古典力学
9.慣性力
時刻 t に依存する、任意の2点間の距離を変えない空間座標の変換 T を考えます:
(9-1) | T(s) - T(s') | = | s - s' | |
ここで a = T(0)
及び f(s) = T(s)
- a と置けば、(9-1)
により
(9-2) | f(s) - f(s')| = | s - s' | |
が成り立ちます。また f(0)
= 0 ですから、(9-2)
で s' = 0 と置くことにより
が成り立ちます。これらの関係式を用いると、第4節の議論と同様にして、ある正方行列 A が存在して
が成り立つことがわかります。実際、まず (9-3)
を2乗すれば、
(9-5) f(s) · f(s) = s · s |
次に (9-2)
を2乗すれば、
(9-6) { f(s) - f(s')}·{ f(s) - f(s')} = (s - s') · (s - s') |
これを展開して (9-5)
を使えば
(9-7) f(s) · f(s') = s · s' |
がわかります。ゆえに、任意の実数 a , a' に対して
(9-8) | f(as + a's') - a f(s) - a' f(s')|² |
= | f(as + a's')|² + a²| f(s)|² + a' ²| f(s')|² - 2a f(as + a's') · f(s) - 2a' f(as + a's') · f(s') + 2aa' f(s) · f(s') |
|
|
= | as + a's' |² + a²| s |² + a' ²| s' |² - 2a(as + a's') · s - 2a'(as + a's') · s' + 2aa's · s' |
|
|
= | (as + a's') - as - a's' |² |
|
|
|
従って
(9-9) f(as + a's') = a f(s) + a' f(s') |
となるので f は線形写像であることがわかります。ゆえにこの線形写像を行列で表したものを A と書けば (9-4)
が成り立ち、(9-3)
により A は直交行列であることがわかります。
以上により、T は直交行列による線形変換と平行移動の合成変換:
と書けます。そこでこれを回転運動する座標変換:
と、並進運動する座標変換
に分けて考察してみましょう。
まず簡単な並進運動する座標変換 (9-11b)
から考えてみます。(9-11b)
の両辺を順次 t で微分すれば
(9-12a) |
ds* d t |
= |
· s + |
· a |
(9-12b) |
d²s* dt² |
= |
·· s + |
·· a |
となります。ここで (9-12b)
の両辺に質量 m を乗じ、右辺第1項に運動方程式:
を代入すれば、s*
に対する運動方程式:
(9-14) m |
d²s* dt² |
= F + |
·· ma |
が得られます。
ここで (9-14)
を通常の運動方程式と比較すると、第1項の“本来の力”に加えて第2項の“みかけの力”が加わった形になっていることがわかります。そこで、この右辺第2項のことを並進運動する座標変換における慣性力とよびます。
なお、並進運動が等速度で、この右辺第2項の慣性力が 0 となる場合は、通常の運動方程式がそのまま使えることに注意します。
次に回転運動する座標変換 (9-11a)
について考えます。(9-11a)
の両辺を順次 t で微分すれば
(9-15a) |
ds* d t |
= |
· As + |
· As |
(9-15b) |
d²s* dt² |
= |
·· As + 2 |
· · As + |
·· As |
ここで第4節と同様に
と置くと、(4-32)
と全く同じ計算により Ω は反対称行列で、従ってある実数 wi ( i=1,2,3 )
により (4-33)
の形に書け、wi を第 i 成分に持つベクトル ω により、任意のベクトル ξ
に対し、
が成り立つことがわかります。(9-16)
により
ですから、これを再度 t で微分して (9-18a)
を用いれば
(9-18b) |
·· A = |
· ΩA + |
· ΩA = |
· ΩA + Ω ²A |
ゆえに (9-18a)
を使えば、(9-15a)
は
(9-19) |
ds* d t |
= ΩAs + |
· As |
となり、(9-15b)
は
(9-20) |
d²s* dt² |
= |
· ΩAs + Ω ²As + 2 |
· ΩAs + |
·· As ( ∵ (9-18) ) |
|
| |
= |
· ΩAs + Ω ²As + 2 Ω |
æ è |
ds* d t |
- ΩAs |
ö ø |
+ |
·· As ( ∵ (9-19) ) |
|
| |
= |
· ΩAs - Ω ²As + 2 Ω |
ds* d t |
+ |
·· As |
|
| |
= |
· Ωs* - Ω ²s* + 2 Ω |
ds* d t |
+ |
·· As ( ∵ (9-11a) ) |
|
| |
= |
· ω ´ s* - ω ´ (ω ´ s*) + 2 ω ´ |
ds* d t |
+ |
·· As ( ∵ (9-17) ) |
|
となります。ここで (9-20)
の両辺に質量 m を乗じ、右辺最後の項に運動方程式 (9-13)
を代入すれば、s*
に対する運動方程式:
(9-21) m |
d²s* dt² |
= F* + Fcent + Fcor + Facc |
が得られます。ただし
は、もとの座標における力 F を座標変換したものを表します。また
(9-22b) Fcent = - m ω ´ (ω ´ s*) |
と置いて、これを遠心力とよび、
(9-22c) Fcor = 2 m ω ´ |
ds* d t |
と置いて、これをCoriolis
の力とよび、これら2つに加えて
を併せて回転する座標変換に対する慣性力とよびます。
この場合も、質点に本来の力に加えて慣性力が働いているかのように考えれば、通常の運動方程式が成り立っていると考えることができます。