微分多様体


12.Stokesの定理

 x , yn次元多様体 M の局所座標とします。ただし後の便宜のために、その第 n - 1 座標 xn-1 , yn-1 は常に正の値を取るものとします。任意の局所座標は、定義域を有界な領域に制限し、第 n - 1 座標のみ値を平行移動すればこの条件を満足しますから、このように仮定しても一般性を失いません。
 y ° x-1Rn+ の開集合から Rn+ の開集合への微分同型ですから、第8節の (8-29) により、これは Rno の点を Rno に写します。これは sÎM に対する条件 x(s)ÎRno が、局所座標の取り方によらないことを意味しています。そこで

(12-1)  M = { sÎM | s を定義域に持つ局所座標に対して x(s)ÎRno }

と置き、これを M境界といいます。局所座標 x とその定義域 U に対し、UoÌ Uxo : Uo ® Rn-1+

(12-2)  Uo = UÇRno

(12-3)  xo(s) = (x¹(s) ,¼, xn-1(s))

で定義します。別の局所座標 y : V ® Rn+ に対して同様に Voyo を作ると、yo° xo-1Rn-1+ の開集合から Rn-1+ の開集合への微分同型ですから、xo , yoM の局所座標になり、したがって Mn - 1 次元多様体になります。
 さらに、xo , yo の第 n - 1 座標成分は常に正ですから、M には境界がありません:

(12-4)  ¶¶M = Æ

 さて、f = y ° x-1 ,  fo = yo° xo-1 と置くと、

(12-5)  f(ξo, 0) = ( fo(ξo), 0)       ( ξoÎxo(UoÇVo) )

となるので、まず

(12-6)  f n(ξo , 0) = 0

により

(12-7)  i f n(ξo , 0) = 0       ( i = 1 ,¼, n-1 )

が成り立ち、(12-6)

(12-8)  f n(ξo , xn ) > 0       ( xn > 0 )

により n  f n(ξo , 0) ³ 0 が成り立ちますから、

(12-9)  det Ñ f(ξo , 0) = {det Ñ fo(ξo)}n  f n(ξo , 0)

となります。ところがこの左辺は 0 でないので

(12-10)  n  f n(ξo , 0) > 0

かつ det Ñf(ξo , 0)det Ñfo(ξo) の符号は同じであることがわかります。
 一方、前節 (11-29) により mxmy の違いは det Ñf の符号に一致し、同様に mxomyo の違いは det Ñfo の符号に一致します。以上を合わせると、

(12-11)  mxs = mys  Û  mxos = myos       ( sζM )

となりますが、M に向きが付いていれば、これは

(12-12)  (-)x mxo = (-)y myo

と同値です。そこで、M が向き m を持つとき、M の向き ¶m を次のように定めます:

(12-13)  (¶m)s = (-1)n (-)x(s) mxos       ( sζM )

ただし xs を定義域に含む M の局所座標です。(12-12) により、この定義は局所座標の取り方に依存しません。ゆえに M は向き ¶m の付いた n - 1 次元多様体になりますから、(12-13) により、任意の局所座標 x に対して、その定義域を U とすれば、

(12-14)  (-)xo(s) = (-1)n (-)x(s)       ( sζMÇU )

が成り立ちます。

 さて、境界という概念は部分多様体に対しても定義できます。N = (L, y)M の部分多様体とするとき、yL への制限を yo として、

(12-15)  N = (L, yo)

と置きます。定義により、N が向きのついた部分多様体なら N も向きのついた部分多様体になります。

 ここでいよいよ表題のStokesの定理の説明に入ります。Mn次元多様体、N = (L, y)M の向きの付いた p次元部分多様体、wy-1(supp ω) がコンパクトであるような Mp - 1 形式とします(N がコンパクトならもちろん条件は成り立ちます)。このとき、

(12-16)   òN dw = òN w

が成りたつ、というのが Stokesの定理です。

 部分多様体上の積分の定義と (9-36) により、(12-16) の左辺は

(12-17)   òN dw = òL y*dw = òL d(y*w)

となり、右辺は、i : L ® L を埋め込みとすれば、yo = y ° i(9-16) により、

(12-18)   òN w = òL yo*w = òL i*(y*w)

と変形されます。また supp(y*w) Ì y-1(supp w) ですから、結局 LMpny*ww とみなすことにより、台 がコンパクトな n 形式 w に対して

