数学の基礎


29.微分

 不等号 ¹ を持つ集合 S の部分集合 AB強差集合 A \\ B

(29-1)  A \\ B { xÎA | "zÎB : z ¹ x }

で定義します。明らかに A \\ B Ì A \ B です。

 位相空間 X の部分集合 UaÎX に対し、a の任意の近傍が U \\ {a} と交わるとき、aU非孤立点といい、このとき U から一様空間 Y への関数  fa の近くで定義されているということにします。
  fa の近くで定義されているとき、F{  f [V \\ {a}] | VÎV (a) }Y のフィルター基底になります。そこで F がある点 yÎY に収束するとき、 fa に近づくとき y に収束する、あるいは a で極限 y を持つといい

(29-2a)  y =  
lim
 x®a
 f(x)

又は

(29-2b)   f(x) ® y       ( x ® a )

と書きます。

 もし aÎD( f ) なら、fa で連続であることと a で極限 f(a) を持つことは同値です。
 実際、f が連続なら  f が極限 f(a) を持つことは明らかですが、逆に  fa で極限 f(a) を持つと仮定し、Vf(a) の任意の近傍とします。Y は一様空間なので、f(a) の近傍 V'

(29-3)  "yÎY : ( yÎV  Ú yÏV' )

となるものが存在します。
 そこで a の近傍 W f [W \\ {a}] Ì V' となるように取ります。ここで任意に xÎW を取り、f(x)ÏV' と仮定します。ここで更に x ¹ a と仮定すると、 xÎW \\ {a} ですから f(x)ÎV' となり、矛盾します。ゆえに x = a が得られますが、f は関数ですから f(x) = f(a)ÎV' となり、Y の同値関係 = の定義により f(x)ÎV' となり、矛盾します。
 ゆえに Ø f(x)ÏV' が得られたので、(29-3)y f(x) を代入したものにより f(x)ÎV が得られ、Vx は任意ですから、fa で連続です。

 以下、U を付値体 K'非孤立的な部分集合、すなわち任意の aÎUU の非孤立点であるような部分集合とします。また X を付値体 K に対する局所凸空間とするとき、U から X への関数 faÎU に対し、

(29-4)  Δf(a, x)  f(x) - f(a)
————–
 x - a
      ( xÎU \\ {a} )

と定義します。Δf(a, x) は、x の関数として a の近くで定義されているので、これが a で収束するとき、fa微分可能であるといい、

(29-5)   Df(a) f '(a)
—–
d
a
 f(a) d f(a)
——–
d
a
 
lim
 x®a
Δf(a, x)

を  fa における微分係数といいます。もし  fU のすべての点で微分可能なとき、単に微分可能であるといい、a に対して Df(a) を対応させる関数 Dff導関数といいます。

 導関数の導関数が存在するとき、これを2階の導関数といいます。以下帰納的に、n - 1階の導関数の導関数が存在するときn階微分可能であるといい、そのn階の導関数

(29-6)   Dn f(a) f (n)(a) dn
—–
d
an
 f(a) dnf(a)
——–
d
an

と書きます。なお、任意の n に対してn階微分可能な関数は無限階微分可能であるといいます。

 さて、f開集合 U で定義された強関数ならば、その導関数 Df も強関数です。
 実際、Df(x) ¹ Df( y) なら、絶対値が十分小さい hÎK' に対して、g(z) Δf(z, z + h) と置くと、g(x) ¹ g(y) となります。ところが g は強関数ですから、x ¹ y となり、これは Df が強関数であることを示しています。

 さて、fa で微分可能であるためには、ある実数 Df(a) が存在し、X の一様構造を定める任意のセミノルム || · || と任意の e > 0 に対し、

(29-7)  | x - a | < d  Þ  ||  f(x) - f(a) - Df(a)(x - a) || £ e | x - a |

が成り立つような実数 d > 0 が存在することが必要十分です。
 実際、(29-7) が成り立てば、Δf(a, x)Df(a) に収束するので fa で微分可能です。
 逆に、fa で微分可能で微分係数 Df(a) を持つと仮定します。このとき、任意の e > 0 に対し、0 < | x - a | < d である限り (29-7) の右辺が成り立つような d > 0 が存在します。そこで | x - a | < d を満たす x を任意に取り、

