電磁気学


5.電磁場のエネルギーと運動量

 前節では、定常な電磁界においては作用・反作用の法則が成り立つ、言い換えると運動量と角運動量の保存則が成り立つことを示しました。ところがこれは、場が非定常な場合には必ずしも成り立ちません。
 これに対し、本節では、電磁界のエネルギーや(角)運動量という概念を新たに導入することにより、場が必ずしも定常でない場合でも、力学系と合わせればこれらに対して保存則が成立することを確かめます。

 時間を含まない(空間的には一様でなくてもよい)スカラー又は2階の対称テンソルであるような誘電率 ε と透磁率 μ により、電磁場の間に

(5-1a)  D = ε · E

(5-1b)  B = μ · H

という関係がある場合に

(5-2)  S º E ´ H

と置いて、これを Poynting vector と言います。(5-2) の発散をとり、ベクトルの公式(「微分多様体」第20節 (20-14) 参照 )と、Maxwell方程式の (M1)(M3) を用いて変形すると、

(5-3)  div S
= div(E ´ H)

= H · rot E - E · rot H

= H · æ
è
- B
—–
t
ö
ø
- E · æ
è
D
—–
t
+ J ö
ø

= - æ
è
E · D
—–
t
+ H · B
—–
t
ö
ø
- E · J

= - u
—–
t
- E · J

となります。ただし

(5-4)  u º ue + um

(5-5a)  ue º  E · ε · E
————
2
=  E · D
——–
2

(5-5b)  um º  H · μ · H
————
2
=  H · B
——–
2

です。なお、(5-1) の関係が成り立たない場合でも

(5-6a)  ue º ò t


to
E · D
—–
t
dt = ò


Γe
E · dD = ò


Γe
E · d(eoE + P) = eoE²
——
 2 
+ ò

Γe
E · dP

(5-6b)  um º ò t


to
H · B
—–
t
dt = ò


Γm
H · dB = ò


Γm
æ
è
B 
—–
mo
- M ö
ø
· dB =  B²
——
2mo
- ò

Γm
M · dB

と定義すれば、(5-3) は成立します。ただし、ΓeΓm は、それぞれ E-D空間H-B空間における、時刻 to から t までの、それぞれの場の軌跡です(なお、簡単のため、いずれも最後の等号で、時刻 to では EB もゼロと仮定しています)。

 さて、次に (5-3) の最後の項 E · J の意味を考えてみましょう。第0節の (R)(J) によれば、

(5-7a)  r = åi ri

(5-7b)  J = åi rivi

という表示が得られることに注意します。ただし右辺は、実電荷と実電流を構成する荷電粒子のみの和に限定します。すると、第 i 番目の荷電粒子の受ける Lorentzfi は、

(5-8)  fi = r i(E + vi ´ B)

ですから、これと vi との内積を取れば、

(5-9)  vi · fi = rivi · (E + vi ´ B) = rivi · E + r ivi · (vi ´ B) = rivi · E

となりますから、これらの i に関する和を取り、(5-7b) を使うと、

(5-10)  åi vi · fi = åi rivi · E = J · E

 これを使うと、(5-3) は次のようになります。

(5-11)  div S + u
—–
t
+  åi vi · fi = 0

 ところで i 番目の荷電粒子の力学的エネルギー密度を ki 、力学的運動量密度を πi 、力学的角運動量密度を λi = s ´ πi とすると、連続体力学の公式(「古典力学」第1節 (1-24),(1-20),(1-28) 参照 )により、

(5-12)  ¶ki
——
t 
+ div(kivi) = vi · fi

(5-13)  fi = πi
—–
t 
+ div(πivi)

(5-14)  s ´ fi = λi
—–
t 
+ div(λivi)

が成り立ちます。(5-12)(5-11) に代入して整理すれば、

(5-15) 
—–
 ¶
t
( åi ki + u ) + div ( åi kivi + S ) = 0

となります。これを任意の領域 Ω で積分してGaussの定理を使えば

(5-16)  d
—–
 d
t
òΩ ( åi ki + u ) dV + òΩ ( åi kivi + S ) · dS = 0

となります。
 この (5-16) の意味を考察するため、(5-1) の関係が成り立ち、ε-1 が有界で、電荷、電流、磁荷、磁流は、ある有界領域 { s | | s | £ R } の中だけに存在し、かつある時刻 to に対して t £ to で定常であると仮定します。
 このとき、| s | ³ c(t - to ) + R において、| s' | £ R なら r º | s - s' | ³ | s | - | s' | ³ | s | - R ³ c(t - to ) ですから t - r/c £ to となるので、第3節のJefimenko方程式 (3-12b) において、右辺第2、第4及び第5項は 0 となるので、

(5-17a)  H = O( | s |-2 )       (  | s | ® ¥  )

となります。同様に、(3-12a) により、

(5-17b)  E = ε-1 eo E' = O( | s |-2 )       (  | s | ® ¥  )

となります。ゆえに

(5-18)  S = E ´ H = O( | s |-4 )       (  | s | ® ¥  )

となり、この場合、(5-16)Ω を原点を中心とする半径 R の球に取って、R ® ¥ とすれば、(5-16) の左辺第2項は 0 に収束するので

(5-19)  d
—–
 d
t
ò ( åi ki + u ) dV = 0

となります。従って、力学的運動エネルギー

(5-20)  Ki = ò ki dV

に対して u電磁エネルギー密度とよび、その空間積分

(5-21)  U º ò u dV

電磁エネルギーとよべば、(5-19) は、

(5-22)  åi Ki + U = const.

