Gödel-Rosserの不完全性定理
付録5で定義したHeyting
算術より強い無矛盾な理論では、証明することも反証することも不可能であるような閉命題(=変数を持たない命題)が存在する、というのが有名なGödel
の不完全性定理です。
以下で、Gödel
により初めて証明され、後にRosser
により改良されたこのメタ定理を証明します。
まず任意に与えられた理論 T で規定された文字、文字列、sequent
、証明文といった概念を、すべて自然数(メタ言語における自然数の定義は付録1参照)によって表現する方法を考えましょう。なお、メタ言語における自然数は、太文字の 0 , 1 , 2 等を用いて表現することにします。
理論 T で用いる記号の全体を 1¼, 12¼ と表すことにします。
ここで、各文字に対し、次の対応表によって正整数を対応させます:
文 字 s 1s 2¼sM xi £j コード 12¼M M + 2i- 1M + 2j
このような対応により、理論 T のすべての文字とすべての正整数との間に一対一の対応が付きます。そこで、以下理論 T の各文字を、対応する正整数と同一視することにします。
また一方で、付録5 (A5-72)
の手法を用いれば、正整数からなる有限列の全体を正整数の全体と1対1に対応付けることができます。各文字を正整数と同一視する立場では、各文字列は正整数の有限列と同一視できますから、これも各正整数との間に一対一対応がつくことになります。そこで、各文字列も、それに対応する正整数と同一視することにします。
以下同様にすれば、一般に N 階の文字列(付録1参照)の全体を正整数の全体と1対1に対応付けることができ、従って、N を指定するごとに、N 階の各文字列を、対応する正整数と同一視することができます。
一般に超数学の議論は、理論の無矛盾性等を議論するようになると、超数学でどのような推論が許されるかということ自体が問題になることがあります。
そこで、上記のように各 N 階の文字列をすべて正整数とみなすことによって、超数学の議論をすべて前節で導入したHeyting
算術内部での推論に限定することにした立場を(狭義の)有限の立場とよぶことにします。
前節で示したように、Heyting
算術では帰納的に定義された関数はすべて扱うことができますし、更には自然数からなる有限列や、自然数の有限な範囲で定義された関数、あるいはその合成関数なども扱えるので、かなり豊富な議論を展開することができます。
例えば、付録1で導入した [i]
[ j : i]
| A |
* B{ A }
Heyting
算術における諸関数と同一のものとみなすことができます。
これ以外でも、例えば付録1の (A1-2)
で定義される関数 Heyting
算術で扱えるのか自明でない関数もありますが、その定義式 (A1-2b)
に現れる pd
を「定義域を 0 以上 | A |
(A5-87)
以下で示したような、「k における値を、k 未満の自然数における定義値をすべて用いて定義する」タイプの定義式に帰着されるので、Heyting
算術の範疇(すなわち有限の立場)で扱えることがわかります。
従って、本文第1節〜第5節の超数学的な推論の部分はもちろんのこと、付録1〜付録4の議論、特に付録3で証明したGentzen
の基本定理も有限の立場における推論とみなすことができます。
さて、本稿ではHeyting
算術より強い任意の理論 T を考察の対象にし、T における定項のゼロを 0 と書き、n の次の自然数 s
n
(A6-1a)「 |
(A6-1b)「n |
すなわち、0 の左に1変項関数記号 s
を n 個並べて得られる項を表します。これを自然数 n に対応する数字とよぶことにしましょう。また 1「1 , 2「2 (以下同様)と略記します。
以下、理論 T の公理群をすべてカンマで区切って並べたものを A と書くとき、,
B ® Psequent
が T で証明可能であることを N(
「n「)
このとき自然数 m , n に対して
(A6-2a)l |
(A6-2b)├ 「m |
が成り立つことを証明しましょう。
