微分多様体


26.停留値と測地線

 n次元Riemann多様体 M にベクトル場 v が与えられていて、その流線、すなわち微分方程式


 (26-1)  
 
ì
ï
í
ï
î
dγ t(s)
——–
 d
t 
= vγt(s)         ( sÎM )
γ 0(s) = s

の解 γ t(s) は、各 s に対して t の極大な定義域が開区間 I s º ] a s, b s [ になるものとします。さらに、M の任意のコンパクト集合 K に対して

(26-2)  K s º { tÎI s | γ t(s)ÎK }

I s のコンパクト部分集合になるものと仮定します。

 さて、一般にベクトル場 v に依存する M 上の1形式 w が与えられ、v の微小変化 dv に対する変化量 dw について

(26-3)  (dw)(v) = 0

が成り立つ、すなわち実パラメター l に滑らかに依存する任意のベクトル場 vl (ただし v0 = v )に対して

(26-4)  ¶w|v=vl
———
 ¶l 
½
½
½
l=0 (v) = 0

が成り立っているものとします。このとき、Γ を、流線に添った両端を含む開曲線、すなわち、ある sÎMto > 0 に対する

(26-5)  Γ = { γ t(s) | 0 £ t £ to }

とし、wΓ に対する作用積分

(26-6)  SΓ (w) = òΓ w

で定義します。

 ここで、v を、それに伴う流線 Γ が両端で固定されるように微小変化させたとき、SΓ (w) の微小変化が 0 、すなわち作用積分が停留値を取るときの Γ を求めてみましょう。
 KÌMΓ の両端点を含まない任意のコンパクト集合、D を台が K に含まれる任意のベクトル場とします。σl を、微分方程式


 (26-7)  
 
ì
ï
í
ï
î
dσl(s)
——–
 d
l 
= Dσl(s)         ( sÎM )
σ0(s) = s

の解とすると、解の一意性と第14節 (14-41) により

(26-8)  σl(s) = s       ( sÏK )

(26-9)  σl+m = σl ° σm

が成り立つので、(26-9) により特に

(26-10)  σl ° σ-l = σ-l ° σl = σ0 = id

となるので σlM からそれ自身への微分同型です。ゆえに、この σl を用いて、各 l に対して M 上のベクトル場 vl

(26-11)  vlσl(s) º (σl)* vs = σl( γ t(s))
————–
 ¶
t 
½
½
½
t=0

で定義することができます。(26-7),(26-1) により

(26-12)  v0 = v

が成り立ちます。また、γ t についても

(26-13)  γ t+t' = γ t ° γ t'

が成り立つので

(26-14)  vlσl(γt(s)) = σl( γ t'(γ t(s)))
——————–
 ¶t' 
½
½
½
t'=0 = σl( γ t'+t(s)))
——————
 ¶
t' 
½
½
½
t'=0 = σl( γ t(s)))
—————
 ¶
t 

となり、

(26-15)  Γ l = { σl( γ t(s)) | 0 £ t £ to }

vl の流線に沿った曲線であることがわかります。また、明らかに

(26-16)  Γ 0 = Γ

であり、(26-8) により Γ l の端点は Γ のそれと一致しています。さて、微分形式に対する演算子 d/dl

(26-17)  d
—–
d
l
º (σ-l)* °
—–
¶l
° (σ l)* = LD +
—–
¶l

で定義し、wvvl で置き換えたものを wl と書くことにします。このとき、l = 0 において、

(26-18)   d SΓl(wl)
————
 d
l 
= òΓ d
—–
d
l
wl 

= òΓ æ
è
LD w + ¶wl
——
 ¶l 
ö
ø
      ( ∵ w0 = w)

= òΓ æ
è
d(iD w) + iDdw + ¶wl
——
 ¶l 
ö
ø
      ( ∵ (7-1) )

= òΓ iD w + òΓ æ
è
iDdw + ¶wl
——
 ¶l 
ö
ø
      ( ∵ (12-16) )

= òΓ æ
è
iDdw + ¶wl
——
 ¶l 
ö
ø
      ( ∵ D = 0  on  Γ )

= ò to


0
æ
è
iDdw + ¶wl
——
 ¶l 
ö
ø


γ t(s)
(vγt(s)) dt       ( ∵ (11-58),(26-1) )

= ò to


0
æ
è
iDdw(v) + ¶wl
——
 ¶l 
(v) ö
ø
( γ t(s)) dt

= ò to


0
(dw)(D, v)( γ t(s)) dt      ( ∵ (6-1),(26-4) )

