数学の基礎


43.全微分と偏微分

 付値体 K 上のBanach空間 E の開部分集合 O から局所凸空間 X への写像 g に対する全微分という概念を、実変数の微分可能性の同値な言い換え (29-7) に倣って定義してみましょう。
 aÎO に対し、E から X への線形写像、すなわち線形空間の代数系における準同型 T が存在して、任意の e > 0X の一様構造を定める任意のセミノルム | · |l に対し、d > 0 が存在して

(43-1)  xÎO , || x - a || < d  Þ  | g(x) - g(a) - T(x - a) |l £ e || x - a ||

が成り立つとき、ga全微分可能であるといいます。

 ga で全微分可能なら、(43-1) を満たす T は一意的に定まります。
 実際、S も条件 (43-1) を満たすとし、xÎEe > 0| · |l を任意に取ります。このとき正数 h < d を取り、(43-1)xa + hx を代入すれば

(43-2a)  | g(a + hx) - g(a) - T(hx) |l £ e || hx ||

が成り立ちます。同様に、d' > 0 が存在して (43-1)TS に置き換えた式が成り立ちますから、hdd' のいずれよりも小さく取っておけば、

(43-2b)  | g(a + hx) - g(a) - S(hx) |l £ e || hx ||

も成り立ちます。ゆえに、ノルム、セミノルムの性質 (28-2)S , T が線形であることを用いると

(43-3)  h | T(x) - S(x) |l = | T(hx) - S(hx) |l £ | g(a + hx) - g(a) - T(hx) |l + | g(a + hx) - g(a) - S(hx) |l £ e || hx || + e || hx || = 2eh || x ||

が成り立つので、両辺を h で割ると、e > 0 が任意であることから | T(x) - S(x) |l = 0 が得られ、| · |l が任意であることから T(x) = S(x) が得られ、更に x が任意であることから T = S が得られます。

 そこで、(43-1) を満たす唯一の Tga における全微分とよんで dga と書くことにします。この記号を用いると、(43-1)

(43-4)  xÎO , || x - a || < d  Þ  | g(x) - g(a) - dga(x - a) |l £ e || x - a ||

と書くことができます。

 特に E = K の場合は、(43-4)(29-7) と比較すれば、g の微分可能性と全微分可能性は同値で、任意の xÎK = E に対して dga(x) = g'(a)x ですから、特に xK の乗法の単位元 1 を代入することにより

(43-5)  g'(a) = dga(1)

が成り立つことがわかります。

 さて、(43-4) から明らかなように、ga で全微分可能ならば、dga が連続な線形作用素であることと ga で連続であることは同値です。
 また明らかに、gdga の対応は線形です:

(43-6a)  d(g + h)a = dga + dha

(43-6b)  d(cg)a = cdga

 また、ga連続かつ全微分可能であるとし、jO から K への写像で、これも a連続かつ全微分可能であるとします。このとき、jg の積 jga連続かつ全微分可能であることを証明しましょう。

 まず連続性は明らかです。一方、ga で連続かつ全微分可能であることから dga も連続なので、(28-11) により、M > 0 が存在して

(43-7a)  xÎE  Þ  | dga(x) |l £ M || x ||

 また、ja における連続性により、d' > 0 が存在して

(43-7b)  xÎO , || x - a || < d'  Þ  | j(x) - j(a) | £ inf {1, e/M}

 また、ja における全微分可能性により、d" > 0 が存在して

(43-8)  xÎO , || x - a || < d"  Þ  | j(x) - j(a) - dja(x - a) |l £ e || x - a ||

 ゆえに、xÎO かつ || x - a || < inf { d, d', d" } ならば、

(43-9)  | j(x)g(x) - j(a)g(a) - {g(a)dja + j(a)dga}(x - a) |l  £ | j(x)g(x) - j(a)g(a) - {g(a)dja + j(x)dga}(x - a) |l + | j(x) - j(a) | | dga(x - a) |l

£ | j(x) | | g(x) - g(a) - dga(x - a) |l + | g(a) |l | j(x) - j(a) - dja(x - a) | +