(29-8)  ||  f(x) - f(a) - Df(a)(x - a) || > e | x - a |

と仮定します。
 ここで x ¹ a と仮定すると、0 < | x - a | < d となって (29-7) の右辺が成り立つので (29-8) と矛盾します。よって x = a となりますが、f が関数であることから ||  f(x) - f(a) - Df(a)(x - a) || = 0 £ 0 = e | x - a | となって、やはり (29-7) の右辺が成り立つので (29-8) と矛盾します。
 従って、仮定 (29-8) の否定が成り立ち、これは (29-7) の右辺が成り立つことを意味します。

 さて、f は、a で微分可能なら a で連続です。
 なぜなら X の一様構造を定義する任意のセミノルム || · || に対し、e = 1 に対して (29-7) を満たす d > 0 を取れば、

(29-9)  | x - a | < d  Þ  ||  f(x) - f(a) || £ ( || Df(a) || + 1 ) | x - a |

となり、右辺は x ® a のとき 0 に近づくからです。

 U から X への関数  f , g に対し、( f + g)(x) f(x) + g(x) ( xÎU ) で定義される関数  f + g については

(29-10a)  Δ( f + g)(a, x) = Δf(a, x) + Δg(a, x)

が成り立つので、f , g が共に a で微分可能なら、X の加法が連続であることから  f + ga で微分可能で

(29-10b)  D( f + g)(a) = Df(a) + Dg(a)

が成り立ちます。また、cÎK に対して (cf )(x) = cf(x) と置くと、

(29-11a)  Δ(cf )(a, x) = c Δf(a, x)

となるので、fa で微分可能なら、KX の元の積が連続であることから cfa で微分可能で

(29-11b)  D(cf )(a) = c Df(a)

が成り立ちます。すなわち微分演算 D線形写像です。
 また、U から K への関数 j に対し、関数 j f(jf )(x) :º j(x) f(x) ( xÎU ) で定義すれば、

(29-12a)  Δ(j f )(a, x) = j(x) f(x) - j(a) f(a)
————————
 x - a
= {j(x) - j(a)} f(x) + j(a){ f(x) - f(a)}
———————————————
 x - a
= Δj(a, x) f(x) + j(a) Δf(a, x)

となるので、j , f が共に a で微分可能なら、KX の元の積が連続であることから、j fa で微分可能で

(29-12b)  D(j f )(a) =(Dj)(a) f(a) + j(a)Df(a)

が成り立ちます。更に jfn階の導関数を持てば、次のLeibnizの公式

(29-12c)  Dn(j f )(a) = n
å
k=0
æ
è
n
k
ö
ø
j(k)(a)  f (n-k)(a)

が成り立ちます。
 なぜなら、j(i)(a)f ( j)(a) の積に定数を掛けたものの有限和に対して、j(i)(a) の方のみ微分階数を 1 増やすという演算を af (i)(a) の方のみ微分階数を 1 増やすという演算を b と書けば、1 回微分するという操作は (29-12b) により a + b と表されますから、n回微分するという操作は (a + b)n と表され、二項定理 (12-32) により (29-12c) が得られるからです。

 同様に、多項定理 (12-34) により、U から K へのn階微分可能な関数 ji ( 1 £ i £ r ) に対し、

(29-12d)  Dn(j1j2 ¼ jr )(a) =  
å    
k1+¼+ kr= n
æ
è
n
k1 ¼ kr
ö
ø
j1 (k1)(a) ¼ jr(kr )(a)

が成り立つことがわかります。

 次に、U から K への関数 j に対し、j(a) ¹ 0 かつ ja で微分可能なら、ja で連続なので、1/ja の近傍で定義されて a で連続であり、

(29-13a)  Δ æ
è
1

j
ö
ø
(a, x) = 1
——–
 x - a
æ
è
1
——
j
(x)
- 1
——
j
(a)
ö
ø
= - 1
————
j
(x)j(a)
j(x) - j(a)
—————
 x - a
= - Δj(a, x)
————
j(x)j(a)

