数学の基礎


40.位相積分

 一様空間 ( S, U ) は、すべての xÎS に対して U(x) がコンパクトであるような UÎU の全体が U の基底をなすとき一様局所コンパクトであるといいます。
 一様局所コンパクト空間は完備です。実際、F をコーシー・フィルターとすると、すべての xÎS に対して U(x) がコンパクトであるような UÎU に対し、A ´ A Ì U となる AÎF が存在し、A は元 a を持つので A Ì U(a) となります。よって、任意の BÎF に対し、Æ ¹ AÇB Ì U(a) ですから B は完備な集合 U(a) と交わるので、コーシー・フィルター { BÇU(a) | BÎF } は収束し、従ってこれより粗いフィルター F は集積しますが、これはコーシー・フィルターなので実は収束します。

 さて、Ω を一様局所コンパクト空間 S の開集合とします。Ω の部分集合 A は、ある UÎU に対して U[C] Ì Ω となるプレコンパクト集合 C に含まれるとき A ÌÌ Ω と書くことにします。
 明らかに、A ÌÌ Ω かつ B Ì A なら B ÌÌ Ω で、A ÌÌ Ω かつ B ÌÌ Ω なら AÈB ÌÌ Ω が成り立ちます。

 一様局所コンパクト空間 S の開集合 Ω で定義された一様連続関数 j のうち、{ xÎΩ | j(x) ¹ 0 } ÌÌ Ω となるようなものの全体を K(Ω) と書き、そのうち非負なものの全体を K +(Ω) と書きます。
 明らかに

(40-1a)  K(Ω) , cÎR  Þ  { xÎΩ | cj(x) ¹ 0 } Ì { xÎΩ | j(x) ¹ 0 }

(40-1b)  j, K(Ω)  Þ  { xÎΩ | j(x) + y(x) ¹ 0 } Ì { xÎΩ | j(x) ¹ 0 } È { xÎΩ | y(x) ¹ 0 }

(40-1c)  K(Ω) , cÎR+  Þ  { xÎΩ | (j Ù c)(x) ¹ 0 } Ì { xÎΩ | j(x) ¹ 0 }

が成り立ちますから、K(Ω) は線形空間で、(32-5) を満たします。

 K(Ω) から R への線形写像 I は、

(40-2a)  $jÎK(Ω) : I(j) ¹ 0

(40-2b)  K(Ω), I(j) > 0  Þ  $xÎΩ : j(x) > 0

を満たすとき、K(Ω) 上の正値線形汎関数 といいます。- j に対して (40-2b) の対偶を取ることにより、IK +(Ω) 上非負であることがわかります。

 以下、S距離空間である場合のみを考えることにし、S の距離を d とします。

 まず、任意の K(Ω) に対し、{ xÎΩ | j(x) ¹ 0 }1 となる K +(Ω) が存在し、更に任意の UÎU に対し、K +(Ω) の有限列 { ci | i £ k } で、各 { xÎΩ | ci(x) ¹ 0 }U-小集合(第20節参照)で、

(40-3a)  åi £ k ci £ 1

(40-3b)  j = j åi £ k ci

となるものが存在することを証明しましょう。以下 d > 0 に対し、

(40-4)  Ud { (x, y)ÎS ´ S | d(x, y) < d }

と書くことにします。
 まず仮定により、{ xÎΩ | j(x) ¹ 0 } Ì C かつ Ud [C] Ì Ω となるプレコンパクト集合 Cd > 0 が存在します。従って、e > 0 を十分小さく取ると、すべての xÎS に対して U5e(x) はコンパクト集合に含まれ、しかも有限列 { ai | i £ k } Ì C が存在して

(40-5a)  C Ì Ue [{ ai | i £ k }] Ì Ω

(40-5b)  U6e [C] Ì Ω

となります。そこで、

(40-6a)  yi(x) sup { 0 , 2 - d(x, ai ) / e }

(40-6b)  qi(x) sup { 0 , 5 - d(x, ai ) / e }

(40-6c)  y :º 1 Ù åi £ k yi

(40-6d)  q :º åi £ k qi

と置きます。このとき、

(40-7a)  { xÎΩ | y(x) ¹ 0 } = Èi £ k{ xÎΩ | yi(x) > 0 } = Èi £ k U2e (ai)

