古典力学


7.コマの運動

 本節では、一様な重力場で、回転対称な剛体の対称軸が一点で固定されている場合の運動について調べます。この剛体をコマと呼ぶことにしましょう。

 コマの固定点を原点に置くことにし、z-軸の負の方向の一様な重力場、すなわち各質点に働く力が

(7-1)  Fi = - migz

となっているものとします。また、コマの重心は、原点から軸の上部の距離 h のところにあるものとし、コマを垂直に立てた状態から時刻 t における位置への変換行列を A とします。すなわちコマの軸の方向は

(7-2)  z' = Az

を向いていることになります。したがって、重心の位置は s = hz' です。さて、力のモーメント N は、原点にかかる抗力を R とすれば、(3-45) により

(7-3)  N = 0 ´ R - ms ´ g = - mhz' ´ gz

 ゆえに

(7-4)  z · N = z' · N = 0

がわかります。そこで、まず z · L の時間微分を計算すると、z は時間を含まないので

(7-5)  d
—–
 d
t
(z · L) = z · dL
—–
d
t
= z · N = 0

 ただし2番目の等号で (1-13) を、最後の等号で (7-4) を使いました。(7-5) により z · L は定数ですから、ある定数 a により

(7-6)  z · L = I1a

と書けます。ここで I1 を乗じたのは、後の変形を楽にするためです。さて、

(7-7)  dz'
—–
d
t
=  ·
Az =
 
 ·
AA-1z' = Ωz' = ω ´ z'
 

が成り立ちます。一方、

(7-8)  ω' = Aω

と置くと、(4-39)(5-2) より、角運動量は、原点から見た慣性テンソルを使って

(7-9)  L = = AIoAω = AIoω'

と書けますから、z' · L の時間微分を計算すると、

(7-10)  d
—–
 d
t
(z' · L)
= dz'
——
d
t
· L + z' · dL
—–
d
t

= (ω ´ z') · L + z' · N      ( (7-7),(1-13) )

= (' ´ Az) · AIoω'      ( (7-8),(7-2),(7-9),(7-4) )

= (ω' ´ z) · Ioω'      ( ∵ 内積と外積は直交変換に対して不変 )

= (ω'^ ´ z) · (I3 w'// z + I1 ω'^)      ( (5-25),(5-26) )

= 0

 ゆえに z' · L も定数です。よってある定数 b により

(7-11)  z' · L = I1b

と書けます。また、エネルギーについて、(4-45) の右辺は原点にかかる抗力だけですが、原点の速度はゼロですから右辺は消えます。すなわちエネルギー保存の式として、

(7-12)  K + U = e

 ただし

(7-13)  K =  ω
——–
 2 
=  ωAIoAω
————–
 2 
=  ω'Ioω'
———–
 2 

(7-14)  U = mg · s = mghz · z'

です。これで (7-6),(7-11),(7-12) という3つの方程式が求まりましたから、3つの未知関数 f , q , y が求まります。

 計算をさらに進めるため、(6-41a) の行列 B を導入すると、(6-36) から

(7-15)  B = efZeqY = Ae-yZ

 また、時刻 0 において回転対称軸が z-軸であることと (5-24) により、(5-4)

(7-16)  Io = æ
ç
ç
è
I1
0 
0 
0 
I1
0 
0 
0 
I3
ö
÷
÷
ø

となるので、(6-48b)f±y に置き換えた式により、

(7-17)  e-yZIoeyZ = æ
ç
ç
è
  cos y
-
sin
y
0
 sin y
cos
y
0   
  0
0
1
ö
÷
÷
ø
æ
ç
ç
è
I1
0 
0 
0 
I1
0 
0 
0 
I3
ö
÷
÷
ø
æ
ç
ç
è
cos y
sin
y
0
 - sin y
cos
y
0   
  0
0
1
ö
÷
÷
ø
= æ
ç
ç
è
I1
0 
0 
0 
I1
0 
0 
0 
I3
ö
÷
÷
ø
= Io 

 ゆえに

(7-18)  ω" º Bω = B' = eyZω'

 と置けば、(7-9),(7-17),(7-15),(7-18) により

(7-19)  L = AIoω' = Ae-yZIoeyZω' = BIoω"

 また、(7-15),(6-48a) により

(7-20)  Bz = e-qYe-fZz = e-qYz = æ
ç
ç
è
cos q
0  
sin
q
  0  
1
0
- sin q
0  
cos q
ö
÷
÷
ø
æ
ç
ç
è
  0  
0
1
ö
÷
÷
ø
= - sin q x + cos q z

 ただし xx-軸方向の単位ベクトルです。ゆえに (7-18),(6-44),(6-42a),(6-42b) により

(7-21)  ω" = Bω =  ·
fB
z +
 ·
qBy'
+
 ·
yBz'
=
 ·
f(- sin q x + cos q z)
+
 ·
q y +
 ·
y z = - sin
q
 ·
f x +
 ·
q y + (
 ·
f cos
q +
 ·
y)
z

 よって (7-16) により

(7-22)  Ioω" = I1(- sin q  ·
f x +
 ·
q y) + I3(
 ·
f cos
q +
 ·
y)z 

 また、(7-19),(7-20),(7-22) により

(7-23)  z · L = z · BIoω" = Bz · Ioω" = (I1 sin²q + I3 cos²q)  ·
f + I3 cos
q
 ·
y 

 一方 (7-19),(6-42b),(7-22) により

(7-24)  z' · L = z' · BIoω" = Bz' · Ioω" = z · Ioω" = I3 (  ·
f cos 
q +
 ·
y) 

