数学の基礎


56.Cauchyの積分定理

 本節では、複素関数論で有名な表題の定理を、定義域や値域が局所凸空間であるような、かなり一般的な状況のもとで証明します。

 セミノルムの族 { | · |l | Λ } を持つ局所凸空間 X に値を持つ絶対連続な関数 j : [a, b] ® X長さを持つ曲線ともよばれ、j(a) = j(b) のとき長さを持つ閉曲線といいます。
 この場合、紛れがない限り j のかわりにその像 C :º j[[a, b]] Ì X のことを X 内の長さを持つ(閉)曲線とよぶことがあります(この場合、もとの j を、C定義する関数とよびます)。このとき、C のセミノルム | · |l に対する長さとよばれる非負実数 | C |l

(56-1)  | C |l ò  b

a
| j'(t) |l dt

で定義します。
 上の曲線 j に対し、ある区間 [c, d] から [a, b] への絶対連続な単調非減少関数 qq(c) = a かつ q(d) = b となるようなものが与えられたとき、(42-25),(42-42),(42-34) により

(56-2)  j(q(t)) = j(a) + ò q(t)

q
(c)
j'(t) dt = j(q(c)) + ò  t

c
j'(q(t)) dq(t) = j(q(c)) + ò  t

c
j'(q(t))q'(t) dt       ( c £ t £ d )

となりますから、y :º j ° q も長さを持つ曲線で、y' = (j' ° q)q' が成り立つことがわかります。ここで q' ³ 0 ですから、再び (42-34),(42-42) により

(56-3)  ò  d

c
| y'(t) |l dt = ò  d

c
| j'(q(t)) |l q'(t) dt = ò  d

c
| j'(q(t)) |l dq(t) = ò  b

a
| j'(t) |l dt = | C |l

となり、曲線 yj の長さは同じになります。しかも y[[c, d]] = C となっていることに注意します。
 そこで、2つの曲線 jy の間に上記のような関係にあるとき j ~ y 又は y ~ j と書き、長さを持つ有限個の曲線 ci ( i = 1 ,¼, k ) が存在して j ~ c1 ~ ¼ ~ ck ~ y となっているとき j » y と書くことにします。明らかに » は同値関係で、j » y なら jy の値域は一致します。なお、曲線 j をその像 C によって表す場合は » のかわりに = を用います。

 さて、j : [a, b] ® Xy : [c, d] ® X を、j(b) = y(c) を満たす2つの曲線とし、それぞれの値域を C , Γ とします。ここで、a £ t £ b のとき j(t) に一致し、b < t £ b + d - c のとき y(t + c - b) に一致する関数を c とすると、これは [a, b] È ] b, b + d - c] で一様連続ですから、X の完備性により [a, b + d - c] で一様連続な関数 c に一意的に拡張できます。この曲線を C + Γ と書いて、曲線 CΓとよびます。
 ここで、絶対連続な単調増加関数 q : ] b, b + d - c] ® ] c, d]q(t) = t + c - b で定義すれば、曲線 C + Γ を定義する関数のグラフは、関数 j のグラフと関数 y ° q のグラフの合併の閉包です。一方 y » y ° q ですから、この加法は(同値関係を » のもとで)結合律を満たします。
 また、曲線 j : [a, b] ® X をその像 C で表すとき、y(t) :º j(- t) で定義される曲線 y : [- b, - a] ® X のことを - C と書いて、これを C逆向きの曲線とよびます。また、C- Γ の和が定義できるとき、これを C - Γ と略記します。

 さて、CΓ が長さを持てば、- CC + Γ も長さを持ちます。
 なぜなら、CΓ がそれぞれ絶対連続関数 jy で定義されるとき、C + Γa £ t £ b のとき j'(t) に一致し、b < t £ b + d - c のとき y'(t + c - b) に一致する可積分関数を導関数に持ち、- Ct の可積分関数 - j'(- t) を導関数に持つからです。

 さて次に、ΩX の開集合、FΩ ´ X から和について閉じたセミノルムの族 { | · |l' | l'ÎΛ' } を持つ完備局所凸空間 Y への関数で、第二変数に関して実線形、すなわち