(40-7b)  Ue [{ xÎΩ | y(x) ¹ 0 }] Ì U3e [{ ai | i £ k }] Ì U3e [C] Ì Ω

(40-7c)  { xÎΩ | q(x) ¹ 0 } = Èi £ k{ xÎΩ | qi(x) > 0 } = Èi £ k U5e (ai)

(40-7d)  Ue [{ xÎΩ | q(x) ¹ 0 }] Ì U6e [{ ai | i £ k }] Ì U6e [C] Ì Ω

ですから、まず y, K +(Ω) であることがわかります。更に、

(40-8)  y(x) ¹ 0  Þ  $i £ k : yi(x) > 0  Þ  d(x, ai ) < 2e  Þ  q(x) ³ qi(x) > 5 - 2 = 3

ですから
(40-9a)  q(x) > 2  Þ 
lim
d(x, y) ® 0
½
½
1
——
q
(x)
- 1
——
q
( y)
½
½
=

lim
d(x, y) ® 0
|q(x) - q( y)| < 1
½
½
1
——
q
(x)
- 1
——
q
( y)
½
½
=

lim
d(x, y) ® 0
q
(x), q( y) > 1
|q(x) - q( y)|
—————–
q(x)q( y)
£
lim
d(x, y) ® 0
|q(x) - q( y)| = 0

(40-9b)  q(x) < 3  Þ  y(x) = 0

となるので、q(x) > 2 のとき ci(x) :º y(x)qi(x) / q(x)q(x) < 3 のとき ci(x) :º 0 と置くと、これはうまく定義されて一様連続になり、q(x)2 より大きい場合と 3 より小さい場合に分けて考え、後者の場合 (40-9b) に注意すれば、

(40-10)  åi £ k ci = y

が成り立つことがわかります。
 ゆえに、これと (40-6c) により (40-3a) が得られます。また、j(x) ¹ j(x) åi £ k ci(x) と仮定すると、j(x){1 - åi £ k ci(x)} ¹ 0 なので j(x) ¹ 0 かつ 1 - åi £ k ci(x) ¹ 0 ですが、(40-8) により

(40-11)  j(x) ¹ 0  Þ  xÎC  Þ  $i £ k : xÎUe(ai )  Þ  yi(x) ³ 2 - d(x, ai ) / e ³ 1  Þ  y(x) = 1  Þ  q(x) ³ 3, ci(x) = qi(x) / q(x)  Þ  åi £ k ci(x) = 1

となって矛盾するので、(40-3b)x を代入した式が成り立ち、x は任意ですから (40-3b) が得られます。
 また、ci(x), ci( y) ¹ 0 なら qi(x), qi( y) > 0 すなわち d(x, ai ), d( y, ai ) < 5e 従って d(x, y) < 10e 従って、任意の UÎU に対して e > 0 を十分小さく取れば、(x, y)ÎU10e Ì U となるので、{ xÎΩ | ci(x) ¹ 0 }U-小集合です。

 以上の準備のもとで、K(Ω) 上の任意の正値線形汎関数 IΦK(Ω) 上の積分になることを証明しましょう。

 まず、(32-6a)~(32-6c)I に対する仮定から明らかです。

 また、j, K(Ω) に対して

(40-12)  j £ y  Þ  I(j) £ I(y)

が成り立つことを注意しておきます。実際、j £ y なら y - j ³ 0 すなわち y - jÎK +(Ω) ですから I の非負性により I(y - j) ³ 0 が得られ、I の線形性により (40-12) が得られます。

 また、任意の K +(Ω) に対し、{ xÎΩ | j(x) > 0 } を含むプレコンパクト集合 C Ì Ω を取ると、j[Ω] \\ {0} Ì j[C] ですから、任意の e > 0 に対して j[Ω] Ì j[C] È [- e, e] が成り立ち、j[C] はプレコンパクト集合 C の一様連続像ですからプレコンパクト、従って有界です。ゆえに j[Ω] も有界で、ある NÎN が存在して "xÎΩ : j(x) < N ですから "n ³ N : j Ù n = j となるので (32-6d) の成立は明らかです。

