微分多様体


7.外微分

 本節では、M の任意のr形式 w に対してr+1形式 dw を与える E(M)-線形な演算子 d で、関係式

(7-1)  LD = iD ° d + d ° iD

を満たすものが唯一つ存在することを証明しましょう。
 (7-1) の条件は、r形式 wiD ° d = LD - d ° iD を施して、引数に D1 ,¼, Dr を代入すれば、

(7-2)  dw(D, D1 ,¼, Dr) = LDw(D1 ,¼, Dr) - d(iDw)(D1 ,¼, Dr)

という形に書きなおすことができます。右辺の iDwr-1形式ですから、これは dww の次数 r について 0 から順に定義していく式とみなすことができます。そこで r = 0 から順に、(7-2) で定義される dwr+1形式になっていることを帰納法で確かめていきましょう。さらにその際、p形式 aq形式 b(ただし p+q=r)について

(7-3)  d(a ^ b) = da ^ b + (-1)p a ^ db

が成り立つことも同時に証明していくことにします。
 まず p = 0 の場合は、w0形式、すなわち fÎE(M) ですが、(6-2) により iD f = 0 ですから、(7-2) により、

(7-4)  df(D) = LD f = Df

でなければなりません。この (7-4) で定義された df1形式であることは明らかです。さらに、f, gÎE(M) に対し、(1-12) により、

(7-5)  d( fg)(D) = D( fg) = fDg + gDf = fdg(D) + gdf(D)

ですから

(7-6)  d( fg) = fdg + gdf

となって、(7-3) が成り立っていることがわかります。また、M 全体で定義された局所座標 x がある場合は、(1-29) により、

(7-7)  df(D) = Df =  n
å
i=1
f
—–

 ¶
xi
Dxi =  n
å
i=1
f
—–

 ¶
xi
dxi(D) 

 すなわち

(7-8)  df =  n
å
i=1
f
—–

 ¶
xi
dxi 

が成り立っていることがわかります。
 さて、(7-4)df を使うと、(5-13) は、Tp形式 w のとき、次のように書き直すことができます。

(7-9)  LfAw(D1 ,¼, p )
= f LAw(D1 ,¼, p ) +  p
å
i=1
(Di f ) w(D1 ,¼, i-1 , A, Di+1 ,¼, p )

= f LAw(D1 ,¼, p ) +  p
å
i=1
(-1)i-1 df(Di) w(A, D1 ,¼, i-1 , i+1 ,¼, p )

= f LAw(D1 ,¼, p ) +  p
å
i=1
(-1)i-1 df(Di) iAw(D1 ,¼, i-1 , i+1 ,¼, p )

= f LAw(D1 ,¼, p ) + 1
———
(p-1)!

å
Sp
(-)s df(Ds(1)) iAw(Ds(2 ,¼, p))

= f LAw(D1 ,¼, p ) + df ^ iAw(D1 ,¼, p )

 これは、

(7-10)  LfAw = f LAw + df ^ iAw

を意味しています。

 さて、r > 0 として (7-2) の帰納法を続けることにします。(7-2) の右辺によって左辺を定義すると、まず dwD1 ,¼, Dr について E(M)-多重線形かつ反対称であることは明らかです。従って、dwE(M)-多重線形かつ反対称であることを示すには、引数 D についてE(M)-線形であることと、D = D1 のとき 0 になることを確かめれば十分です。
 帰納法の仮定により、0形式 fr-1形式 iDw については (7-3) が成り立つと仮定しているので、

(7-11)  d( fiDw) = fd(iDw) + df ^ iDw

が成り立ちます。
 今後、表記の簡便のため、内部積の記号を、(6-1) 式における w がまだp形式であるかどうか不明な段階でも用いることにします。与えられた p形式 w に対し、(7-1)D のところに fD を代入し、(7-10),(6-6),(7-11) を使うと、

(7-12)  ifDdw = LfDw - d(ifDw) = f LDw + df ^ iDw - d( fiDw) = f LDw - fd(iDw) = fiDdw

 これは、引数に (D1 ,¼, Dr) を代入すれば

(7-13)  dw( fD, D1 ,¼, Dr) = fdw(D, D1 ,¼, Dr)

を意味しますから、(7-2)D についてE(M)-線形であることがわかりました。また、(7-1),(6-17),(6-9) により、

(7-14)  iDiDdw = iDLDw - iDdiDw = LDiDw - iDdiDw = diDiDw = 0

 これは、引数に (D2 ,¼, Dr) を代入すれば

(7-15)  dw(D, D, D2 ,¼, Dr) = 0

を意味しますから、以上で dwp+1形式であることが証明されました。これでさらに (7-3) が証明できれば帰納法が完成します。r形式 w = a ^ b に対し、(7-1),(6-12),(5-18) により

