数学の基礎


49.複素数の偏角と対数

 任意の複素数 z ¹ 0 に対して

(49-1)  r | z | > 0

と置けば、x :º Â(z)/ry :º Á(z)/r(47-57) を満たすので、(47-58) を満たす t が存在します。これを q と書けば、(47-61) により

(49-2)  z = reiq       ( r > 0 , R )

となります。これを複素数 z ¹ 0極表示といい、この q を複素数 z ¹ 0偏角とよんで、z の偏角の全体を Arg(z) と書きます。
 逆に (49-2) の表示が与えられれば、(46-59) により | z | = r | eiq | = r exp Â(iq) = r exp 0 = r ですから (49-1) が成り立ち、従って (47-61) により cos qsin q の値は一意的に定まるので、(47-58) 直後の注意により、偏角 q2p の差を除いて一意的に定まることがわかります。

(49-3a)  z = reiq

(49-3b)  z' = r'eiq'

なら、指数関数の加法定理 (46-10) により

(49-4)  zz' = reiq r'eiq' = rr'ei(q+q' )

となるので、積の偏角は偏角の和になることがわかります:

(49-5)  Arg(zz' ) = Arg(z) + Arg(z' )

 また (46-13) から帰納法により

(49-6)  zn = rnein q

 すなわち

(49-7)  Arg(zn ) = n Arg(z)

が成り立つことがわかります。

 さて、z = x + i y ¹ 0 に対し、x ¹ 0 又は y ¹ 0 すなわち x > 0 , x < 0 , y > 0 , y < 0 のいずれかが成り立ちますが、(49-2)x , y , q に対して

(49-8a)  x > 0  Þ  cos q > 0  Þ  $nÎZ : D(arctan) + 2np

(49-8b)  x < 0  Þ  cos q < 0  Þ  $nÎZ : D(arctan) + (2n + 1)p

(49-8c)  y > 0  Þ  sin q > 0  Þ  $nÎZ : D(arccot) + 2np

(49-8d)  y < 0  Þ  sin q < 0  Þ  $nÎZ : D(arccot) + (2n + 1)p

となりますが、

(49-9a)  x = r cos q

(49-9b)  y = r sin q

なので、(49-8a),(49-8b) の場合は tan q = y/x が、(49-8c),(49-8d) の場合は cot q = x/y が成り立ちます。ゆえに z の偏角の任意の一つを arg z と書くと、q - arg zÎ 2pZ により

(49-10a)  x > 0  Þ  arg z = arctan  y
—–
 x
      ( mod 2p )

(49-10b)  x < 0  Þ  arg z = arctan  y
—–
 x
± p      ( mod 2p )

(49-10c)  y > 0  Þ  arg z = arccot  x
—–
 y
      ( mod 2p )

(49-10d)  y < 0  Þ  arg z = arccot  x
—–
 y
± p      ( mod 2p )

となることがわかります。ただし mod a は、両辺の差が a のある整数倍になることを意味します。
 このことから、任意の複素数 a ¹ 0 に対し、十分小さい a の近傍 U を取れば、任意の Log(a) に対し、各 zÎU に対する arg z の値をうまく選んで、Uarg は連続関数で、かつ arg a = q となるようにすることができます。しかも argz の実部 x と虚部 y の2変数の関数として C¹-級で、

(49-11a)  ¶ 
—–
x
arg z = - y
———
x
² + y²

(49-11b)  ¶ 
—–
y
arg z = x
———
x
² + y²

が成り立つことが、(49-10),(47-21),(47-49b) と合成関数の微分公式によりわかります。

 さて、R の閉区間 [a, b] から一様空間 X への一様連続写像X曲線といい、曲線 j のうち j(a) = j(b) を満たすものを閉曲線といいます。
 2つの閉曲線 j, y: [a, b] ® X は、ある [0, 1] ´ [a, b] から X への一様連続写像 F が存在して

