電磁気学


2.物質中のMaxwell方程式

 前節の冒頭の前提が成り立つ場合、電荷密度と電流密度は (1-1),(1-2),(1-14),(1-15),(1-16) によって

(2-1a)  r = re - div P

(2-1b)  J = Je + P
—–
t
+ rot M

と書けますから、Maxwellの方程式 (M1)(M2)EB で表わし、rJ のところに (2-1) の右辺を代入すれば、これらの方程式は、それぞれ

(2-2a)  1 
—–
m
o
rot B - eo E
—–
t
= Je + P
—–
t
+ rot M

(2-2b)  eo div E = re - div P

という形になります。そこで、第0節における DH の定義式 (D),(H) を捨て、DH を改めて

(2-3a)  H = 1 
—–
m
o
B - M

(2-3b)  D = eoE + P

によって定義し直すと、(M1), (M2) はぞれぞれ次の (M1)', (M2)' のようになります。なお、(M3), (M4) は変更がないので、これをその次に並べておきます。

(M1)'  rot H - D
—–
t
= Je

(M2)'  div D = re

(M3)   rot E + B
—–
t
= 0

(M4)   div B = 0

 これらの式を物質中のMaxwell方程式といいます。これは微視的な電磁場の方程式と解釈することもできますが、前節で定義した巨視化可能な電磁場の場合は、これを巨視的な場の方程式と解釈することもできます。
 実際、一般に巨視化に適した場 F の空間平均を F と書くと、原点に十分近い近傍以外では 0 で、全空間での積分が 1 となるような、鋭いピークを持った滑らかな関数 c を用いて

(2-4)  F(t, s) = (c * F )(t, s) º ò c(s' ) F(t, s - s' ) dV'

と表すことができます。ただし dV' は空間変数 s' による体積分を表します。
 ところで (2-4) の右辺は、F が必ずしも巨視化に適していなくても意味を持ちます。そこで、一般に巨視化に適しているとは限らない F に対しても、F の空間平均 F(2-4) の右辺で定義することにします。このとき、

(2-5a)  ____
iF(t, s)
=
 
ò c(s' ) iF(t, s - s' ) dV' = ¶i ò c(s' ) F(t, s - s' ) dV' = ¶i F(t, s)

 また ¶/¶tt とも書けば、

(2-5b)  ____
t F(t, s)
=
 
ò c(s' ) t F(t, s - s' ) dV' = ¶t ò c(s' ) F(t, s - s' ) dV' = ¶t F(t, s)

となって、いずれも微分と空間平均を取る操作は交換できることがわかります。従って、(2-2) において、場の変数について空間平均を取ると、

(2-6a)  1 
—–
m
o
rot B - eo E
—–
t
= Je + P
—–
t
+ rot M

(2-6b)  eo div E = re - div P

 また、残る2つの方程式 (M3), (M4) についても同様に空間平均を取れば、

(2-6c)  rot E + B
—–
t
= 0

(2-6d)  div B = 0

となるので、上述の方程式群 (M1)', (M2)', (M3), (M4) において、場の変数をすべて空間平均値に置き換えた方程式が成り立ちます。そこで、今後空間平均を取った場についてMaxwell方程式を考える場合は、空間平均であることを示すバーを省略することがあります。その場合には、空間平均を取った場に対する方程式も、(M1)', (M2)', (M3), (M4) で記述されることになります。

 なお、物質中のMaxwell方程式は、rJ についている添字の e を省略すれば真空中のMaxwell方程式と全く同じ形をしていますから、今後は単にMaxwell方程式といえば第0節の (M1)(M4) のことを指すことにし、そのかわり HDrJ は、それぞれ (2-3a),(2-3b) の右辺と実電荷、実電流を意味することにします。

 物質中のMaxwell方程式では EDHB は独立な変数になるので、Maxwell方程式だけから電磁場を求めることはできません。ただ、分極電荷や磁化電流がそれぞれ電界や磁界の関数になっている場合で、PMEH の間に比例関係を仮定する場合は

(2-7a)  P = ceeoE

(2-7b)  M = cmH

と置きます。この場合は、物質中の誘電率 e透磁率 m

(2-8a)  e = eo(1 + ce)

(2-8b)  m = mo(1 + cm)

で定義すれば、

(2-9a)  D = eE

(2-9b)  B = mH

が成り立ちます。この場合、em をあらかじめ与えておけば、方程式が解けることになります。
 しかし、強磁性(永久磁石)のように、このような比例関係が成り立たず、そもそも磁化が場の関数として与えられない場合もあります。このような場合を考えるため、(M3),(M4) をさらに変形してみましょう。
 新しい場 E'B' を次のように定義します。

(2-10a)  E' º D 
—–
e
o
= E + P 
—–
e
o

(2-10b)  B' º moH = B - moM

 この E'B' を使って (M3),(M4) を書き直すと、それぞれ

(2-11a)  rot E' + B'
—–
t
= 1 
—–
e
o
rot P - mo M
—–
t

(2-11b)  div B' = - mo div M

という形になります。そこで、rmJm を次のように定義し、それぞれ磁荷および磁流と呼ぶことにします。

(2-12a)  rm = - mo div M

(2-12b)  Jm = - 1 
—–
e
o
rot P + mo M
—–
t

 この定義から直ちに、次の連続の式が成り立つことがわかります。

(2-13)  div Jm + ¶rm
——
t 
= 0

 そして、(2-12a),(2-12b) を使って (M3),(M4) を変形すると、次の (M3)',(M4)' のようになります。なお、今度は (M1)',(M2)' には変更がないのでそのまま並べておきます。

(M1)'  rot H - D
—–
t
= Je

(M2)'  div D = re

(M3)'  rot E' + B'
—–
t
= - Jm

(M4)'  div B' = rm

 このように、電界と磁界に関して完全に対称的な形になりました。この場合、次節で示すように、reJermJm がすべて与えられれば、電磁場を求めることができます。

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