微分多様体


21.共変微分

 ベクトル場 A , B に対して第三のベクトル場 ÑAB が与えられ、次の4条件:

(21-1)  ÑA+A' B = ÑAB + ÑA' B

(21-2)  ÑfAB = f ÑAB

(21-3)  ÑA(B + B' ) = ÑAB + ÑAB'

(21-4)  ÑA( fB) = f ÑAB + (Af )B

を満たすとき、これをアファイン接続と呼びます。アファイン接続は、次の条件:

(21-5)  ÑAB - ÑB A = [A, B]

を満たすとき対称であると言います。

 さて、p階の共変テンソル T に対して、ÑAT

(21-6)  (ÑAT )(D1 ,¼, Dp ) = A{T(D1 ,¼, Dp )} -  p
å
i=1
T(D1 ,¼, Di-1 , ÑADi , Di+1 ,¼, Dp )

で定義します。ただし p= 0 すなわち T がスカラー f の場合は

(21-7)  ÑA f = Af

と置きます。(21-4)(21-6) により、

(21-8)  (ÑAT )( f1D1 ,¼, fpDp )
= A{ f1 ¼ fpT(D1 ,¼, Dp )} -  p
å
i=1
 f1 ¼ fi-1 fi+1 ¼ fpT(D1 ,¼, Di-1 ,  fi ÑADi + (Afi)Di , Di+1 ,¼, Dp )
= A{ f1 ¼ fpT(D1 ,¼, Dp )} -  p
å
i=1
 f1 ¼ fpT(D1 ,¼, Di-1 , ÑADi , Di+1 ,¼, Dp ) -  p
å
i=1
 f1 ¼ fi-1 fi+1 ¼ fp (Afi)T(D1 ,¼, Dp )
= f1 ¼ fp A{T(D1 ,¼, Dp )} -  p
å
i=1
 f1 ¼ fpT(D1 ,¼, Di-1 , ÑADi , Di+1 ,¼, Dp )

= f1 ¼ fp(ÑAT )(D1 ,¼, Dp )

が成り立ちますから、ÑATT と同じく p 階の共変テンソルであることがわかります。(21-6) により、

(21-9)  ÑA+A' T = ÑAT + ÑA' T

(21-10)  ÑfAT = f ÑAT

(21-11)  ÑA(T + T ' ) = ÑAT + ÑAT '

(21-12)  ÑA( f T ) = f ÑAT + (Af )T

が成り立つことがわかります。
 また、T が反対称のときは、Di の中に同じものがあると (21-6) の右辺は 0 になるので、ÑAT も反対称、すなわち ÑAp 形式を p 形式に写すことがわかります。

 1 形式 w に対する ÑAw(21-6) で定義されたので、( p, q)-テンソル T についても ÑAT

(21-13)  (ÑAT )(D1 ,¼, Dp ; w1 ,¼, wq )
                    = A{T(D1 ,¼, Dp ; w1 ,¼, wq )} -  p
å
i=1
T(D1 ,¼, Di-1 , ÑADi , Di+1 ,¼, Dp ; w1 ,¼, wq ) -  q
å
i=1
T(D1 ,¼, Dp ; w1 ,¼, wi-1 , ÑAwi , wi+1 ,¼, wq )

で定義することができます。1 形式について (21-12) が成り立つことから、ÑAT( p, q)-テンソルであり、(21-9)~(21-12) が成り立つことがわかります。

 また、2つのテンソル S , T のテンソル積については、定義式 (21-13) から明らかに、

(21-14)  ÑA(SÄT ) = (ÑAS)ÄT + SÄ(ÑAT )

が成り立ちます。更に、p 形式 aq 形式 b に対しては、(21-6) による、

(21-15)  ÑA(a ^ b)(D1 ,¼, Dp+q ) = A{(a ^ b)(D1 ,¼, Dp+q )} -  p+q
å
i=1
(a ^ b)(D1 ,¼, Di-1 , ÑADi , Di+1 ,¼, Dp+q )

(4-4) を比較すれば、

(21-16)  ÑA(a ^ b) = (ÑAa) ^ b = a ^ (ÑAb)

が成り立つことがわかります。
 さて、任意のアファイン接続 ÑA と任意の ( p, q)-テンソル T に対し、ÑT

(21-17)  (ÑT )(D, D1 ,¼, Dp ; w1 ,¼, wq ) = (ÑDT )(D1 ,¼, Dp ; w1 ,¼, wq )

