電磁気学


10.積分表示の基礎方程式

 本節では、微分方程式の形で与えられた連続の式やMaxwell方程式を積分型で表現し、電荷、電流、電束、磁束、起電力、起磁力、電位差という概念を定義します。また、それに合わせて電磁関係の諸単位も導入します。

 まず最初に Ω を時間と共に動く領域として、連続の式 (C) と、動く領域上の積分の時間微分に関する公式(「微分多様体」第20節 (20-36) 参照)と、Gaussの定理(「微分多様体」第20節 (20-21) 参照)を用いれば、

(10-1) 
—–
d
t
òΩ r dV
= òΩ ì
í
î
¶r
—–
 ¶
t
+ div(rv) ü
ý
þ
dV

= òΩ { - div J + div (rv)} dV

= - òΩ (J - rv) · dS

 また、Γ を時間と共に動く曲線として、電磁ポテンシャルの定義式 (6-1) と、動く曲線上の積分の時間微分の公式(「微分多様体」第20節 (20-38) 参照 )と、線積分に関するStokesの定理(「微分多様体」第20節 (20-23) 参照)を用いれば、

(10-2) 
—–
d
t
òΓ A · ds
= òΓ ì
í
î
A
—–
t
+ rot A ´ v + grad (A · v) ü
ý
þ
· ds

= òΓ { - E - grad j + B ´ v + grad(A · v)}· ds       ( ∵ (6-1) )

= - òΓ (E + v ´ B) · ds - òΓ (j - A · v)

 更に、S を時間と共に動く曲面として、Maxwell方程式 (M1) ~ (M4) と、動く曲線上の積分の時間微分の公式(「微分多様体」第20節 (20-37) 参照 )と、Stokesの定理(「微分多様体」第20節 (20-22) 参照)を用いれば、

(10-3) 
—–
d
t
òS D · dS
= òS ì
í
î
D
—–
t
+ v div D + rot (D ´ v) ü
ý
þ
· dS

= òS { rot H - J + rv - rot (v ´ D)} · dS

= òS (H - v ´ D) · ds - òS (J - rv) · dS

及び

(10-4) 
—–
d
t
òS B · dS
= òS ì
í
î
B
—–
t
+ v div B + rot (B ´ v) ü
ý
þ
· dS

= òS { - rot E - rot (v ´ B)} · dS

= - òS (E + v ´ B) · ds

が得られ、また任意の領域 Ω に対し、Maxwel方程式 (M2),(M4)Gaussの定理により

(10-5)  òΩ D · dS = òΩ div D dV = òΩ r dV

(10-6)  òΩ B · dS = òΩ div B dV = 0

が得られます。そこで、領域 Ω と曲面 S に対して

(10-7)  QΩ  º òΩ r dV

(10-8)  IS  º òS (J - rv) · dS

と置いて、QΩΩ に含まれる電荷 と呼び、ISS を通る電流と呼べば、(10-1)

(10-9)  dQΩ
——
d
t 
+ IΩ  = 0

と書くことができます。これを積分表示の連続の式といいます。また、曲線 Γ に対して

(10-10)  ΦΓ  º òΓ A · ds

(10-11a)  VeΓ  º òΓ (E + v ´ B) · ds

(10-11b)  VmΓ  º òΓ (H - v ´ D) · ds

と置いて、ΦΓΓ に沿った磁束とよび、VeΓΓ に沿った起電力とよび、VmΓΓ に沿った起磁力とよびます。第4節 (4-32) によれば、起電(磁)力とは、単位電(磁)荷が受ける電磁力を Γ に沿って積分したものに他なりません。

 さて、j - A · v のことを電位とよび、0次元多様体(すなわち符号を持つ点の有限個の集まり) P に対して

(10-12)  EP  º - òP (j - A · v)

のことを P における電位差と呼ぶことにします(ただし、P 上の「積分」とは、P の点のうち、正の符号を持った点に対してはその点における値を、負の符号を持った点に対してはその点における値の符号を反転させたものをすべて加えたものを意味します)。
 また、始点 s' と終点 s" を持つ曲線 Γ に対し、Γ が0次元多様体であることに注意して

(10-13)  EΓ  º EΓ  = - òΓ (j - A · v) = (j - A · v)(s' ) - (j - A · v)(s" )

と定義し、これを Γ電位差とよびます。すると、(9-10),(10-11a),(10-13) により、(10-2)