M
M || x - a ||

 £ {1 + | j(a) |}e || x - a || + | g(a) |l e || x - a || + e || x - a ||

 £ e{1 + | j(a) | + | g(a) |l } || x - a ||

となるので、確かに jga で微分可能で

(43-10)  d(jg)a = g(a)dja + j(a)dga

が成り立つことがわかりました。

 次に、f がノルム || · ||' を持つBanach空間 F の開集合 U から O への写像で、一点 cÎU連続かつ全微分可能で、gf(c)連続かつ全微分可能なら、合成写像 g ° fc連続かつ全微分可能であることを証明しましょう。
 まず連続性は明らかです。一方、gaf(c) として (43-7a) を満たし、同様に f についても N > 0 が存在して

(43-11)  xÎF  Þ  || dfc(x) || £ N || x ||'

が成り立ちます。(43-4)einf {1, e/N } を、xa にそれぞれ f(x)f(c) を代入したときの d を取れば、

(43-12)   f(x)ÎO , ||  f(x) - f(c) || < d  Þ  | g( f(x)) - g( f(c)) - dgf(c)( f(x) - f(c)) |l £ inf {1, e/N } ||  f(x) - f(c) ||

 一方、fc で全微分可能ですから、d' > 0 が存在して

(43-13)  xÎU , || x - c ||' < d'  Þ  ||  f(x) - f(c) - dfc(x - c) || £
———
1 +
M
|| x - c ||'

が成り立ちます。ゆえに

(43-14)  | g( f(x)) - g( f(c)) - dgf(c)(dfc(x - c)) |l £ | g( f(x)) - g( f(c)) - dgf(c)( f(x) - f(c)) |l + | dgf(c)( f(x) - f(c) - dfc(x - c)) |l

£ inf {1, e/N } ||  f(x) - f(c) || + M ||  f(x) - f(c) - dfc(x - c) ||

£ inf {1, e/N } { || dfc(x - c) || + ||  f(x) - f(c) - dfc(x - c) || } + M ||  f(x) - f(c) - dfc(x - c) ||

£ (e/N ) || dfc(x - c) || + ( 1 + M ) ||  f(x) - f(c) - dfc(x - c) ||

£ 2e || x - c ||'

となるので、確かに g ° fc で微分可能で

(43-15)  d(g ° f )c = dgf(c) º dfc

が成り立つことがわかりました。

 さて、EK-線形空間で、ga で全微分可能のとき、任意の eÎE に対して tÎK の関数

(43-16)  ge(t) g(a + te)

を考えると、(43-4)xa + te を代入すると、dga の線形性により

(43-17)  | ge(t) - ge(0) - tdga(e) |l £ et || e ||

が成り立ち、これは、(29-7) により ge0 で微分可能で

(43-18)  ge'(0) = dga(e)

が成り立つことを意味しています。この (43-18) の値を ga における e方向微分とよびます。

 次に、Ki ( i = 1, 2 ,¼, n ) を、共通の付値体 K を含み、共通の付値体 K' に含まれる付値体、OiKi の開集合とし、gO1 ´ O2 ´ ¼ ´ On で定義され、K' 上の局所凸空間 X に値を持つ関数とします。
 iÎ{ 1, 2 ,¼, n } に対し、i 以外のすべての j に対する xj を定数とみなしたとき gxi について微分可能ならば、gxi について偏微分可能であるといい、その導関数 ig偏導関数とよんで

(43-19)  ig(x1 , x2 ,¼, xn ) = g
—–
 ¶
xi
(x1 , x2 ,¼, xn ) = g(x1 , x2 ,¼, xn )
———————
 xi

などと書きます。また、iu が更に xj について偏微分可能であるとき、その偏導関数 jig に対して

(43-20)  jig(x1 , x2 ,¼, xn ) = ²g
——–
 ¶xj
xi
(x1 , x2 ,¼, xn ) = ²g(x1 , x2 ,¼, xn )
———————–
 xjxi

と書きます。特に i = j の場合、iii² と、また分母の xixixi² とそれぞれ略記します。
 一般に高階の偏微分に関しても同様で、k階の偏導関数 i1¼¶ikg について

