微分多様体


27.アファイン空間

 集合 M は、ある実ベクトル空間 VM が与えられ、任意の sÎMpÎVM に対する和 s + pÎM が定義されていて、

(27-1)  s + p = s  Û  p = 0

(27-2)  (s + p) + q = s + ( p + q)

(27-3)  "s, s'ÎM : $pÎV : s' = s + p

が成り立つとき、Mアファイン空間VMM基準ベクトル空間といいます。s + p = s + q が成り立てば、(27-2) により s + p = s + q = s + ( p + q - p) = (s + p) + (q - p) ですから、(27-1) により q - p = 0 、すなわち

(27-4)  s + p = s + q  Þ  p = q

が成り立ちます。このことから (27-3) を満たす p は一意的であることがわかります。そこで、このような p を、以後 s'-s と書くことにします。(27-2)s'-s = p , s"-s' = q と置くと、左辺が s" となることから、

(27-5)  s"-s = (s"-s') + (s'-s)       ( s, s', s"ÎM )

が成り立つことがわかります。
 アファイン空間 MN に対し、写像 f : M ® N は、ある sÎM に対し、pÎVMf#( p) º f(s + p)-f(s)ÎVN を対応させる写像が線形であるときアファイン写像といいます。任意の s'ÎM に対して f# の線形性により

(27-6)  f(s' + p)-f(s') = f(s + (s'-s) + p)-f(s + (s'-s))

= {f(s + (s'-s) + p)-f(s)} - {f(s + (s'-s))-f(s)}       ( ∵ (27-5) )

= f#((s'-s) + p) - f#(s'-s)

= f#( p)

ですから、f#sÎM の取り方に依存しません。逆に、任意に選んだ sÎM , s'ÎN 及び線形写像 j : VM ® VN に対し、f# = j かつ f(s) = s' となる M から N へのアファイン写像 f が唯一つ存在して

(27-7)  f(s + p) = s' + j( p)       (  pÎVM )

で与えられることがわかります。
 以後 VM は有限次元である場合のみを考え、その次元を n と書き、これをアファイン空間 M次元といいます。任意のベクトル空間は、それ自身を基準ベクトル空間とするアファイン空間とみなせますから、特に Rnn次元のアファイン空間です。そこで、n次元アファイン空間 M に対し、M から Rn への全単射なアファイン写像 x のことを、Mアファイン座標と呼びます。アファイン写像 x がアファイン座標となるための条件は、x# が正則であることです。x#( p)pÎVM の座標と呼ぶことにします。

 x , yM のアファイン座標とすると、y ° x-1Rn からそれ自身へのアファイン写像ですから1次変換、従って特に滑らかです。すなわちアファイン空間は、アファイン座標を座標とする微分多様体とみなすことができます。そしてその次元はアファイン空間の次元に一致します。また、x , y が共に同じ点 sÎMRn に写すならば、y ° x-1 は線形写像で

(27-8)  y ° x-1 = y# ° x#-1

が成り立ちます。

 次に、任意に sÎM , vÎTsM を取ると、s0 に写すアファイン座標 x に対し、

(27-9)  vi = vxi       ( i = 1 ,¼, n )

(27-10)  υ = (v¹ ,¼, vn ) Î Rn

(27-11)  p = x#-1(υ)

と置けば、任意の実数 t に対して

(27-12)  x(s + tp) = x(s) + x#(tp) = tx#(p) = tυ

となりますから、任意の fÎE(M ) に対し、

(27-13)  vf =  n
å
i=1
 vi f 
—–
xi
(s) =  n
å
i=1
vii( f ° x-1)(0) =
—–
d
t
( f ° x-1)(tυ) ½
½
½
t=0 =
—–
d
t
 f(s + tp) ½
½
½
t=0

が成り立ちます。また逆に、pÎVM が任意の fÎE(M ) に対して

(27-14)  vf =
—–
d
t
 f(s + tp) ½
½
½
t=0

を満たすならば、特に f = xi と置けば、

(27-15)  xi(s + tp) = xi(s) + xi#(tp) = txi#( p)

なので、vxi = xi#( p) となり、υ(27-9),(27-10) で定義すると (27-11) が成り立つので、(27-14) を満たす pÎVM は一意的に定まります。逆に、任意の pÎVM に対し、(27-14)v を定義すれば、明らかに vs における接ベクトルになります。
 従って、vÎTsMpÎVM は、(27-14) によって一対一に対応しており、しかもその対応は線形であることがわかりました。これは、TsMVM が線形空間として同一視できることを意味しています。

 さて、TsM = VM ですから、VM 上の正値な計量(内積) g は、E(M ) 上の正値計量テンソルとみなすことができます。したがって、g に対する VM の正規直交基底 ei ( i = 1 ,¼, n ) が存在して、任意に選んだ基準点 soÎM に対し、任意の sÎM

(27-16)  s = so +  n
å
i=1
xiei       ( xiÎR  ;  i = 1 ,¼, n )

と一意的に表すことができます。この x = (x¹ ,¼, xn ) はアファイン座標ですが、これを特に正規直交座標と呼ぶことにします。正規直交座標のもとでは

(27-17)  gij = dij

(27-18)  det gx = 1

ですから、

(27-19)  ds = (dx¹ ,¼, dxn )