(49-12a)  j(t) = F(0, t)       ( a £ t £ b )

(49-12b)  y(t) = F(1, t)       ( a £ t £ b )

(49-12c)  F(s, a) = F(s, b)       ( 0 £ s £ 1 )

が成り立つとき( F により)ホモトープであるといい、j » y と書くことにします。
 閉曲線 j に対して F(s, t) :º j(t) と置くことにより j » j がわかり、また jyF によりホモトープなら G(s, t) F(1 - s, t) と置くことにより yj とホモトープであることがわかります。
 また、jcF によりホモトープで、cyG によりホモトープなら、Hs < 2/3 のとき H(s, t) F(inf{3s, 1}, t) と定義し、s > 1/3 のとき H(s, t) G(sup{3s - 2, 0}, t) と定義すれば、これは一様連続な関数を定め、H により jy はホモトープになります。
 以上により、ホモトープという関係は同値関係になることがわかりました。

 ここで j : [a, b] ® C を閉曲線とするとき、Cd(j, a) inf{ | j(t) - a | | a £ t £ b } > 0 を満たせば、一様連続関数 q : [a, b] ® R

(49-13)  a £ t £ b  Þ  q(t)ÎArg(j(t) - a)

となるものが存在し、q は一意的ではありませんが、

(49-14)  Wind(j, a) q(b) - q(a)
————–
2p

は一意的に定まる整数であることを証明しましょう。

 実際、j - a を改めて j とみなすことにより、a = 0 と仮定することができます。
 そこで、e :º d(j, 0) > 0 , Msup{ | j(t) - a | | a £ t £ b } > 0 と置けば、z = x + ihe £ | z | £ M を満たすとき、| x | < 2| h | 又は | h | < 2| x | が成り立ちます。
 前者の場合は、5h² = 4h² + h² > x² + h² ³ e² なので、ze / 2Ö5 近傍 U(z) の元 z = x + i y に対して | y | ³ e / 2Ö5 であり、従って (49-10c) 又は (49-10d) の等号の右辺の関数は U(z) において一様連続です。
 同様に、後者の場合は (49-10a) 又は (49-10b) の等号の右辺の関数は U(z) において一様連続です。
 以上により、e £ | z | £ M を満たす任意の z に対し、U(z) 上一様連続な関数 sz で、各 zÎU(z) に対して sz(z)ÎArg(z) を満たすものが存在することがわかります。

 さて、x(t) :º Â(j(t)) , y(t) :º Á(j(t)) と置くと、j の一様連続性により、d > 0

(49-15)  a £ s, t £ b ; | s - t | < d  Þ  | j(s) - j(t) | < e
——
5

を満たすように取ることができます。
 そこで { ti | 0 £ i £ n }a = t0 < t1 < ¼ < tn = b かつ ti+1 - ti < d となるように取れば、j(ti+1 )ÎU(j(ti )) となることがわかり、従って帰納法により、区間 [a, b] 上の一様連続関数 q

(49-16a)  q(a)ÎArg(j(a))

(49-16b)  q(t) = sj(ti )(j(t)) - sj(ti )(j(ti )) + q(ti )       ( ti < t £ ti+1 )

を満たすように定義することができ、明らかに a = 0 と置いた (49-13) を満たします。

 次に (49-14) の右辺の一意性を証明します。
 [a, b] から C への関数 qr が共に一様連続で (49-13) を満たせば、f(t) :º q(t) - r(t) は同じ複素数 j(t) の偏角の差なので 2p の整数倍です。ゆえに g(t) f(t) - f(a)Î 2pZ かつ g(a) = 0 となります。
 ここで g(t) ¹ 0 を仮定すると、| g(t) | ³ 2p となりますが、g は連続なので、中間値の定理 (27-3) により、- p < | g(s) | - p < p となる s が存在しますが、g(s)Î2pZ なので矛盾します。ゆえに g(t)= 0 が得られ、t は任意ですから、特に t = b とすれば、f(b) - f(a) = g(b) = 0 となります。
 これは q(b) - q(a) = r(b) - r(a) を意味しますから、(49-14) の右辺は qr について同じ値を取ることがわかります。なお (49-14) の右辺が整数であることは、q(a)q(b) が同一の複素数 j(a) = j(b) の偏角であることから明らかです。

