微分多様体


14.1パラメター変換群

 M を多様体、IR の区間とするとき、M の部分多様体 (I, g)M曲線といいます。曲線 (I, g) に対し、fÎE(M ) に対する演算子 g'(t)

(14-1)  g'(t) f = d
—–
 d
t
g*f(t) = d
—–
 d
t
 f(g(t))

で定義します。f, gÎE(M ) に対し、

(14-2)  g'(t)( fg) = d
—–
 d
t
{ f(g(t))g(g(t))} = f(g(t)) d
—–
 d
t
g(g(t)) + g(g(t)) d
—–
 d
t
 f(g(t)) = f(g(t))g'(t)g + g(g(t))g'(t) f

ですから

(14-3)  g'(t)ÎTg(t)M

です。そこで逆に、任意に aÎI をとり、tÎI に依存する vtÎX(M )sÎM が与えられたとき、

(14-4a)  g'(t) = (vt)g(t)       ( tÎI )

(14-4b)  g(a) = s

を満たす曲線 g : I ® M を求める問題を考えます。ただし vt は、任意の fÎE(M ) に対して vt f (s)(t, s)ÎI ´ M について滑らかな関数であるとします。

 さて、(14-4)ga , s に依存するので g(t)ja(t, s) = ja, t(s) と書くことにすると、(14-4)

(14-5a) 
—–
 ¶
t
(ja, t*f ) = ja, t*(vt  f )       (  fÎE(M ) )

(14-5b)  ja, a(s) = s

と書けます。s は局所座標 x の定義域 U に含まれるとし、x(U) = U' と置き、

(14-6)  ui(t, ξ) = xi(ja(a+t, x-1(ξ)))

(14-7)  Ai(t, ξ) = (va+t xi)(x-1(ξ))

と書けば、(14-5a) は、x(s) = ξ と置いて、

(14-8)   n
å
i=1
ui
—–
t
(t, ξ)  ¶f 
—–
 ¶
xi
(ja, a+t(s)) =
—–
 ¶
t
 f(ja, a+t(s)) = (va+t f )(ja, a+t(s)) =  n
å
i=1
(va+txi)(ja, a+t(s))  ¶f 
—–
 ¶
xi
(ja, a+t(s)) =  n
å
i=1
Ai(t, u(t, ξ))  ¶f 
—–
 ¶
xi
(ja, a+t(s)) 

となりますから、これは、u º (u¹ ,¼, un )A º (A¹ ,¼, An ) と置けば、

(14-9a)   u(t, ξ)
———
t
= A(t, u(t, ξ))       ( tÎI )

と同値です。また、初期条件 (14-5b) は、(14-6) により

(14-9b)  u(0, ξ) = ξ

となります。(14-9) を、t に関する一階常微分方程式初期値問題といいます。

 ここで一般に、一階常微分方程式の初期値問題の解の存在と一意性を述べるために一つの補題を用意します:

補題  T が、距離 d を持つ空でない完備距離空間 X からそれ自身への縮小写像、すなわち

(14-10)  $C < 1 : "u, vÎX : d(Tu, Tv) £ Cd(u, v)

を満たす写像ならば、不動点、すなわち

(14-11)  Tu = u

を満たす uÎX が、ただ一つ存在する。

 実際、まず存在の証明ですが、X から任意に元 u0 を取り、uk+1 º Tuk (k = 0, 1, 2, ¼) と置くと、

(14-12)  d(uk+2, uk+1) = d(Tuk+1, Tuk) £ Cd(uk+1, uk)

ですから、

(14-13)  d(uk+1 , uk) £ C kd(u1, u0)

 したがって

(14-14)  d(uk+l , uk) £  l
å
i=1
d(uk+i , uk+i-1) £  l
å
i=1
C k+i-1d(u1, u0) £ ¥
å
 i=k
C id(u1, u0) = C kd(u1 , u0)
—————
1 - C

は、k ® ¥ のとき、l について一様に 0 に収束します。これは { uk | k = 0, 1, 2, ¼ } がコーシー列になっていることを意味しますから、X の完備性により、ある u に収束します。(14-10) により T は連続ですから、uk+1 º Tuk において k ® ¥ とすれば u = Tu が得られ、不動点の存在が証明されました。
 また、uv が不動点であるとすれば、u = Tuv = Tv(14-10) により