実際、付録5 (A5-10n)
により £ m'├ l £ m Ú l = m'(A6-1b)
により £ 「m + 1「├ l £ 「m「 Ú l = 「m + 1「(A6-2a)
が得られます。
また (A6-2b)
は、 + 0 º m + 0「 = 「m「 = 「m「 + 0(A6-1a)
により n が 0 の場合は明らかです。
次に、(A6-2b)
が n について成り立つと仮定すると、 + (n
+ 1) º (m
+ n) + 1 + (n
「 + 1) = 「(m
+ n) + 1「 ですから、これと (A6-1)
の n に + n(m
+ n) + 1「 = 「m + n「' + (n
「 + 1) = 「m + n「' が得られます。
一方、(A6-2b)
により├ 「m + n「' = (「m「
' となりますから、これと├ + 「n「)(「m「
' + 「n「) = 「m「 + 「n「' により├ 「m + (n
「 + 1) = 「m「 + 「n「' が得られます。
ゆえにこれと (A6-1b)
により├ 「m + (n
「 + 1) = 「m「 + 「n + 1「 が得られ、n に関する帰納法により (A6-2b)
は証明されました。
さて、自然数に対する演算 (m ,
¼, n)
(A6-3)├ 「f (m , |
を満たす、m ,¼, n 以外の変数を持たない T の(一般には付録5で行ったような ι
量化記号を用いてよいことにした場合の)N
項 (m ,
¼, n)(m ,
¼, n)
また、自然数に対する性質 (m ,
¼, n)¼, n 以外の変数を持たない T の命題 (m ,
¼, n)(m ,
¼, n)
(A6-4a) ├ P(m , |
(A6-4b) P (m ,が成り立つとき、├ P (「m「 ,「n「 ) |
(A6-4c) P (m ,が成り立たないとき、├ (「m「 ,「n「 ) |
このとき、次が成立します:
(A6-5a) | 特定の引数の値を与える演算 (m , |
(A6-5b) | 定数値を与える演算 (m , |
(A6-5c) | 次の自然数を与える演算 (n) |
(A6-5d) | 演算 (k, m , (k, m , (i , (i , (k, m , (i , (i , (g(i , |
(A6-5e) | 演算 (m , (m , (m , (m , (m , (m , (m , (m , (m , (m , |
(A6-5f) | 命題 (m , (m , (m , ι k ( (R(m , |
(A6-5g) | 性質 |
(A6-5h) | 性質 (k, m , (k, m , (i , (i , (k, m , (i , (i , ( f(i , |
(A6-5i) | 性質 (m , (m , (m , (m , |
(A6-5j) | 性質 (i, m , (i, m , (i, m , (i, m , : R(i, m , : R(i, m , |
実際、(A6-5a),(A6-5b)
は定義から明らかです。
また (A6-5c)
は (A6-1b)
から明らかです。
また (A6-5d)
は、 :º g(i ,
¼, j) :º h(i ,
¼, j, m ,¼, n) = f(k, m ,
¼, n)
ゆえに = g(「i「 ,
¼, 「j「) = f(「k「, 「m「 ,
¼, 「n「) = f(g(「i「 ,
¼, 「j「), 「m「 ,¼, 「n「)
また (A6-5e)
は、 :º h(m ,
¼, n, i) = h(「m「 ,
¼, 「n「, 「i「)
まず i が 0 なら、 = f(m ,
¼, n) = f(「m「 ,
¼, 「n「)(「m「 ,
¼, 「n「, 0) = f(「m「 ,¼, 「n「) = h(「m「 ,
¼, 「n「, 0)
次に i で成り立つと仮定し、 :º h(m ,
¼, n, i + 1) = g(m ,
¼, n, i, l) = g(「m「 ,
¼, 「n「, 「i「, 「l「)
一方、帰納法の仮定から = h(「m「 ,
¼, 「n「, 「i「) = g(「m「 ,
