(LJ ), (LK)と
Gentzenの基本定理
本文第1節で導入した自然推論の推論体系は、論理記号を導入する推論規則と消去する推論規則に分かれていますが、“最も効率のよい証明は何か”という問題を考える際は、折角導入した命題を“消去”してしまうというのはムダであり、消去という操作が一切出てこない証明が得られれば、それが最も効率がよい証明ということになります。
そこで、消去規則を、それと同等な、ある種の“導入”規則に置き換えることを考えてみましょう。
一般に、直観主義論理における論理記号 s の消去規則は次の形をしています:
(A3-1) |
Γ Γ1 ® P1 ¼ Γn ® Pn Γ ® |
ただし
さて、この推論規則は、構造に関する推論規則を用いると、次の推論規則:
(A3-2) |
Γ ¼ Γn ® Pn As ® |
と同等であることが示せます。
実際、(A3-1)
を推論規則に採用し、(A3-2)
の上段が成り立っているとします。このとき推論規則 ( 仮 定 ) により ,
As ® As(A3-2)
の上段のそれぞれに推論規則 ( 増 ) を適用すれば ,
As ® Pi ® As ® Pi
ゆえに、(A3-1)
を、Γ のところに Δ を代入して適用すれば ® Q(A3-2)
の下段の式に他なりません。これは、(A3-1)
から (A3-2)
が導出できたことを意味しています。
今度は逆に (A3-2)
を推論規則に採用し、(A3-1)
の上段が成り立っているとします。
このとき、(A3-2)
の上段がすべて成り立っているので、下段の式すなわち ,
As ® Q(A3-1)
の最上段の式 ® As(A3-1)
の下段が得られます。
これは、(A3-2)
から (A3-1)
が導出できたことを意味していますから、以上で (A3-1)
と (A3-2)
が同等であることがわかりました。
ところで、(A3-2)
は
(A3-3) |
Γ ¼ Γn ® Pn Γ ,Q ® R As ® |
とも同等です。ただし、R というメタ変数は、すべての
実際、(A3-3)
で R に Q を代入すれば、上段最後の式は ,
Q ® Q(A3-2)
に一致します。
逆に (A3-2)
を推論規則に仮定し、(A3-3)
の上段が成り立っているとすると、(A3-2)
の上段がすべて成り立っているのでその下段の式 ,
As ® Q,
Q ® R, As ,
Q ® R,
As ® R(A3-2)
の下段が得られます。
以上により、(A3-1)~(A3-3)
の3つの推論規則はすべて同等であることがわかりました。
ところで (A3-2)
あるいは (A3-3)
は、当該論理記号 s を陽に含む命題が ® の左側に導入されています。そこで、これらの推論規則を (s 左) とよぶことにします。
これに対し、導入規則 (s 導入) は、当該論理記号を陽に含む命題が ® の右側に導入されるので、これを (s 右) ともよぶことにします。
さて、論理記号 Ú , $ については (A3-2)
を、論理記号 Ù , Þ , " については (A3-3)
を (s 左) として採用することにすれば、
( Ù左)( Ú左)( Þ左)( "左)( $左)
Γ ,P® RRP Ù Q ®
Γ,Γ ,Q® RRP Ù Q ®
Γ,Γ ,P® RR
Γ,Q ® RP Ú Q ®
Γ,Γ ® PR
Γ,Q ® RP Þ Q ®
Γ,Γ , (T | x)P® RR"xP ®
Γ,
Γ ,P® RR$xP ®
Γ, ( x¢Γ , R )
という、各論理記号の消去規則と同等な推論規則群が得られます。
次に、(^ 消去) を前提にして、Ø に関する推論図を考えてみましょう。
,
P ® ^^ 消去) により ,
P ® Q,
P ® Ø QØ 導入) により ® Ø P
(A3-4) |
Γ,P Γ ® Ø |
という推論規則が得られます。これを (Ø 右) とよぶことにします。
また、 ® P,
Ø P ® P,
Ø P ® Ø PØ消去) により ,
Ø P ® R^ を代入すれば,
Ø P ® ^
(A3-5) |
ΓØ P ® ^ |
という推論規則が得られます。これを (Ø 左) とよぶことにします。
逆に、同じ前提のもとで、(Ø 左) と (Ø 右) のペアから (Ø 導入) と (弱Ø消去) を導くことができます。
実際、,
P ® Q,
P ® Ø QØ 左) を適用すれば、,
P,
Ø Q ® ^,