(56-4)  F(z, ax + by) = aF(z, x) + bF(z, y)       ( x, y, zÎX ; a, bÎR )

が成り立つとします。ここで、長さを持つ曲線 j : [a, b] ® Ω に対し、f(t) F(j(t), j'(t)) で定義される関数 f[a, b] で可積分のとき、

(56-5)  òC F(z, dz) ò  b
   F(j(t), j'(t)) dt
a

のことを、F の曲線 C :º j[[a, b]] 上の線積分といいます。特に F一様連続なら、第38節の議論により f は可測で、しかもその任意のセミノルムを取ったものが可積分ですから可積分で、条件を満たします。
 さて、区間 [c, d] から [a, b] への絶対連続な単調非減少関数 qq(c) = a かつ q(d) = b となるようなものに対し、y :º j ° q と置くと、y' = (j' ° q)q' ですから、これと (42-42),(42-34),(56-4) により

(56-6)  òC F(z, dz) = ò  b
   f(t) dt =
a
ò  d
   f(q(t)) dq(t) =
c
ò  d
   F(j(q(t)), j'(q(t))) q'(t) dt =
c
ò  d
   F(j(q(t)), j'(q(t))q'(t)) dt =
c
ò  d
   F(y(t), y'(t)) dt
c

となるので、y に対する C 上の線積分は j に対する C 上の線積分に一致します。すなわち線積分は曲線の(同値関係 » のもとで)関数になっています。また、(41-29),(41-32) により

(56-7a)  ò- C F(z, dz) = ò -a
   F(j(- t), - j'(- t)) dt = -
-b
ò -a
   f(- t) dt = -
-b
ò  b
   f(t) dt = -
a
òC F(z, dz)

(56-7b)  òC+Γ F(z, dz) = ò  b
   F(j(t), j'(t)) dt +
a
ò b+d-c
     F(y(t + c - b), y'(t + c - b)) dt =
b
òC F(z, dz) + ò  d
   F(y(t), y'(t)) dt =
c
òC F(z, dz) + òΓ F(z, dz)

が成り立ち、同様に、曲線の長さについても、任意の Λ に対して

(56-8a)  | - C |l = | C |l

(56-8b)  | C + Γ |l = | C |l + | Γ |l

が成り立ちます。

 さて、今後上で定義した F は一様連続であると仮定します。a £ a < b £ b かつ a £ g £ b のとき、F は第二変数について線形で連続ですから、(39-48)(42-25) により

(56-9)  ò  b
   F(j(g), j'(t)) dt = F(j(g),
a
ò  b
   j'(t) dt) = F(j(g), j(b) - j(a))
a

 さて、任意に与えられた l'ÎΛ'e > 0 に対し、F の一様連続性により、Λh > 0 が存在して、曲線 C のセミノルム | · |l に関する h-近傍が Ω に含まれ、

(56-10)  | F(x, y) - F(x', y' ) |l' £ e       (  | x - x' |l £ h , | y - y' |l £ h  )

が成り立ちます。また更に j の一様連続性により、d > 0 が存在して

(56-11)  | j(t) - j(s) |l £ h       (  | t - s | £ d  )

が成り立ちます。これら2つの式から

(56-12)  | F(j(t), y) - F(j(s), y) |l' £ e       (  | t - s | £ d , yÎX  )

が成り立つので、これと (56-9) により、0 < b - a £ d なら

(56-13)  |
|
|
ò  b
   F(j(t), j'(t)) dt - F(j(g), j(b) - j(a))
a
|
|
l'
£ ò  b

a
 | F(j(t), j'(t)) - F(j(g), j'(t)) |l' dt £ e(b - a)       ( 0 £ b - a < d )

が成り立ちます。ゆえに、区間 [a, b] の任意の有限分割 a = a0 < a1 < ¼ < an = b に対し、sup{ | ai+1 - ai |  | 0 £ i < n } をこの分割のとよぶことにすれば、幅が d 以下で ai £ ci £ bi である限り、線積分の有限和による近似:

(56-14)  |
|
|
òC F(z, dz) - n-1
å
i=0
F(j(ci ), j(ai+1 ) - j(ai )) |
|
l'
£ n-1
å
i=0
|
|
|
ò  ai+1

ai
F(j(t), j'(t)) dt - F(j(ci ), j(ai+1 ) - j(ai )) |
|
l'
£ n-1
å
i=0
£ e(ai+1 - ai ) = e(b - a)

が成り立つことがわかります。

 ここで、二つの特別な場合、すなわち F が第一変数によらない場合と、F が第一変数と第二変数について対称、すなわち Ω = X

(56-15)  F(u, v) = F(v, u)

を満たす場合について、Cauchyの積分定理が成り立つ、すなわち長さを持つ任意の閉曲線 C について

(56-16)  òC F(z, dz) = 0

となることを証明しましょう。

 実際、F が第一変数によらない場合は、F(x, y)F( y) と書くと、(56-4),(56-5)(39-48) により

(56-17)  òC F(z, dz) ò  b
   F(j'(t)) dt = F(
a
ò  b
   j'(t) dt ) = F(j(b) - j(a)) = F(j(b)) -F(j(a))
a

となり、F が第一変数と第二変数について対称な場合は、第一変数に対しても線形になるので、(42-25),(56-15) と二重積分の順序交換により

(56-18)  2 òC F(z, dz)
= ò  b
   F(j(t), j'(t)) dt +
a
ò  b
   F(j(t), j'(t)) dt
a

= ò  b
   F(
a
ò  t
   j'(t) dt + j(a), j'(t)) dt +
a
ò  b
   F(j(b) -
a
ò  b
   j'(t) dt , j'
(t)) dt
t

= ò  b
   dt
a
ò  t
   F(j'(t), j'(t)) dt +
a
ò  b
   F(j(a), j'(t)) dt +
a
ò  b
   F(j(b), j'(t)) dt -
a
ò  b
   dt
a
ò  b
   F(j'(t), j'(t)) dt

t

= ò  b
   dt
a
ò  b
   F(j'(t), j'(t)) dt
-
t
ò  b
   dt
a
ò  b
   F
(j'(t), j'(t)) dt + F(j(a), j(b)) - F(j(a), j(a)) + F(j(b), j(b)) - F(j(b), j(a))
t

= F(j(b), j(b)) - F(j(a), j(a))

となるので、いずれの場合も j(b) = j(a) により (56-16) が得られます。

 さて次に、x, yÎX に対し、区間 [0, 1] から X への一次式 j(t) x + t( y - x) で定義される関数 j は導関数 y - x を持つ絶対連続関数ですが、この曲線を点 xy を結ぶ線分とよんで [x, y] と書き、有限個の線分の和からなる曲線を折線とよびます。
 明らかに | [x, y] |l = | x - y |l 及び [ y, x] = - [x, y] が成り立ちます。

 また、曲線 j : [a, b] ® X と、区間 [a, b] の有限分割 a = a0 < a1 < ¼ < an = b に対し、折線 [j(a), j(a1 )] + [j(a1 ), j(a2 )] + ¼ + [j(an-1 ), j(b)] のことを、この分割に伴う折線とよんで [j(a), j(a1 ) ,¼, j(an-1 ), j(b)] と書くことにします。
 ところで、折線を構成する各線分 Ci を定義する一次式の定義域として、任意の有界閉区間を選ぶことができますから、特に [ai-1 , ai ] を選べば、このときの折線 C[j(a), j(a1 ) ,¼, j(an-1 ), j(b)] を定義する絶対連続関数 j

(56-19a)  j(ai ) = j(ai )       ( 0 £ i < n )

(56-19b)  j(t) = j(ai ) + j(ai+1 ) - j(ai )
——————–
ai+1 - ai
(t - ai )       ( ai £ t £ ai+1 )

を満たすことがわかります。
 従って、j(56-11) を満たすとき、(56-19b) により

(56-20)  | j(t) - j(ai ) |l £ | j(ai+1 ) - j(ai ) |l £ h       (  ai £ t £ ai+1  )

