古典力学


2.中心力と質点の軌道

 本節では、力が中心力である場合の角運動量保存則と、力が中心からの距離のみの関数である場合について、質点の軌道などについて調べます。

 質点 s に働く力 Fs に平行、すなわち

(2-1)  s ´ F = 0

であるとき、これを中心力といいます。(1-12) により N = 0 ですから、(1-13) により

(2-2)  dL
—–
d
t
= 0

 すなわち角運動量は保存します:

(2-3)  s ´ p = L      ( 一定 )

 そこで、力の中心を通り、L に直交する平面を S とすると、S は時間に依存しませんが、

(2-4)  s · L = s · (s ´ p) = (s ´ s) · p = 0

ですから、力の中心を原点とする質点の位置ベクトルは L と直交し、したがって、質点は常に平面 S の中を運動することがわかります。このことから、この平面 S を、質点の軌道面とよびます。

 さてここで (2-3) の意味を考えてみましょう。質点が、時刻 t0s(t0) に、時刻 t1s(t1) にいるとして、t0 < t < t1 の間に質点の通る軌跡を C とします。また、原点から s(t0) へ結ぶ線分を C0s(t1) から原点へ結ぶ線分を C1 とします。
 C0 , C , C1 で囲まれる面を S と書けば、S = C0ÈCÈC1 なので、

(2-5)  ò t1

t
0
(s ´ p)dt = m ò t1

t
0
(s ´ v)dt = m òC s ´ ds = m òS s ´ ds = 2m òS dS

 ただし3番目の等号で C0 , C1 上では s // ds であることを使い、最後の等号で 「微分多様体」第27節 (27-48) を用いました。

 一方 s ´ p = L で、これは時間によらず一定ですから、

(2-6)  (t1 - t0)L = 2m òS dS

 これは、質点と原点を結ぶ線分が“掃く”面積が、面を掃くのに要した時間に比例することを示しています。これを面積速度一定の法則といいます。これは中心力の中で運動する場合はいつでも成り立つ性質です。

 次に、以上の条件に加えて、中心力 F が定常かつ等方的、すなわち力の大きさが、力の中心からの距離 |s| のみの関数である場合を考えます:

(2-7)  F = f(|s|)  s
—–
|s|

 このとき、f の原始関数を g 、すなわち g' = f とすれば、

(2-8)  grad g(|s|) = g'(|s|) grad |s| = f(|s|) s
—–
|s|
= F

 すなわちポテンシャル・エネルギー

(2-9)  U = - g(|s|)

が存在し、したがって (1-7) により、エネルギー保存則

(2-10)  p²
—–
2m
- g(|s|) = K + U = e      (一定)

が成り立ちます。さて、次に p ´ L というベクトルの時間微分をとると、

(2-11)  d
—–
 d
t
( p ´ L)
= dp
—–
d
t
´ L      ( ∵ (2-2) )

= F ´ (s ´ p)      ( (1-9),(2-3) )

= m f(|s|)  s
—–
|s|
´ (s ´ v)      ( (2-7),(1-8) )

= m f(|s|) s(s · v) - |sv
—————–
|s|

= m f(|s|){s (v · grad |s|) - |s|v}

= m f(|s|) æ
è
s d|s|
—–
 d
t
- |s| ds
—–
d
t
ö
ø

= - m f(|s|)|s d
—–
 d
t
 s
—–
|s|

 ここで F力の中心からの距離の2乗に反比例する場合、すなわち

(2-12)  f(r) = k
—–
r
²

の場合を考えてみます。この場合、g

(2-13)  g(r) = - k
—–
r

で与えられます。このとき (2-11) は、

(2-14)  d
—–
 d
t
æ
è
p ´ L + mk  s
—–
|s|
ö
ø
= 0

となるので、ある定ベクトル a によって

(2-15)  p ´ L + mk  s
—–
|s|
= a

となります。この aRunge-Lenz vector と呼びます。まず、(2-15)L = s ´ p との内積をとると、左辺は消えるので、

(2-16)  L · a = 0

すなわち a は軌道面に含まれることがわかります。また

(2-17)  | p ´ L= p²L² - ( p · L= p²L²      ( (2-3) )

(2-18)  s · ( p ´ L) = (s ´ p) · L = L²

ですから、(2-15) の両辺の長さの2乗をとると、

(2-19)  p²L² + 2mkL²
———
|s|
+ m²k² = a²

 ところで (2-10),(2-13) により

(2-20)  e = p²
—–
2m
+  k
—–
|s|

ですから、これと (2-19) により

(2-21)  a² - m²k² = 2mL² æ
è
p²
—–
2m
+  k
—–
|s|
ö
ø
= 2mL²e

 一方 (2-15)s の内積をとると、(2-18) により

(2-22)  L² + mk|s| = a · s

という時間を含まない式、言い換えると質点の軌跡の方程式が得られます。

 まず、e ¹ 0 の場合を考えてみましょう。(2-22) の両辺に 2me を乗じて (2-21) を使うと、

(2-23)  a² - m²k² + 2m²ek|s| = 2mea · s

 これは

(2-24)  |a - mes- (mk - me|s|)² = 0

と変形されますが、両辺を m²e² で割って移項し、開平すれば、

(2-25)   k
—–
e
- |s| = ± ½
½
 a
—–
me
- s ½
½

 ところで (2-20) により

(2-26)  e >  k
—–
|s|

が成り立っています。ゆえに、ke の符号によって、(2-25) の複号のいずれを採用するかが決まります。

 まず、k > 0 すなわち中心力が斥力の場合を考えます。(2-20) により e > 0 となりますから、(2-26) により (2-25) の左辺は負、従って複号はマイナスを採用することになり、この場合の (2-25)

(2-27)   k
—–
e
= |s| - ½
½
 a
—–
me
- s ½
½

となり、原点と a/(me) を焦点とする双曲線になりますが、(2-27) の左辺は正なので、2本の曲線のうち、原点から遠い方の曲線となります。

 次に k < 0 、すなわち中心力が引力の場合を考えます。この場合、さらに e の符号によって場合が分かれます。

 まず e > 0 ならば、(2-26) により (2-25) の左辺は負、従って複号はマイナスを採用することになり、この場合の (2-25) はやはり (2-27) となります。ただし今度は (2-27) の左辺は負なので、原点と a/(me) を焦点とする双曲線のうち、原点に近い方の曲線となります。

 また e < 0 ならば、(2-26) により (2-25) の左辺は正、従って複号はプラスを採用することになり、この場合の (2-25)

(2-28)   k
—–
e
= |s| + ½
½
 a
—–
me
- s ½
½

となります。これは、原点と a/(me) を焦点とする楕円になります。

 最後に、除外していた e = 0 の場合について考察します。この場合、(2-20) により k < 0 すなわち中心力は引力でなければなりません。また、(2-21) の左辺が 0 となるので

(2-29)  - mk = a

となります。このとき (2-22) は、

(2-30)  L² - a|s| = a · s

となります。両辺を a で除して移項すれば、

(2-31)  L²
—–
 a
= |s| +  a
—–
 a
· s

 この右辺第2項は、a に平行な直線への s の正射影の座標ですから、これは原点を焦点とし、a と反対方向に伸びた放物線を表しています。

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