dl(x, h)       ( l £ l' , Xl , Xl' )

(26-21c)  dl(pl(x), pl(h)) = dl(x, h)       ( l £ l' ; x, X )

が成り立ちます。ただし X ² における関数 dl と、l' ³ l に対する Xl ´ Xl' における関数 dl のそれぞれにおける完備化への一様連続な拡張を、すべて同じ記号 dl で表しました。
 このとき ( X, (pl )Λ ) は、一様空間の圏における図式 ( (Xl)Λ , (pll' )l£l' ) の極限になっていることを証明しましょう。
 実際、Y を完備一様空間、jl : Y ® Xl を、l £ l' に対して pll' ° jl' = jl を満たす一様連続関数とします。このとき、この式と (26-26b) により、任意の yÎY に対して

(26-22)  dl(jl( y), jl' ( y)) = dl(jl( y), pll'(jl' ( y))) = 0       ( l £ l' )

が成り立つので、これは (jl( y))Λ が生成するフィルターがコーシー・フィルターであることを意味し、X は完備ですから、ある X に収束します。そこで j( y) :º x と定義すれば、(26-22)l' とすることにより dl(jl( y), j( y)) = 0 すなわち jl( y) = pl(j( y)) となり、y は任意なので

(26-23)  jl = pl ° j       ( Λ )

が成り立つことがわかります。また、y : Y ® X(26-23) を満たすとすると、(26-21c) により

(26-24)  dl(j( y), y( y)) = dl(pl(j( y)), pl(y( y))) = dl(jl( y), jl( y)) = 0

となるので、l の任意性により j( y) = y( y) が得られ、j の一意性もわかります。また、l £ l'y, zÎY なら、(26-21c) により

(26-25)  dl(j( y), j(z)) = dl(pl(j( y)), pl(j(z))) = dl(jl( y), jl(z))

となるので j の一様連続性も示され、証明は完成しました。

 さて次に、各点 aÎR と正の実数 e に対して ae 近傍 Ve(a)

(26-26)  Ve(a) º { x ÎR | x  £ a ·
+
 
e  Ù  a £ x  ·
+
 
e }

で定義すれば、これは R 上の位相を定めます。今後は R をこの位相により位相空間と考えることにします。位相空間 R は明らかにこの位相空間の部分空間です。

 さて、R 上の加法、2元の下限を取る算法は共に連続です。
 実際、xÎVe/2(a) , yÎVe/2(b) なら、(25-30c) により

(26-27a)  x ·
+
 y £ (a ·
+
e/2) ·
+
(b ·
+
e/2) = (a ·
+
b) ·
+
e/2 ·
+
e/2 = (a ·
+
b) ·
+
e

(26-27b)  a ·
+
b £ (x ·
+
e/2) ·
+
( y ·
+
e/2) = (x ·
+
 y) ·
+
e/2 ·
+
e/2 = (x ·
+
 y) ·
+
e

ですから加法は連続です。
 また、xÎVe(a) , yÎVe(b) のとき、rÎ(inf {a, b})+ すなわち r > a  Ú  r > b で、しかも s > e なら、仮定から r + s > a + e > x  Ú  r + s > b + e > y すなわち r + sÎ(inf {x, y})+ ですから (25-30d) により

(26-28a)  inf {x, y} £ inf {a, b} ·
+
e

 同様に、rÎ(inf {x, y})+ すなわち r > x  Ú  r > y で、しかも s > e なら、仮定から r + s > x + e > a  Ú  r + s > y + e > b すなわち r + sÎ(inf {a, b})+ ですから (25-30d) により

(26-28b)  inf {a, b} £ inf {x, y} ·
+
e

となるので、2元の下限を取る演算も連続です。

 また任意の擬距離は、その擬距離が定める一様構造が定める位相に関して連続です。
 実際、任意の実数 e > 0 に対し、d(x', x) £ e/2 , d( y', y) £ e/2 なら、(26-1c) により

(26-29a)  d(x', y' ) £ d(x', x) ·
+
d(x, y) ·
+
d( y, y' ) £ d(x, y) ·
+
e/2 ·
+
e/2 = d(x, y) ·
+
e

(26-29b)  d(x, y ) £ d(x, x' ) ·
+
d(x', y' ) ·
+
d( y', y) £ d(x', y' ) ·
+
e/2 ·
+
e/2 = d(x', y' ) ·
+
e

となるからです。

 擬距離 d が与えられた集合 X の部分集合 A に対し、その直径 diam A

(26-30)  diam A sup { d(x, y) | x, yÎA }

で、2個の部分集合 A , B に対し、その距離 dist (A, B)

(26-31)  dist (A, B) inf { d(x, y) | xÎA, yÎB }

で定義します。(25-28d) により、dist(A, B) は上半拡張実数です。また aÎA のとき、dist({a}, A)dist(a, A) とも書いて、aA の距離といいます。