= - ò to


0
(dw)(v, D)( γ t(s)) dt

= - ò to


0
(ivdw)(D)( γ t(s)) dt

 ゆえに、SΓ (w)Γ において停留値を取るなら、任意の D に対して (26-18)0 にならなければなりませんから、v の満たすべき式として、

(26-19)  ivdw = 0  on  Γ

が得られます。

 さて、条件 (26-3) は、wv を含まなければ当然成り立ちますが、v を含む例として、v|v º v · v > 0 を満たす場合、

(26-20)  w = u · ds       æ
è
u =  v
—–
|v|
ö
ø

という1形式を考えることができます。

(26-21)  |u = u · u = 1

ですから、
(26-22)  (dw)(v) = (du · ds)(v) = du · v = |v|du · u = |v|
—–
2
d(|u|²) = 0

となり、確かに (26-3) は満たされています。ここで、この w に対する方程式 (26-19) を実際に解いてみましょう。

(26-23)  ivdw = |v|iudw

ですから、iudw = 0 を解けば十分です。ところで

(26-24)  {iud(u · ds)}(D)
= d(u · ds)(u, D)       ( ∵ (6-1) )

= Ñ(u · ds)(u, D) - Ñ(u · ds)(D, u)       ( ∵ (22-1) )

= Ñu(u · ds)(D) - ÑD(u · ds)(u)       ( ∵ (21-17) )

= (Ñuu · ds)(D) - (ÑDu · ds)(u)       ( ∵ (22-9) )

= (Ñuu · ds)(D) - (ÑDu) · u       ( ∵ (19-15) )

= (Ñuu · ds)(D) - 1
—–
2
D(u · u)       ( ∵ (21-19) )

=
(Ñuu · ds)(D)       ( ∵ (26-21) )

で、D は任意ですから

(26-25)  iud(u · ds) = Ñuu · ds

 したがって

(26-26)  Ñuu = 0

という方程式が得られます。
 さて、(26-20) に対する作用積分 SΓ (w) は何を意味しているでしょうか。(26-20)u は、第19節 (19-78)t に他なりませんから、

(26-27)  SΓ(w) = òΓ u · ds = òΓ u · uds = òΓ ds

 すなわち SΓ (w) は曲線 Γ長さを表しています。すなわち方程式 (26-26) は、長さが停留値を持つ曲線 Γ を求める方程式であることがわかります。この意味で、(26-26)測地線の方程式、その解曲線のことを測地線と呼びます。
 測地線のパラメターを、t から長さを表す別のパラメター s に変換して、(26-26) を座標表示してみましょう。Γ の点の第 i 座標を xi と書けば、

(26-28)    dxi
—–
 d
s 
= ui

ですから、(21-39) により、一般のベクトル場 A に対して

(26-29)  (ÑuA)k = ui æ
è
Ak
——
xi
+ Γ kij Aj ö
ø
=  dxi
—–
 d
s 
æ
è
Ak
——
xi
+ Γ kij Aj ö
ø
=  dAk
——
 d
s 
+ Γ kij  dxi
—–
 d
s 
Aj

 特に、Au を代入すれば、測地線の方程式 (26-26) の座標表示として

(26-30)   d²xk
——
 ds² 
+ Γ kij  dxi
—–
 d
s 
 dxj
—–
 d
s 
= 0

が得られます。

 次に、(26-3) を満たす vw に加えて連続の式

(26-31)  div(rv) = 0

を満たすスカラー場 rM の相対コンパクトな領域 Ω が与えられたとき、Ω における作用積分:

(26-32)  SΩ(r, v, w) = òΩ w(v)rdV

を考え、任意のコンパクト集合 K Ì Ω に対し、rvK の外では固定し、かつ Ω では (26-31) が成り立つようにしながら微小変化させたとき、SΩ(r, v, w) が停留値を取るための条件を求めてみましょう。
 w ^ (rdV)n次元多様体の n + 1 次形式なので 0 です。したがって、(6-12),(19-42) より、

(26-33)  w(v)rdV = (ivw)rdV = iv{w ^ (rdV)} + w ^ iv(rdV) = w ^ iv(rdV) = w ^ (rv · dS)

となりますから、SΩ はまた

(26-34)  SΩ(r, v, w) = òΩ w ^ iv(rdV) = òΩ w ^ (rv · dS)

とも書くことができます。

 さて、KΩ に含まれる任意のコンパクト集合、D を台が K に含まれる任意のベクトル場、γ t(26-1) の、σl(26-7) のそれぞれ解とします。また、vl(26-11) で定義し、スカラー場 rl を、K の外では r と一致し、

(26-35)  div(rlvl) = 0

を満たすように取ります。まず、このような rl が一意的に存在することを確かめましょう。
 まず存在を仮定して一意性を証明します。(26-11),(26-11)(9-39) により、(9-44),(9-45)yσl を、Dvl を、D'v をそれぞれ代入したものが成り立ちますから、

(26-36)  (σl)* ° ivl = iv ° (σl)*

(26-37)  (σl)* ° Lvl = Lv ° (σl)*

が成立します。よって

(26-38)  
—–
t
( γ t )*(σl)*(rldV) = ( γ t )*Lv{(σl)*(rldV)}       ( ∵ (15-6),(15-7) )

= ( γ t )*(σl)*Lvl(rldV)       ( ∵ (26-37) )