(27-20)  dS = (dx² ^ ¼ ^ dxn , ¼ , (-1)i-1dx¹ ^ ¼ ^ dxi-1 ^ dxi+1 ^ ¼ ^ dxn , ¼ , (-1)n-1dx¹ ^ ¼ ^ dxn-1 )

(27-21)  dV = dx¹ ^ ¼ ^ dxn

(27-22)  Di = D i

(27-23)  A · B =  n
å
i=1
Ai Bi

(27-24)  A ´ B = ( A²B³ - A³B² , A³B¹ - A¹B³ , A¹B² - A²B¹ )       ( n = 3 )

(27-25)  grad f = æ
è
f 
—–
x1

,
¼
,
f 
—–
xn
ö
ø
= Ñf       (   Ñ º æ
è
 
—–
x1

,
¼
,
 
—–
xn
ö
ø
 )

(27-26)  div D =  n
å
i=1
D i
——
xi
= Ñ · D

(27-27)  rot D = æ
è
D3
——
x2
- D2
——
x3

,
D1
——
x3
- D3
——
x1

,
D2
——
x1
- D1
——
x2
ö
ø
= Ñ ´ D       ( n = 3 )

(27-28)  ÑD =  n
å
i=1
 D i  
—–
xi
= D · Ñ

(27-29)  Γ kij = gkm
——
 2 
ì
í
î
gjm
——–
xi
+ gim
——–
xj
- gij
——–
xm
ü
ý
þ
= 0

(27-30)  Ti¼jr¼s; k = Ti¼jr¼s
————
 xk

(27-31)  D =  n
å
i=1
² 
——
xi²
= Ñ · Ñ

が成り立ちます。更に、s を位置ベクトルとするとき、

(27-32)  ÑD s = D       ( ∵ (27-28) )

(27-33)  div s = n       ( ∵ (27-26) )

(27-34)  rot s = 0       ( ∵ (27-27) )

 ただし (27-34) では n = 3 です。また C を定ベクトルとするとき、

(27-35)  ÑD C = 0       ( ∵ (27-28) )

(27-36)  div C = 0       ( ∵ (27-26) )

(27-37)  rot C = 0       ( ∵ (27-27) )

(27-38)  grad (C · s) = s ´ rot C + C ´ rot s + ÑC s + ÑsC = C       ( ∵ (22-23),(27-37),(27-34),(27-32),(27-35) )

(27-39)  div (C ´ s) = s · rot C - C · rot s = 0       ( ∵ (20-14),(27-37),(27-34) )

(27-40)  rot (C ´ s) = C div s - s div C - ÑC s + ÑsC = 3C - C = 2C       ( ∵ (22-28),(27-33),(27-36),(27-32),(27-35) )

が成り立ちます。ただし (27-37),(27-40) では n = 3 です。また、第20節の (20-21)Bf C (ただし C は定ベクトル)を代入すれば、

(27-41)  òΩ C · grad f dV = òΩ div( f C )dV = òΩ  f C · dS

となりますが、アファイン空間であることからベクトルは多様体上の点によらない共通の VM に属すので、C が積分記号の外に出せます。ゆえに C の任意性により、

(27-42)  òΩ grad f dV = òΩ  f dS

が得られます。以下 n = 3 とします。(20-21)BC ´ D (ただし C は定ベクトル)を代入すれば、

(27-43)  òΩ C · rot D dV = òΩ div(D ´ C )dV = òΩ (D ´ C ) · dS = - òΩ C · (D ´ dS)

となりますが、同様に C が積分記号の外に出せるので、C の任意性により、

(27-44)  òΩ rot D dV = - òΩ D ´ dS

が得られます。また、第20節 (20-22)Af C (ただし C は定ベクトル)を代入すれば、

(27-45)  - òS C · (grad f ´ dS) = òS (grad f ´ C ) · dS = òS rot( f C ) · dS = òS  f C · ds

となりますが、これも C が積分記号の外に出せるので、C の任意性により、

(27-46)  òS grad f ´ dS = - òS  f ds

が得られます。また、(20-22)BC ´ s (ただし C は定ベクトル)を代入し、(27-40) を使えば、

(27-47)  òS C · (s ´ ds) = òS (C ´ s) · ds = òS rot(C ´ s) · dS = 2 òS C · dS

となりますが、これも C が積分記号の外に出せるので、C の任意性により、

(27-48)   òS s ´ ds = 2 òS dS

が得られます。

 この節の最後に、(24-16),(24-19) で導入した記号に対する n = 3 の場合の重要な公式を導いておきます。
 まず (27-24),(27-27)

(27-49)  (A ´ B)i = eijk Aj Bk

(27-50)  (rot D)i = e ijkjDk

と書くことができます。したがって公式 (19-60)

(27-51)  eijke klm AjBlCm = {A ´ (B ´ C)}i = {(A · C)B - (A · B)C}i = (djmdil - djldim) AjBlCm

と書けますが、A , B , C の任意性により

(27-52)  eijke klm = dildjm - dimdjl

が成り立つことがわかります。

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