P ® Ø Q,
P ® ^Ø 右) を適用すれば ® Ø PØ 導入) が得られたことを意味します。
次に ® P ® Ø PØ 左) を適用すれば、,
Ø P ® ^ ® Ø P ® ^^ 消去) を適用すれば ® QØ消去) が得られたことを意味します。
さて、ここで ® ^sequent
を ®^ 消去) は
(A3-6) |
ΓΓ ® |
と書くことができます。これはsequent
の右辺について推論規則 ( 増 ) を適用した形になっているので、この推論図を ( 増 右 ) とよぶことにし、推論規則 (^ 消去) を ( 増 右 ) で置き換えることにします。それに伴って、本来の ( 増 ) は ( 増 左 ) ともよぶことにします。
なお、s が Ù , Ú , Þ , " , $ の場合に対して既に得られた (s 左) において、R に ^ を代入すれば、この規約によって、これらの推論図から R を“消した”推論図が得られることに注意します。
次に、推論規則 ( 仮 定 ) すなわち ,
P ® P
(A3-7) |
P |
が得られます。これを始式とよびます。逆に、明らかに始式と ( 増 左 ) により ( 仮 定 ) が導出されるので、推論規則 ( 仮 定 ) をこの始式で置き換えることにします。
次に、推論規則 ( 切 断 ) を若干変形します。
® P,
P ® Q,
Δ ® P, Δ,
P ® Q,
Δ ® Q
(A3-8) |
Γ Δ ,P ® Q Δ ® |
となります。なお、変形後の ( 切 断 ) においても Q に ^ を代入すると、形式上 Q を“消した”推論図が得られることに注意します。
同様に、推論規則 (Þ 左) も若干変形します。
® P,
Q ® R,
Δ ® P, Δ,
Q ® RÞ 左) により , Δ,
P Þ Q ® R
(A3-9) |
Γ Δ ,Q ® R P Þ Q ® |
となります。
以上により、直観主義論理の推論体系は、次の構造に関する推論規則群:
左 右 増 Γ ®ΔP
Γ,®ΔΣ ®ΠΠ
Σ®P,減 Γ , P, PP®Δ
Γ,®ΔΣ ®P, P, ΠΠ
Σ®P,換 Γ , P, Q, ΔΔ®Θ
Γ, Q, P,®ΘΣ ®Π, P, Q, ΞΞ
Σ®Π, Q, P,切断 Γ ®P, Δ Θ, PΛ®Λ
Γ, Θ®Δ,代入 Γ ®ΔΔ
(T | x)Γ®(T | x)始式 P ®P
と、論理記号に関する推論規則群:
記号 左 右 Ù
Γ ,P® ΔΔP Ù Q ®
Γ,Γ ,Q® ΔΔP Ù Q ®
Γ,Σ ® PQ,Π Σ ® Q, Π
Σ ® P Ù,ΠÚΓ ,P® Δ ΓΔ,Q ® ΔP Ú Q ®
Γ,
Σ ® PQ, Π
Σ ® P Ú,ΠΣ ® QQ, Π
Σ ® P Ú,ΠÞΓ ® PΔ, Δ Θ,Q ® ΛP Þ Q ®
Γ, Θ,,ΛΣ ,P® QQ, Π
Σ ® P Þ,ΠØΓ ® PΔ, ΔØ P ®
Γ,Σ ,P® ΠP
Σ ® Ø,Π"Γ , (T | x)P®Δ
Γ,"xP ®Δ
Σ ®P, ΠΠ
( x¢Σ, Π )Σ ® "xP,$
Γ, P®Δ
( x¢Γ, Δ )
Γ,$xP ®ΔΣ ®(T | x)P, ΠΠ
Σ® $xP,
において、各sequents
の ® の右辺は1個以下の命題からなるという条件を満たすような推論体系と同等であることがわかりました。ただし、上段が複数の式からなる場合、上下に積み重ねる代わりに左右に並べてあります(なお、( 減 ) と ( 換 ) の“右”はこの制約条件のもとでは意味がありませんが、左右の対称性を保つために付け加えました)。
この推論体系を (LJ )
とよびます。(LJ )
では ^ は論理記号とはみなされず、自然推論の (^ 消去) に対応する推論規則は、( 増 右 ) として構造に関する推論規則に組み込まれています。
ところで、上記の (LJ )
の推論規則は、® の右辺の命題が1個以下であるという制約を除けば、左右が全く対称な形をしています。
すなわち (Ù 右) の左右を入れ替えれば (Ú 左) になり、(Ú 右) の左右を入れ替えれば (Ù 左) になり、(Ø 右) の左右を入れ替えれば (Ø 左) になり、(" 右) の左右を入れ替えれば ($ 左) になり、($ 右) の左右を入れ替えれば (" 左) になっています。
そこで、上記の (LJ )