= ( γ t )*(σl)*{div(rlvl)dV}       ( ∵ (20-33) )

= 0       ( ∵ (26-35) )

 これは、( γ t )*(σl)*(rldV)t に依存しないことを意味しているので、γ0 = id により、

(26-39)  ( γ t )*(σl)*(rldV) = (σl)*(rldV)

すなわち任意の sÎΩ

(26-40)  ( γ t )*{(σl)*(rldV)}γt(s) = {(σl)*(rldV)}s

 同様に、

(26-41) 
—–
t
( γ t )*(rdV) = ( γ t )*Lv(rdV)       ( ∵ (15-6),(15-7) )

= ( γ t)*{div(rv)dV}       ( ∵ (20-33) )

= 0       ( ∵ (26-31) )

から

(26-42)  ( γ t )*(rdV) = rdV

すなわち任意の sÎΩ

(26-43)  ( γ t )*(rdV)γt(s) = (rdV)s

が得られます。特に sÏK とすれば、rl(s) = r(s) , σl(s) = s , (σl)* = id なので、(26-39)(26-41) により

(26-44)  ( γ t )*{(σl)*(rldV)}γt(s) = {(σl)*(rldV)}s = (rdV)s = ( γ t )*(rdV)γt(s)

 ( γ t )* は1対1ですから、

(26-45)  {(σl)*(rldV)}γt(s) = (rdV)γt(s)

 Ω の任意の点は、このような s と、ある t により、γ t(s) と表示されますから、Ω 全域で

(26-46)  (σl)*(rldV) = rdV

が成り立つことがわかります。これは

(26-47)  rl = (σ-l)*(rdV)/dV

を意味しますから、これで rl が一意的に定まることがわかりました。逆に rl(26-47) で定義すれば、(26-46) が成り立ちますから、(26-31),(26-37) により、

(26-48)  0 = div(rv)dV = Lv(rdV) = Lv(σl)*(rldV) = (σl)*Lvl(rldV) = (σl)*{div(rlvl)dV}

で、(σl)* は1対1ですから、確かに (26-35) が成り立つことがわかります。さて、

(26-49)  d
—–
d
l
ivl(rldV)
= (σ-l)*
—–
¶l
(σl)*ivl(rldV)       ( ∵ (26-17) )

= (σ-l)*
—–
¶l
iv{(σl)*(rldV)}       ( ∵ (26-36) )

= (σ-l)*
—–
¶l
iv(rdV)       ( ∵ (26-46) )

= 0

ですから、l = 0 において、

(26-50)  d SΩ(rl, vl, wl)
——————–
 d
l 
= òΩ d
—–
d
l
{wl ^ ivl(rldV)}

= òΩ dwl
——
d
l 
^ iv(rdV) + òΩ w ^ d
—–
d
l
ivl(rldV)

= òΩ dwl
——
d
l 
^ iv(rdV)       ( ∵ (26-49) )

= òΩ æ
è
LD w + ¶wl
——
¶l 
ö
ø
^ iv(rdV)       ( ∵ w0 = w , r0 = r , v0 = v )

= òΩ æ
è
iDdw + ¶wl
——
¶l 
ö
ø
^ iv(rdV) + òΩ diD w ^ iv(rdV)

= - òΩ  iv ì
í
î
æ
è
iDdw + ¶wl
——
¶l 
ö
ø
^ rdV ü
ý
þ
+ òΩ  iv æ
è
iDdw + ¶wl
——
¶l 
ö
ø
rdV + òΩ d{(iD w)iv(rdV)} - òΩ (iD w)div(rdV) 

= 0 + òΩ æ
è
iDdw + ¶wl
——
¶l 
ö
ø
(v)rdV + òΩ (iD w)iv(rdV) - òΩ (iD w) div(rv)dV

= òΩ (iDdw)(v)rdV       ( ∵ (26-4)  , D = 0  on  Ω , (26-31) )

= òΩ (dw)(D, v)rdV

= - òΩ r(dw)(v, D)dV

= - òΩ r (ivdw)(D)dV

 ゆえに、SΩ(r, v, w)Ω において停留値を取るなら、任意の D に対して (26-50)0 にならなければなりませんから、r , v の満たすべき式として、

(26-51)  rivdw = 0

が得られます。

 さらに、問題を拡張して、(26-3) を満たす k 個の 1 形式 wi ( i = 1 ,¼, k ) と

(26-52)  div(riv) = 0

を満たす ri ( i = 1 ,¼, k ) に対する Ω 上の積分の和:

(26-53)  SΩ º  k
å
i=1
SΩ(ri , v, wi)       (  SΩ(ri , v, wi) = òΩ riwi(v)dV  )

が停留値を取るための条件を求めると、(26-50)r , w のそれぞれに ri , wi を代入して和を取ることにより、ri , v の満たすべき式として、

(26-54)   k
å
i=1
riivdwi = 0

が得られます。

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