(7-16)  iDd(a ^ b) = LD(a ^ b) - diD(a ^ b)

= LDa ^ b + a ^ LDb - d{iDa ^ b + (-1)p a ^ iDb}

= LDa ^ b + a ^ LDb - {diDa ^ b + (-1)p-1iDa ^ db} - (-1)p {da ^ iDb + (-1)p a ^ diDb}

= {LDa- diDa}^ b + a ^ {LDb - diDb} - (-1)p-1iDa ^ db - (-1)p da ^ iDb

= iDda ^ b + a ^ iDdb + (-1)p+1da ^ iDb + (-1)p iDa ^ db

= i
D(da ^ b) + (-1)p iD(a ^ db)

 ただし iDa ^ ba ^ iDbr-1形式なので、それらに対して3番目の等号で帰納法の仮定を用いました。(7-16) の引数に (D1 ,¼, Dr) を代入すれば

(7-17)  d(a ^ b)(D, D1 ,¼, Dr) = da ^ b(D, D1 ,¼, Dr) + (-1)p a ^ db(D, D1 ,¼, Dr)

となって、(7-3) も証明され、帰納法が完成しました。こうして定義された d を、微分形式の外微分といいます。
 次に、M 上のp形式に対する外微分 dLie微分 LA に関する恒等式:

(7-18)  d ° LA = LA ° d

(7-19)  d ° d = 0

p に関する帰納法で同時に証明してみましょう。p-1形式まで正しいと仮定し、Mp形式 w を取ります。iDwp-1形式なので、帰納法の仮定により、これに対しては (7-18) が成り立つことや、(7-1),(6-16),(5-23) を使えば、

(7-20)  iDdLAw = {LD - diD}LAw

= LDLAw - diDLAw

= LDLAw + d{i[A, D]w - LAiDw}

= {LALD - [LA, LD]}w + di[A, D]w - dLAiDw

= LALDw - {L[A, D] - di[A, D]}w - dLA(iDw)

= LALDw - i[A, D]dw - LAd(iDw)

= LA{LD - diD}w - i[A, D]dw

= LAiDdw - i[A, D]dw

= iDLAdw

 両辺の引数に (D1 ,¼, Dp ) を代入すれば

(7-21)  dLAw(D, D1 ,¼, Dp) = LAdw(D, D1 ,¼, Dp)

となって、p形式に対して (7-18) が得られました。また、(7-19) に関しては、今証明した (7-18)(7-1)、及び帰納法の仮定により iDw に対して (7-19) が成立することを用いれば、

(7-22)  iDddw = {LD - diD}dw = LDdw - diDdw = dLDw - diDdw = d{LD - iDd}w = ddiDw = 0

 両辺の引数に (D1 ,¼, Dp+1) を代入すれば

(7-23)  ddw(D, D1 ,¼, Dp+1) = 0

となって (7-19) が証明され、帰納法が完成しました。

 さてここで、p形式 wの外微分 dw の具体的な表示式を求めてみましょう。表記の簡便のために、iDiiiLDiLi と略記することにします。(7-1) により

(7-24)  iid + dii = Li       ( i = 0 ,¼, p )

 ただし写像の合成記号は省略しました。両辺に、左から ipip-1¼ii+1 を施し、右から ii-1¼i1i0 を施せば、

(7-25)  ip¼iidii-1¼i0 + ip¼ii+1dii¼i0 = ip¼ii+1Liii-1¼i0

 ただし i = p のときの左辺第2項は dipip-1¼i0w となりますが、ip-1¼i0wp形式にp個の内部積を施しているので0形式であり、そこに更に ip を施しているため 0 になります。したがって、(7-25) の両辺に (-1)i を乗じて i = 0 ,¼, p について辺々加えると、

(7-26)  ip¼i0d =  p
å
i=0
(-1)iip¼ii+1Liii-1¼i0

 また、i[Di , Dj]i[i, j] と略記すれば、(6-16) により

(7-27)  Liij - ijLi = i[i, j]       ( 0 £ i < j £ p )