 この (49-14) で定義される Wind(j, a) のことを、複素数 a のまわりの閉曲線 j巻き付き数といいます。

 次に、C から C のある e 近傍を除いて得られる一様空間 Ca, e { zÎC | | z - a | ³ e } において、2つの閉曲線 jy がホモトープであることを j »a y と書くと、これと巻き付き数が一致することが同値になる、すなわち

(49-17)  j »a y  Û  Wind(j, a) = Wind(y, a)

が成り立つことを証明しましょう。
 今回も a = 0 と仮定しても一般性を失わないのでそのように仮定します。
 まず、左辺から右辺を導くため、(49-12) を満たす一様連続関数 F : [0, 1] ´ [a, b] ® C0, e を取ります。このとき、各 sÎ[0, 1] に対し、F(s, · )C0, e の閉曲線ですから、一様連続関数 qs : [a, b] ® R

(49-18)  qs(t)ÎArg(F(s, t))

 すなわち

(49-19)  F(s, t)
———–
| F(s, t) |
= exp{iqs(t)}

を満たすものが存在します。ゆえに s, s'Î[0, 1] に対し、

(49-20)  F(s, t)
———–
| F(s, t) |
- F(s', t)
————
| F(s', t) |
= exp{iqs(t)} - exp{iqs' (t)} = 2i exp i{qs(t) + qs' (t)}
——————
 2 
sin qs(t) - qs' (t)
—————
 2 

 ただし (47-1a) を用いました。両辺の絶対値を取ると、

(49-21)  2 |
|
|
|
sin qs(t) - qs' (t)
—————
 2 
|
|
|
|
= |
|
|
|
F(s, t)
———–
| F(s, t) |
- F(s', t)
————
| F(s', t) |
|
|
|
|
£ |
|
|
|
F(s, t) | F(s', t) | - F(s', t) | F(s, t) |
—————————————–
e²
|
|
|
|

 ゆえに、F の一様連続性により、d > 0 が存在して

(49-22)  a £ t £ b , | s - s' | < d  Þ  |
|
|
|
sin qs(t) - qs' (t)
—————
 2 
|
|
|
|
< 1
—–
2

 ゆえに、| s - s' | < d を満たす s , s' を任意に選んで固定し、g(t) {qs(t) - qs' (t)}/2 と置けば、g は一様連続で、ある整数 nm に対して

(49-23a)  np - arcsin 1
—–
2
< g(a) < np + arcsin 1
—–
2

(49-23b)  mp - arcsin 1
—–
2
< g(b) < mp + arcsin 1
—–
2

が成り立ちます。ここで n ¹ m と仮定すると、n < m 又は n > m ですが、前者の場合なら、

(49-24)  2 arcsin 1
—–
2
< 2 arcsin 1 = p

なので、中間値の定理 (27-3) により

(49-25)  g(a) < np + arcsin 1
—–
2
< g(t) < (n + 1)p - arcsin 1
—–
2
£ mp - arcsin 1
—–
2
< g(b)

となる t が存在しますが、このとき | sin g(t) | > 1/2 となるので (49-22) と矛盾します。n > m と仮定しても同様に矛盾が生じるので n = m であることがわかりました。ゆえに