ですから、j に対しても (56-12),(56-13) と同様な式が成り立って、(56-14) と同様に

(56-21)  |
|
|
òC F(z, dz) - n-1
å
i=0
F( j(ai ), j(ai+1 ) - j(ai )) |
|
l'
£ e(b - a)

が得られますが、(56-19a) により、(56-14)ci = ai と置いたものと (56-21) の左辺の有限和の部分は一致します。ゆえに

(56-22)  |
|
|
òC F(z, dz) - òC F(z, dz) |
|
l'
£ 2e(b - a)

すなわち C 上の線積分を、C から作った幅 d 以下の有限分割に伴う折線 C に沿った線積分で近似する式が得られました。

 さて、完備局所凸空間 XX の開集合 Ωx, y, zÎΩ に対して

(56-23)  Δ(x, y, z) { rx + sy + tz | r, s, t ³ 0 ; r + s + t = 1 } = { x + s( y - x) + t(z - x) | s, t ³ 0 ; s + t £ 1 }

と置きます。明らかに [x, y, z, x] Ì Δ(x, y, z) です。また、右辺の表現により、

(56-24)  u, vÎΔ(x, y, z)  Þ  | u - v |l £ | [x, y, z, x] |l

が成り立つことがわかります。

 さて、第二変数について線形な一様連続関数 F : Ω ´ X ® YxÎΩ正則であるとは、対称な双線形関数、すなわち (56-4)(56-15) を満たす一様連続関数 Fx : X ´ X ® Y が存在して

(56-25)  "l'ÎΛ' : $lÎΛ : "e > 0 : $d > 0 : "y, zÎΩ : (  | z - x |l < d  Þ  | F(z, y) - F(x, y) - Fx(z - x, y) |l' £ e | z - x |l | y |l  )

が成り立つことをいいます("$ の順序に注意)。また、F はすべての xÎΩ で正則なとき Ω正則であるといいます。
 このとき、Ω で正則な F に対しては、三角形に対するCauchyの積分定理、すなわち Δ(u, v, w) Ì Ω なら

(56-26)  ò[u, v, w, u] F(z, dz) = 0

が成り立つことが証明できます。そのためには、任意に l'ÎΛ を選んだとき、

(56-27)  r :º |
|
|
ò[u, v, w, u] F(z, dz) |
|
l'
> 0

と仮定すると矛盾することを示せば十分です。そこで、akexp(- 2-k ) ( kÎN ) 及び u0u , v0v , w0w と置きます。
 ここで、帰納的に、uk+1 , vk+1 , wk+1ÎΔ(uk , vk , wk ) を、任意の Λ に対して

(56-28a)  | uk+1 - vk+1 |l = 1
—–
2
| uk - vk |l

(56-28b)  | vk+1 - wk+1 |l = 1
—–
2
| vk - wk |l

(56-28c)  | wk+1 - uk+1 |l = 1
—–
2
| wk - uk |l

が成り立ち、しかも

(56-29)  |
|
|
ò

Ck +1
F(z, dz) |
|
l'
³  ak
—–
 4 
|
|
|
ò

Ck
F(z, dz) |
|
l'

が成り立つように定めていきましょう。ただし

(56-30)  Ck [uk , vk , wk , uk ]

です。今、uk , vk , wk まで定められたとします。ここで x :º (vk + wk )/2 , h :º (wk + uk )/2 , z :º (uk + vk )/2 と置いて、

(56-31a)  (x1 , h1 , z1 ) (uk , z , h)

(56-31b)  (x2 , h2 , z2 ) (z , vk , x)

(56-31c)  (x3 , h3 , z3 ) (h , x , wk )

(56-31d)  (x4 , h4 , z4 ) (x , h , z)

(56-32)  Γi [xi , hi , zi , xi ]

と置けば、

(56-33)  Γ1 + Γ2 + Γ3 + Γ4 = Ck-1 + [x, h] + [h, x] + [h, z] + [z, h] + [z, x] + [x, z]