¼, 「n「, 「i「, h(「m「 ,¼, 「n「, 「i「))
他方、(「m「 ,
¼, 「n「, 「i「' ) = g(「m「 ,¼, 「n「, 「i「, h(「m「 ,¼, 「n「, 「i「))
ゆえにこれらと (A6-1b)
の n に i を代入した式により、 = h(「m「 ,
¼, 「n「, 「i + 1「)
また (A6-5f)
は、 :º f(m ,
¼, n)(A6-5f)
の最後の項(この項の定義式で ι
量化記号を使ってよいことの証明に、条件 (A6-4a)
が必要となることに注意します。)を (m ,
¼, n)
まず (m ,
¼, n)1 なので 1 であり、しかも仮定により (「m「 ,
¼, 「n「)(「m「 ,
¼, 「n「) = 1 = f(「m「 ,
¼, 「n「)
他方、(m ,
¼, n)0 なので 0 であり、しかも仮定により Ø R(「m「 ,
¼, 「n「)(「m「 ,
¼, 「n「) = 0 = f(「m「 ,
¼, 「n「)
また (A6-5g)
は、いずれも成り立つか成り立たないかどちらかであることは明らかで、また前節 (A5-7d),(A5-7e),(A5-8d)
により (A6-4a)
も成り立つことがわかります。
また明らかに = n = 「n「
また < n + k + 1 = 「m + k + 1「(A6-1b)
と (A5-2b)
により = 「m「 + 「k「' < 「n「
また £ n + k = 「m + k「(A6-2b)
により = 「m「 + 「k「(A5-9)
により £ 「n「
また (A6-5h)
は、 :º f(i ,
¼, j) = f(「i「 ,
¼, 「j「)(i ,
¼, j, m ,¼, n) (k, m ,
¼, n)(「k「, 「i「 ,
¼, 「j「)Ø P(「k「, 「i「 ,
¼, 「j「)
これは更に、それぞれの場合に ( f(「i「 ,
¼, 「j「), 「m「 ,¼, 「n「)Ø P( f(「i「 ,
¼, 「j「), 「m「 ,¼, 「n「)(A6-4a)
の成立は明らかです。
また (A6-5i)
ですが、以下 (「m「 ,
¼, 「n「)(「m「 ,
¼, 「n「)(a)
により (A6-4a)
が成り立つことがわかります。
さて、「P かつ Q」が成り立てば、P も Q も成り立つので Ù QØ PØ QØ (P
Ù Q)
また、「P 又は Q」が成り立てば、P か Q のいずれかが成り立つので Ú QØ PØ QØ (P
Ú Q)
また、「P ならば Q」について P が成り立つ場合と成り立たない場合に分けて考えると、後者の場合、「P ならば Q」は常に成り立ち、一方 Ø P Þ Q
一方前者の場合は「P ならば Q」の成否は Q の成否と同じことで、その成否に応じてそれぞれ Ø Q Þ QØ (P
Þ Q)
また「P でない」については、「P ならば Q」で Q が「矛盾する」の場合を考えれば明らかです。
最後に (A6-5j)
ですが、まず前節 (A5-11f),(A5-11g)
により "i £ k : R(i, m ,
¼, n)$i £ k : R(i, m ,
¼, n)(A6-4a)
を満たすことがわかります。
また「すべての £ k(i, m ,
¼, n) £ k(「i「, 「m「 ,
¼, 「n「)(A6-2a)
により、"i £ 「k「 : R(i, 「m「 ,
¼, 「n「)
また「すべての £ k(i, m ,
¼, n)(i, m ,
¼, n) £ kØ R(「i「, 「m「 ,
¼, 「n「) £ 「k「$i £ 「k「 :
Ø R(i, 「m「 ,¼, 「n「)Ø "i £ 「k「 : R(i, 「m「 ,
¼, 「n「)
また「ある £ k(i, m ,
¼, n) £ 「k「$i £ 「k「 : R(i, 「m「 ,
¼, 「n「)
また「ある £ k(i, m ,
¼, n) £ k(i, m ,
¼, n)Ø R(「i「, 「m「 ,
¼, 「n「)(A6-2a)
により "i £ 「k「 :