の推論規則において、“® の右辺が1個以下の命題からなる”という制約条件を外した推論体系を (LK)
とよびます。
まず (LK)
では、古典論理で証明可能なsequent
® P
実際、始式 ® PØ 右) を適用すれば ® Ø P,
PØ 左) を用いれば ØØ P ® P
ゆえに、もし ® ØØ PØØ P ® P ® PØ 消去) が導出できることを意味します。
他の直観主義論理と共通の推論はすべて導出できるのですから、以上により (LK)
では古典論理で証明可能なsequent
がすべて証明できることがわかりました。
さて、古典論理では、 ® PØ 左) により ,
Ø P ®
実際、,
Ø P ®Ø 右) により ® ØØ PØØ P ® P ® P
すなわち古典論理では、Δ が一個の命題からなる場合、sequent
® Δ,
Ø Δ ®
そこで、Δ が2個以上の命題からなる場合でも、Ø ΔØ を付けたものを表すことにして、sequent
® Δsequent
,
Ø Δ ®
このとき (LK)
で証明可能なsequent
は古典論理でも証明可能であることがわかります。
実際、( 増 ) , ( 減 ) , ( 換 ) については ® の右辺をすべて Ø を付けて左辺に移項した図式は古典論理で証明可能であり、( 切 断 ) については Δ と Λ をすべて Ø を付けて左辺に移項した図式は古典論理で証明可能であり、論理記号に関する推論規則群は、Δ と Λ をすべて Ø を付けて左辺に移項した図式が同様に古典論理で証明可能だからです。
以上により、古典論理の推論体系と (LK)
は同等であることがわかりました。
さて、(LK)
, (LJ )
についても本文第2節メタ定理1及びメタ定理2と同じ性質が成り立ちます:
(A3-10) |
P を、(LJ )又は (LK)における推論規則の全部又は一部のみを推論規則に採用した理論における証明文とし、x を変数、y を P に現れず、x と異なる変数とすれば、 ( y | x)P |
(A3-11) |
(LJ )又は (LK)における推論規則の全部又は一部のみを推論規則に採用した理論では、推論規則 ( 代 入 ) は導出可能である。すなわち sequentΦ が定理のとき、x が変数、T が項なら (T | x)Φ |
これらの証明は、本文第2節メタ定理1、メタ定理2の証明と全く同様なので省略します。なお、(A3-11)
の事実があるため、多くの教科書では始めから ( 代 入 ) を推論規則から落としています。
ところがこれに対し、同節メタ定理3に対応する ( 増 ) の導出のような主張は成り立ちません。
なぜなら、自然推論で基本的だった推論規則 ( 仮 定 ) を導くとき、始式から ( 左 増 ) を本質的に用いていますし、また (LJ )
における ( 右 増 ) は ^ に関する消去規則そのものですから、やはり他から導出することはできないからです。
一方、同節メタ定理4に対応する次の性質:
Gentzenの基本定理(LJ )又は(LK)における推論規則の全部又は ( 増 ) , ( 減 ) , ( 換 ) をすべて含む一部のみを推論規則に採用した理論では、推論規則 ( 切 断 ) は導出可能である。
は成立します。ただしその証明は同節メタ定理4の証明とはかなり違います。
なぜなら、自然推論の場合には、( 増 ) 以外の推論規則を適用すると、仮定は減りこそすれ増えることがなく、このことを証明で本質的に用いたのですが、(LJ )
や (LK)
ではこの事実そのものが成り立たないからです。
Gentzen
の基本定理の証明に先立って、若干の言葉の定義と準備をしておきましょう。
上で挙げた (LK )
又は (LJ )
の推論規則において、命題列 Γ , Δ , Θ , Λ , Σ , Π , Ξ の部分をすべて消し去ったとき、下段に残る命題列をその推論規則の主部、上段に残る命題列をその推論規則の副部とよぶことにします。
また、(" 右) と ($ 左) のところに出てくる変数 x をこれらの推論規則の固有変数とよび、また ( 切 断 ) の上段の副部のことをこの推論規則の固有部分ともよぶことにします。
ここで、(LK )
及び (LJ )
の推論規則には、Gentzen
の基本定理の証明において本質的な、次の性質があることを確かめておきましょう:
(A3-12) |