が成り立つことがわかります。ゆえに、(56-7),(56-33)[h, x] = - [x, h] などにより

(56-34a)  ò

Ck
F(z, dz) = 4
å
i=1
ò

Γi
F(z, dz)

が成り立ち、従って特に

(56-34b)  |
|
|
ò

Ck
F(z, dz) |
|
l'
£ 4
å
i=1
|
|
|
ò

Γi
F(z, dz) |
|
l'

が成り立ちます。一方、ak < 1 ですから、各 i に対して

(56-35a)  |
|
|
ò

Γi
F(z, dz) |
|
l'
< 1
—–
4
|
|
|
ò

Ck
F(z, dz) |
|
l'

又は

(56-35b)  |
|
|
ò

Γi
F(z, dz) |
|
l'
>  ak
—–
 4 
|
|
|
ò

Ck
F(z, dz) |
|
l'

が成り立ちますが、各 i に対する場合分けを行ったとき、i = 1, 2, 3, 4 すべてについて (56-35a) が成り立つと仮定すると (56-34b) に反するので、(56-35b) が成り立つ i が少なくとも一つ存在します。
 この i に対して Ck+1Γi と置けば (56-29) が成り立ちます。また明らかに (56-28) も成り立っています。

 さて、(56-28) により、{ Δ(uk , vk , wk ) | kÎN } はコーシー・フィルターを生成し、しかも uk , vk , wk の構成の仕方から、これらを表現する (56-23) の係数 r , s , t もコーシー列になるものが選べるので、このコーシーフィルターは、Δ(u, v, w) の一点 x に収束します。そこで、この xl' に対して (56-25) を満たす Λ を取り、e > 0

(56-36)  e | [u, v, w, u] |l² < e-2 r

となるように取り、d > 0(56-25) を満たすように取ります。このとき、(56-28) により

(56-37)  | Ck |l = 2-k | [u, v, w, u] |l

ですから、この両辺の値が d より小さくなるように自然数 k を選びます。
 そこで、曲線 Ck を定義する絶対連続関数を j : [a, b] ® Ω と書けば、(56-25),(56-1),(56-37) により

(56-38)  ò  b

a
| F(j(t), j'(t)) - F(x, j'(t)) - Fx(j(t) - x, j'(t)) |l' dt £ e ò  b

a
| j(t) - x |l | j'(t) |l dt £ e | Ck |l² = 4-ke | [u, v, w, u] |l²

が成り立ちます。また、(56-16) により

(56-39)  ò  b

a
{ F(j(t), j'(t)) - F(x, j'(t)) - Fx(j(t) - x, j'(t)) } dt = ò

Ck
F(z, dz) - ò

Ck
F(x, dz) - ò

Ck
Fx(z, dz) + ò

Ck
Fx(x, dz) = ò

Ck
F(z, dz)

が成り立ち、(56-29),(56-27)ak = exp(- 2-k ) により

(56-40)  |
|
|
ò

Ck
F(z, dz) |
|
l'
³ 4-k a0¼ak-1 |
|
|
ò[u, v, w, u] F(z, dz) |
|
l'
³ 4-k e-2 r

となりますが、(56-38),(56-40) と、(56-39) のセミノルム | · |l' を取ったものを組み合わせると、(56-36) と矛盾します。
 以上で (56-26) は証明されました。

 次に、2つの長さを持つ閉曲線 CΓΩ 内で一様連続な Φ : [0, 1] ´ [a, b] ® Ω によりホモトープ(第47節参照)で、しかも R(Φ) ÌÌ Ω となっているものとします。このとき、Ω で正則な F に対して

(56-41)  òC F(z, dz) = òΓ F(z, dz)