Ø R(i, 「m「 ,¼, 「n「)Ø $i £ 「k「 : R(i, 「m「 ,
¼, 「n「)
さて、ここで (A6-5)
で列挙した次の方法:
(A6-6a) | 特定の引数の値を与える演算 (m , |
(A6-6b) | 定数値を与える演算 (m , |
(A6-6c) | 次の自然数を与える演算 (n) |
(A6-6d) | 演算 (k, m , (i , (i , |
(A6-6e) | 演算 (m , (m , (m , (m , |
(A6-6f) | 命題 (m , (m , |
(A6-6g) | 性質 |
(A6-6h) | 性質 (k, m , (i , (i , |
(A6-6i) | 性質 (m , (m , |
(A6-6j) | 性質 (i, m , (i, m , (i, m , |
のみを組み合わせて得られる演算 (m ,
¼, n)(A6-6)
の方法のみを組み合わせて作られる性質 (m ,
¼, n)
帰納的性質 (m ,
¼, n)Heyting
算術における(メタ)命題とみなすことができますから、これをそっくりそのまま理論 T における命題 (m ,
¼, n)(A6-5)
のそれぞれを見れば明らかなように、そこで実際に構成している (m ,
¼, n)(m ,
¼, n)
(A6-7a) | 帰納的演算 (m , Heyting算術におけるメタ項だと思って T の中に翻訳して得られる項 (m , |
(A6-7b) | 帰納的命題 (m , Heyting算術におけるメタ命題だと思って T の中に翻訳して得られる命題 (m , |
ということがわかります。
自然数の和 + n - nåi £ n f(i, j ,
¼, k)Õi £ n f(i, j ,
¼, k)max{ i
£ k | P (i) } / n[i]
| n |
{ k }
* n = n < n £ n |
n
また、付録1における文字列 A が論理式であるかどうかの判定において、A (あるいは A と T ) に現れない k 個の変数を任意に選ぶ箇所がありますが、A (あるいは * T+i(
1 £ i £ k )(A6-6)
の組み合わせで構成できます。
また、ある文字列の中の一文字を別の文字に置き換える操作も明らかに (A6-6)
の組み合わせで構成できるので、(k)
また、論理式 A に対して A の標準的な構成手続き C を対応させる演算も明らかに算術表現可能で、しかも付録1 (A1-16)
の、論理式 A の変数 x に論理式 T を代入する操作も帰納的であることがわかります。
以上の事実に注意して付録1の (A1-13)
以降の議論を眺めれば、「2階の文字列 S はsequent
になっている」とか「3階の文字列 P は証明文になっている」とか「1階の文字列 P , 1¼, sequent
“ 1 ,
¼,
An ® P
そこで、自然数 n , p に関する性質:
n はある命題と、p はある証明文とそれぞれ同一視できる正整数で、n と同一視される命題のすべての変数に数字 「n「 を代入した命題が、p と同一視される証明文の中で証明されている。
を A(n, p)
と書くことにすると、この性質も帰納的であり、従ってこれをHeyting
算術におけるメタ命題だと思って理論 T 内に翻訳して得られる命題を (n, p)
(A6-7b)
により A(n, p)
は (n, p)
そこで "p :
Ø A(n, p)( p)
:º Ø A(「g「, p)
このとき、g と同一視される命題の変数に自分自身に対応する数字 "p :
Ø A(「g「, p)"p G( p)
不完全性定理(Gödel)理論 T には、次の性質を持つ1変項命題G が存在する:( p)
(G1)すべての自然数 p に対して├ G 、すなわち(「p「)├ G ,(0)├ G ,(1)├ G (2),¼である。
(G2)├ ならば T は矛盾する。"p G( p)
実際、任意に自然数 p を取ります。
もし p が命題 "p G( p)
"p G( p)
" 消去) を適用して(「p「)
また、そうでない場合は、( g, p)
Ø A(「g「, 「p「)