s を任意の論理記号とする。上記一覧表の推論規則 (s 左) の任意の一つを選んで λ と書き、推論規則 (s 右) の任意の一つを選んで ρ と書くことにする。このとき、λ と ρ の下段同士にこれらの主部を固有部分とする ( 切 断 ) を適用して得られるsequentは、λ と ρ の上段に出てくる sequent同士にこれらの副部を固有部分とする ( 切 断 ) と、( 換 ) を(更に λ 又は ρ が固有変数を持つときはこれらに加えて ( 代 入 ) を)それぞれ何回か適用することによっても得られる。 |
言葉で書くとややこしいですが、具体的に確かめてみることにしましょう。
まず s が論理記号 Ù の場合を考えます。
このとき λ は (Ù 左) の2つある中から選ぶことになりますが、どちらでも同じですから左側の方を選ぶことにします。一方、ρ は (Ù 右) です。
これらの下段のsequent
は ,
P Ù Q ® Δ ® P Ù Q,
Π Ù Qsequent
, Γ
Δ® Π,
一方 λ と ρ の上段のsequent
は ,
P ® Δ ® P,
Π ® Q,
Πsequent
に副部 P を固有部分とする ( 切 断 ) を適用すれば、下段のときと同じsequent
, Γ
Δ® Π,
λ として (Ù 左) の右側を選んだ場合でも同様です(ただし上段の方は副部として Q を含む2つのsequent
に ( 切 断 ) を適用します)。
次に s が論理記号 Ú の場合を考えます。
これの推論規則は Ù のそれと完全に左右対称で、上の証明も左右対称ですから、この場合も成り立つことがわかります。
次に s が論理記号 Þ である場合を考えます。
この場合、λ は (Þ 左) 、ρ は (Þ 右) です。
これらの下段のsequent
は , Θ, P
ΛÞ Q ® Δ, ® P Þ Q,
Π Þ Qsequent
, Γ, Θ
Λ® Π, Δ,
一方 λ と ρ の上段のsequent
は ® P,
Δ,
Q ® Λ, P
Π® Q, sequent
に副部 P を固有部分とする ( 切 断 ) を適用すれば , Σ
Π® Δ, Q, , Γ
Δ® Q, Π, sequent
に副部 Q を固有部分とする ( 切 断 ) を適用することにより、下段のときと同じsequent
, Γ, Θ
Λ® Π, Δ,
次に s が論理記号 Ø の場合を考えます。
この場合、λ は (Ø 左) 、ρ は (Ø 右) です。
これらの下段のsequent
は ,
Ø P ® Δ ® Ø P,
ΠØ Psequent
, Γ
Δ® Π,
一方 λ と ρ の上段のsequent
は ® P,
Δ,
P ® Πsequent
に副部 P を固有部分とする ( 切 断 ) を適用することにより , Σ
Π® Δ, sequent
, Γ
Δ® Π,
次に s が量化記号 " の場合を考えます。
この場合、λ は (" 左) 、ρ は (" 右) です。
これらの下段のsequent
は ,
"xP ® Δ ® "xP,
Π"xPsequent
, Γ
Δ® Π,
一方 λ と ρ の上段のsequent
は , (T | x)
P ® Δ ® P,
Πsequent
は固有変数 x を持つ、すなわち Σ と Π は固有変数 x を含みません。従ってこの2番目のsequent
に ( 代 入 ) を適用すれば ® (T | x)P,
Πsequent
に副部 (T | x)
Psequent
, Γ
Δ® Π,
最後に s が量化記号 $ の場合を考えます。
これの推論規則は " のそれと完全に左右対称で、上の証明も左右対称ですから、この場合も成り立つことがわかります。
これですべての論理記号に対する確認が終わったので、(A3-12)
が成り立つことが確かめられました。
さて、以上の準備のもとでGentzen
の基本定理を証明します。
一般に、推論規則の上段は1個以上のsequent
から成りますが、その第 i 番目のsequent
の左辺の副部を sequent
の左辺の主部を α 、右辺の主部を β と書けば、この推論規則の上段第 i 番目のsequent
は一般に { Γi , αi }
® { βi , Δi }sequent
は { Γ, α }
® { β, Δ }{ Σ }
sequent
の分離表示とよぶことにしましょう。
さて、上記の表を眺めると、Þ 左) 以外のすべて)。これを第1種の推論規則とよぶことにしましょう。