(43-21)  i1¼¶ikg(x1 , x2 ,¼, xn ) = kg
————
 ¶xi1¼¶
xik
(x1 , x2 ,¼, xn ) = kg(x1 , x2 ,¼, xn )
———————–
 xi1¼¶xik

と書きます。同じ ixi が3個以上続く場合の略記法も2個の場合と同様です。

 さて、EK1 ´ K2 ´ ¼ ´ Kn と置くと、EK-線形空間かつBanach空間とみなせますから、aÎE において g の全微分を考えることができます。このとき、ga で全微分可能なら、すべての iÎ{ 1, 2 ,¼, n } について gaxi に対して偏微分可能であり、xiÎE を、第 i 成分のみ 1 、他の成分は xi と置いて定義したとき、(43-4)(29-7) を比較すれば

(43-22)  ig(a) xi = dga(xi)

が得られます。ところで、xÎE に対して

(43-23)  x = n
å
i=1
xi 

ですから、これに dga を施すと、dga の線形性と (43-22) により

(43-24)  dga(x) = n
å
i=1
ig(a) xi

が成り立ちます。このことから特に dgaa で連続、従って ga で連続であることがわかります。
 従って特に、付値体の有限個の積の開部分集合で定義された g , j , f に対しては (43-10),(43-15) は常に成り立つことがわかります。

 この (43-24) を、特に xxi を対応させる写像(便宜的に、この写像そのものも xi と書きます)に適用すれば、

(43-25)  jxi =  xi
—–
 
xj
= dij  ì
í
î
    1       ( i = j )

    0       ( i ¹ j )

ですから

(43-26)  dxia(x) = xi

となり、これを (43-24) に代入すれば

(43-27a)  dga(x) = n
å
i=1
ig(a) dxia(x)

あるいは x は任意ですから、

(43-27b)  dga = n
å
i=1
ig(a) dxia

という式が得られます。
 もし、すべての aÎOg が全微分可能なら、更に a も省略し、g の偏微分を gxi と書いて

(43-27c)  dg = n
å
i=1
g 
—–
 ¶
xi
dxi 

が成り立ちます。
 ゆえに、u( u1 , u2 ,¼, un ) が付値体 K の開部分集合 I から O への写像で、aÎI で微分可能なら、(43-5),(43-15),(43-27b) により

(43-28a)  (g ° u)'(a) = d(g ° u)a(1) = dgu(a)(dua(1)) = n
å
i=1
ig(u(a)) dxiu(a)(dua(1)) = n
å
i=1
ig(u(a)) d(xi ° u)a(1) = n
å
i=1
ig(u(a)) duia(1) = n
å
i=1
ig(u(a)) ui'(a)

が得られます。これは at と書き直せば

(43-28b)  dg(u(t)) 
———–
dt
= n
å
i=1
 g(u(t)) 
———–
 ¶
ui
dui(t)
——–
 dt

と書くこともできます。

 さて、上で示したように、全微分可能なら偏微分可能でしたが、今度はその逆について考察します。

 EK1 ´ K2 ´ ¼ ´ Kn の各付値体 Ki は、共通の付値体として実数体 R を含むものとし、開集合 O Ì E から局所凸空間 X への関数 g が、ある aÎO のある閉近傍 U Ì O で、すべての xi について偏微分可能で、各 igU一様連続であるとします。
 このとき ga全微分可能であることを証明しましょう。

 実際、まず最初に X完備である場合について証明します。U は、もし必要なら狭めることにより、

(43-29)  U = n
Õ
i=1
{ xÎKi |  | x - ai | £ ri }

という形の集合であると仮定することができます。このとき、任意の xÎU0 £ t £ 1 に対して

(43-30)  | {txi + (1 - t) ai} - ai | = | t(xi - ai ) | = t | xi - ai | £ t ri £ ri

ですから、(a1 ,¼, ai-1 , txi + (1 - t) ai , xi+1 ,¼, xn ) - a ÎU となるので、(42-14) により

(43-31)  g(x) - g(a)
= n
å
i=1
{ g(a1 ,¼, ai-1 , xi , xi+1 ,¼, xn ) - g(a1 ,¼, ai-1 , ai , xi+1 ,¼, xn ) }