(「p「)
ゆえに、いずれにせよ(「p「)
(G1)
は証明されました。
次に、"p G( p)
( g, p)
ゆえに(「g「, 「p「)
"p G( p)
"p :
Ø A(「g「, p)" 消去) によりØ A(「g「, 「p「)
(G2)
も証明されました。
この定理は、Heyting
算術より強い無矛盾な理論では、すべての数字に対して証明されるにもかかわらず、全称記号 " で束縛した命題は証明できないような命題が存在することを意味しています。
ただし、この命題(Gödel
命題) "p G( p)
w-
無矛盾という性質、すなわち「一般に、上記の (G1)
の性質を満たす命題 ( p)
Ø "p G( p)
しかし、命題の構成の仕方に一工夫すると、理論 T のw-
無矛盾を仮定しなくても、単に無矛盾であると仮定するだけで、決定不能、すなわち証明も反証もできないような命題を構成することができます。
実際、自然数 n , p に関する性質:
n はある命題と、p はある証明文とそれぞれ同一視できる正整数で、n と同一視される命題の否定命題のすべての変数に数字 「n「 を代入した命題が、p と同一視される証明文の中で証明されている。
を B(n, p)
と書くことにすると、この性質も帰納的であり、従ってこれをHeyting
算術におけるメタ命題だと思って理論 T 内に翻訳して得られる命題を (n, p)
(A6-7b)
により B(n, p)
は (n, p)
そこで、"p ( A(n, p)
Þ $q £ p B(n, q) )( p)
:º A(「r「, p) Þ $q £ p B(「r「, q)
このとき、r と同一視される命題の変数に自分自身に対応する数字 "p R( p)
不完全性定理(Rosser)理論 T には、次の性質を持つ1変項命題R が存在する:( p)
(R1)すべての自然数 p に対して├ R すなわち(「p「)├ R ,(0)├ R ,(1)├ R (2),¼である。
(R2)├ ならば T は矛盾する。"p R( p)
(R3)├ ならば T は矛盾する。Ø"p R( p)
実際、任意に自然数 p を取ります。もし p が命題 "p R( p)
"p R( p)
" 消去) により(「p「)
また、そうでない場合は、(r, p)
Ø A(「r「, 「p「)
(「p「)
º A(「r「, 「p「) Þ $q £ 「p「 B(「r「, q)(「p「)
ゆえに、いずれにせよ(「p「)
(R1)
は証明されました。
次に、"p R( p)
(r, p)
(「r「, 「p「)
ここで、0 , 1 ,¼, p のいずれかが Ø "p R( p)
Ø "p R( p)
また、そうでない場合は、(r,
0)(r,
1)¼, (r, p)
Ø B(「r「, 「
0「)Ø B(「r「, 「
1「)¼, Ø B(「r「, 「p「)
ところが (A6-2a)
により "q £ 「p「 :
Ø B(「r「, q)Ø $q £ 「p「 : B(「r「, q)
(「r「, 「p「)
Ø R(「p「)
"p R( p)
" 消去) により(「p「)
すなわちいずれの場合でも T は矛盾するので (R2)
は証明されました。
最後に、Ø "p R( p)
(r, p)
(「r「, 「p「)
ここで、0 , 1 ,¼, p のいずれかが "p R( p)
"p R( p)
また、そうでない場合は、(r,
0)(r,
1)¼, (r, p)
Ø A(「r「, 「
0「)Ø A(「r「, 「
1「)¼, Ø A(「r「, 「p「)
従って (A6-2a)
により £ 「p「├ Ø A(「r「, p)
( p)
º A(「r「, p) Þ $q £ p B(「r「, q) £ 「p「├ R( p)
一方(「r「, 「p「)
$ 導入) により > 「p「├ $q £ p : B(「r「, q)
> 「p「├ R( p)
ゆえに £ 「p「 Ú p > 「p「Ú 消去) により├ R( p)
が得られ、(" 導入) により├ "p R( p)
となり、T は矛盾します。
すなわちいずれの場合でも T は矛盾するので (R3)