一方、Þ 左) )。これを第2種の推論規則とよぶことにしましょう。
次に、命題 R を1個以上並べて得られる命題列を一般に #
#
sequent
が定理ならば、これに ( 減 ) と ( 換 ) を何回かほどこせば、このsequent
の #
sequent
が定理として得られます。
ゆえに、(LK )
又は (LJ )
の ( 減 ) と ( 換 ) を推論規則に持つ推論体系では、( 切 断 ) を推論規則に採用することと、次の ( 混 ):
(A3-13) |
Γ{ R#, Δ } { Θ, R# }Λ |
|
を推論規則に採用することは同じことです。
以下、上段で ® { R#, Δ }
sequent
を Φ と略記し、{ Θ, R# }
® Λsequent
を Ψ と略記することにします。また、上段で #
また一般に、命題列 Σ から (A3-13)
の固有部分の構成要素である R をすべて取り除いて得られる命題列を *
*
*
ところで既に注意したように、( 代 入 ) はメタ定理として他の推論規則から導出できます。
従ってGentzen
の基本定理を証明するには、(LK )
又は (LJ )
の推論規則のうち、少なくとも ( 増 ) と ( 減 ) と ( 換 ) は推論規則に採用し、( 切 断 ) と ( 混 ) と ( 代 入 ) は推論規則に採用しないという推論体系において (A3-13)
の推論図式が導出できること、すなわち Φ と Ψ が証明可能なら , Θ
Λ ® Δ,
さて、(A3-13)
の ( 混 ) の固有部分の構成要素 R の中に登場する論理記号の個数 n (同じ記号でも場所が違えば別として数える)を、この ( 混 ) の次数とよぶことにします。
また、(A3-13)
の上段のsequent
Φ と Ψ が共に証明されているとき、それぞれの証明文 P と Q が存在しますが、必要ならば、証明文を Φ 又は Ψ までで“打ち切る”ことにより、これらのsequent
は証明文の最後に書かれていると仮定することができます。
ここで P と Q の長さ(すなわち証明文を構成するsequent
の個数)の和を k とするとき、この ( 混 ) は階数が k 以下であるということにします。なお、ある < k
以下、(A3-13)
の上段 Φ と Ψ が共に証明可能で (A3-13)
の次数が n 、階数が k 以下のとき、(A3-13)
の下段が定理になることを、まず次数 n に関する帰納法で、更に同じ n の中では k に関する帰納法で証明します。
言い換えると、上段のsequent
が共に証明可能で、次数が n 未満、又は次数が n で階数が k 未満であるような ( 混 ) の下段のsequent
は必ず証明可能であると仮定して、(A3-13)
の下段のsequent
が定理になることを証明します。
さて、まず Φ が始式である場合を考えます。この場合、Γ は R で、Δ は空ですから、( 混 ) の下段 , Θ
Λ ® Δ, ,
Θ ® Λ
対称性により、Ψ が始式である場合についても同様です。
従って、あとは Φ と Ψ が共に、ある推論規則を適用して得られた場合を考えれば十分です。
( CASE 1 )
最初に、Φ がある推論規則 (A)
を適用して得られたsequent
で、(A3-13)
の固有部分 #
(A)
の主部が重ならない場合を考えます。
ここで、 また、 ここで、 この場合は 以上により、あとは Φ が ここでも そこで、 そこで ここで また、 以上により、 さて、 また、ある証明可能な 特に、直観主義論理の自然推論で証明可能な、ある(A)
の上段の各sequent
{ Γi , αi }
® { βi , Δi }{ Γ', α }
® { β, Δ' }{ β, Δ' }
{ R#, Δ }
#
と重ならないので Δ に含まれ、従って #
また (LJ )
の場合について若干補足しておきます。
Φ の右辺である { R#, Δ }
{ β, Δ' }
*
しかも (A)
が第1種なら、すべての i に対して *
また (A)
が第2種なら、ある1つの i に対して *
(A)
が (" 右) か ($ 左) の場合は、(A)
の固有変数 x を P にも Θ にも Λ にも現れない変数 z に退避変換する、すなわち (z | x)
Φi(z | x)
Pi(z | x)
Φi(z | x)
Φi(A)