となるので、1/ja で微分可能で

(29-13b)  D æ
è
1

j
ö
ø
(a) = - Dj(a)
———
j(a

 ゆえに (29-12b),(29-13b) により、a で微分可能な f に対して

(29-14)  D æ
è
 f

j
ö
ø
(a) = j(a)Df(a) - (Dj)(a) f(a)
——————————
j(a

 また、定値関数 f(x) に対しては、明らかに Δf(a, x) = 0 ですから、すべての a について微分可能で

(29-15a)  Df(a) = 0

が成り立ちます。特に X = K' = K の場合を考えれば、cÎK に対して

(29-15b)  Dc = 0

 また、恒等写像 j(x)x については

(29-16a)  Δj(a, x) =  x - a
——–
 x - a
= 1

ですから

(29-16b)  Dx = 1

となります。(29-15b),(29-16b)(29-12b) により、n に関する帰納法によって、任意の正整数 n に対して

(29-17)  D(xn ) = nxn-1

であることが証明できます。実際、n で正しいとすると、D(xn+1 ) = D(xn · x) = D(xn ) x + xn D(x) = nxn-1 x + xn = (n + 1)xn が得られるからです。

 更に、(29-17)n が負の整数の場合も x ¹ 0 に対して成り立ちます。
 実際、m = - n > 0 と置くと、j(x)xm に対して (29-13b) を適用すれば、D(xn ) = D(1/j)(x) = - D(j)(x)/j(x = - mxm-1x-2m = - mx-m-1 = nxn-1 となり、確かに成り立っています。

 次に j は付値体 K" の非孤立集合 U から K' への関数で、aÎU で微分可能とし、fK' の非孤立集合から X への関数で、j(a) で微分可能とします。このとき X の一様構造を定める任意のセミノルム || · || と任意の e > 0 に対し、e' :º e / 2(1 + |Dj(a)|) に対して (29-7) を満たす d を取り、xa にそれぞれ j(x)j(a) を代入すれば、

(29-18a)  | j(x) - j(a) | < d  Þ  ||  f(j(x)) - f(j(a)) - (Df )(j(a))(j(x) - j(a)) || £ e
—————–
2
(1 + |Dj(a)|)
| j(x) - j(a) |

 一方、ja で連続ですから

(29-18b)  | x - a | < h'  Þ  | j(x) - j(a) | < d

を満たす h' > 0 が存在します。また ja で微分可能ですから、

(29-18c)  | x - a | < h"  Þ  | Δj(a, x) - Dj(a) | £ inf {2, e}
————————
2(1 + ||(Df )(j(a))||)
£ 1

を満たす h" > 0 が存在します。よって、h :º inf {h' , h" } > 0 と置けば、(29-18a)Þ の右側の式を x - a で割ったものにより、

(29-18d)  0 < | x - a | < h  Þ  || Δ( f ° j)(a, x) - (Df )(j(a)) Δj(a, x) || £ e
—————–
2
(1 + |Dj(a)|)
| Δj(a, x) | £ e
—————–
2
(1 + |Dj(a)|)
{ | Δj(a, x) - Dj(a) | + | Dj(a) | } £ e

2

 また (29-18c) により

(29-18e)  0 < | x - a | < h  Þ  || (Df )(j(a)) Δj(a, x) - (Df )(j(a))Dj(a) || = | Δj(a, x) - Dj(a) | || (Df )(j(a)) || £ e

2

 ゆえに (29-18d),(29-18e) により

(29-18f)  0 < | x - a | < h  Þ  || Δ( f ° j)(a, x) - (Df )(j(a)) Dj(a) || £ e

が成り立ちますから、f ° ja で微分可能であることがわかり、合成関数の微分公式

(29-18g)  D( f ° j)(a) = (Df )(j(a)) Dj(a)

が得られます。

 次に jaÎK' の近傍で定義された K に値を持つ強関数で、a で微分可能で Dj(a) ¹ 0 を満たし、しかも b :º j(a) の近傍で定義された b で連続な逆関数 j-1 を持つとします。このとき y :º j(x)y ¹ b を満たせば j が強関数であることから x ¹ a となり、Δj(a, x) が定義できて、

(29-19a)  Δj-1(b, y) = j-1( y) - j-1(b)
——————–
 y - b
=  t - a
—————
j(x) - j(a)
= 1
———–
Δj(a, x)