= n
å
i=1
ò  1

0
d
—–
 d
t
g(a1 ,¼, ai-1 , txi + (1 - t) ai , xi+1 ,¼, xn ) dt

= n
å
i=1
(xi - ai ) ò  1

0
ig(a1 ,¼, ai-1 , txi + (1 - t) ai , xi+1 ,¼, xn ) dt

= n
å
i=1
(xi - ai ) ig(a) + n
å
i=1
(xi - ai ) ò  1

0
{ ig(a1 ,¼, ai-1 , txi + (1 - t) ai , xi+1 ,¼, xn ) - ¶ig(a) } dt

が成り立ちます。一方、iga で連続ですから、X の一様構造を定める任意のセミノルム | · |l と任意の e > 0 に対し、a の近傍 V を十分小さく取れば、xÎV0 £ t £ 1 に対して

(43-32)  | ig(a1 ,¼, ai-1 , txi + (1 - t) ai , xi+1 ,¼, xn ) - ¶ig(a) |l £ e

が成り立ちます。従って (43-31),(43-32) により、xÎV ならば

(43-33)  ½
½
g(x) - g(a) - n
å
i=1
(xi - ai ) ig(a) ½
½
l
£ n
å
i=1
| xi - ai | ò  1

0
| ig(a1 ,¼, ai-1 , txi + (1 - t) ai , xi+1 ,¼, xn ) - ¶ig(a) |l dt £ e n
å
i=1
| xi - ai |

が成り立つので、E のノルム || · ||

(43-34)  || x || n
å
i=1
| xi |

で定めれば、これは E の一様構造を定め、(43-33)

(43-35)  ½
½
g(x) - g(a) - n
å
i=1
(xi - ai ) ig(a) ½
½
l
£ e || x - a ||

と書けますが、これは ga で全微分可能で (43-24) が成り立っていることを意味しています。
 最後に X が一般の局所凸空間の場合は、X の完備化 X については今示したことにより (43-35) が成り立ちますが、(43-35)X の部分空間である X についても明らかに成立します。

 さて、今度は (43-29)U に対して g : U ® XU 上一様収束する U から X への関数からなるフィルター G が与えられ、G を構成する各関数は、すべての i = 1, 2 ,¼, n に対して xi に関する偏導関数が存在して一様連続で、かつこれらの偏導関数からなるフィルターは U から X への関数 hi に一様収束しているとします。
 第20節 (20-14) の直前の注意により、hiU で一様連続ですが、このとき gU で全微分可能で

(43-36)  ig = hi

が成り立ちます。
 実際、(43-31)g を、F を構成する関数で置き換えた式が成り立ちますが、その極限を取れば、(43-31)ighi に置き換えた式が成り立つので、(43-35) で同様に置き換えた式が成り立ち、これは g が全微分可能で、hi がその xi による偏導関数になっていることを示しています。

 さて、φR の区間 I から O への一点 cÎI で微分可能な関数とし、E から Ki への標準写像を pi と書き、ji :º pi ° φ と置くと、g ° φc で微分可能で

(43-37)  (g ° φ)'(c) = n
å
i=1
ig(φ(c))ji'(c) 

が成り立ちます。実際、(43-35)xφ(c + h) を、aφ(c) を代入して両辺を h で割れば、

(43-38)  |
|
|
|
g(φ(c + h)) - g(φ(c))
————————–
h
- n
å
i=1
ji(c + h) - ji(c)
——————–
 h 
 ig(φ(c)) |
|
|
|
£ e ||
||
||
||
φ(c + h)) - φ(c)
——————–
h
||
||
||
||

となるので、h ® 0 とすれば (43-37) が得られます。

 次に、実変数の場合における偏微分の順序交換について考察します。
 K と各 Ki はすべて実数体 R とします。更に、U(43-29) の形をした O の部分集合とし、相異なる i, jÎ{ 1, 2 ,¼, n } を選んで固定します。また g : O ® XU において xi についても xj についても偏微分可能で、更に ig は一様連続かつ xj について微分可能で、しかも jig は一様連続であるとします。
 このとき j gxi について微分可能で、U