(49-26)  | g(b) - g(a) | < 2 arcsin 1
—–
2
< 2 arcsin 1 = p

 すなわち | {qs(b) - qs(a)} - {qs' (b) - qs' (a)} | < 2p となりますが、{ } の中身は 2p の整数倍ですから、左辺は実は 0 でなければなりません。
 以上で閉曲線 F(s, · ) と閉曲線 F(s', · ) の巻き付き数は一致することがわかりました。ゆえに区間 [0, 1] を間隔が d 未満の有限個の点に分割して 0 = s0 < s1 < ¼ < tn = 1 とすれば、閉曲線 F(si , · )F(si+1 , · ) の巻き付き数が等しいので j = F(0, · )y = F(1, · ) の巻き付き数が等しいことがわかり、以上で (49-17) の左辺から右辺が導かれました。

 今度は逆に、(49-17) の右辺が成り立つと仮定し、一様連続関数 q : [a, b] ® Cr : [a, b] ® C

(49-27a)  q(t)ÎArg j(t)

(49-27b)  r(t)ÎArg y(t)

となるように取ります。このとき、十分大きな自然数 n を取れば、

(49-28)  "tÎ[a, b] : | q(t) | , | r(t) | £ n arccos 1
—–
2

とすることができます。そこで、f : [0, 1] ´ [a, b] ® CF : [0, 1] ´ [a, b] ® C

(49-29a)   f(s, t) (1 - s) | j(t) |1/n exp iq(t)
——
n
+ s | y(t) |1/n exp ir(t)
——
n

(49-29b)  F(s, t) f(s, t)n

で定義すれば、f は、従って F は一様連続で、しかも

(49-30)  | f(s, t) | ³ Â( f(s, t)) = (1 - s) | j(t) |1/n cos q(t)
—–
n
+ s | y(t) |1/n cos r(t)
—–
n
³ (1 - s) | j(t) |1/n 1
—–
2
+ s | y(t) |1/n 1
—–
2
³  e1/n
—–
 2 
> 0

となるので、| F(s, t) | = | f(s, t) |n ³ e/2n が成り立ちます。
 また、(49-17) の右辺の値を m と書けば、j(a) = j(b) , y(a) = y(b) , q(a) + 2mp = q(b) , r(a) + 2mp = r(b) ですから、これと (49-29a) により

(49-31)   f(s, a) exp 2mpi
——–
n
=  f(s, b)

 したがって (46-13),(49-27),(49-31) により

(49-32a)  F(0, t) = f(0, t)n = | j(t) | æ
è
exp iq(t)
——
n
ö
ø
n


= | j(t) | exp{iq(t)} = j(t)

(49-32b)  F(1, t) = f(1, t)n = | y(t) | æ
è
exp ir(t)
——
n
ö
ø
n


= | y(t) | exp{ir(t)} = y(t)

(49-32c)  F(s, b) = f(s, b)n = f(s, a)n æ
è
exp 2mpi
——–
n
ö
ø
n


= F(s, a) exp(2mpi) = F(s, a)

となって (49-12) がすべて成り立ち、jyC0, e / 2n において F によりホモトープ、すなわち (49-17) の左辺が成り立つことがわかるので、以上により (49-17) は証明されました。

 さて、XBanach環とするとき、X の元 x に対し、x と可換なすべての元と可換で、かつその指数関数の値が x であるものの全体を x対数とよび、x の対数の全体を Log(x) と書くことにします:

(49-33)  Log(x) { zÎX | exp z = x  Ù  "yÎX : ( xy = yx  Þ  zy = yz ) }

 このとき、xÎX ++ なら Log(x) は元を持つことを証明しましょう。
 実際、|| x - r1 || < r となる実数 r ³ 1 が存在するので、0 £ t £ 1 に対して

(49-34)  || (1 - t)1 + tx - r1 || = || t(x - r1) + (1 - t)(1 - r)1 || £ || t(x - r1) || + || (1 - t)(1 - r)1 || < tr + (1 - t)r = r

