電磁気学


31.光線速度と群速度

 Poynting vector の時間平均 So は、(25-13) により

(31-1)  So = Â(Eo* ´ Ho)
—————–
2 
= Eo* ´ Ho + Eo ´ Ho*
—————————
4 

となりますが、これと電磁場のエネルギー密度の時間平均 uo を用いて、光線速度 vr

(31-2)  vr = So
—–
uo

で定義します。(31-1)κ の内積をとると

(31-3)  κ · So
= κ · (Eo* ´ Ho) + κ · (Eo ´ Ho*)
—————————————
4 

= (κ ´ Eo)* · Ho + (κ ´ Eo) · Ho*
—————————————
4 

= Bo* · Ho + Bo · Ho*
————————–
4 
      ( ∵ (30-9c) )

= Â(Bo* · Ho)
—————–
2 

= 2um

 ただし um は磁界のエネルギー密度の時間平均です。同様に、

(31-4)  κ · So
= - κ · (Ho ´ Eo*) - κ · (Ho* ´ Eo)
——————————————
4 

= - (κ ´ Ho) · Eo* - (κ ´ Ho)* · Eo
——————————————
4 

= Do · Eo* + Do* · Eo
————————–
4 
      ( ∵ (30-9a) )

= Â(Do · Eo*)
—————–
2 

= 2ue

 ただし ue は電界のエネルギー密度の時間平均です。uo = ue + um ですから、(31-2)(31-4) により

(31-5)  κ · vr = 1

が成り立ちます。ここで第5節と同様な計算で vr の上限を計算してみましょう。まず (31-1) により

(31-6)  | So| £ |Eo* ´ Ho|
————–
2 
£ |Eo||Ho|
———–
2 

 また、ei (i=1,2,3)|Eoi (i=1,2,3) による重み付き平均e と書けば、

(31-7)  uo = ue + um = Â(Do · Eo*) + Â(Bo* · Ho)
———————————–
4 
= åiei|Eoi+ m|Ho
————————
4 
= e|Eo+ m|Ho
——————
4 
³ Öem |Eo||Ho|
—————
2 

 よって、(31-2),(31-6),(31-7) により

(31-8)  vr = |vr| = ½
½
So
—–
uo
½
½
£ 1
——
Öem

 この式の右辺は、光速度 c を誘電率がテンソルの場合に拡張したものです。したがって (31-8) は、光線速度が一般化された光速度 c を超えないことを意味しています。
 次に、vr の向きについて調べてみましょう。前節により、κε から (30-17) 又は (30-26) によって定まるある曲面 Sε 上にあります((30-17) が成り立つ場合は原点を中心とする球面、(30-26) が成り立つ場合は原点を内部に含む同心球殻状の閉曲面が4点でくっついたような形)。そこで、曲面 Sε 上で κ の仮想変位をとれば、(30-9a),(30-9c) により

(31-9a)  dDo = d(Ho ´ κ) = dHo ´ κ + Ho ´ dκ

(31-9b)  dBo = d(κ ´ Eo) = dκ ´ Eo + κ ´ dEo

 ゆえに、

(31-10a)  Eo* · dDo = Eo* · (dHo ´ κ + Ho ´ dκ)

= (κ ´ Eo)* · dHo + (Eo* ´ Ho) · dκ

= Bo* · dHo + (Eo* ´ Ho) · dκ      ( ∵ (30-9c) )

= mHo* · dHo + (Eo* ´ Ho) · dκ      ( ∵ (30-11a) )

= Ho* · dBo + (Eo* ´ Ho) · dκ      ( ∵ (30-11a) )

(31-10b)  Ho* · dBo = Ho* · (dκ ´ Eo + κ ´ dEo)

= (Eo ´ Ho*) · dκ - (κ ´ Ho)* · dEo

= (Eo ´ Ho*) · dκ + Do* · dEo      ( ∵ (30-9a) )

= (Eo ´ Ho*) · dκ + Eo* · ε · dEo      ( ∵ (30-11b) )

= (Eo ´ Ho*) · dκ + Eo* · dDo      ( ∵ (30-11b) )

 これらを辺々加えれば、

(31-11)  (Eo* ´ Ho + Eo ´ Ho*) · dκ = 0

 ゆえに (31-1),(31-2),(31-11) により

(31-12)  vr · dκ = So · dκ
———–
u
o
= (Eo* ´ Ho + Eo ´ Ho*) · dκ
———————————–
4
uo
= 0

 仮想変位 dκ は任意でしたから、これは vr が曲面 Sε に垂直であることを示しています。また、(31-10) と同様に、

(31-13a)  Eo · dDo = Ho · dBo + (Eo ´ Ho) · dκ

(31-13b)  Ho · dBo = (Eo ´ Ho) · dκ + Eo · dDo

が成立します。よって、

(31-14)  (Eo ´ Ho) · dκ = 0

 これと (31-12) により、vrEo ´ Ho とも平行であることがわかり、

(31-15a)  vr · Eo = 0

(31-15b)  vr · Ho = 0

が成り立ちます。また、(30-9a),(30-9c)(31-5),(31-15) により、

(31-16a)  vr ´ Do = - vr ´ (κ ´ Ho) = (vr · κ)Ho - (vr · Ho)κ = Ho

(31-16b)  vr ´ Bo = vr ´ (κ ´ Eo) = (vr · Eo)κ - (vr · κ)Eo = - Eo

が成り立つので、Eo« Do , Ho« Bo , κ « vr , ε « ε-1 , m« 1/m に関する双対性、すなわち各種関係式はこれらの置き換えを一斉に行っても成立することがわかります。