(43-39)  ij g = ¶jig

が成り立つことを証明しましょう。
 実際、この場合も X は完備であると仮定してもかまわないので、そう仮定することにします。
 また、表記の簡便のために、xixj 以外の変数を書くのを省略し、g(x) のことを g(xi , xj ) と書くことにします。このとき (42-14) により、

(43-40)  ò  xi

ai
dti  ò  xj

aj
jig(ti , tj ) dtj = ò  xi

ai
{ ig(ti , xj ) - ¶ig(ti , aj ) } dti = { g(xi , xj ) - g(xi , aj ) } - { g(ai , xj ) - g(ai , aj ) }

 ところで jig は一様連続ですから、Fubiniの定理により、積分の順序が交換できて、

(43-41)  g(xi , xj ) = g(xi , aj ) + g(ai , xj ) - g(ai , aj ) + ò  xj

aj
dtj  ò  xi

ai
jig(ti , tj ) dti

 よってこの両辺を xj で偏微分すれば、(42-12) により

(43-42)  j g(xi , xj ) = ¶j g(ai , xj ) + ò  xi

ai
jig(ti , xj ) dti

 ところがこの右辺は xi について偏微分可能ですから、(43-42) の両辺を更に xi で偏微分すれば、

(43-43)  ij g(xi , xj ) = ¶jig(xi , xj )

となって、(43-39) が得られます。

 一般に α = (a1 , a2 ,¼, an )ÎNn多重指標とよぶことにし、

(43-44a)  | α | :º a1 + a2 + ¼ + an

(43-44b)  α! :º a1! a2! ¼ an!

(43-44c)  xαx1a1 x2a2 ¼ xnan

(43-44d)  α :º ¶1a12a2 ¼ ¶nan = |α|
——————–
 ¶x1a1x2a2¼¶
xnan

(43-44e)  g(α) :º ¶αg

と定義します。

 さて、Rn の開集合 O で定義された X-値の関数 g は、m 階以下の偏導関数がすべて存在し、それらが O に含まれる任意の有界閉区間、すなわち (43-29) の形の集合上で一様連続であるとき Cm-であるといい、それらの全体を Cm(O, X ) と書きます。なお、X が体 K である場合は X を省略して Cm(O) と書くこともあります。
 また、すべての自然数 m に対して Cm-級であるとき C¥-であるといい、その全体を C¥(O, X ) あるいは C¥(O) と書きます。
 gÎCm(O, X )| · |l と、O に含まれる有界閉区間 U に対し、

(43-45)  || g ||l,m,U sup {  | αg(x) |  |  | α | £ m , xÎU  }

と置けば、これらは Cm(O, X ) のセミノルムになります。そこで Cm(O, X ) を、これらのセミノルムを持つ局所凸空間とみなすことにします。X が完備なら、(43-36) の議論により Cm(O, X ) も完備であることがわかります。

 g : O ® XCm+1-級のとき、a, xÎO を共に含む O の有界閉区間が存在するものとします( xa に十分近ければ、そのような閉区間は明らかに存在します)。
 十分小さい e > 0 に対する - e £ t £ 1 + e に対し、

(43-46)  j(t) g(tx + (1 - t)a)

と置いて、(42-50)gj を、nm を、a0 を、x1 を代入すると、

(43-47)  g(x) = j(1) = m
å
k=0
j(k)(0)
———
 k! 
+ ò  1

0
j(m+1)(t)
———–
 m! 
(1 - t)m dt = m
å
k=0
Dkg(a)
———
 k! 
+ ò  1

0
Dm+1g(tx + (1 - t)a)
————————
 m! 
(1 - t)m dt

が得られます。ただし

(43-48)  D n
å
i=1
(xi - ai )i

で、in 変数の関数の第n変数の偏導関数を取る演算子で、xiai は、この演算子にとって定数とみなします。
 ここで、(12-34),(12-35) を用い、(43-44) の記法を使うと、

(43-49)   Dk
—–
 k! 
=  
å
|α|=k
(x - a)α α
—–
 α! 