(14-15)  d(u, v) = d(Tu, Tv) £ Cd(u, v)

が成り立ち、C < 1 ですから、(14-15) が成り立つのは d(u, v) = 0 すなわち u = v である場合に限られます。これで不動点の一意性も証明されました。

 さて、この補題を一階常微分方程式の初期値問題の解の存在証明に適用してみましょう。J º { tÎR | | t | £ k } , U º { uÎRn | | u - ξ | £ d } と置くとき J ´ UA の定義域に含まれ、更に A は、C¹-級より弱いLipschitz連続とよばれる条件、すなわちある正数 L が存在して、

(14-16)  | A(t, u) - A(t, v) | £ L | u - v |       ( tÎJ ; u, vÎU )

を満すならば、J ´ U における | A | の最大値を N と置くとき、k , d , N , L のみに依存する正数 e = e(k, d, N, L) が存在して、区間 [- e, e] において (14-9) の解が一意的に存在することが証明できます。
 実際、

(14-17)  e = min ì
í
î
k , d
—–
 N
, 1
——–
L + 1
ü
ý
þ

と置き、[- e, e] から U への連続関数の全体に一様収束のノルム || · || で距離を入れた集合を X とし、T

(14-18)  Tu(t) º ξ + ò t

0
A(t, u(t)) dt

で定義すれば、u, vÎX , | t | £ e のとき、

(14-19)  | Tu(t) - ξ | £ ò | t |

0
| A(t, u(t)) | dt £ Ne £ d

(14-20)  | Tu(t) - Tv(t) | £ ò | t |

0
| A(t, u(t)) - A(t, v(t)) | dt £ L ò | t |

0
| u(t) - v(t) | £ Le || u - v || £ L
——–
L
+ 1
|| u - v ||

となるので、T は完備距離空間 X 上の縮小写像になります。よって上記の補題により、Tu = u すなわち

(14-21)  u(t) º ξ + ò t

0
A(t, u(t)) dt

となる u が唯一つ存在します。(14-21) の右辺は t について微分可能なので、両辺を t で微分すれば (14-9a) が成り立つことがわかります。また、(14-9b) が成り立つことは明らかです。
 また逆に、u(14-9) を満たせば、(14-9a) の両辺を t について 0 から t まで積分すれば (14-21) が得られるので、一意性も成り立ちます。

 次に (14-9)Aξ が実パラメター Λ に依存する場合を考えます。A(l, t, u)ξ(l) は、l , t , u について 級であるとし、Λ ´ J ´ UA の定義域に含まれ、Λξ の定義域に含まれるとすれば、

(14-22)  | A(l, t, u) - A(l, t, v) | £ L | u - v |       ( Λ ; tÎJ ; u, vÎU )

を満たす正数 L が存在します。ここで Λ ´ J で定義され、l について 級、t について連続な U に値を持つ関数 u に対し、

(14-23)  F(u)(l, t) º A
—–
¶l
(l, t, u(l, t)) +  n
å
i=1
A 
—–
ui
(l, t, u(l, t)) ui
—–
¶l 
(l, t)

と置くと、ある正数 B が存在して

(14-24)  || F(u) - F(v) || £ B || u - v ||1

が成り立ちます。ただし || w ||1 は、|| w |||| w/¶l || の大きい方を表わします。さて、

(14-25)  e = min ì
í
î
k , d
—–
 N
, 1
——–
L + 1
, L
———–
B
(L + 1)
ü
ý
þ

と置き、Λ ´ [- e, e] から U への、l について 級、t について連続な関数の全体にノルム || · ||1 で距離を入れた集合を Y とし、T

(14-26)  Tu(l, t) º ξ(l) + ò t

0
A(l, t, u(l, t)) dt

で定義すれば、(14-19) が成り立ち、

(14-27) 
—–
¶l
Tu(l, t) º ξ
—–
¶l
(l) + ò t

0
F(u)(l, t) dt

ですから

(14-28)  ½
½

—–
¶l
Tu(l, t) -
—–
¶l
Tv(l, t) ½
½
£ ò | t |

0
| F(u)(l, t) - F(v)(l, t) | dt £ e || F(u) - F(u) || £ eB || u - v ||1 £ L
——–
L
+ 1
|| u - v ||1