は証明されました。
このRosser
により改良された不完全性定理により、Heyting
算術より強い無矛盾な理論では、(排中律を仮定してもしなくても)証明も反証もできない決定不能な閉命題が必ず存在することがわかります。
さて、ここでGödel
命題 "p G( p)
"p G( p)
命題 "p G( p)
"p G( p)
( g, p)
でない”と言い換えることができます。
ゆえにこれを T の中の命題に翻訳すると、具体的な自然数 g は具体的な数字 "pA :
Ø (「g「, p)
"p G( p)
Gödel
命題というのは“自分は証明できない”ということを意味する命題だとみなすことができるわけです。
ところで、“T は無矛盾である”、すなわち“任意の証明文で ^ は証明されていない”という性質は、T の中に "p :
Ø A(「^「, p)Consis
と略記することにすれば、Gödel
の不完全性定理 (G2)
の対偶である“T が無矛盾なら "p G( p)
Consis
Þ "p G( p)
ゆえに、 Consis
Þ 消去) により"p G( p)
Gödel
の不完全性定理の (G2)
を用いると、T は矛盾することがわかります。すなわち次の結果が得られました:
第二不完全性定理(Gödel)理論 T において、自分自身の無矛盾性を内部に翻訳した命題Consisが証明できれば、T は矛盾する。
さて、一般に、帰納的な性質は、それを T の中に翻訳した命題によって算術表現されるのでした。
それでは、帰納的な性質 P を算術表現する命題は、いつでも P を T の中に翻訳した命題の代わりに使えるかというと、そうとは限りません。
例えば Gödel
の不完全性定理の証明に出てきた性質 (n, p)
(n, p)
(n, p)
*(n, p)
:º A(n, p) Ù "q £ p : Ø B(n, q)*(n, p)
(n, p)
実際、(n, p)
(「n「, 「p「)
ここで、0 £ q £ p(n, q)
*(「n「, 「p「)
他方、(n, q)
0 £ q £ pØ B(「n「, 「
0「)Ø B(「n「, 「
1「)¼, Ø B(「n「, 「p「)
(A6-2a)
により"q £ 「p「 :
Ø B(「n「, q)*(「n「, 「p「)
*(「n「, 「p「)
また (n, p)
Ø A(「n「, 「p「)
Ø A*(「n「, 「p「)
以上で、命題 *(n, p)
(n, p)
そこで、“理論 T は無矛盾である”という性質を T に翻訳した命題 "p :
Ø A(「^「, p)Consis
と略記したのに倣って、命題 A の部分を *
"p :
Ø A*(「^「, p)Consis*
と略記することにしましょう。
すると、Ø ^^ は反証可能ですから、命題 ^ が反証されている証明文と同一視される正整数を p とすれば、(
^, p)(「
^「, 「p「)
もし 0 , 1 ,¼, p のいずれかが ^ の証明文と同一視される正整数になっている場合は、そもそも ^ が証明されるので理論 T は矛盾し、任意の命題は証明可能ですから、特に Consis*
は証明可能です。
また、そうでない場合は、(
^, 0)(
^, 1)¼, (
^, p)Ø A(「
^「, 「0「)Ø A(「
^「, 「1「)¼, Ø A(「
^「, 「p「)
従って (A6-2a)
により £ 「p「├ Ø A(「
^「, p)*(「
^「, p) º A(「^「, p) Ù "q £ p : Ø B(「^「, q) £ 「p「├ Ø A*(「
^「, p)
一方(「
^「, 「p「)$ 導入) により > 「p「├ $q £ p : B(「
^「, q) > 「p「├ Ø A*(「
^「, p)
ゆえに £ 「p「 Ú p > 「p「Ú 消去) により├ "p :
すなわち Ø A*(「^「, p)Consis*
は、(Consis
の場合とは異なり)理論 T で証明できてしまうことがわかります。
以上の例はKreisel
によるもので、Kreisel
の注意とよばれています。