電磁気学


15.静電界のエネルギー

 空間に有限の大きさの n個の導体 Ωi (i=1,¼,n) があり( n = 0 でもよい)、全空間から導体部分 Ω' º Èi Ωi を除いた空間を Ω とし、台がコンパクトで Ω に含まれる有界可測関数 r と、n個の実数 Qi (i=1,¼,n) と、十分遠方でスカラー定数となる正値対称テンソル ε を与えて、Ω において電荷密度が r で、各 Ωi における電荷の総量が Qi で、誘電率が ε であるような静電界 E と電束密度 D を求めてみましょう。
 これは、方程式群:

(15-1)  div D = r   in Ω
 
(15-2)  ò

Ωi
div D dV = Qi      ( i=1,¼,n )

(15-3)  rot E = 0

(15-4)  E = 0   in Ω'

(15-5)  D = ε · E

を満たすベクトル場 ED を求めることに他なりません。
 さて、条件 (15-4) があるために、D 等は Ωi の境界で連続になるとは限らず、(15-2) 等の意味がこのままでは不明確です。そこで、条件式 (15-1),(15-2) を、D が必ずしも滑らかでない場合にも意味が明確になるような形に書き直してみましょう。

 局所可積分関数 j は、十分遠方で滑らかで

(15-6)  |j| £  K
—–
 r
   ( r º |s| ³ Ro )

を満たし、さらに grad j が2乗可積分で

(15-7)  grad j = 0   in Ω'

を満たすとき、静電スカラーとよぶことにします(ここだけの造語です)。(15-7) により、任意の静電スカラー j に対し、n個の実数 ji (i=1,¼,n) が存在して、

(15-8)  j = ji   in Ωi   ( i=1,¼,n )

が成り立ちます。

 さて、D は2乗可積分で滑らか、j は静電スカラーとします。このとき、Gaussの定理と (15-6) により、

(15-9)  ½
½
ò div(jD) dV ½²
½
=
liminf
R®¥
½
½
ò|s|£R div(jD) dV ½²
½

=
liminf
R®¥
½
½
ò|s|=R jD · dS ½²
½

£
liminf
R®¥
ò|s|=R |j|² dS ò|s|=R |D|² dS

£
liminf
R®¥
4pR² K²
—–
R²
ò|s|=R |D|² dS

= 4pK²
liminf
R®¥
ò|s|=R |D|² dS

 この右辺の積分を R の関数とみなすと、D の2乗可積分性により、区間 [Ro ,¥) で積分可能です。したがってその下極限は 0、つまり (15-9) の左辺は 0 であることがわかります。ゆえに、もし j div DΩ で可積分ならば

(15-10)  - ò D · grad j dV
= - ò div(jD) dV + ò j div D dV

= ò j div D dV      ( ∵ (15-9) )

= òΩ j div D dV + åi ji ò

Ωi
div D dV      ( ∵ (15-8) )

が成り立ちます。したがって、特に D(15-1),(15-2) を満たせば、Ωj div D = jr は可積分なので (15-10) が成り立ち、これに (15-1),(15-2) を代入すれば

(15-11)  - ò D · grad j dV = òΩ jr dV + åi jiQi

が得られます。

 逆に、与えられた rQi (i=1,¼,n) に対し、2乗可積分で滑らかな D が、任意の静電スカラー j に対して (15-11) を満たすと仮定します。j として特に、滑らかで台がコンパクトな静電スカラーをとれば、j div DΩ で可積分になるので (15-10) が成り立ち、これと (15-11) から

(15-12)  òΩ j(div D - r) dV + åiji æ
è
ò

Ωi
div D dV - Qi ö
ø
= 0

が成り立ちます。
 ここで、台が Ω に含まれる j を任意に取れば、ji = 0 (i=1,¼,n) なので (15-12) の左辺第2項は消え、j の任意性により (15-1) が成り立ちます。すると (15-12) の左辺第1項は恒等的に 0 となるので、明らかに ji は任意に取れますから、(15-2) が成り立つことがわかります。
 以上で、2乗可積分で滑らかな D については、(15-1),(15-2) が成り立つことと、任意の静電スカラー j に対して (15-11) が成り立つことは同値であることがわかりました。
 ところで (15-11) は、D が滑らかでなくても、単に2乗可積分であれば意味を持ちます。そこで、今後は(滑らかさを仮定しない)2乗可積分なベクトル場 D が任意の静電スカラー j に対して (15-11) を満たすとき、D (15-1),(15-2) を満たすということにします。

 さて、方程式 (15-1)(15-5) の解の存在と一意性については次節にゆずり、2乗可積分な解 DE が与えられたと仮定します。ε は十分遠方でスカラー定数であり、十分遠方では r0 ですから、(15-1)(15-5) により div E の台はコンパクトです。これと (15-3) から、Helmholtzの定理(「偏微分方程式」第4節 (4-60) 以下参照)により、

(15-13)  E = - grad j

を満たす局所可積分な関数 j が存在し、具体的には

(15-14)  j = 1
—–
4p
ò div E
———
r
dV'

で与えられます。(15-14) は十分遠方で滑らかかつ (15-6) を満たしており、しかも E が2乗可積分なことと (15-13) により grad j は2乗可積分であり、(15-4),(15-13) から (15-7) が言えるので、j は静電スカラーです。
 一方、第5節 (5-5a) によれば、電界のエネルギー Ue

(15-15)  Ue = 1
—–
2
ò E · D dV

で与えられますから、(15-11)j(15-14)j を代入すれば、(15-13),(15-15) により、静電エネルギーの表示式:

(15-16)  Ue = 1
—–
2
òΩ jr dV + 1
—–
2
åi jiQi

が得られます。

 この節の最後に、次のような相補性を証明しておきましょう。r , Qi (i=1,¼,n) とは別の r' , Qi' (i=1,¼,n) に対する解を E' ,D' とし、これらの間にも

(15-17)  D' = ε · E'

という関係があるとします。また、静電スカラー j'

(15-18)  E' = - grad j'

(15-19)  j' = ji'   in Ωi   ( i=1,¼,n )

を満たせば、(15-11)j' , D のペアと j , D' のペアに対して適用して、

(15-20)  ò D · E' dV = òΩ j' r dV + åiji'Qi

(15-21)  ò D' · E dV = òΩ jr' dV + åijiQi'

が成り立ちます。また ε の対称性により、

(15-22)  D · E' = E · ε · E' = E · D'

の関係が成り立つので、(15-20)(15-22) により、

(15-23)  òΩ j'r dV + åiji'Qi = òΩ jr' dV + åijiQi'

が得られます。

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