となり、従って (45-22)xr1 を、y(1 - t)1 + tx を代入した式が成り立つので、(45-24) により (1 - t)1 + tx は可逆で

(49-35)  {(1 - t)1 + tx}-1 = ¥
å
k=0
{(r - 1 + t)1 - tx}k
———————–
rk+1

が成り立ちます。そこで

(49-36)  log x (x - 1) ò 1

0
{(1 - t)1 + tx}-1 dt

と置いて、これが Log(x) に属すことを確かめましょう。そのために、0 £ s £ 1 に対して

(49-37)  j(s) (x - 1) ò s

0
{(1 - t)1 + tx}-1 dt

と置くと、

(49-38a)  exp j(0) = exp 0 = 1

かつ (45-38) により

(49-38b) 
—–
d
s
exp j(s) = ¥
å
k=1
kj(s)k-1j'(s)
—————–
 k! 
= j'(s) exp j(s) = (x - 1){(1 - s)1 + sx}-1 exp j(s)

ですから、s の関数 exp j(s)(1 - s)1 + sx は同じ常微分方程式:

(49-39a)  u(0) = 0

(49-39b)  u'(s) = (x - 1){(1 - s)1 + sx}-1 u(s)

の解であることがわかり、従って常微分方程式の解の一意性により exp j(s) = (1 - s)1 + sx となり、従って特に s = 1 とすれば、

(49-40)  exp log x = x

が成り立つことがわかります。
 一方、定義式 (49-36) から明らかなように、x と可換な元は log x とも可換ですから、これで log x Î Log(x) であることが証明されました。

 さて、(49-36) の右辺の被積分関数に (49-35) を代入すれば、

(49-41)  log x = (x - 1) ¥
å
k=1
ò 1

0
{(r - 1 + t)1 - tx}k-1
————————–
rk
dt = - ¥
å
k=1
ò 1

0

—–
d
t
{(r - 1 + t)1 - tx}k
———————–
krk
= - ¥
å
k=1
(r1 - x)k - (r - 1)k1
————————
krk

が得られますが、特に X = Rx = r の場合を考えると

(49-42)  log r = ¥
å
k=1
(r - 1)k
———
krk

が得られるので、これを (49-41) に代入すれば

(49-43)  log x = ( log r )1 - ¥
å
k=1
 (r1 - x)k
———–
krk
      (  || x - r1 || < r  )

が得られ、従って特に r = 1 の場合を考えれば、x - 1 を改めて x と書くことにより、対数関数の冪級数展開

(49-44)  log(1 + x) = ¥
å
k=1
(- 1)k-1
———
 k 
xk       (  || x || < 1  )

が得られます。

 さて、特に X が複素数体 C の場合は

(49-45)  Log(z) = { wÎC | ew = z }

となりますが、w = u + ivÎLog(z)  Û  z = eueiv  Û  ( eu = | z |  Ù  vÎArg(z) ) ですから、z ¹ 0 なら

(49-46)  Log(z) = { log | z | + iq  |  Arg(z) } ¹ Æ

が成り立ち、また (49-45),(46-24),(49-5),(49-7) により

(49-47a)  zÎLog(ez )

(49-47b)  Log(zz' ) = Log(z) + Log(z' )

(49-47c)  Log(zn ) = n Log(z)

が成り立ちます。ゆえに、記号の濫用により Log(z) に属す任意の元log z と書くと、

(49-48a)  exp log z = z

(49-48b)  log exp z = z       ( mod 2pi )

(49-48c)  log(zz' ) = log z + log z'       ( mod 2pi )

(49-48d)  log zn = n log z       ( mod 2pi )

が成り立ちます。

 さて、(49-10) によれば、任意の複素数 a ¹ 0 に対し、十分小さい a の近傍 U を取れば、任意の Log(a) に対し、各 zÎU に対する log z の値をうまく選んで、Ulog は連続関数で、かつ log a = b となるようにすることができます。しかも (46-25) と合成関数の微分公式により

