電磁気学


12.回路とKirchhoffの法則

 本節では回路理論の基礎について解説します。まずそのために、回路の構成要素である素子節点について、以下のように定義します。

 まず、素子 Δ とは、円柱 Δo と位相同型で、その側面に対応する面 *Δ の外側で、rJD0 であるような領域のことをいいます。素子 Δ においては、もとの円柱 Δo の上方向に対応する方向を正の向きと定義し、円柱 Δo上底面に対応する面を +Δ と書き、下底面に対応する面を -Δ と書くことにします。
 さて、素子 Δ*Δ を横切る任意の断面 S に対し、Δ の近傍に含まれる領域 O をうまく取れば、その境界 OΔ の交面が、ちょうど -ΔS のみであるようにすることができます。
 このとき、仮定により O のうち -ΔS 以外の部分では rJD も存在しないことから

(12-1a)  IS  - I-Δ  = òS (J - rv) · dS - ò-Δ (J - rv) · dS = òO (J - rv) · dS = IO

(12-1a)  ΨS  - Ψ-Δ  = òS D · dS - ò-Δ D · dS = òO D · dS = ΨO

となるので、これらと (10-16a)¶¶O = Æ により、

(12-2)  æ
è
IS  + dΨS
——
 d
ö
ø
- æ
è
I-Δ  + dΨ-Δ
——–
 d
ö
ø
= IO + dΨO
——–
d
t 
= Vm¶¶O = 0

となりますから、S を流れる全電流

(12-3)  iΔ º IS + dΨS
——
 d

は、断面 S の取り方と無関係に定まります。ゆえにこれを、素子 Δ を流れる全電流と呼ぶことにします。

 次に、球と位相同型な、体積が無視できる領域を節点と呼び、有限個の素子と節点からなる集合体で、各素子 Δ の両底面 ±Δ が、いずれもそれぞれどれかの節点の境界面の一部になっているようなものを回路といいます。
 与えられた回路において、節点 Ω を任意に選び、その表面 Ω に上面 +Δ が含まれるような素子 Δ の全体を In(Ω) と書き、下面 -Δ が含まれるような素子 Δ の全体を Out(Ω) と書けば、ΔÎOut(Ω) に対する -ΔΩ と同じ向きで、ΔÎIn(Ω) に対する +ΔΩ と逆の向きですから、

(12-4a)   
å
ΔÎOut(Ω)
I-Δ  -  
å
ΔÎIn(Ω)
I+Δ  =  IΩ 

(12-4b)   
å
ΔÎIn(Ω)
Ψ+Δ  -  
å
ΔÎOut(Ω)
Ψ-Δ  =  ΨΩ 

となるので、これらと (12-3)(10-16a)¶¶Ω = Æ により、

(12-5)   
å
ΔÎOut(Ω)
iΔ   -  
å
ΔÎIn(Ω)
iΔ  =  
å
ΔÎOut(Ω)
æ
è
I-Δ + dΨ-Δ
———
 d
ö
ø
 -  
å
ΔÎIn(Ω)
æ
è
I+Δ + dΨ+Δ
———
 d
ö
ø
= IΩ + dΨΩ
——–
 d
= Vm¶¶Ω  = 0

 すなわち、各節点 Ω流れ込む電流の総和と流れ出す電流の総和は等しいという式:

(12-6)   
å
ΔÎOut(Ω)
iΔ   =  
å
ΔÎIn(Ω)
iΔ 

が得られます。これを Kirchhoffの第1法則といいます。

 次に、回路を構成する基本的な素子として、導線コンデンサ電源について考察しますが、そのための準備として若干の公式と定義を導いておきましょう。
 素子 Δ の近傍で、*Δ の外側で 0 となり、Δ 及び *Δ の近傍で div G = 0 となるベクトル場 G が与えられたとき、与えられた点 sÎΔ を通る G流線(=接ベクトルが G と常に平行な Δ に含まれる曲線)を Γ(G, s) と書き、この曲線と ±Δ の交点を s±(G) と書くことにします。また ss'G の同じ流線上にあるとき、その流線の s から s' までの部分を Γ(G, s, s') と書くことにします。

 Δ で定義されたベクトル場 F に対し

(12-7)  y(s) º òΓ(G, s-(G), s) F · ds       (  ただし sÏΔ に対しては y(s) º 0  )

と置くと、流線の定義と div G = 0 により F · G = G · grad y = div (y G) - y div G = div (y G) ですから、これと Δ の近傍 O でその Δ との交わりが ±Δ であるような領域に対してGaussの定理を用い、-Δy = 0 であることに注意すれば

(12-8)  òΔ F · G dV = òO F · G dV = òO y G · dS = ò+Δ y G · dS - ò-Δ y G · dS = ò+Δ æ
è
òΓ(G, s) F' · ds' ö
ø
G · dS = òΓ(G, *) F · ds   ò+Δ G · dS