したがってこれと (14-20) により

(14-29)  || Tu - Tv ||1 £ L
——–
L
+ 1
|| u - v ||1

が成り立つので、TY における縮小写像であることがわかります。したがって上の補題により、T の不動点 uÎY が存在します。u は、各 l を固定すれば (14-9) の解ですから、これは (14-9) の解が l について級であることを意味しています。

 さて、特に l として ξ の任意の成分を取れば、(14-9) の解 uξ に関して級であることがわかります。また、(14-9) の両辺を ξ i について微分すれば、uξ i に関する一階常微分方程式が得られるので、uξ iξ に関して級であることがわかります。これを繰り返せば、uξ について滑らかであることがわかります。

 以上で、t のある区間 [- e, e] が存在して (14-4) の解が唯一つ存在し、ja, t(s)s について滑らかになることがわかりました。

 さて、bÎI ならば

(14-30a)  
—–
t
 f(jb, t(s)) = (vt f )(jb, t(s))

(14-30b)  jb, b(s) = s

が成り立ちますが、これらの sja, b(s) を代入すれば、

(14-31a) 
—–
t
 f(jb, t(ja, b(s))) = (vt f )(jb, t(ja, b(s)))

(14-31b)  jb, b(ja, b(s)) = ja, b(s)

 これは、jb, t(ja, b(s))ja, t(s)t = b で等しく、かつ同じ微分方程式を満たすことを意味していますから、解の一意性によって両者は一致します:

(14-32)  jb, t(ja, b(s)) = ja, t(s)

 すなわち

(14-33)  jb, t ° ja, b = ja, t

が得られます。特に t = a とすれば、

(14-34)  jb, a ° ja, b = ja, a = id

となるので、ab を入れかえれば、ja, bjb, a は互いに逆写像であることがわかります。

 さてここでさらに、M は縁を持たず、vt については、M の座標系 Λ で、任意の m = 0, 1, 2 ,¼ に対して

(14-35)  d º inf { | η - ξ |  |  xÎΛξÎx(Kx) ,ηÎRn \ x(Ux) } > 0

(14-36)  N º sup { |vt xi(t, s)|  |  xÎΛ ; 1 £ i £ n ; tÎI ; sÎUx } < ¥

(14-37)  L º sup { |( jvt xixj)(t, s)|  |  xÎΛ ; 1 £ i, j £ n ; tÎI ; sÎUx } < ¥

を満たすものが存在するとします。ただし、Uxx の定義域で、Kx (xÎΛ) は、それぞれが Ux に含まれるコンパクト集合からなる M の被覆です。なお、I , M が共にコンパクトな場合、あるいは M がコンパクトで vtt に依存しない場合には、条件は満たされています。

 これらの条件のもとでは、(14-5) は、すべての aÎIsÎM に共通の e > 0 が存在して、| t - a | < e で定義された解を持ちます。いいかえると、(14-5) の解 ja, t は、| t - a | < e において M 全体で定義されます。ところが (14-33) の関係を繰り返し使うと、ja, t はすべての tÎIM 全体で定義されることがわかります。
 しかも、すべての ja, t はなめらかであり、しかも (14-34) により、滑らかな逆写像 jt, a を持ちますから、これらはすべて微分同型であることがわかります。

 さて、特に vtt に依存しない場合は、t については R 全体で定義でき、しかも t について平行移動してもやはり解になりますから、解の一意性により、

(14-38)  ja+t', t+t' = ja, t

 そこで

(14-39)  jt º j0, t

と書けば、任意の aÎR に対して (14-38)t' = - a と置くことにより

(14-40)  ja, t = jt-a

となり、(14-33)(14-5b) の関係は、それぞれ

(14-41a)  jt ° jt' = jt+t'

(14-41b)  j0 = id

と書くことができます。

 最後に、一般の場合に戻り、M の部分多様体 (L, c)aÎI が与えられたとき、

(14-42)  yt = ja, t ° c

と置きます。(14-5a) の左から c* を施して、c* ° ja, t* = yt* に注意すると、

(14-43a) 
—–
 ¶
t
(yt*f ) = yt*(vt f )       (  fÎE(M ) )

が得られ、(14-5b)s のところに c(s) を代入すると、

(14-43b)  ya = c

が得られます。このとき、M の部分多様体の族 (L, yt) ( tÎI ) を、vt に沿って動く部分多様体とよぶことにします。

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