となり、力学系とと電磁場を合わせた系においてエネルギー保存則が成り立つことがわかります。また、S電磁エネルギーの流れと解釈すれば、(5-16) は任意の領域 Ω においてエネルギー保存則が成り立つことを意味します。
 なお、u の内訳である ueum を、それぞれ電気エネルギー密度及び磁気エネルギー密度といいます。

 さて、特に D = eEB = mH という比例関係がある場合を考え、その電磁エネルギーの流れの速度を S/u で定義すれば、その大きさは、

(5-23)  ½
½
 S
—–
 u
½
½
= | E ´ H |
——————
(eE² + mH²)
/2
£ EH
———–
 ÖeE²m
H² 
= 1
——
Öem

となり、等号が成り立つ、すなわち電磁エネルギーが最高速度 1 / Öem で流れるためには、ue = eE² / 2 = mH² / 2 = um すなわち電気エネルギー密度と磁気エネルギー密度が等しく、かつ電場 E と磁場 H が直交することが必要十分であることがわかります。

 次に、電磁場の運動量について考えます。ただし、誘電率 e と透磁率 m は空間的に一様な(時間的には変化してもよい)スカラーで、電磁場は

(5-24a)  D = eE

(5-24b)  B = mH

の関係が成り立つものとします。まず TeTm を、第4節の記法を使って

(5-25a)  Te º  E#D
——–
2
= e

2
E#E

(5-25b)  Tm º  H#B
——–
2
= m

2
H#H

と定義し、これらの発散を取って、前節 (4-4) の結果を使うと、

(5-26a)  div Te  = e rot E ´ E + e E div E

 = rot E ´ D + E div D

= - B
—–
t
´ D + rE

となります。ただし最後にMaxwell方程式 (M3) を使って変形しました。同様にMaxwell方程式 (M1) を使って変形すれば、

(5-26b)  div Tm  = m rot H ´ H + m H div H

 = rot H ´ B + H div B

= J ´ B + D
—–
t
´ B

 そこで、

(5-27)  T º Te + Tm

と置いて発散を取り、(5-26),(5-7) を用いれば、

(5-28)  div T
= div Te + div Tm
= rE + J ´ B +
—–
 ¶
t
(D ´ B)
= åi ri(E + vi ´ B) + g
—–
t

 ただし、i に関する和は実電荷と実電流を構成する荷電粒子のみに対する和を表し、

(5-29)  g º D ´ B = emE ´ H = emS

と置きました。さらに (5-28)(5-8) を適用すると、

(5-30)  div T = åi  fi + g
—–
t

が成り立ちます。ここで (5-13) を使うと、(5-30) は、

(5-31) 
—–
 ¶
t
( åi πi + g ) + div( åi πivi - T ) = 0

となります。ゆえに (5-16) と同様に

(5-32)  d
—–
 d
t
òΩ ( åi πi + g ) dV + òΩ ( åi πivi - T ) · dS = 0

となりますが、条件 (5-17) が成り立てば、

(5-33)  T = e

2
E#E + m

2
H#H = O( | s |-4 )       (  | s | ® ¥  )

となります。この場合も、(5-32)Ω を原点を中心とする半径 R の球に取って、R ® ¥ とすれば、(5-32) の左辺第2項は 0 に収束するので

(5-34)  d
—–
 d
t
ò ( åi πi + g ) dV = 0

となります。従って、力学的運動量

(5-35)  pi º ò πi dV

に対して g電磁場の運動量密度とよび、その空間積分

(5-36)  G º ò g dV

電磁場の運動量とよべば、(5-34)

(5-37)  åi pi + G = const.

となり、力学系と電磁場を合わせた系において、運動量の保存則が成り立つことがわかります。また、- T電磁場の運動量の流れと解釈すれば、(5-32) は任意の領域 Ω において運動量保存則が成り立つことを意味します。
 なお、T は力を面積で割った次元を持つことから Maxwellの応力テンソルと呼ばれています。

 次に角運動量について考えます。T は対称テンソルなので、(5-30) の左から s ´ を施して前節の (4-7) を用いれば、

(5-38)  div(s ´ T ) = åi s ´  fi +
—–
 ¶
t
(s ´ g)

 ここで (5-14) を使って整理すると、

(5-39) 
—–
 ¶
t
( åi λi + s ´ g ) + div( åi λivi - s ´ T ) = 0

となります。ゆえに (5-16) と同様に

(5-40)  d
—–
 d
t
òΩ ( åi λi + s ´ g ) dV + òΩ ( åi λivi - s ´ T ) · dS = 0

となるので、(5-17) が成り立てば、(5-33) が成り立つので

(5-41)  s ´ T = O( | s |-3 )       (  | s | ® ¥  )

となります。ゆえに、(5-40)Ω を原点を中心とする半径 R の球に取って、R ® ¥ とすれば、(5-40) の左辺第2項は 0 に収束するので

(5-42)  d
—–
 d
t
ò ( åi λi + s ´ g ) dV = 0

となります。従って、力学的角運動量

(5-43)  li º ò λi dV

に対して s ´ g電磁場の角運動量密度とよび、その空間積分

(5-44)  Λ º ò s ´ g dV

電磁場の角運動量とよべば、(5-42)

(5-45)  åi li + Λ = const.

となり、力学系と電磁場を合わせた系において、角運動量の保存則が成り立つことがわかります。また、- s ´ T電磁場の角運動量の流れと解釈すれば、(5-40) は任意の領域 Ω において角運動量保存則が成り立つことを意味します。

 作用・反作用の法則は運動量保存則と角運動量保存則を合わせたものと同値ですが、以上の結果により、場が定常とは限らない場合は、電磁場の運動量や角運動量を合わせて初めて保存則が成り立つことがわかりました。

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