電磁気学


6.電磁ポテンシャル

 任意に与えられたベクトル場 A とスカラー場 j に対して

(6-1a)  B = rot A

(6-1b)  E = - grad j - A
—–
t

とおけば、

(6-2a)  div B = div rot A = 0

(6-2b)  rot E = - rot grad j - rot A
—–
t
= -
—–
 ¶
t
rot A = - B
—–
t

となるので、Maxwell方程式のうち (M3),(M4) を満たします。
 逆に (M3),(M4) を満たすベクトル場 EB が与えられれば (6-1a),(6-1b) を満たす Aj が存在するのですが、実はさらに強く、(M3),(M4) を満たす EB と任意の j に対し、(6-1a),(6-1b) を満たす A が存在します。実際、div B|t=0 = 0 ですからポアンカレの補題(「微分多様体」第20節 (20-40c) 参照 )により、

(6-3)  B|t=0 = rot Ao

となる空間変数のみのベクトル場 Ao が存在します。これを用いて

(6-4)  A = Ao - ò t

0
(E + grad j) dt

と置けば、(6-4) の両辺を t で微分することにより (6-1b) が得られ、また (6-4) の両辺に rot を施せば、(M4) により、

(6-5)  rot A = rot Ao -  ò t

0
rot (E + grad j) dt = B|t=0 + ò t


0
B
—–
t
dt = B

となって (6-1a) が満たされます。

 電磁場 EB に対して (6-1a),(6-1b) を満たす Aj の組を電磁ポテンシャルとよび、特に Aベクトル・ポテンシャルjスカラー・ポテンシャルといいます。

 さて、電磁ポテンシャルは一意的には定まりません。実際、任意のスカラー場 c に対して

(6-6a)  A' = A - grad c

(6-6b)  j¢ = j + ¶c
—–
 ¶
t

と置けば、

(6-7a)  rot A' = rot A - rot grad c = rot A = B

(6-7b)  - grad j¢ -  ¶A'
—–
 ¶
t
= - grad j - grad ¶c
—–
 ¶
t
-  ¶A
—–
 ¶
t
+
—–
 ¶
t
grad c = - grad j -  ¶A
—–
 ¶
t
= E

となるので、A' の組も電磁ポテンシャルになっていることがわかります。

 逆に AjA' をそれぞれ電磁ポテンシャルとすると、AA'(6-1) を満たすので、

(6-8)  rot (A - A' ) = B - B = 0

が成り立ちますから、ポアンカレの補題(「微分多様体」第20節 (20-40b) 参照 )により、

(6-9)  (A - A' )|t=0 = grad co

を満たす空間変数のみのスカラー co が存在します。一方、jA の組も A' の組も共に (6-1b) を満たすので、

(6-10)  grad(j¢ - j) +
—–
 ¶
t
(A' - A) = E - E = 0

が成り立ちます。そこで

(6-11)  c = co + ò t

0
(j¢ - j) dt

と置くと、これを t で微分すれば (6-6b) が得られ、(6-11) の両辺の grad をとると

(6-12)  grad c = grad co + ò t

0
grad (j¢ - j) dt = (A - A' )|t=0 + ò t


0

—–
 ¶
t
(A - A' ) dt = A - A'

となって (6-6a) が満たされます。
 電磁ポテンシャルに対する (6-6a),(6-6b) のような変換をゲージ変換と言います。

 以下では定数 em により、D = eE および B = mH が成り立っている場合のみを考えます。このとき、(M1)(M2) はそれぞれ

(6-13a)  rot B - em E
—–
t
= m J

(6-13b)  div E = r

e

となります。(6-1a),(6-1b)(6-13a),(6-13b) に代入すると、ポテンシャルの満たすべき方程式として、

(6-14a)  rot rot A + em grad ¶j
—–
 ¶
t
+ em ²A
——
t²
= m J

(6-14b)  - div grad j -
—–
 ¶
t
div A = r

e

あるいは、恒等式  rot rot A = grad div A - D A  や  div grad j = Dj  を使ってこれらを変形した

(6-15a)  - £A + grad æ
è
div A + em ¶j
—–
 ¶
t
ö
ø
= m J

(6-15b)  - £j -
—–
 ¶
t
æ
è
div A + em ¶j
—–
 ¶
t
ö
ø
= r

e

という式が得られます。ただし、£em によるd'Alembertian

(6-16)  £ = D - em ²
—–
t²

です。逆に、(6-14a),(6-14b) を満たす Aj が与えられたとすると、EB(6-1a),(6-1b) で定義すれば、これらはMaxwell方程式をすべて満たすことがわかります。

 さて、c に関する d'Alembert方程式:

(6-17)  £c = div A + em ¶j
—–
 ¶
t

を解けば、

(6-18)  div (A - grad c) + em
—–
 ¶
t
æ
è
j + ¶c
—–
 ¶
t
ö
ø
= 0

となるので、この c によってゲージ変換すれば、新しい Aj は、次のLorentz条件を満たすことがわかります:

(6-19)  div A + em ¶j
—–
 ¶
t
= 0

 これに伴って、(6-15a),(6-15b) も次のシンプルな d'Alembert方程式になります。

(6-20a)  £A = - m J

(6-20b)  £j = - r

e

 これらの条件を満たす Aj を、Lorentzゲージの電磁ポテンシャルといいます。
 この (6-20) は、「偏微分方程式」第3節 (3-62) により、同節 (3-58) で定義される - £ の基本解 Gc を使って

(6-21a)  A = mGc* J = m
—–
4p
ò J(t - r/c, s')
—————
r
dV'

(6-21b)  j = Gc* r
———
 e 
= 1
——
4pe
ò r(t - r/c, s')
—————
r
dV'

で与えられる遅延ポテンシャル解を持ちます。ただし c

(6-22)  c = 1
——
Öem

で定義され、同節 (3-38) 直後の注意によれば、(6-20) の解である電磁場(光)の情報が速度 c で伝わることから、これを光速度とよびます。また同節最後の注意によれば、これらは無限の過去における方程式 (6-20) の、初期値 0 に対する解になっています。
 これらの Aj は、更に連続の式により

(6-23)  div A + em ¶j
—–
 ¶
t
= mGc* æ
è
div J + ¶r
—–
 ¶
t
ö
ø
= 0

となって (6-19) も満たすので、確かに Lorentzゲージの電磁ポテンシャルになっていることがわかります。

 次に別のゲージを考えてみましょう。j は任意に取れるので、特に j

(6-24)  Dj = - r

e

の任意の解にとることができます。このとき (6-14b) により A

(6-25) 
—–
 ¶
t
div A = 0

を満たすので、div At によらないスカラーです。そこで c を、t を含まないPoisson方程式:

(6-26)  Dc = div A

の解とすれば、

(6-27)  div (A - grad c) = 0

となるので、この c によってゲージ変換すれば、新しい A

(6-28)  div A = 0

を満たし、かつ ¶c / ¶t = 0 なので、(6-6b) により j はそのままとなるので (6-24) も満たされます。このような Aj を、Coulombゲージの電磁ポテンシャルといいます。特に r º 0 の場合には、j º 0 であるようなCoulombゲージが採用できることがわかります。

 最後に定常な場合を考えます。この場合、LorentzゲージとCoulombゲージは一致して、満たすべき方程式 (6-15)

(6-29a)  D A = - m J

(6-29b)  Dj = - r

e

となり、その解は、「偏微分方程式」第4節 (4-53),(4-54) により、

(6-30a)  j = 1
——–
 4pe
r
* r = 1
——
4pe
ò r'
—–
 r
dV'

(6-30b)  A = m
——
 4pr
* J = m
—–
4p
ò J'
—–
 r
dV'

で与えられ、EB

(6-31a)  E = - grad j = - grad 1
——–
 4pe
r
* r = r
——–
4per
³
* r = 1
——
4pe
ò r'r
——
r
³
dV'

(6-31b)  B = rot A = Ñ ´ æ
è
m
——
 4pr
* J ö
ø
= grad m
——
 4pr
´* J = - mr
——–
4pr³
´* J = m
—–
4p
ò J' ´ r
——–
r³
dV'

で与えられます。ただし ´* は、その左右のベクトルの外積を取り、各成分における積を畳み込み演算に置き換えたものを表します。

 特に r点電荷、すなわち r(s) = qd(s' - s) のときは

(6-32a)  j =  q
——–
 4per

(6-32b)  E = qr
——–
 4per
³

となり、J が閉曲線 Γ を流れる線電流、すなわち J = I γΓ「微分多様体」第24節 (24-45) 参照)のときは

(6-33a)  A = m I
——
4p
òΓ ds'
—–
 r

(6-33b)  B = m I
——
4p
òΓ ds' ´ r
———
r³

となります。

 また、rJ が、分極電荷や磁化電流の場合のように、あるベクトル PM によって

(6-34a)  r = - div P

(6-34b)  J = rot M

という形で与えられた場合は、

(6-35a)  j = - 1
——–
 4pe
r
* div P = - div æ
è
1
——–
 4pe
r
* P ö
ø
= - Ñ · æ
è
1
——–
 4pe
r
* P ö
ø
= - Ñ 1
——–
 4pe
r
·* P = - grad 1
——–
 4pe
r
·* P = r
——–
 4per³
·* P = 1
——
4pe
ò P' · r
——–
r³
dV'

(6-35b)  A = m
——
 4pr
* rot M = rot æ
è
m
——
 4pr
* M ö
ø
= Ñ ´ æ
è
m
——
 4pr
* M ö
ø
= Ñ m
——
 4pr
´* M = - M ´* grad m
——
 4pr
= M ´* mr
——–
4pr³
= m
—–
4p
ò  M' ´ r
———
r³
dV'

となります。ただし、·* は、その左右のベクトルの内積を取り、各成分における積を畳み込み演算に置き換えたものを表します。

 特に P , M が1点に集中しているときは、それらの空間積分をそれぞれ p , m と書けば

(6-36a)  j = p · r
———
4per³

(6-36b)  A = m m ´ r
———–
4p
r³

となります。

INDEX   BACK   NEXT