 また d が距離のとき、A , B がプレコンパクトなら diam Adist(A, B) も実数です。
 実際、任意の正整数 k に対し、有限集合 I{ ai | 0 £ i £ n } Ì A が存在して、AI1/k 近傍に含まれます。ゆえにまず

(26-32a)  rk sup { d(ai , aj ) | 0 £ i, j £ n } £ diam A

で、実数の有限集合は実数の範囲に上限を持つことから、rk は実数であり、また任意の x, yÎA に対して d(x, ai) < 1/k , d( y, aj) < 1/k となる i , j が存在するので d(x, y) £ d(ai , aj ) + 2/k £ rk + 2/k ですから、x, yÎA の任意性により

(26-32b)  diam A £ rk + 2

 k

となります。(26-32) により、任意の正整数 k , l に対して

(26-33)  rl £ rk + 2

 k

となるので、{ rk } はコーシー列であり、k ® ¥ のとき、ある実数 r に収束し、(26-32) により diam A = r 、すなわち diam A は実数であることがわかります。
 同様に、任意の正整数 k に対し、有限集合 I{ ai | 0 £ i £ n } Ì A , J{ bj | 0 £ j £ m } Ì B が存在して、A , B はそれぞれ I , J1/k 近傍に含まれます。ゆえにまず

(26-34a)  sk inf { d(ai , bj ) | 0 £ i £ n , 0 £ j £ m } ³ dist (A, B)

で、実数の有限集合は実数の範囲に下限を持つことから、sk は実数であり、また任意の xÎA , yÎB に対して d(x, ai) < 1/k , d( y, bj) < 1/k となる i , j が存在するので sk £ d(ai , bj ) £ d(x, y) + 2/k ですから、x, yÎA の任意性により

(26-34b)  sk £ dist (A, B) + 2

 k

となり、(26-34) により、任意の正整数 k , l に対して

(26-35)  sk £ sl + 2

 k

となるので、{ sk } はコーシー列であり、同様にして dist (A, B) は実数であることがわかります。

 また、距離空間 (X, d ) において、すべての xÎX に対して dist (x, A) が実数であるような X の部分集合 A を、E.Bishopに従ってlocatedであるとよべば、locatedな部分集合は可視的(第20節 (20-7) 参照)です。
 実際、Alocated のとき、任意の実数 e > 0 に対し、0 < d < e であるような実数 d を取れば、実数の性質 (23-15b) により、任意の xÎX に対し、 dist (x, A) > d 又は dist (x, A) < e であり、前者の場合は Bd(x) Ç A = Æ となり、後者の場合は Be(x) Ç A ¹ Æ となるからです。

 逆に、任意の点を中心とする任意の開球がプレコンパクトなら、元を持つ可視的な部分集合はlocatedです。
 実際、A を元を持つ可視的部分集合、xX の点とすると、ある点 bÎA を取って Rd(x, b) + 1 と置けば、BBR(x) は仮定によりプレコンパクトです。そこで任意の正整数 k に対し、正実数 d < 1/k を、任意の zÎX に対して AÇBd(z) = Æ 又は AÇB1/k(z) ¹ Æ が成り立つように取ります。B はプレコンパクトですから、B の有限部分集合 I で、BId近傍に含まれるものが存在します。
 そこで、各 zÎI に対し、j(z) εr[( AÇBd(z) = Æ  Ù  r = 0 ) Ú ( AÇB1/k(z) ¹ Æ  Ù  r = 1 )] と置き、J{ zÎI | j(z) = 1 } と置けば、これは B の有限部分集合で、zÎJ Þ AÇB1/k(z) ¹ Æ ですから K{ εa[aÎAÇB1/k(z)] | zÎJ }È{ b }A の有限部分集合なので、tkdist (x, K ) = inf { d(x, z) | zÎK } は実数で、

(26-36a)  dist (x, A) £ tk

が成り立ちます。
 また任意の cÎA に対して (23-15b) により d(x, c) < R 又は d(x, c) > R - 1 = d(x, b) ³ tk が成り立ちます。
 前者の場合、cÎB ですから、cÎBd(z) となる zÎI が存在します。このとき j(z) = 0 と仮定すると矛盾するので j(z) = 1 、従って zÎJ 、従って aÎKaÎAÇB1/k(z) を満たすものが存在します。ゆえに tk £ d(x, a) £ d(x, c) + d(c, z) + d(z, a) £ d(x, c) + 1/k + d £ d(x, c) + 2/k ですから、c の任意性により

(26-36b)  dist (x, A) ³ tk - 2

 k

となります。ゆえに (26-36) により

(26-37)  tl ³ tk - 2

 k

となるので、{ tk } はコーシー列であり、同様にして dist (x, A) は実数であることがわかります。

 ところで一般に、X の擬距離 dX の部分集合 A に対し、(26-1c)(25-30d) により

(26-38)  dist(x, A) £ d( y, A) ·
+
d(x, y)