が成り立つことを証明しましょう。
 実際、d > 0 を十分小さく取れば、区間 [0, 1] の有限分割 0 = s0 < s1 < ¼ < sm = 1 と、区間 [a, b] の有限分割 a = a0 < a1 < ¼ < an = b の幅が共に d 以下であれば、Φ(si , aj )« i, j » と略記して、すべての Δ(« i, j », « i, j+1», « i+1, j »)Δ(« i+1, j », « i, j+1 », « i+1, j+1 »)Ω に含まれるようにすることができます。
 ゆえに (56-26) により、三角形 i, j », « i, j+1 », « i+1, j », « i, j »] と三角形 i+1, j », « i, j+1 », « i+1, j+1 », « i+1, j »] 上の F(z, dz) の線積分は共に 0 となります。
 一方、各 i について、これらの三角形上の線積分をすべての j について加えれば、(56-7a) により、折線 i, j+1 », « i+1, j »]i+1, j », « i, j »] 上の線積分は、それぞれ逆向きの折線上の線積分とキャンセルして消え、折線 i, j », « i, j+1 »]i+1, j+1 », « i+1, j »] 上の線積分のみが残ります。ゆえに、折線 i, 0 », « i, 1 » ,¼, « i, n »]Ci と書くと、

(56-42)  0 = ò

Ci
F(z, dz) - ò

Ci+1
F(z, dz)

となることがわかり、これは

(56-43)  ò

C0
F(z, dz) = ò

Cm
F(z, dz)

を意味するので、d ® 0 とすれば、(56-22) により (56-41) が得られます。

 従って特に、曲線 C可縮、すなわち一点とホモトープなら、Cauchyの積分定理 (56-16) が成り立つことがわかります。

 さて、n を正整数、K を完備な付値体、ΩKn の開集合、X をセミノルムの族 { | · |l | Λ } を持つ K 上の完備な局所凸空間とし、Ωコンパクト一様連続、すなわち任意の C ÌÌ Ω 上で一様連続な関数  fi : Ω ® X ( i = 1, 2 ,¼, n ) が、Ω の各点で全微分可能で

(56-44)  i fj = ¶j fi       ( 1 £ i, j £ n )

を満たすものとします。このとき、

(56-45)  F(x, y)  n
å
i=1
 yi fi(x)       ( xÎΩ , yÎKn )

と置くと、f の全微分可能性から、各 xÎΩ に対して、線形写像  fi'(x) : Kn ® X が存在して

(56-46)  "lÎΛ : "e > 0 : $d > 0 : "iÎ{ 1, 2 ,¼, n } : "zÎΩ : (  | z - x | < d  Þ  |  fi(z) - fi(x) - fi'(x)(z - x) |l £ e | z - x |  )

ですから、

(56-47)  Fx(z, y)  n
å
i=1
 yi fi'(x)(z) =  n
å
i=1
 yi zj j fi(x)       ( xÎΩ ;  y, zÎKn )

と置けば、(56-44) によりこれは zy について対称で、

(56-48)  "lÎΛ : "e > 0 : $d > 0 : "y, zÎΩ : (  | z - x | < d  Þ  | F(z, y) - F(x, y) - Fx(z - x, y) | £ ne | z - x | | y |  )

が成り立ちます。これは前節 (56-25)KnX とみなし、XnY とみなしたものが成り立つことを意味するので、前節の (56-26)(56-41) が成り立つことがわかります。すなわち

(56-49)  F(z, dz)  n
å
i=1
 fi(z) dzi       ( zÎΩ )

と書けば、

(56-50a)   n
å
i=1
ò[u, v, w, u]  fi(z) dzi = 0       (  Δ(u, v, w) ÌÌ Ω  )

(56-50b)   n
å
i=1
òC  fi(z) dzi =  n
å
i=1
òΓ  fi(z) dzi       (  C » Γ  )

が成り立ちます。ただし C » ΓCΓΩ 内で一様連続な Φ : [0, 1] ´ [a, b] ® Ω によりホモトープな閉曲線であることを意味します(以下、ホモトープ、可縮というときは、条件 R(Φ) ÌÌ Ω が常に成り立っているものとします)。
 特に n = 1 の場合を考えると、Ω でコンパクト一様連続な  f : Ω ® X は、Ω の各点で微分可能なら

(56-51a)  ò[u, v, w, u]  f(z) dz = 0       (  Δ(u, v, w) ÌÌ Ω  )

(56-51b)  òC  f(z) dz = òΓ  f(z) dz       (  C » Γ  )

が成り立つことがわかります。

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