を適用すると、置き換えなかった場合と同じsequent
Φ が得られます。
{ Γi , αi }
® { βi , Δi }{ Θ, R# }
® Λ#
{ Γi , Θ, αi }
® { βi , Δi*, Λ }
また *
{ Γi , αi }
® { βi , Δi* }(A)
が第1種のときは
なお、いずれの場合も、(A)
が (" 右) か ($ 左) の場合は *
ゆえに、必要なら各 (A)
を適用し、必要なら ( 減 ) を何回か適用すれば { Γ', Θ, α }
® { β, Δ'*, Λ }{ Γ', α }
{ β, Δ'* }
#
(A3-13)
下段の , Θ
Λ® Δ, ( CASE 2 )
次に、Ψ がある推論規則 (B)
を適用して得られ、(A3-13)
の固有部分 #
(B)
の主部が重ならない場合を考えます。
( CASE 1 )
の議論を左右すべて入れ替えて適用すれば、(LK )
の場合については左右が完全に対称ですから、この場合も成り立つことがわかります。
一方、(LJ )
の場合を考えるために、( CASE 1 )
において (LJ )
とは逆に、「sequent
の左辺は高々1個の命題からなる」という制約条件を付けて考えることにすると、Ψ の左辺である { Θ, R# }
( CASE 1 )
の議論がこの場合にも適用可能であることがわかります。
(A)
を適用して得られ、(A3-13)
の固有部分 #
(A)
の主部が重なり、かつ Ψ が (B)
を適用して得られ、(A3-13)
の固有部分 #
(B)
の主部が重なる場合を考えれば十分であることがわかりました。
そこで、推論規則 (A)
と (B)
の種類によって場合分けを行いますが、(A)
の主部は (A3-13)
の固有部分と重なるので Φ の右辺にあり、従って (A)
は必ず (〜 右) と書かれた推論規則に限られ、同様に (B)
は必ず (〜 左) と書かれた推論規則に限られることに注意します。
( CASE 3 )
まず (A)
が ( 増 右 ) , ( 減 右 ) , ( 換 右 ) の場合は、(A)
の下段のsequent
Φ が ® { R# , Δ }
(A)
の主部に含まれますから、(A)
の上段のsequent
® { R
°, Δ }°
もし ° ® { Δ }
(A3-13)
下段の , Θ
Λ® Δ,
また、もし °{ Θ, R# }
® Λ°#
ゆえに、帰納法の仮定により、この ( 混 ) の下段 , Θ
Λ® Δ, sequent
は (A3-13)
の下段に他なりません。
( CASE 4 )
上と全く対称的な議論により、(B)
が ( 増 左 ) , ( 減 左 ) , ( 換 左 ) のいずれかである場合には全く同様に証明できます。
( CASE 5 )
従って、あと残るのは、(A)
と (B)
が共に論理記号に関する推論規則である場合のみとなります。しかも論理記号に関する推論規則の形から明らかなように、(A)
と (B)
は同一の論理記号 s に対する (s 右) と (s 左) でなければなりません。
(A)
の上段の各sequent
, αi
Δi® βi , , α
Δ'® β, { β, Δ' }
{ R#, Δ }
(A3-13)
の固有部分 #
*
また、(B)
の上段の各sequent
, γj
Λj® δj , , γ
Λ'® δ, { Θ', γ }
{ Θ, R# }
(A3-13)
の固有部分 #
*
一方、
また、(LJ )
の場合について若干補足しておきます。
Φ の右辺である { R#, Δ }
{ β, Δ' }
, αi , Θ'*
Λ'® βi , Δi*, *, Γi , αi
Λ'® βi , Δi*, (LJ )
のときは、このケースは生じないことに注意します。
また *
(LJ )
の場合は , αi
® βi , Δi*(LK )
の場合はこれに ( 増 ) と ( 換 ) を何回か適用して得られる *, Γi , αi
Λ'® βi , Δi*,
対称的に、, Θj*, γj
Λj® Δ'*, δj , , Θj*, γj
® δj , Λj , Δ'*
また *
*, γj
Λj® δj , , Θj*, γj
® δj , Λj , Δ'*(A)
や (B)
の副部を固有部分とする ( 切 断 ) を適用すると、これらの ( 切 断 ) は ( 混 ) の一種であり、その固有部分を構成する命題は、(A)