で定義すれば、(21-9),(21-10) により ÑT( p+1, q)-テンソルになることがわかります。この ÑT を、与えられたアファイン接続による T共変微分と呼びます。

 ここで、計量 g を持つ Riemann多様体において、計量の共変微分が恒等的にゼロ、すなわち

(21-18)  Ñg = 0

が成り立つような対称なアファイン接続を求めてみましょう。(21-6)Tg を代入して左辺を 0 と置き、D1BD2C と書き、更に g(A, B) を内積表示 A · B で表せば、条件 (21-18) は次のようになります。

(21-19)  A(B · C) = B · ÑAC + C · ÑAB

 A , B , C を順に入れ替えれば、

(21-20)  B(C · A) = C · ÑB A + A · ÑBC

(21-21)  C(A · B) = A · ÑC B + B · ÑC A

が得られますが、(21-19) + (21-20) - (21-21) を作って (21-5) を使えば、

(21-22)  A(B · C) + B(C · A) - C(A · B) = C · (ÑAB + ÑB A) + B · [A, C] + A · [B, C]

 両辺に、

(21-23)  C · [A, B] = C · (ÑAB - ÑB A)

を辺々加えれて移項し、両辺を 2 で割れば、

(21-24)  C · ÑAB = {A ; B, C} + {B ; A, C} - {C ; A, B}
———————————————
2

 ただし、

(21-25)  {A ; B, C} = A(B · C) - A · [B, C]

です。もし (21-18) を満たす対称なアファイン接続が存在すれば (21-24) を満たさなければならないので、そのようなアファイン接続の一意性は証明されました。次に存在を示すことにします。まず、(21-25) から、任意のスカラー場 f に対して

(21-26)  { fA ; B, C} = f {A ; B, C}

(21-27)  {A ; fB, C} = f {A ; B, C} + (Af )B · C + (Cf )A · B

(21-28)  {A ; B, fC} = f {A ; B, C} + (Af )B · C - (Bf )A · C

が成り立っていることに注意します。(21-24) の右辺を F(A, B ; C) と書くと、(21-26),(21-28) により、

(21-29)  F(A, B ; fC) = fF(A, B ; C)

が成り立ちます。ゆえに F(A, B ; C) は、A , B を固定すると、C を引数とする 1 形式になるので、これを wA,B と書きます:

(21-30)  F(A, B ; C) = wA,B(C)

 そこで、Ñ

(21-31)  ÑAB = wA,B /ds

で定義します。すると、ÑAB · C = ÑAB · ds(C) = wA,B (C) = F(A, B ; C) なので (21-24) が成り立ちますから、(21-26)~(21-28) を使えば

(21-32)  C · Ñ fAB = F( fA, B ; C) = fF(A, B ; C) = fC · ÑAB

(21-33)  C · ÑA( fB) = F(A, fB ; C) = fF(A, B ; C) + (Af )B · C = fC · ÑAB + (Af )B · C

が成り立ちます。C は任意でしたから、(21-2),(21-4) が成り立つことがわかり、ÑAB はアファイン接続になっていることが示されました。残るは (21-5)(21-18) が成り立つことの証明です。
 まず、(21-24),(21-25) により、

(21-34)  C · (ÑAB - ÑBA) = - {C ; A, B} + {C ; B, A}
——————————–
2
= C · [A, B]

が成り立ち、C は任意ですから (21-5) が成り立ちます。また、(21-24),(21-25) により、

(21-35)  B · ÑAC + C · ÑAB = {A ; C, B} + {A ; B, C}
—————————–
2
= A(B · C)

ですから (21-18) も成り立ちます。以上で対称なアファイン接続の存在と一意性が確かめられました。

 次に、アファイン接続と共変微分の座標による表示を求めておきましょう。座標系 x に対して

(21-36)  Γ ijk = Ѷ/¶xj æ
è
 
—–
 ¶
xk
ö
ø
(xi) 

と置き、

(21-37)  A = Aj  ¶ 
—–
 ¶
xj

(21-38)  B = Bk  
—–
 ¶
xk

に対して、(21-1)~(21-4) を使うと、

(21-39)  (ÑAB)(xi) = Aj Ѷ/¶xj æ
è
 Bk  
—–
 ¶
xk
ö
ø
(xi) = Aj ì
í
î
Bk Ѷ/¶xj æ
è
 