 また、(7-13),(7-18),(7-17),(7-21),(7-16) により、

(7-25)  2K = ω'Ioω' = ω"eyZIoe-yZω" = ω"Ioω" = I1( sin²q  ·
f ² 
+
 ·
q ² ) + I3(
 ·
f cos 
q +
 ·
y 

 さらに、(6-49b) により

(7-26)  z · z' = cos q

 ゆえに (7-23)(7-26) を使えば、(7-6),(7-11),(7-12)

(7-27a)  (I1 sin²q + I3 cos²q)  ·
f + I3 cos
q
 ·
y = I1a

(7-27b)  I3 (  ·
f cos 
q +
 ·
y)
= I1b

(7-27c)  I1( sin²q  ·
f ² 
+
 ·
q ² ) + I3(
 ·
f cos 
q +
 ·
y+ 2mgh cos 
q = 2e

という3本の式からなる連立常微分方程式になります。(7-27b) より

(7-28)  I3  ·
y = I1b - I3
 ·
f cos 
q

 これを (7-27a) に代入して

(7-29)  (I1 sin²q + I3 cos²q)  ·
f + (
I1b - I3
 ·
f cos q) cos q = I1a

 左辺の I3 を含む項は消えるので、両辺を I1 で割って

(7-30)  sin²q  ·
f + b cos
q = a

 すなわち

(7-31)   ·
f =
 
a - b cos q
—————
sin²
q

 これと (7-27b)(7-27c) に代入すると、

(7-32)  I1 (a - b cos q
—————–
sin²
q
+ I1  ·
q ²
+
 
I1²b²
——–
I3
+ 2mgh cos q = 2e

 ここで

(7-33)  u = cos q

と置けば、

(7-34)   ·
u = -
 ·
q sin q

ですから、(7-32) の両辺に sin²q を掛けて u で表わせば、

(7-35)  I1(a - bu+ I1  ·
u ²
+
 
I1²b²
——–
I3
(1 - u²) + 2mghu(1 - u²) = 2e(1 - u²)

となり、これを整理すると、

(7-36)    ·
u ² = (1 - u²)(a - bu) - (a - bu

という形になります。ただし

(7-37a)  a =  2e 
—–
I1
- I1b²
——
I3

(7-37b)  b =  2mgh 
——–
I
1

です。(7-36)u に関する1階の常微分方程式ですから、これを解けば解が求まります。しかしこれは3次式の平方根の逆数の積分という形になり、楕円関数を用いなければ解析的に解けません。
 そこで以下では、この方程式を直接解かずに、方程式 (7-36) から直接解の性質を調べることにします。(7-36) の右辺を f(u) と置きます:

(7-38)  f(u) º (1 - u²)(a - bu) - (a - bu

 f(u) は3次の多項式で、しかも

(7-39)  f(u) ® ±¥      ( u ® ±¥ )

(7-40)  f(±1) < 0

であり、(7-36)u = cos q で成り立っているのですから、- 1 < u < 1 の範囲で少なくとも一か所 f(u) ³ 0 となる点があります。ゆえに、- 1 < u < 1 の範囲で方程式 f(u) = 0 の2個の実根 u1 £ u2 が存在して、(7-36) の解 u は、常に

(7-41)  u1 £ u £ u2

を満たします。つまりコマの傾き q は、一定の範囲内を行ったり来たりすることがわかります。

 ここで、fq の時間微分が t = 00 となっている場合を考えてみましょう。これは軸を動かさないようにしてコマを回し始めることに対応します。まず (7-31)t = 0 と置くと、左辺は 0 ですから、

(7-42)  a - buo = a - b cos qo = 0

 ただし添字の ot = 0 における値を表わします。次に (7-32)t = 0 と置けば

(7-43)  I1²b²
——–
I3
+ 2mghuo = 2e

 これと (7-37) により

(7-44)  a = buo

 したがって、(7-42),(7-44) により、(7-38)

(7-45)  f(u) = b(1 - u²)(uo - u) - b²(uo - u= (uo - u){b(1 - u²) - b²(uo - u)}

 ゆえに - 1 < u < 1 の範囲における f(u) = 0 の根の一方は uo に一致します。残る一方は、右辺の {  } の中 = 0 の根 u* すなわち

(7-46)  b(1 - u*²) = b²(uo - u*)      ( |u*| < 1 )

の根ですから

(7-47)  uo > u*

が成り立ちます。すなわち

(7-48)  ì
í
î
 u1 = u*
 u2 = uo

 よって (7-41) により

(7-49)  u* £ u £ uo

が成り立ちます。したがって f の時間変化は、(7-31),(7-33),(7-42),(7-49) により

(7-50)   ·
f =
 
 a - bu
———
1 - u²
= b  uo - u
———
1 - u²
³ 0

となり、f の時間変化の符号は一定で、これは z-軸のまわりに正の方向に回転することがわかります。これをコマの歳差運動といいます。

 さて、上述の初期条件のもとで、y の時間変化(=コマの回転角速度)の初期値を wo とすると、(7-27b)t = 0 と置いて、

(7-51)  b = I3wo
——
I1

 一方 (7-46) から

(7-52)  uo - u* = b(1 - u*²)
————–
 b² 
£ b
—–
b²

 もしコマの回転が十分速い、すなわち wo ® ¥ ならば、(7-51) により b ® ¥ 、したがって (7-52) により u* ® uo となりますから、(7-48),(7-41) により、uuo の近くのごく狭い範囲を行ったり来たりすることがわかります。
 また、(7-50),(7-49),(7-52) により

(7-53)   ·
f £ b
 
 uo - u*
———–
1 -
u²
£ b
—–
b
 1 
———————
1 -
max{uo², u*²}

ですから、それに伴って、歳差運動の速度も遅くなります。

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