や (B)
の副部なので、その次数は (A)
や (B)
の主部を構成する R の次数である n より小さい値を持っています。
ゆえに帰納法の仮定により、これらの ( 切 断 ) を適用して得られたsequent
はすべて証明可能です。
(LK )
の場合、(A)
の下段は { Θ'*#, Γ' }
® R, { Δ'*, Λ' # }(B)
の下段は { Γ' #, Θ'* }, R
® { Λ', Δ'*# }#
は、同じ命題列を1回以上繰り返し並べた命題列を表します。
ゆえに、これらに (A)
と (B)
の主部 R を固有部分とする ( 切 断 ) を適用した { Θ'*#, Γ', Γ' #, Θ'* }
® { Δ'*, Λ' #, Λ', Δ'*# }(A3-12)
により (A)
や (B)
の副部を固有部分とする ( 切 断 ) を適用すれば得られるので、前段落の結果により証明可能ですが、このsequent
に ( 換 ) と ( 減 ) を何回か適用して得られる , Θ'*
Λ'® Δ'*, , Θ
Λ® Δ, (LJ )
の場合、(A)
の下段は、α と *
® R(B)
の下段は、δ と *
{ Γ' #, Θ'* },
R ® Λ'
ゆえに、これらに (A)
と (B)
の主部 R を固有部分とする ( 切 断 ) を適用した { Γ', Γ' #, Θ'* }
® Λ'(A3-12)
により (A)
や (B)
の副部を固有部分とする ( 切 断 ) を適用すれば得られるので、前々段落の結果により証明可能ですが、これに ( 換 ) と ( 減 ) を何回か適用して得られる , Θ'*
® Λ', Θ
Λ® Δ, Gentzen
の基本定理は証明されました。
Gentzen
の基本定理は、構造に関する推論規則が導出可能であるということを意味する多くのメタ定理(本文第2節メタ定理1〜4参照)の一つに過ぎないように見えますが、このGentzen
の基本定理の意味するところはそれらとは異なり、かなり強力です。
なぜなら、(LK)
及び (LJ )
においては、( 切 断 ) 以外の推論規則は、下段が上段より“複雑”になる一方であり、( 切 断 ) だけがその例外になっているからです。Gentzen
の基本定理によれば、証明可能な命題は ( 切 断 ) を用いなくても証明できる、すなわち複雑になる一方の証明が存在するということです。
Gentzen
の基本定理の応用例として、(LK)
でも (LJ )
でも矛盾、すなわち ® の両辺とも空であるようなsequent
は証明できないことがわかります。
実際、もし ® が証明可能であるとすると、Gentzen
の基本定理により、これは ( 切 断 ) なしで証明できるはずですが、( 切 断 ) 以外の推論規則の下段のsequent
の両辺が共に空になることはありえないからです。
sequent
Φ に現れる論理記号の全体を 1¼, 1¼,
実際、Gentzen
の基本定理により、( 切 断 ) を使わない Φ の証明 P が存在します。なお、必要ならば、P から使われないsequent
をすべて取り除いておくものとします。
ところで一般に、論理記号 s に関する推論規則を用いると、その結果得られるsequent
には必ず s が含まれることが上記の一覧表から明らかにわかります。
一方、( 切 断 ) 以外の推論規則では、その上段のどのsequent
に出てくる論理記号もすべて下段のsequent
に出てくるので、結局 P で論理記号 s に関する推論規則を用いていれば、Φ には s が含まれていることがわかります。
sequent
Φ に現れる論理記号の全体を 1¼, (LJ )
において、( 切 断 ) 以外の構造に関する推論規則と、これらの論理記号の推論規則、すなわち (si 右) と (si 左) のみによって証明できます。
一方、直観主義論理では、構造に関する推論規則を用いると、(s 導入) と (s 消去) のペアは (s 右) と (s 左) のペアと同等なのでした。
ところが、本文第2節メタ定理1〜4によれば、自然推論では ( 換 ) と ( 仮 定 ) 以外の構造に関する推論規則はすべて導出可能なので、直観主義論理の自然推論で証明可能なsequent
は、そこに現れる論理記号に関する自然推論の推論規則と ( 換 ) , ( 仮 定 ) のみによって証明できることがわかりました。