(10-14)  dΦΓ
——
d
t 
+ VeΓ  = EΓ

と書くことができます。これを電磁誘導の法則といいます。

 さて、曲面 S に対しても、その境界 S に沿った磁束のことを S を通る磁束とよんで ΦS と書くことにすれば、Stokesの定理により

(10-15a)  ΦS  º ΦS  = òS A · ds = òS rot A · dS = òS B · dS

となって、ΦS は、磁束密度 B のみで定まり、ポテンシャルのゲージの選び方に依存しません。そこで、同様に電束密度S における面積分を、S を通る電束とよぶことにします:

(10-15b)  ΨS  º òS D · dS

 以上のように定義すれば、(10-3) ~ (10-6) は、順に

(10-16a)  dΨS
——
d
t 
= VmS - IS

(10-16b)  dΦS
——
d
t 
= - VeS

(10-16c)  ΨΩ  = QΩ

(10-16d)  ΦΩ  = 0

と書くことができ、順に、Maxwell方程式 (M1) , (M3) , (M2) , (M4) に対応する積分表示の方程式になっています。

 さて、(10-16) の各式の意味を考えると、まず (10-16a) は、通常の電流 IS変位電流と呼ばれる dΨS /dt の和、すなわち全電流が磁界を生むという、一般化されたAmpèreの法則(Ampère-Maxwellの法則)を表しています(これに対し、左辺の変位電流を 0 と置いた定常状態に対する式を単にAmpèreの法則とよびます)。
 次の、(10-16b) は、電磁誘導の法則 (10-14) において Γ が閉曲線 S であるような特別の場合の式です。ここで、B が定常でも、S が運動していれば磁束は変化し、起電力が生じることに注意します。
 また (10-16c) は、任意の閉曲面を通る電束はその閉曲面が囲う電荷の量に等しいことを意味しており、Gaussの法則とよばれることがあります。
 最後の (10-16d) は磁荷に対するGaussの法則に他なりませんが、これは単極磁荷(モノポール)が存在しないことを意味しています。

 さて、この節の最後に電磁関係の量に対する単位について解説しましょう。

 まず、(10-8) で定義される電流の単位を定めます。電流の単位が定まれば、それを面積で除した電流密度の単位も定まり、従って第4節 (4-37a) により真空の透磁率 mo の大きさが定まります。これは、逆に mo の数値を定めれば電流の単位が定まることを意味します。
 そこで、力学の単位に MKS 単位系を採用したとき、mo が数値的に 4p ´ 10-7 となるように定めた電流の単位を A と書いてアンペア( Ampereとよびます。(10-16a) により、起磁力の単位も A です。

 次に、組立単位 C

(10-17)  C = A · sec

で定義してクーロン( Coulombとよびます。(10-9) により、これは電荷の単位であり、従って (10-16c) により、電束の単位でもあります。

 また、エネルギーの単位 JC で除して得られる組立単位を V と書いてボルト( voltと読み、JA で除して得られる組立単位を Wb と書いてウェーバー( Weberと読みます:

(10-18)  J = C · V = A · Wb

 この定義と (10-17) から直ちに

(10-19)  Wb = V · sec

が得られます。

 ところで J = N · m で、r の単位は (10-7) により C/m³ ですから、Lorentz力の式 (L) により、E の単位は N/(C/m³ · m³) = N/C = J/(Cm) = V/m であることがわかり、従って (10-11a) により、V起電力の単位であることがわかります。
 一方、J の単位は (10-8) により A/m² ですから、Lorentz力の式 (L) により、B の単位は N/(A/m² · m³) = N/(Am) = J/(Am²) = Wb/m² であることがわかり、従って (10-15a) により、Wb磁束の単位であることがわかります。なお、利便性のため、磁束密度の単位 Wb/m²テスラ( Teslaともよばれ、T で表します:

(10-20)  Wb = T · m²

 また、(10-11b) により H の単位は A/m であり、(10-15b) により D の単位は C/m² であることもわかります。

 更に、eo の単位は、D の単位を E の単位で除したものですから (C/m²)/(V/m) = C/(V · m) = J/(V² · m) = N/V² であり、mo の単位は、B の単位を H の単位で除したものですから (Wb/m²)/(A/m) = Wb/(A · m) = J/(A² · m) = N/A² であることがわかります。従って、mo の単位まで含めた定義式は

(10-21)  mo = 4p ´ 10-7 N/A²

であることがわかります。以上のようにして定義された単位系を MKSA単位系、あるいは SI単位系と言います。

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