電磁気学


11.Ohmの法則と超伝導

 本節では Ohmの法則について解説しましょう。第 i 番目の荷電粒子の質量を mi 、電荷密度を ri 、電荷を qi 、速度の場を vi とします。また、荷電粒子は、速度 v で運動する物体の中を移動し、その物体から相対速度 vi - v に比例した抵抗を受けるものとします。この比例定数を ki ³ 0 とすると、荷電粒子の運動方程式は次のようになります。

(11-1)  d
—–
 d
t
(mivi) = qi(E + vi ´ B) - ki(vi - v)

 この方程式の解は、t ® ¥ において、t に依存しない定常解に近づきます。その極限は、(11-1)d/dt = 0 と置いて、

(11-2)  qi(E + vi ´ B) = ki(vi - v)

となります。一方、物体を構成して物体と共に移動する電荷の密度を r' とすると、全体の電荷密度と電流密度は、

(11-3)  r = åi ri + r'

(11-4)  J = åi rivi + r'v

となるので、

(11-5)  J - rv = åi ri(vi - v)

 ここで右辺に (11-2) を代入すれば、

(11-6)  J - rv = åi si(E + vi ´ B) = sE + ι ´ B

 ただし

(11-7)  si = qiri
——
ki

(11-8)  s = åi si

(11-9)  ι = åi sivi

で、ki ³ 0 なので 0 £ s,si £ ¥ です。この (11-6)一般化されたOhmの法則と呼ぶことにします。

 もし r' か v のいずれかが 0 で、しかもすべての i について qi/ki が共通の値 h を持つならば、si = hri となるので、

(11-10)  ι = h åi rivi = hJ

 したがって、(11-6)

(11-11)  J - rv = sE + hJ ´ B

となります。右辺第2項をホール効果と呼び、hホール係数と言います。通常は、(11-11)vB0 の場合の式:

(11-12)  J = sE

Ohmの法則と呼んでいます。この場合の s導電率といい、その逆数を抵抗率といいます。

 また、曲線内を流れる電流のように、荷電粒子と物体の相対速度 vi - v の向きが、各点ごとにある一定の単位ベクトル n と平行な場合は、ある li によって

(11-13)  vi - v = li n

と書けますから、これを (11-5) に代入すれば、

(11-14)  J - rv = Λ n

 ただし

(11-15)  Λ = åi li ri

と置きました。また、(11-13)(11-9) に代入すれば、

(11-16)  ι = åi si(v + li n) = sv + l n

となります。ただし

(11-17)  l = åi si li

です。(11-16)(11-6) に代入すれば、

(11-18)  J - rv = s(E + v ´ B) + l n ´ B

という式が得られます。この式は次節で使用します。

 次に、Ohmの法則が成り立つ部分では電荷が指数関数的に減少することを確かめます。DE は、定数 e により (2-9a) の比例関係にあるとします。このとき連続の式と (11-12),(2-9a),(M2) により

(11-19)  ¶r
—–
 ¶
t
= - div J = - s div E = - s
—–
e
div D = - s
—–
e
r

ですから、t = 0 における r の値を ro と書けば

(11-20)  r = roe-(s/e)t

となって、r は指数関数的に減少することがわかります。特に s = ¥ なら、電荷は“一瞬で”消滅します。

 さて、荷電粒子の運動方程式 (11-1) において、抵抗が 0 になるような媒体において、Ohmの法則のときと同様に vi ´ B の項を無視すれば、

(11-21)  d
—–
 d
t
(mivi) = qi E

となるので、

(11-22)  J = åi rivi

(11-23)  ki = qiri
——
mi
> 0

(11-24)  k = åi ki

と置き、更に d/dt¶/¶t で近似すれば

(11-25)  J
—–
 ¶
t
= k E

という式が得られます。ここで k を定数と仮定して、両辺の rot を取れば、Maxwell方程式 (M3) により

(11-26) 
—–
 ¶t
rot J = rot J
—–
 ¶
t
= k rot E = - k B
—–
 ¶
t

すなわち

(11-27) 
—–
 ¶
t
( rot J + k B ) = 0

となります。 ゆえに rot J + k B は時間に依存しないベクトル場です。そこで、特にこのベクトル場が 0 である場合:

(11-28)  rot J + k B = 0

を考え、方程式 (11-25)(11-28) を満たす媒体を超伝導体といい、(11-25)(11-28)London方程式といいます。

 さて、超伝導体 Ω では、BJΩ の内部で 0 になることを証明しましょう。

 まず最初に定常な場合を考えます。定常な場合のMaxwell方程式 (M1) から

(11-29)  rot B = m J

が成り立つので、両辺の rot を取り、Maxwell方程式 (M4)(11-28) を使って変形すると、

(11-30a)  D B = grad div B - rot rot B = - rot rot B = - m rot J = km B

 同様に、(11-28)rot を取り、定常な場合の連続の式 div J = 0(11-29) を使って変形すると、

(11-30b)  D J = grad div J - rot rot J = - rot rot J = k rot B = km J

となって、B , J いずれの成分も、方程式:

(11-31)  D u = a² u       (  a = Ökm  )

を満たすことがわかります。

 さて、超伝導体 Ω 内の任意の点 s' に対し、s'Ω の距離を d とし、s' を中心とする半径 d の球を Us' とします。Us'1 となる方程式 (11-31) の解 ca,s' を求めるため、r º | s - s' | のみの関数 c(s) º c(r) を考えると、

(11-32)  Dc = div grad c = div æ
è
 r

 r
ö
ø
= r · grad c'

 r
+ c'

 r
div r = r ·  r

 r
æ
è
c'

 r
ö¢
ø
+ 3 c'

 r
= r c"r - c'
———–
 r
²
+ 3 c'

 r
=  c"r + 2c'
————
 r
=  (rc)"
——
 r

 ゆえに満たすべき方程式は (r ca,s' )" = a² r ca,s' となり、境界条件を満たす滑らかな解は

(11-33)  ca,s' (s) = d sinh (ar)
————–
r sinh (ad)

となり、特に

(11-34)  ca,s' (s' ) =  
lim

r®0
d sinh (ar)
————–
r sinh (ad)
= ad
———–
sinh (ad)

が成り立ちます。

 さて、一般に、領域 Ω とその境界で定義された関数 u が、Ω の内部の grad u = 0 を満たす点では (11-31) を満たすものとします。このとき

(11-35)  | u(s) | £ || u ||Ω       (  || u ||Ω º max{ | u(s) |  |  s립 }  )

が成り立ちます。
 なぜなら、もしある点 s で左辺が右辺より大きい値を取ったとすると、Ω のある内点 s"u 又は - u が右辺より大きい最大値を取ります。後者の場合は - u を改めて u とみなせばよいので前者が成り立つ場合を考えると、s" では grad u = 0 で、かつ u の同一変数による2階微分は £ 0 なので Du(s" ) £ 0 となりますが、一方で u(s" ) > 0 なので、これらは (11-31) と矛盾します。

 さて、この一般論を、考察している超伝導体 Ω 内の任意の点 s' と、B 又は J の任意の成分 u と、任意の正数 b < a から作った関数 v º u / cb,s' に対して適用してみましょう。簡便のため、c の添字 bs' を省略すると、

(11-36)  grad v = grad  u

c
= c grad u - u grad c
————————
c²

(11-37)  Dv
= div c grad u - u grad c
————————
c²

= div (c grad u - u grad c)
——————————
c²
+ (c grad u - u grad c) · grad 1
—–
c
²

= cDu - uDc
————–
c²
+ C · grad v       æ
è
C º c² grad 1
—–
c
²
ö
ø

= ca²u - ub²c
—————–
c
²
+ C · grad v

= (a² - b²)v + C · grad v

ですから、a² - b² > 0 であることに注意すれば、これを g² と置くことにより、vgrad v = 0 となる点で Dv = g²v を満たし、従って v に対して上記の一般論が適用できて、(11-35)uΩ をそれぞれ vUs' に置き換えたものが成り立ちます。
 ここで更に b ® a とすれば、(11-35) は関数 u / ca,s' に対しても成立することがわかります:

(11-38)  | u(s) / ca,s' (s) | £ || u / ca,s' ||Us'

 ところが Us' 上で ca,s' = 1 ですから、これは

(11-39)  | u(s) | £ || u ||Us' ca,s' (s)

を意味します。一方 Us' Ì Ω ですから、(11-35) により || u ||Us' £ || u ||Ω が成り立つので、(11-39)ss' を代入して (11-34) を用い、s' を改めて s と書き直せば、

(11-40)  | u(s) | £ || u ||Ω ad
———–
sinh (ad)
 »  2ad e-ad || u ||Ω  »  0       (  ad >> 1  )

という評価式が成り立つことがわかります。ただし dsÎΩΩ の距離です。
 一方、(11-23),(11-24) により、k は荷電粒子の個数密度に比例するので a は非常に大きく、したがって s が境界にごく近い点でない限り、ad >> 1 となるので (11-40) により u(s) » 0 となります。超伝導体におけるこのような性質をMeissner効果といいます。

 さて、(11-40)d » 0 のとき、すなわち sΩ の近傍にあるときは、あまりよい評価式になっていません。そこで、Ω 上に点 s" を任意に取り、その点における内向き法線を l とし、l 上に s' を、Us'Ωs" のみで接するように取ります。l 上の、s"s' の間にある任意の s に対して | u(s) | を評価してみましょう。
 まず、Us" のうち s" 以外の点は、Ω の境界から離れているので (11-40) により、ほとんど 0 になります。したがって || u ||Us' » | u(s" ) | となるので、(11-39)(11-33) により、sΩ すなわち s" に近いとき、

(11-41)  | u(s) | £ || u ||Us' ca,s' (s)  »  | u(s" ) | d sinh (ar)
————–
r sinh (ad)
 =  | u(s" ) | ea(r-d) d (1 - e-2ar )
—————–
r (1 - e-2ad )
 »  | u(s" ) | e-ad'       (  d' º | s - s" | = d - r  )

となります。ただし d » r と、ad, ar >> 1 により e-2ad » e-2ar » 0 であることを用いました。
 このように、超伝導体の境界近くでは、u の値は Ω の境界からの距離 d' に関して指数関数的に減少します。a はその減少度合いを表しているので、その逆数 lL º 1 / a のことをLondonの進入長とよびます。lL の大きさは、多くの超伝導体で数十〜数百 nm 程度です。

 さて、次に場が定常でない場合を考察します。BJ が周期関数:

(11-42a)  B = Bw cos (wt)

(11-42b)  J = Jw cos (wt)

である場合を考えることにし、Maxwell方程式 (M1)Londonの第1方程式 (11-25)(11-42b) を使って変形すれば

(11-43)  rot B = m J + me E
—–
 ¶
t
= m J + em
—–
k
²J
—–
 ¶
t²
= m J - emw²
——
k
J = m* J

となります。ただし

(11-44)  m* º m - emw²
——
k
= m - w²
—–
k
c²

です。ここで

(11-45)  a* º Ökm*

と置けば、

(11-46)  a*² = km* = km - w²
—–
c²
= a² - w²
—–
c²

となりますが、w < ca である限り a* > 0 すなわち m* > 0 ですから (11-43)div を取って m* で割れば div J = 0 が得られます。ゆえに (11-43)Londonの第2方程式 (11-28) から (11-30) のかわりに

(11-47a)  D B = a*² B

(11-47b)  D J = a*² J

が得られます。(11-46) により、w が比較的小さい低周波の場合は、a* >> 1 が成り立つので、やはりMeissner効果は現れます。
 しかし w が大きくなるに従って次第に a* は小さくなる、すなわちLondonの進入長 lL º 1 / a* は長くなり、w ³ ca となったところで遂に a* £ 0 となり、Meissner効果は消失します。

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