が成り立ちますから、これを用いて (43-47) を変形すれば、

(43-50)  g(x) =  
å
|α|£m
g(α)(a)
———
 α! 
(x - a)α + (m + 1)  
å
|α|=m+1
(x - a)α ò  1

0
g(α)(tx + (1 - t)a)
———————
 α! 
(1 - t)m dt

という多変数のTaylor展開が得られます。もし、各セミノルム | · |l に対して

(43-51)  | g(α)(tx + (1 - t)a) |l £ Mlm       (  | α | = m + 1 ,  0 £ t £ 1  )

なら、

(43-52)  ½
½
g(x) -  
å
|α|£m
g(α)(a)
———
 α! 
(x - a)α ½
½
l
£ Mlm (m + 1)  
å
|α|=m+1
| (x - a)α |
————
 α! 
ò  1

0
(1 - t)m dt = Mlm  
å
|α|=m+1
| (x - a)α |
————
 α! 
= Mlm  | x - a |m+1
————
 (m + 1)! 

という評価式が得られます。ただし

(43-53)  | x - a | n
å
i=1
| xi - ai |

です。

 次に、実変数のパラメター t を持つ関数の積分と t に関する微分の順序交換について考察します。
 X完備局所凸空間、m を集合 S 上の測度、IR の有界閉区間とし、S の充満集合 S' に対して I ´ S' で定義された X-値の写像 g が、各 tÎI に対して x について可積分、各 xÎS' に対して t について絶対連続でその導準写像 g(t, x)tI ´ S' で可積分であるとします。このとき、微分積分学の基本定理 (42-25) により

(43-54)  ò  t

a
g(t, x)
———
¶t
dt = g(t, x) - g(a, x)

が成り立つので、これとFubiniの定理により、

(43-55)  ò  t

a
dt ò g(t, x)
———
¶t
m(dx) = ò m(dx) ò  t

a
g(t, x)
———
¶t
dt = ò g(t, x) m(dx) - ò g(a, x) m(dx)

となるので、ò g(t, x)m(dx)t について絶対連続で、その導準写像を (d/dt)ò g(t, x)m(dx) と書けば、

(43-56) 
—–
d
t
ò g(t, x) m(dx) = ò g(t, x)
———
t
m(dx)

が成り立つことがわかります。これを積分と微分の順序交換の公式といいます。
 更に、g が各 xÎS' に対して t について微分可能で、その導関数 g(t, x)tt について I で一様連続であるとします。もし更に

(43-57)  h(x)(t) g(t, x)
———
t
      ( xÎS' , tÎI )

で定義される h が、局所凸空間 C(I, X ) に値を取る関数として可積分なら、tÎIò{g(t, x)t}m(dx)ÎX を対応させる写像は、C(I, X )-値関数を積分した結果なので C(I, X ) の元ですから、t について一様連続です。ゆえに (43-55) の左辺は t について微分可能になるので、(43-56) は真の微分の意味で成立します。
 例えば、第41節 (41-40) の後の注意により、SRn の有界閉区間で gtI ´ S 上一様連続な場合、あるいは SRn の開区間で、Úi Ai Ì 1 を満たし、1 に測度収束し、Ai¹ が有界閉区間であるような S 上の特性写像の単調非減少列 { Ai | iÎN } が存在して、gt は、各 Ai¹ 上で一様連続で、各 Λ に対して実数値の非負可積分関数 jl が存在して

(43-58)  ½
½
g(t, x)
———
t
½
½
l
£ jl(x)       ( tÎI , xÎS )

が成り立つ場合、(43-57)h は可積分になり、この条件が満たされます。

 特に、SR の区間の場合、

(43-59)  F(s, t) ò  s

a
g(t, t) dt

と置けば、微分積分学の基本定理及び (43-56) により

(43-60a)  1F(s, t) g(t, s)

(43-60b)  2F(s, t) ò  s

a
1g(t, t) dt

が成り立ちますから、更に R の区間で定義された S に値を持つ微分可能な関数 j に対して

(43-61) 
—–
d
t
ò j(t)

a
g(t, t) dt =
—–
d
t
F(j(t), t) = j'(t) 1F(j(t), t) + ¶2F(j(t), t) = j'(t) g(t, j(t)) + ò j(t)

a
1g(t, t) dt

という公式が得られ、特に j(t) º t の場合は

(43-62) 
—–
d
t
ò  t

a
g(t, t) dt = g(t, t) + ò  t

a
1g(t, t) dt

となります。

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