 また、同じ jC に対し、C1 となる K +(Ω) を取ると、任意の正整数 n に対して

(40-13)  j Ù n-1 £ n-1 y

が成り立ちます。実際、任意に選んだ xÎΩ に対して {j Ù n-1}(x) > n-1 y(x) となったと仮定します。ここで更に j(x) > 0 と仮定すると、y(x) = 1 となるので、j(x) Ù n-1 > n-1 となって矛盾します。ゆえに j(x) = 0 が得られますが、このとき 0 = {j Ù n-1}(x) > n-1 y(x) ³ 0 となってやはり矛盾します。ゆえに (40-13)x を代入した式が成り立ち、x は任意ですから (40-13) が得られます。
 ゆえに、0 £ j Ù n-1(40-13)(40-12)I の線形性により、

(40-14)  0 £ I(j Ù n-1 ) £ n-1I(y)

となり、右辺は n ® ¥ のとき 0 に収束するので、それらに挟まれる I(j Ù n-1 )0 に収束し、(32-6e) が成り立つことがわかりました。

 さて、残る (32-6f) を、順を追って証明していきましょう。K +(Ω){ jn | nÎN } Ì K +(Ω)

(40-15)  ån I(jn ) < I(j)

を満たすとします。

STEP 1

 まず、任意の e > 0 に対して { xÎΩ | c(x) ¹ 0 }Ue-小集合であるような K +(Ω)

(40-16)  ån I(cjn ) < I(cj)

を満たすものが存在することを証明しましょう。
 実際、j に対して (40-3) を満たす { ci | i £ k } で、各 { xÎΩ | ci(x) ¹ 0 }Ue-小集合であるようなものを取ると、(40-3a) により

(40-17)  åi £ k cijn £ jn

となるので、(40-12)I の線形性から

(40-18)  åi £ k I(cijn ) £ I(jn )

が得られます。また、(40-3b)I の線形性から

(40-19)  åi £ k I(cij) = I(j)

が得られます。ゆえに、(40-15),(40-18),(40-19) により

(40-20)  åi £ k{I(cij) - ån I(cijn )} ³ I(j) - ån I(jn ) > 0

ですから、実数の性質 (23-17j) を繰り返し用いることにより、ある i £ k が存在して I(cij) - ån I(cijn ) > 0 が成り立つことがわかります。よって、cic とすれば (40-16) が得られます。

STEP 2

 次に、(40-15) が成り立つとき、C{ xÎΩ | j(x) > 0 }閉包 C の元 a で、任意の kÎN に対して

(40-21)  ån £ k jn(a) £ j(a)

を満たすものが存在することを証明しましょう。
 実際、STEP 1 と帰納法により、すべての整数 i ³ 1 に対して K +(Ω) の元 ci で、Ci{ xÎΩ | ci(x) ¹ 0 }U1/i-小集合で、

(40-22)  ån I(c1c2¼cijn ) < I(c1c2¼cij)

を満たすものが存在します。このとき、I の線形性と (40-12) により

(40-23)  I(c1c2¼ci{j - ån £ i jn }) = I(c1c2¼cij) - ån £ i I(c1c2¼cijn ) ³ I(c1c2¼cij) - ån I(c1c2¼cijn ) > 0

ですから、(40-2b) により、

(40-24)  c1(xi )c2(xi )¼ci(xi ){j(xi ) - ån £ i jn(xi )} > 0

となる xiÎΩ が存在します。ck はすべて非負ですから、これは左辺の各因子がすべて正であることを意味するので、

(40-25a)  k £ i  Þ  ck(xi ) > 0  Û  xiÎCk

(40-25b)  k £ i  Þ  ån £ k jn(xi ) £ ån £ i jn(xi ) < j(xi )

が得られます。ところが (40-25a){ xi | i ³ 1 } が完備距離空間 S のコーシー列であることを意味するので、ある aÎS に収束します。
 また、(40-25b) により j(xi ) > 0 すなわち xiÎC なので、i ® ¥ とすれば aÎC がわかり、Ud[C] Ì Ω となる d > 0 が存在するので aÎΩ がわかります。ゆえに (40-25b)i ® ¥ とすれば、jnj の連続性により (40-21) が得られます。