 両辺に、左から ipip-1¼ij+1 、右から ij-1ij-2¼ii+1 を施すと、

(7-28)  ip¼ij+1Liij¼ii+1 - ip¼ijLiij-1¼ii+1 = ip¼ij+1i[i, j]ij-1¼ii+1

 これを j = i+1 ,¼, p について辺々加えると、

(7-29)  Liip¼ii+1 - ip¼ii+1Li =  p
å
j=i+1
ip¼ij+1i[i, j]ij-1¼ii+1 

 あるいは

(7-30)  ip¼ii+1Li = Liip¼ii+1 -  p
å
j=i+1
ip¼ij+1i[i, j]ij-1¼ii+1 

 この両辺に、更に右から ii-1¼i0 を施せば、

(7-31)  ip¼ii+1Liii-1¼i0 = Liip¼ii+1ii-1¼i0 -  p
å
j=i+1
ip¼ij+1i[i, j]ij-1¼ii+1ii-1¼i0 = Liip¼ii+1ii-1¼i0 +  p
å
j=i+1
(-1)jip¼ij+1ij-1¼ii+1ii-1¼i0i[i, j]

 ただし最後の等号で (6-8) を繰り返し使いました。これを (7-26) に代入すれば、

(7-32)  ip¼i0d =  p
å
i=0
(-1)iLiip¼ii+1ii-1¼i0 +  
å
i< j
(-1)i+jip¼ij+1ij-1¼ii+1ii-1¼i0i[i, j]

 これをp形式 w に施し、ip¼ii+1ii-1¼i0w0形式なので、(5-8) により

(7-33)  Liip¼ii+1ii-1¼i0w = Di(ip¼ii+1ii-1¼i0w)

となることに注意して (6-10) を用いると、次のような dw の表示式が得られます。

(7-34)  dw(D0 ,¼, Dp ) =  p
å
i=0
(-1)i Di{w(D0 ,¼, Ù
Di
 
,¼, Dp )} +  
å
i< j
(-1)i+j w([Di , Dj], D0 ,¼, Ù
Di
 
,¼, Ù
Dj
 
,¼, Dp )

 ただし、記号 Ù は、当該項だけ除くことを意味します。

 ここでいくつかの公式を導いておきましょう。(7-4) により、任意の fÎE(M)vÎTsM に対し、DÎX(M)v = Ds となるように取れば、

(7-35)  (df )s(v) = (df )s(Ds) = df (D)(s) = Df(s) = Ds f = vf

 また、DÎX(M)fÎE(M) に対して、

(7-36)  iDdf = df(D) = Df

(7-37)  LDdf = dLDf = dDf

 さて、xM 全域で定義された局所座標ならば、(7-4)(1-19) により、dxi¶/¶xi の双対基底ですから、Mp形式 w に対する標準表示 (4-25) は、

(7-38)  w =  
å

k(1)<¼<k(p)
wk dxk(1) ^ ¼ ^ dxk(p) =  
å
i<j<¼<
k
wij¼k dxi ^ dxj ^ ¼ ^ dxk

となるので、両辺に iD を施して (6-12) を繰り返し用い、(7-36) を用いれば、標準表示の内部積

(7-39)  iDw =  
å

k(1)<¼<k(p)
wk   p
å
i=1
(-1)i-1 Dk(i) dxk(1) ^ ¼ ^ dxk(i-1) ^ dxk(i+1) ^ ¼ ^ dxk(p)

となります。また、(7-38) の両辺に d を施し、(7-19) により ddxi = 0 であることと (7-3) を繰り返し用いれば、標準表示の外微分

(7-40)  dw =  
å
i<j<¼<k
dwij¼k ^ dxi ^ dxj ^ ¼ ^ dxk

となります。最後に、p階共変テンソル場 T の標準表示は、(4-23)εi = dxi により

(7-41)  T =  
å
kÎK
Tk dxk(1) Ä ¼ Ä dxk(p) = n
å
i, j ,¼, k=1
Tij¼k dxi Ä dxj Ä ¼ Ä dxk

 そこでこの両辺に LD を施せば、(7-18)(5-8) により、LDTk = DTk 及び

(7-42)  LDdxi = dLDxi = dDxi = dDi

が成り立ちますから、(5-15) を繰り返し用いれば、p階共変テンソルのLie微分の標準表示として

(7-43)  LDT =  
å
kÎK
DTk dxk(1) Ä ¼ Ä dxk(p) +  
å
kÎK
Tk   p
å
i=1
dxk(1) Ä ¼ Ä dxk(i-1) Ä dDk(i) Ä dxk(i+1) Ä ¼ Ä dxk(p)

が得られます。同様に、Tp形式 w の場合は、(5-15) のかわりに (5-18) を繰り返し用いることにより、次の結果が得られます。

(7-44)  LDw =  
å

k(1)<¼<k(p)
Dwk dxk(1) ^ ¼ ^ dxk(p) +  
å

k(1)<¼<k(p)
wk   p
å
i=1
dxk(1) ^ ¼ ^ dxk(i-1) ^ dDk(i) ^ dxk(i+1) ^ ¼ ^ dxk(p)

INDEX   BACK   NEXT