(49-49a)  ¶ 
—–
x
log | z | = 1
—–
2
¶ 
—–
x
log(x² + y²) = x
———
x
² + y²

(49-49b)  ¶ 
—–
y
log | z | = 1
—–
2
¶ 
—–
y
log(x² + y²) = y
———
x
² + y²

 ゆえに、log z = u(x, y) + iv(x, y) と実部・虚部に分ければ、(49-46)(49-49),(49-11) を比較して

(49-50a)  u
—–
x
= v
—–
y

(49-50b)  v
—–
x
= - u
—–
y

という関係式が得られます。これらを xy の2変数の実数値関数の組 u , v に対する Cauchy-Riemannの関係式といいます。

 一般に複素数 z = x + i y の複素数値関数 w = u + iv が与えられ、これが複素数値関数として z について微分可能なら、Cauchy-Riemannの関係式が成り立ちます。
 実際、複素変数に対する微分可能性の仮定により

(49-51)  w'(x, y) =  
lim
h + i k ® 0
w(x + h, y + k) - w(x, y)
——————————
h + ki

が存在しますが、特に k = 0 と置いて極限を取ったものと h = 0 と置いて極限を取ったものが一致しなければならないので

(49-52)  w' = w
—–
x
= 1

i
w
—–
y

となり、2番目の等号の両辺の実部と虚部を比較すれば (49-50) が得られます。

 逆に、u , vx , yC¹-級関数で Cauchy-Riemannの関係式を満たすなら、w = u + ivz = x + i y について微分可能です。
 実際、(43-35) により、任意の e > 0 に対し、h , k が十分小さければ

(49-53)  ½
½
w(x + h, y + k) - w(x, y) - h w
—–
x
- k w
—–
y
½
½
£ e | (h, k) |

が成り立ちますが、(49-50) が成り立っているので wxw' と書けば、(49-52) が成り立つので

(49-54)  h w
—–
x
+ k w
—–
y
= (h + i k)w'

と変形されるので、これを (49-53) に代入すれば、wz において微分可能であることを意味する式が得られ、しかもその微分係数は w' であることがわかります。

 以上の結果を z の関数 log z に適用すれば、これは z について微分可能で、(49-49a),(49-11a) により

(49-55) 
—–
dz
log z = ¶ 
—–
x
( log | z | + i arg z ) = x - i y
———
x
² + y²
= 1
———
 x +
i y
= 1
—–
 z

が成り立つことがわかります。

 さて、BanachX互いに可換な元 ax に対し、Log(a) の元が存在するとき、その任意に選んだ元 log a に対して (46-32) と同様に、冪を

(49-56)  ax exp(x log a)

で定義します。特に aX の単位元に複素数 z ¹ 0 を乗じたものである場合、ax のことを zx と書けば、(49-55) により、(46-34) と全く同様にして、複素変数 z に対しても

(49-57)  d
—–
 d
z
z x = xz x-1

が成り立つことがわかります。
 またこの場合、log の値をうまく選んで (49-48)( mod 2pi ) の但し書きなしに成り立つようにしておけば、(46-33) の各指数法則も成り立つことがわかります。
 また逆に、x の方が X の単位元に複素数 z を乗じたものである場合は、ax のことを az と書けば、項別微分の公式 (29-37) により

(49-58) 
—–
d
z
az =
—–
d
z
exp(z log a) = ¥
å
k=0

—–
d
z
 zk( log a)k
————–
 k
! 
= ¥
å
k=1
 zk-1( log a)k
————–
(k - 1)! 
= exp(z log a) log a = az log a

が成り立つことがわかります。

 次に、|| x || < 1 を満たす xÎX に対し、log(1 + x)(49-44) により定義することができます。このとき、x と可換な zÎX に対し、二項展開

(49-59)  (1 + x)z = ¥
å
k=0
æ
è
z
k
ö
ø
xk       (  || x || < 1  )

が成り立つことを証明しましょう。ただし

(49-60)  æ
è
z
k
ö
ø
z(z - 1)(z - 2)¼(z - k + 1)
———————————
k!

