電磁気学


22.最小発熱の原理

 本節では、まず方程式 (21-1)(21-6) を満たす境界まで含めて滑らかな解の存在を確かめます。E(21-7) の形に書けると仮定し、J(21-6) で定義して、(21-1),(21-3),(21-9)j に対する方程式に書き直すと、

(22-1a)  div (σ · grad j) = 0   in Ω

(22-1b)  grad j · σ · n = 0   on Ω'

(22-1c)  j = ji   on Ωi

となります。今、与えられた直交座標に対して、リーマン計量 gij を、Ög g ij = s ij を満たすように取ります。ただし s ijσ の第 i , j 成分で、g = det( gij ) です。これらの計量を使うと、(22-1) は、

(22-2a)  i(Ög g ijjj) = 0   in Ω

(22-2b)  ni g ij jj = 0   on Ω'

(22-2c)  j = ji   on Ωi

となります。ただし n の第 i 成分を ni と書きました。
 ところで Ω の任意の接ベクトル (vi) に対して vini = 0 ですから、共変成分が ni に比例し、上述の計量で長さが 1 のベクトルは Ω の法線になります。したがって、「微分多様体」第20節 (20-46),(20-48) により、この計量のもとで、(22-2) は、更に次のように書けることがわかります:

(22-3a)  Dj = 0   in Ω
 
(22-3b)  ¶j
—–
 ¶
n
= 0   on Ω'

(22-3c)  j = ji   on Ωi

 これは、有界領域 Ω に対する楕円型の混合型境界値問題ですから、境界まで滑らかな唯一の解を持ちます。
 この解 j から (21-7),(21-6) で定義した E , J は、明らかに (21-1),(21-3),(21-4),(21-6) を満たしますが、(22-3c) により (21-8) の左辺は 0 ですから、V の任意性により (21-5) も満たすことがわかります。

 さて、残る条件は (21-2) ですが、任意の (ji)ÎRk に対し、(22-1) を満たす唯一の解を対応させる写像は明らかに線形です。また、その解 j から (21-7),(21-6) によって作った J から (21-2) により定義された (Ii)ÎRk を対応させる写像も線形です。よってこの2つの写像を合成した写像 TRk からそれ自身への線形写像です。
 ところで (ji)Î ker T ならば、(21-12)Ii = 0 により W = 0 となりますが、σ の正値性により J = 0 よって grad j = - E = - σ-1 · J = 0 よって j = const. よって j1 = j2 = ¼ = jk となります。
 これは dim ker T = 1 であることを意味していますから、有限次元空間の線形代数により、dim T [Rk] = k - 1 であることがわかります。
 一方、(Ii)ÎT [Rk] ならば、(21-13) が成り立つので、T [Rk]Ì{ (Ii)ÎRk | åi Ii = 0 } となりますが、右辺は線形部分空間で、かつ次元はちょうど k - 1 ですから、両者は実は一致します。
 以上で、(21-13) を満たす任意の実数の組 (Ii) に対し、(21-1)(21-6) を満たし、かつ E(21-7) の形に書けるような解の存在と一意性が証明されました。

 次に、上記で得られた解の性質を調べるため、Ω で定義された滑らかなベクトル場 J , J' に対して、

(22-4)  ( J | J' ) = òΩ J · σ-1 · J' dV

(22-5)  || J || º ( J | J )½

と置きます。

 さて、J を上記のようにして作った (21-1)(21-6) の解、J'(21-1)(21-3) を満たす任意の滑らかなベクトルとします。このとき、dJ º J' - J と置けば、

(22-6)  ( J | dJ )
= òΩ J · σ-1 · dJ dV

= òΩ E · dJ dV      ( ∵ (21-6) )

= - òΩ grad j · (J' - J ) dV      ( ∵ (21-7) )

= - òΩ div {j (J' - J )} dV + òΩ j div (J' - J ) dV

= - òΩ j (J' - J ) · dS      ( ∵ (21-1) )

= - òΩ' j (J' - J ) · dS + åi ò

Ωi
j (J' - J ) · dS

= - òΩ' j (J' - J ) · n dS + åi ji ò

Ωi
(J' - J ) · dS      ( ∵ (21-9) )

= åi ji (Ii - Ii)      ( ∵ (21-3),(21-2) )

= 0

が成り立ちます。ゆえに

(22-7)  || J' ||² = || J + d J ||² = || J ||² + || dJ ||² + 2( J | dJ ) = || J ||² + || dJ ||² ³ || J ||²

となり、しかも等号が成り立つのは dJ = 0 、すなわち J' = J のときに限ります。すなわち、ノルム || J || が最小値を取るのは、J が上で構成した (21-1)(21-6) の解であるとき、そのときに限ることがわかりました。これを最小発熱の原理といいます。

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