(12-19)   òM dw = òM i*w

が証明できればよいことがわかります。
 そこで、まず w の台が M のある局所座標 x の定義域に含まれる場合を考えます。wx により標準表示すれば、

(12-20)  w =  n
å
i=1
wi dx¹ ^ ¼ ^ dxi-1 ^ dxi+1 ^ ¼ ^ dxn

 これに外微分を施すと、

(12-21)  dw
=  n
å
i=1
dwi ^ dx¹ ^ ¼ ^ dxi-1 ^ dxi+1 ^ ¼ ^ dxn

=  n
å
i,j=1
¶wi
——
xj
dxj ^ dx¹ ^ ¼ ^ dxi-1 ^ dxi+1 ^ ¼ ^ dxn

= ì
í
î
 n
å
i=1
 (- 1)i-1 ¶wi
——
xi
ü
ý
þ
dx¹ ^ ¼ ^ dxn

= ì
í
î
 n
å
i=1
(- 1)i-1 i(wi ° x-1) ° x ü
ý
þ
dx¹ ^ ¼ ^ dxn

 一方、xi ° x-1 は、Rn の第 i 成分を取り出す関数なので、

(12-22)  (x-1)*dxi(j) = d(xi ° x-1)(j) = ¶j(xi ° x-1) = dji

ですから、

(12-23)  (dw)x = (x-1)*dw(1 ,¼, p ) =  n
å
i=1
(- 1)i-1 i(wi ° x-1)

 一方、(12-20)i* を施すと、i*xi = xi ° i = xoi ( i=1 ,¼, n-1 ) , i*xn = xn ° i = 0 ですから

(12-24)  i*w
=  n
å
i=1
i*wi i*dx¹ ^ ¼ ^ i*dxi-1 ^ i*dxi+1 ^ ¼ ^ i*dxn

=  n
å
i=1
(wi ° i) d(i*x¹) ^ ¼ ^ d(i*xi-1) ^ d(i*xi+1) ^ ¼ ^ d(i*xn)

= (wn ° i) dxo¹ ^ ¼ ^ dxon-1

 したがって

(12-25)  (i*w)xo = wn ° i ° xo-1 = wn ° xo-1

 また、Rn+ 上の関数 gi

(12-26)  gi(ξ) = ì
í
î
{(-)xwi}(x-1(ξ))       ( ξÎU のとき )

  0       ( それ以外 )

で定義すると、giRn+ で台がコンパクトかつ滑らかな関数で、ξ = (ξo, 0)ÎUo に対しては、(12-14)(12-25) により、

(12-27)  gn(ξo, 0) = {(-)xwn}(x-1(ξo, 0))

= {(-)xwn}(xo-1(ξo))

= (-)x(xo-1(ξo)) wn(xo-1(ξo))

= (-1)n (-)xo(xo-1(ξo)) (i*w)xo(ξo)

= (-1)n {(-)xoi*w}xo(ξo)

 よって、x の値域を U と書けば

(12-28)  òM dw
= òU {(-)xdw}x(ξ) dξ

= òU (-)x(x-1(ξ))(dw)x(ξ) dξ

=  n
å
i=1
 (-1)i-1 òU (-)x(x-1(ξ))i(wi ° x-1)(ξ)dξ       ( ∵(12-23) )

=  n
å
i=1
 (-1)i-1 òU i{((-)x ° x-1)(wi ° x-1)}(ξ)dξ

=  n
å
i=1
 (-1)i-1 ò

R
n+
igi(ξ)dξ       ( ∵(12-26) )

= - (-1)n-1 ò

R
n-1
gn(ξo, 0) dξo

= ò

R
n-1
{(-)xoi*w}xo(ξo) dξo       ( ∵(12-27) )

= òM i*w

 ただし、4番目の等号では (-)x ° x-1 が局所的に定数であることを使いました。
 また、6番目の等号では、i=1, ¼, n-1 に対しては igi の第 i 変数に関する積分が + ¥ における値と - ¥ における値の差となり、gi の台がコンパクトなので、これらの積分は消え、残る n gn については、第 n 変数に関する積分が + ¥ における値と 0 における値の差となり、前者は同じ理由で消えることを使いました。
 以上で、台がある局所座標の定義域に含まれる場合の証明が完成しました。

 一般の場合は、コンパクト集合 supp w 上の 1 の分解 cj  ( j=1 ,¼, r ) を取ると、各 cjw に対して (12-19) が成り立つことと、cj ° i  ( j=1 ,¼, r )supp i*w Ì ¶M Ç supp w1 の分解になっていることから、

(12-29)  òM dw = r
å
j=1
òM cj dw = r
å
j=1
òM d(cjw) - r
å
j=1
òM dcj ^ w = r
å
j=1
òM i*(cjw) - òM d æ
è
r
å
j=1
 cj ö
ø
^ w = r
å
j=1
òM (cj ° i)i*w - òM d1 ^ w = òM i*w

となって、一般の場合の証明が完成しました。

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