—–
 ¶
xk
ö
ø
+ Bk
——
xj
 
—–
 ¶
xk
ü
ý
þ
(xi) = Aj ì
í
î
Bi
——
xj
+ Γ ijk Bk ü
ý
þ

 すなわち、共変微分 (21-17) の成分表示における第 1 成分を、セミコロンに続く添字“ ; j ”であらわせば、

(21-40)  Bi; j º (Ѷ/¶xjB)(xi) = Bi
——
xj
+ Γ ijk Bk

 また、(1-47)(21-39) により、アファイン接続の対称性 (21-5) は、Γ ijk に対する条件として

(21-41)  Γ ijk = Γ ikj

と書けることがわかります。また (21-6) で、A¶/¶xk を、D1, D2 , ¼¶/¶xi, ¶/¶xj , ¼ を代入し、(21-36) による

(21-42)  ÑAD1 = Γ mki  
—–
 ¶
xm

等を用いれば、共変テンソルの共変微分の成分表示として

(21-43)  Ti¼j;k = Ti¼j
——–
xk
- Γ mki Tm¼j - ¼ - Γ mkj Ti¼m

が得られます。特に、1 形式 w = dxr に対しては、wi = dir ですから、A = ¶/¶xk と置けば、

(21-44)  ÑA(dxr ) = ÑAw = (Ñw)(A, ¶/¶xi) dxi = wi;k dxi = - Γ mki wm dxi = - Γ rkm dxm

となります。ゆえに (21-13) で、A¶/¶xk を、D1 , ¼¶/¶xi , ¼ を、w1 , ¼dxr , ¼ を代入すれば、( p, q)-テンソルの共変微分の成分表示として

(21-45)  Ti¼jr¼s;k = Ti¼jr¼s
————
 xk
- Γ mki Tm¼jr¼s - ¼ - Γ mkj Ti¼mr¼s + Γ rkm Ti¼jm¼s + ¼ + Γ skm Ti¼jr¼m

が得られます。さて、(21-45) において、添字 ir を縮約すると、右辺の Γ mki Tm¼jr¼sΓ rkm Ti¼jm¼s をそれぞれ縮約したものは等しくなり、キャンセルします。すなわち、これは T を先に縮約してから共変微分したものの成分と等しくなるので、この成分を Tm¼jm¼s;k と書いても意味の紛れが生じないことがわかります。

 さて、(21-25) により、

(21-46)  ì
í
î
 
—–
 ¶
xi
;  ¶ 
—–
 ¶
xj
,  
—–
 ¶
xk
ü
ý
þ
= gjk
——
xi

 ゆえに (21-24)A = ¶/¶xi , B = ¶/¶xj , C = ¶/¶xk と置くことにより

(21-47)  gkm Γ mij = 1
—–
2
ì
í
î
gjk
——
xi
+ gik
——
xj
- gij
——
xk
ü
ý
þ

 すなわち

(21-48)  Γ kij =  gkm
——
 2 
ì
í
î
gjm
——
xi
+ gim
——
xj
- gij
——
xm
ü
ý
þ

が得られます。

 最後に、計量テンソル g に関する変分を考えることにしましょう。計量テンソル g がパラメタ l を持ち変化すると仮定します。このとき、ベクトル場 A , B 及び1形式 w に対し、

(21-49)  ()(A, B ; w) º d
—–
d
l
 w(ÑAB) ½
½
½
l=0 dl

と置くと、(21-1),(21-2) により、この左辺は A について E(M )-線形であり、また A , Bl を含まないので、(21-4) から

(21-50)  d{ÑA( fB)} = d{ f ÑAB} + d{(Af )B} = d{ f ÑAB} = f d(ÑAB)

となるので、これと (21-3) により、(21-49) の左辺は B についても E(M)-線形であることがわかります。また、wl を含まないので、これは w に対しても E(M)-線形です。すなわち、(2,1)-テンソルであることがわかります。(21-39) により

(21-51)  w(ÑAB) = wiAj ì
í
î
Bi
——
xj
+ Γ ijk Bk ü
ý
þ

ですから、これと (21-49) を比較すれば、 の成分表示

(21-52)  ()ijk = d
——
d
l
Γ ijk ½
½
½
l=0 dl = dΓ ijk

が得られます。

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