 ここで j-1b における連続性により y ® b のとき x ® a となるので、j-1b で微分可能で、逆関数の微分公式

(29-19b)  Dj-1(b) = 1
———
Dj(a)
=  1 
—————–
(Dj)(j-1(b))

が得られます。

 次に、K' の非孤立的な部分集合 U から K への関数 jy が、共に aÎU で微分可能で

(29-20a)  j(a) = y(a) = 0

(29-20b)  y'(a) ¹ 0

を満たせば、j(t) / y(t)a で極限を持ち、

(29-21)   
lim
x®a
j(x)
——
y(x)
= j'(a)
——
y'(a)

が成り立ちます。なぜなら x ¹ a が十分 a に近ければ、(29-20b) により Δy(a, x) ¹ 0 ですから、(29-20a) により

(29-22)  j(x)
——
y(x)
= j(x) - j(a)
—————
y(x) - y(a)
= Δj(a, x)
————
Δy(a, x)

となり、この右辺は x ® a のとき (29-21) の右辺に収束するからです。これを(易しい方の)de l'Hôpitalの定理ということがあります。

 次に付値体 K' の非孤立的な部分集合 U と付値体 K に対するBanach空間 X に対し、U から X への関数の列からなる収束級数

(29-23)   f(x) ån  fn(x)

を考えます。ここですべての fnx で微分可能で、条件

(29-24)  "e > 0 : $kÎN : $d > 0 : "zÎU : [  0 < | z - x | < d  Þ  ån ³ k || Δfn(x, z) || £ e  ]

が成り立つならば、fx で微分可能で、項別微分可能、すなわち

(29-25)   f '(x) ån  fn'(x)

が成り立ち、かつこの右辺は絶対収束することを証明しましょう。
 実際、(29-23)xz を代入したものから (29-23) を辺々差し引いて、両辺を z - x で割れば、

(29-26)   Δf(x, z) = ån Δfn(x, z)

となります。さて、任意の e > 0 に対し、(29-24) を満たす kd を取ります。このとき任意の l > k に対し、

(29-27)  0 < | z - x | < d  Þ  åk £ n £ l || Δfn(x, z) || £ e

となりますが、各 fnx で微分可能であることから、z ® x とすれば、

(29-28)  åk £ n £ l ||  fn'(x) || £ e

が得られます。これは、{ ån £ k ||  fn'(x) || | kÎN } がコーシー列であることを意味し、従って収束します。すなわち (29-25) の右辺は絶対収束することがわかりました。ゆえに (29-28)l ® ¥ とすれば

(29-29)  ån ³ k ||  fn'(x) || £ e

となります。また、各 fnx で微分可能であることから、

(29-30)  0 < | z - x | < dn  Þ  || Δfn(x, z) -  fn'(x) || £ e

 k

となる dn > 0 が存在します。そこで d'inf { d , d0 , d1 ,¼, dk-1 } > 0 と置けば、0 < | z - x | < d' のとき

(29-31)  || Δf(x, z) - ån  fn'(x) || £ ån < k || Δfn(x, z) -  fn'(x) || + ån ³ k || Δfn(x, z) || + ån ³ k ||  fn'(x) || £ k e

 k
+ e + e = 3e

となるので、e > 0 は任意ですから、これは、fx で微分可能で (29-25) が成り立つことを意味しています。

 さて、上記の結果を冪級数 (28-38) の場合に適用してみましょう。
 まず、(28-39)R に対応して ån ³ 1 n || an || rn-1 が収束するような実数 r ³ 0 の全体を R' と置くと、

(29-32a)  R' Ì R

(29-32b)  RÎR  , r < R  Þ  rÎR'

が成り立ちます。
 実際、rÎR' なら、ån ³ 1 n || an || rn-1r を乗じた ån ³ 1 n || an || rn も収束しますから、これを優級数に持つ ån ³ 1 || an || rn は収束し、従って rÎR がわかります。
 次に RÎRr < R を仮定すると、点列 { || an || Rn | nÎN }0 に収束するので