で、k = 0 のときは、分子は 1 を意味するものとします。これは帰納法により

(49-61a)  æ
è
z
0
ö
ø
1

(49-61b)  æ
è
z
k + 1
ö
ø
z - k
——–
k + 1
æ
è
z
k
ö
ø

と定義することを意味します。これは z が自然数の場合に第12節で定義したのと同じ形をしているので、これも zk二項係数といいます。
 さて、(49-59) の証明ですが、

(49-62)  j(t) (1 + tx)z       ( 0 £ t £ 1 )

と置けば、項別微分の公式 (29-37) により、

(49-63) 
—–
d
t
log(1 + tx) = ¥
å
k=1

—–
d
t
(- 1)k-1
———
 k 
(tx)k = x ¥
å
k=1
(- tx)k = x(1 + tx)-1

ですから (45-38) により

(49-64a)  j'(t) =
—–
d
t
exp(z log(1 + tx)) = ¥
å
k=0

—–
d
t
 zk{ log(1 + tx)}k
———————
 k
! 
= ¥
å
k=1
 zk{ log(1 + tx)}k-1
———————–
(k - 1)! 
x(1 + tx)-1 = zx(1 + tx)-1 j(t)

(49-64b)  j(0) = 1

が成り立ちます。一方、

(49-65)  y(t) ¥
å
k=0
æ
è
z
k
ö
ø
(tx)k       ( 0 £ t £ 1 )

と置けば、この t に関する冪級数の収束半径は、

(49-66)  ak || x ||k || z || ( || z || + 1)( || z || + 2)¼( || z || + k - 1)
—————————————————
k!

tk の係数にもつ冪級数の収束半径を下回ることはなく、その収束半径は、(28-46) により

(49-67)  limk ak+1
——–
ak
= || x || limk || z || + k
———–
k + 1
= || x || £ 1

の逆数、すなわち 1 以上ですから、| t | < 1 のとき収束し、項別微分の公式 (29-37)(49-61b) により

(49-68a)  y'(t)(1 + tx)
= ¥
å
k=1
æ
è
z
k
ö
ø
ktk-1xk(1 + tx)

= ¥
å
k=0
æ
è
z
k
+ 1
ö
ø
(k + 1)x(tx)k + ¥
å
k=1
æ
è
z
k
ö
ø
kx(tx)k 

= ¥
å
k=0
æ
è
z
k
ö
ø
zx(tx)k 

 = zxy(t)

が成り立ち、しかも明らかに

(49-68b)  y(0) = 1

ですから、(49-64),(49-68) により jy は同じ線形常微分方程式を満たすので、解の一意性によりこれらは一致し、従って特に t = 1 の場合を比較することにより (49-59) は証明されました。

 この二項展開の応用として、実変数関数 arcsin の冪級数展開を求めてみましょう。(49-59)x = - 1/2 とし、z- t² を代入すれば、

(49-69)  1
———
Ö1 -
t²  
= 1 + ¥
å
k=1
(- 1/2)(- 1/2 - 1)(- 1/2 - 2)¼(- 1/2 - k + 1)
——————————————————–
k!
(- 1)kt2k = 1 + ¥
å
k=1
1 · 3 ¼ (2k - 1)
——————–
k!
2k
t2k = 1 + ¥
å
k=1
1 · 3 ¼ (2k - 1)
——————–
2 · 4 · ¼ (2k)
t2k 

ですから、t について 0 から t まで積分すれば、(47-46) により、逆正弦関数の冪級数展開

(49-70)  arcsin t = t + ¥
å
k=1
1 · 3 ¼ (2k - 1)
——————–
2 · 4 · ¼ (2k)
  t2k+1
———
2k
 + 1
      (  | t | < 1  )

が得られます。

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