が成り立つことがわかります。ただし、右辺の最初の積分は、Γ(G, s) における積分の、sζ+Δ に対する重み付き平均を表します。

 さて、素子 Δ導体で、変位電流無視でき、しかも r は導線と共に動く、すなわち

(12-9)  ¶r
—–
 ¶
t
+ div(rv) = 0

が成り立つ場合を考えます。このとき (12-9) と連続の式により

(12-10)  div (J - rv) = div J - div (rv) = div J + ¶r
—–
 ¶
t
= 0

が成り立ちます。そこで、J - rv の流線に平行な単位ベクトルの場を n と書き、更に | J - rv | がこの流線にそって一定になるように Δ の幅が調整されているものとし、このような Δ導線とよぶことにしましょう。導線では

(12-11)  div n = div J - rv
———–
| J - rv |
= 1
———–
| J - rv |
div (J - rv) + (J - rv) · grad 1
———–
| J - rv |
= | J - rv | n · grad 1
———–
| J - rv |
= 0

が成り立つことに注意します。さて、前節 (11-14) により、本節で定義した n は前節で定義したものと同一のベクトルですから前節 (11-18) が成り立ち、従って

(12-12)  òΔ n · (J - rv) dV = òΔ n · {s(E + v ´ B) + l n ´ B} dV = s òΔ (E + v ´ B) · n dV

となりますから、ここで (12-10) に注意して左辺を (12-8) によって変形し、(12-11) に注意して右辺を (12-8) によって変形すれば、

(12-13)  òΓ(J - rv, *) n · ds   ò+Δ (J - rv) · dS = s òΓ(n, *) (E + v ´ B) · ds   ò+Δ n · dS

 この左辺に出てくる最初の積分は、J - rv の流線に沿った Δ の流線の長さの平均値ですから、これを素子 Δ長さとよんで l と書くことにします。また2番目の積分は Δ の断面 +Δ を通る電流ですが、変位電流を無視しているので、これは Δ を通る全電流 iΔ に他なりません。
 また、右辺に出てくる最初の積分は、n の流線に沿った起電力の流線に関する平均値ですから、これを素子 Δ起電力とよんで VΔ と書くことにします。また2番目の積分は、n が面断面 +Δ に垂直ならその断面の面積に他ならないので、これを Δ断面積とよんで S と書くことにします。
 以上により、(12-13)

(12-14)  l iΔ = s VΔ S

 すなわち

(12-15)  VΔ = RΔ iΔ

という関係式が得られます。これを回路のOhmの法則とよびます。ただし RΔ

(12-16)  RΔ = l
——
s S

で定義され、これを Δ抵抗と呼びます。そこで、組立単位 W ( Ohm )S ( Siemens )

(12-17a) V = W · A

(12-17b) A = S · V

で定義します。(12-15) により、W は抵抗の単位であり、WS は互いに逆数の関係にあります。

 さて、以下では素子が静止している場合(すなわち v = 0 の場合)のみを考えます。(12-11) に注意して (12-8) を用いれば、

(12-18)  òΔ A · n dV = òΓ(n, *) A · ds   ò+Δ n · dS

となります。一方、この式の左辺を、AJ を用いて (6-21a) の形に表して遅延を無視し、更に (12-10)v = 0 により div J = 0 であることに注意して式 (12-8) を用いて変形すれば、

(12-19)  òΔ A · n dV = òΔ æ
è
m
—–
4p
òΔ J' dV'
———
| s' - s |
ö
ø
· n dV = òΔ æ
è
m
—–
4p
òΔ n' dV'
———
| s' - s |
ö
ø
· J dV = m
—–
4p
òΓ(J, *) òΔ n'dV'
———
| s' - s |
· ds   ò+Δ J · dS

 さて、(12-18) の右辺に出てくる最初の積分は、n の流線に沿った磁束の平均値ですから、これを素子 Δ磁束とよんで ΦΔ と書くことにします。また2番目の積分は Δ の断面積 S に他なりません。
 また、(12-19) の右辺の2番目の積分は、J - rv の面積分で v = 0 と置いたものですから、これは Δ を流れる全電流 iΔ に他なりません。
 以上により、(12-18),(12-19) の右辺を等号で結んだ式は

(12-20)  ΦΔ S = m
—–
4p
òΓ(J, *) òΔ n'dV'
———
| s' - s |
· ds  iΔ

となり

(12-21)  ΦΔ = LΔ iΔ

という関係が成り立つことがわかります。ただし LΔ

(12-22)  LΔ º m
——
4p
S
òΓ(J, *) òΔ n'dV'
———
| s' - s |
· ds

で定義され、これを Δ(自己)インダクタンスとよびます。そこで組立単位 H ( Henry )

(12-23)  Wb = H · A

で定義すれば、これはインダクタンスの単位となります。

 さて、n の流線に対する (10-14) 式の平均値を取り、EΓ(Δ, h) の同様な平均値を Δ電位差とよんで EΔ と書けば、

(12-24)  dΦΔ
——
d
t 
+ VΔ  = EΔ

 これに (12-21),(12-15) を代入すれば、静止した導線に対する次の式が得られます:

(12-25)  LΔ diΔ
—–
 d
t 
+ RΔ iΔ  = EΔ

 さて、次に ±Δ のすぐ外側の面 S± では D が無視でき、その両者に挟まれた Δ には Jr も存在せず、誘電率 e が一定であるような素子を考えます。この場合、Δ の任意の断面 S に対し、

(12-26)  IS± + dΨS±
——–
 d
= iΔ = IS + dΨS
——
 d

(12-27)  ΨS± = 0

(12-28)  IS  = 0

ですから、

(12-29)  iΔ = IS± = dΨS
——
 d

 一方、S--Δ の間に溜まった電気量を qΔ と書くと、領域 O を、OS- を含み、かつ OΔ の交面が S のみとなるように取れば、O に含まれる電荷は qΔ なので、(10-16c)(12-27) により

(12-30a)  qΔ = QO = ΨO = ΨS  - ΨS- = ΨS

 同様に、+ΔS+ の間に溜まった電気量を q'Δ と書くと、領域 O' を、O'S+ を含み、かつ O'Δ の交面が S のみとなるように取れば、O' に含まれる電荷は q'Δ なので、(10-16c)(12-27) により

(12-30b)  q'Δ = QO' = ΨO' = ΨS+  - ΨS = - ΨS

 ゆえに (12-30)t で微分して (12-29) を用いると

(12-31)  iΔ = dqΔ
——
 d
= - dq'Δ
——
 d

という式が導かれます。さて、S± 以外の点では

(12-32)  div D = r = 0

ですから、D の流線に平行な単位ベクトルの場を n と書き、更に | D | がこの流線にそって一定になるように Δ の幅が調整されているものとし、このような Δコンデンサとよぶことにしましょう。(12-11)J - rvD に置き換えることにより

(12-33)  div n = 0

が得られるので

(12-34)  òΔ n · D dV = e òΔ E · n dV

となりますから、ここで (12-32) に注意して左辺を (12-8) によって変形し、(12-33) に注意して右辺を (12-8) によって変形すれば、

(12-35)  òΓ(D, *) n · ds   ò+Δ D · dS = e òΓ(n, *) E · ds   ò+Δ n · dS

 この左辺に出てくる最初の積分は、D の流線に沿った Δ の流線の長さの平均値ですから、これをコンデンサ Δ厚さとよんで d と書くことにします。また2番目の積分は Δ の断面 +Δ を通る電束ですから、(12-30a) で特に S = ¶+Δ と置くことにより、これは qΔ に他なりません。
 また、右辺に出てくる最初の積分は、v = 0 のときの n の流線に沿った起電力の、流線に関する平均値ですから、これを素子 Δ起電力とよんで VΔ と書くことにします。また2番目の積分は、n が面断面 +Δ に垂直ならその断面の面積に他ならないので、これを Δ断面積とよんで S と書くことにします。
 以上により、(12-35)

(12-36)  d qΔ = e VΔ S

 すなわち

(12-37)  qΔ = CΔ VΔ

という関係式が得られます。ただし CΔ

(12-38)  CΔ = e S
——
d

で定義され、これをコンデンサ Δ容量と呼びます。そこで、組立単位 F ( Farad )

(12-39) C = F · V

で定義します。(12-37) により、F は容量の単位です。
 ところでコンデンサ Δ の内部では J = 0 なので、(6-21a) により A = 0 であり、従ってコンデンサに対する式 (12-24) では ΦΔ = 0 としてよく、従って VΔ = EΔ が成り立つので、(12-37)

(12-40)   qΔ
——
 CΔ
= EΔ

とも書くことができます。

 最後に内部構造がどうなっているかは不問とし、ただ両底面 ±Δ 間の電位差 EΔ のみが t の関数として予め与えられている素子を考え、このような素子を電源といいます。

 さて、(静止した)回路の中でも、その回路を構成する素子が、導線コンデンサー電源のいずれかである場合を考えます。
 このような回路の中のループ、すなわち回路を構成する導線の部分集合 a とコンデンサーの部分集合 b と電源の部分集合 g と節点の部分集合 w で、abg に属す素子の底面は必ず w に属す節点の境界に含まれ、逆に w に属すどの節点の境界も、abg のいずれかに属す素子の上底と、同様な素子の下底を丁度1個ずつ含むようなものを考えます。
 このとき、abg に属す素子 Δ の電位差 EΔ は、Δ の両端 ±Δ におけるスカラーポテンシャル j の差であり、節点は体積を無視するのでそこでの電位差も無視できるので、ループの定義により、abg に属す素子すべてに対する EΔ の和は 0 になります。従って (12-25)(12-40) により、

(12-41)   
å
ΔÎa
æ
è
 LΔ diΔ
—–
 d
t 
+ RΔ iΔ ö
ø
+  
å
ΔÎb
 qΔ
——
 CΔ
+  
å
ΔÎg
EΔ = 0

が成り立ちます。これを Kirchhoffの第2法則と呼びます。

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