(29-33)  $kÎN : "n ³ k : || an || R n £ 1

が成り立ちます。ゆえに n ³ k なら n || an || rn-1 £ n(r/R)n-1R -1 で、(28-37b) により

(29-34)  å1 £ n < k n || an || rn-1 + ån ³ k n(r/R)n-1R -1 = å1 £ n < k n || an || rn-1 + R -1
————–
{1 - (r/R)}²
- å1 £ n < k n(r/R)n-1R -1

ですから、級数 { n || an || rn-1 | nÎN } は、収束する優級数 { || a1 || , 2|| a2 || r , 3|| a3 || r² , ¼ , (k - 1)|| ak-1 || rk-2 , k(r/R)k-1R-1 , (k + 1)(r/R)kR-1 , ¼ } を持つので絶対収束し、これは rÎR' を意味するので、(29-32b) は証明されました。

 さて、fn(x)an xn と置き、| x | < r  となる xÎU を取ります。ここで | x | < r < r  となる実数 r を取れば、

(29-35)   æ
è
n
k
+ 1
ö
ø
= n!
———————–
(k + 1)!(n - k - 1)!
= (n - 1)!n
———————–
(k + 1)!(n - 1 - k)!
£  n (n - 1)!
—————–
k!(n - 1 - k)!
= n æ
è
n - 1
k
ö
ø

と二項定理 (12-21) により、0 < | h | £ r - | x | のとき、

(29-36)  || Δfn(x, x + h) ||
= || an || ½
½
(x + h)n - xn
—————–
 h
½
½

= || an || ½
½
n
å
k=1
æ
è
n
k
ö
ø
xn-k hk-1 ½
½

£ || an || n
å
k=1
æ
è
n
k
ö
ø
| x |n-k | h |k-1

= || an || n-1
å
k=0
æ
è
n
k
+ 1
ö
ø
| x |n-1-k | h |k

£ n || an || n-1
å
k=0
æ
è
n - 1
k
ö
ø
| x |n-1-k | h |k

= n || an || ( | x | + | h | )n-1

£ n || an || rn-1

となりますが、r < r  なので、r < R < r  となる R を取れば、RÎR 従って (29-32b) により rÎR' となりますから、(29-36)(29-24) が成り立つことを意味しています。
 ゆえに冪級数は、絶対値が収束半径より小さい限り項別微分可能で

(29-37) 
—–
d
x
ån an xn = ån ³ 1 nan xn-1

となることがわかります。しかも (29-32) により、項別微分した冪級数の収束半径はもとの冪級数の収束半径と一致します。従ってこれを繰り返せば、冪級数は、絶対値が収束半径より小さい x で無限階微分可能であることがわかります。

 さて、今までの議論は K' = R の場合に適用することができますが、この場合は以下のような片側極限や片側微分の概念が定義できます。
 R の部分集合 U に対し、aÎRUÇ] a, ® [ の非孤立点であるとき右非孤立点といいます。このとき、U から一様空間 Y への関数  f は、その定義域を UÇ] a, ® [ に制限した関数が、a に近づくとき y に収束するならば、fa において右極限 y を持つといい、

(29-38a)  y =  
lim
t ¯ a
 f(t)

と書きます。同様に、aÎRUÇ] ®, a [ の非孤立点であるとき左非孤立点といい、f の定義域を UÇ] ¬, a [ に制限した関数が、a に近づくとき y に収束するならば、fa において左極限 y を持つといい、

(29-38b)  x =  
lim
t a
 f(t)

と書きます。

 そこで、R の非孤立集合 U から局所凸空間 X への関数  faÎU に対し、Δf(a, x)x の関数として a で右極限を持つとき、fa右微分可能であるといい、

(29-39a)  D+f(a) =  
lim
x ¯ a
Δf(a, x)

と書いて、これを  fa における右微分係数といいます。
 同様に、Δf(a, x)x の関数として a で左極限を持つとき、fa左微分可能であるといい、

(29-39b)  D-f(a) =  
lim
x a
Δf(a, x)

と書いて、これを  fa における左微分係数といいます。

  fa で極限を持ち、aU の右(左)非孤立点ならば、明らかに右(左)極限を持ち、極限と一致しますが、逆に a が左非孤立点かつ右非孤立点で、かつ左右の極限が存在して一致すれば、極限を持ち、左右の極限に一致します。微分についても同様です。

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