STEP 3

 次に、(40-15) が成り立つとき、

(40-26)  ån £ k jn(a) < j(a)

が任意の kÎN に対して成り立つような aÎΩ が存在することを証明しましょう。
 実際、まず C = { xÎΩ | j(x) > 0 } 上で 1 となるような K +(Ω) を取り、h > 0

(40-27)  I(hy) + ån I(jn ) < I(j)

が成り立つように取ります。このとき、STEP 2 により

(40-28)  hy(a) + ån £ k jn(a) £ j(a)

が任意の kÎN に対して成り立つような aÎC が存在します。
 ところが C 上で y = 1 で、y は連続ですから、これは C 上でも成り立ちます。すなわち y(a) = 1 ですから、(40-28)

(40-29)  h + ån £ k jn(a) £ j(a)

を意味し、(40-26) が成り立つことがわかります。

 さて、構成主義のもとでは、“上に有界な単調増加列は収束する”ということが主張できないので、(40-29) から直ちに (32-6f) は導けず、更にもうひと工夫いります。

STEP 4

 さて、(40-15) が成り立つとき、

(40-30)  cI(j) - ån I(jn ) > 0

と置き、I(32-6e) を満たすので、e > 0

(40-31)  I(e Ù j) < c

となるように取ります。更に en > 0 ( nÎN )

(40-32)  ån en < e

となるように取り、実数 M > 0"xÎΩ : j(x) £ M となるように取り、更に dn > 0 ( nÎN )

(40-33)  ån dn < c - I(e Ù j)
—————
M

となるように取ります。次に、自然数の列 k0 < k1 < k2 ¼

(40-34)  åi ³ kn I(ji ) < dn en

となるように選び、

(40-35a)  y :º (j - åi < k0ji )+

(40-35b)  ynåkn £ i < kn+1ji       ( nÎN )

と置きます。このとき

(40-36a)  y, ynÎK +(Ω)

(40-36b)  0 £ y £ j £ M

(40-36c)  I(yn ) < dn en

(40-36d)  c = I(j) - ån I(jn ) £ I(j) - ån < k0 I(jn ) = I(j - ån < k0jn ) £ I(y)

(40-36e)  xÎD(y)ÇD( ån yn ) , y(x) > 0  Þ  y(x) - ån yn(x) = j(x) - ån jn(x)

が成り立ちます。ここで

(40-37)  c :º y - ( e Ù y )
—————–
M

と置くと、

(40-38a)  0 £ c £ 1

(40-38b)  y = (e Ù y) + M c

が成り立ちます。ゆえに両辺の I を取ると、(40-36d),(40-38b) により

(40-39)  c £ I(y) = I(e Ù j) + M I(c)

となるので、これと (40-33) により

(40-40)  ån dn < I(c)

が得られます。また

(40-41)  cn :º en-1 yn

と置くと、

(40-42)  en cn £ yn

が成り立ちます。ゆえに両辺の I を取ると、(40-42),(40-36c) により

(40-43)  en I(cn ) £ I(yn ) < en dn

となるので、これと (40-40) により

(40-44)  ån I(cn ) £ ån dn < I(c)

が得られます。そこで、c , cn に対して STEP 3 の結果を適用すれば、

(40-45)  ån £ k cn(a) < c(a)

がすべての自然数 k について成り立つような aÎΩ が存在します。
 ゆえに (40-45)(40-38a) により cn(a) < 1 が得られ、これと (40-41) により yn(a) < en が得られます。
 また、(40-45) により c(a) > 0 となるので、(40-37) により y(a) > inf {e, y(a)} すなわち y(a) > e がわかります。以上の結果と (40-32) により

(40-46)  ån yn(a) < ån en < e < y(a)

となり、これと (40-36e) により

(40-47)  ån jn(a) < j(a)

が得られ、(32-6f) は証明されました。以上により、I(32-6) の条件をすべて満たし、K(Ω) 上の積分になっていることがわかりました。
 このような I位相積分といい、その完備化に伴う測度を位相測度といいます。

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