が成り立つので、xdist (x, A) を対応させる写像は R からそれ自身への連続写像であり、更に d が距離で Alocated なら、R からそれ自身への連続写像です。

 さて、( X , U ) を一様空間とし、UaÎX の近傍とするとき、U を定める擬距離の一つ d が存在して、{ xÎX | d(x, a) < e } Ì U となります。そこで f(x) inf { 1, e-1d(x, a) } と置くと、f : X ® R は連続で、

(26-39a)  0 £ f(x) £ 1

(26-39b)  f(a) = 0

(26-39c)  f(x) < 1  Þ  xÎU

を満たします。

 さて、次に強位相群の一様構造に対する議距離について考えます。
 強位相群 G に伴う左一様構造 U を定める擬距離の族 { dl | Λ } を、

(26-40a)  dl(ax, ay) = dl(x, y)

を満たすように構成することができます。
 実際、Vn-1 = VnVn2n-1 Ì Vn-1 を満たす G の単位元の近傍 Vn を使って Un{ (x, y) | x-1yÎVn-1 } と置き、この Un を使って d(26-9) で定義すれば、 (x, y)ÎUn1 ° Un2 ° Un3 ° ¼ ° Unk は、$xi ( 0 £ i £ n ) : [ x0 = x  Ù  xk = y  Ù  xi-1-1 xiÎVni ] と同値です。
 そこで、yiaxi と置けば、これは更に $yi ( 0 £ i £ n ) : [ y0 = ax  Ù  yk = ay  Ù  yi-1-1 yiÎVni ] すなわち (ax, ay)ÎUn1 ° Un2 ° Un3 ° ¼ ° Unk とも同値になるので、(26-9) で定義される d(26-40a) を満たすことは明らかです。
 この (26-40a) を満たす擬距離を左不変な擬距離といいます。

 同様にして、強位相群 G に伴う右一様構造 U を定める擬距離の族 { dl | Λ }

(26-40b)  dl(xa, ya) = dl(x, y)

を満たすように構成できることもわかります。これを右不変な擬距離といいます。特に強位相Abel群の場合、

(26-40c)  dl(x + a, y + a) = dl(x, y)

を満たすようにできるので、擬ノルム || · ||l

(26-41)  || x ||l dl(x, 0) = dl(0, x)

で定義すれば、(26-40c)a = - y と置くことにより

(26-42)  || x - y ||l = dl(x, y)

が成り立ち、更に

(26-43a)  || 0 ||l = 0

(26-43b)  || - x ||l = || x ||l

(26-43c)  || x ± y ||l £ || x ||l · 
+ 
|| y ||l

が成り立ちます。
 実際、(26-43a)(26-1a) から明らかです。また (26-43b) は、(26-40c)a = - x , y = 0 と置けば、(26-41) により明らかです。最後に (26-43c) は、 (26-1c),(26-40c),(26-41),(26-43b) により

(26-44)  || x ± y ||l = dl(x ± y, 0) = dl(x, ± y) £ dl(x, 0) · 
+ 
dl(0, ± y) = || x ||l · 
+ 
|| ± y ||l = || x ||l · 
+ 
|| y ||l

となって証明されました。

 なお、強位相群 G が強Hausdorffであるための必要十分条件は、x ¹ 0  Þ  $lÎΛ : || x ||l > 0 となることであり、Hausdorff であるための必要十分条件は [ "lÎΛ : || x ||l = 0 ]  Þ  x = 0 となることであることがわかります。

 この節の最後に、完備距離空間 X に対するBaireの定理、すなわち X の開集合 O ¹ ÆX で稠密な開集合の列 { On | nÎN } に対して

(26-45)  OÇÇ{ On | nÎN } ¹ Æ

が成り立つことを証明しましょう。
 実際、帰納法で、X の開集合の列 { Gn | nÎN }

(26-46a)  G0 Ì O

(26-46b)  Æ ¹ Gn Ì On

(26-46c)  Gn Ì Gn-1

(26-46d)  diam Gn £ 2-n

となるように構成していきます。
 まず、O ¹ Æ かつ O0X で稠密ですから、O'OÇO0 は元を持つ開集合なので G0O' と置きます。
 次に Gii < n まで構成できたと仮定します。Gn-1 ¹ Æ かつ OnX で稠密なので、O'Gn-1 ÇOn は開集合で元 a を持ちます。
 ae閉近傍が O' に含まれるように正実数 e £ 2-n-1 を取り、ae開近傍を Gn とすれば (14-1c),(14-1d) が成り立ちます。
 以上で (26-46) を満たす { Gn | nÎN } が構成できました。これは直径が 0 に収束するのでコーシーフィルターですから X の完備性により、ある a に収束します。この事実と aÎGn+1 Ì Gn Ì OÇOn により (26-45) が成り立つことがわかります。

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