 さて次に、前節 (30-1)y = y(w, s, t) = w{f(s) - t} に対して

(31-17)  k = Ñy = wÑf = wκ

と置きます。任意の k に対し、(31-17) を満たす κ が、k 方向の半直線と曲面 Sε の交点として1個又は2個求まります。2個の場合はその一方を指定することにすれば、任意の k に対し、(31-17) を満たす (w,κ) の組が一意的に定まります。特に wk の関数とみなすことができるので、

(31-18)  vg = ¶w
—–
k
= æ
è
¶w 
—–
k1

,
¶w 
—–
k2

,
¶w 
—–
k3
ö
ø

と置いて、これを群速度といいます。まず、k の任意の仮想変位に対して

(31-19)  dw = ¶w
—–
k
· dk = vg · dk

がわかりますが、w を固定して κ のみの仮想変位を考えれば、dw = 0 であり、また (31-17) により dk = wdκ ですから、(31-19)w で割れば、

(31-20)  vg · dκ = 0

 すなわち vr だけでなく vg も面 Sε に垂直であり、特に両者は向きが同じであることがわかります。さて、ここで群速度 vg情報伝達速度という意味を持つことを確かめましょう。ys = so の近傍でテーラー展開して、1次の項まで取ると、

(31-21)  y(w, s, t) » y (w, so, t) + ¶y(w, so, t)
————–
so
· (s - so) = w {f(so) - t} + wÑf(so) · (s - so) = - w (t - to) + k · (s - so) = - wt' + k · s'

 ただし、

(31-22)  k = Ñy(w,so,t) = wÑf(so)

(31-23)  to = f(so)

(31-24)  t' = t - to

(31-25)  s' = s - so

です。さて、電磁場の任意の成分を f(t, s) で表すことにし、f(t, s) は多くの k に対する eiy の因子の重ね合わせでできているとします。sso に近ければ、(31-21) により

(31-26)  f(t, s) = òR³ e-iw(k)t' + ik · s' a(k) dV(k)

 だだし ak の重みを表します。ここでさらに、k がある ko の近くに集中しているとすると、wko の近くでテーラー展開して、1次の項まで取れば、

(31-27)  w(k) » w(ko) + ¶w(ko)
———
ko
· (k - ko) = w(ko) + vg · k'

 ただし

(31-28)  vg = ¶w(ko)
———
ko

(31-29)  k' = k - ko

と置きました。(31-27),(31-29) により

(31-30)  - w(k)t' + k · s' = - {w(ko) + vg · k' }t' + (ko + k' ) · s' = - w(ko)t' + ko · s' + (s' - vgt' ) · k'

ですから、これを (31-26) に代入すれば、

(31-31)  f(t, s) » e-iw(ko )t' + iko· s' òR³ ei(s' - vg t') · k' a(ko + k') dV(k' )

 ここで、

(31-32)  c(ξ) = òR³ eiξ · k' a(ko + k') dV(k' )

と置けば、

(31-33)  f(t, s) » e-iw(ko )t' + iko· s' c(s' - vgt' )

となり、これは正弦波 e-iw(ko )t' + iko· s' が速度 vg で移動する振幅 c の上に乗っていることを示しています。このような波を波束と呼びます。群速度 vg は、この波束の移動する速度ですから、これは情報の伝わる速度に他ならないことがわかります。

 さて、今までに位相速度 vp光線速度 vr群速度 vg という3種類の速度が出てきました。これらのうち、(31-20) の直後にコメントしたように、vrvg向きが同じなのでした。そこで、さらに ε に特別な条件をつけた場合、これらの速度の間にどのような関係が生じるかを調べてみましょう。

 まず最初に εw に依存しない場合を考えます。κ はその向きと曲面 Sε のみで定まり、Sεε のみで定まるので、もし εw に依存しないなら、w を変化させても Sε は変化しません。したがって κ を固定して w だけを変化させるということができます。このとき、dk = κdw となるので、(31-19) により、

(31-34)  dw = vg · dk = vg · κdw

 dw は任意ですから

(31-35)  vg · κ = 1

が成り立ちます。vrvg は向きが同じでしたから、(31-5)(31-35) を比較して、

(31-36)  vr = vg

が成り立つことがわかり、光線速度群速度は一致します。

 次に、ε がスカラー e である場合を考えます(ew に依存してもよい)。この場合、前節 (30-20) が成り立ちますから、

(31-37)  κ · κ = me

 w を固定して両者の κ に対する仮想変位をとると、

(31-38)  κ · dκ = 0

 両辺を k² で割って (30-7) を用いると、

(31-39)  vp · dκ = 0

 すなわち vpSε に垂直です。一方 (31-12) 直後のコメントにより vrSε に垂直ですから、vpvr の向きは同じです。一方 (31-5) の両辺を k² で割って (30-7),(30-8) を用いると、

(31-40)  vp · vr = k-2 = vp²

 vrvp は向きが同じですから、これは

(31-41)  vr = vp

を意味し、今度は光線速度位相速度が一致します。ところで、これらと平行であることが既にわかっている群速度との関係はどうなっているのでしょうか。(31-17) の両辺を2乗して前節 (30-20) を使うと、

(31-42)  k² = w²me

 両辺を ki で微分すれば、

(31-43)  2ki = m ¶w 
——
ki
æ
è
2we + w² ¶e
——
¶w
ö
ø

 両辺を w で割れば、(30-20),(31-17),(31-18) により

(31-44)  2ki = k² vgi æ
è
2 + w
—–
e
¶e
——
¶w
ö
ø

と変形されます。さらに両辺を 2k² で割って (30-7) を使えば、

(31-45)  vp = æ
è
1 + w
——
2e
¶e
—–
¶w
ö
ø
vg 

という関係式が得られます。

 さて、以上の両条件が成り立つ場合、すなわち ε がスカラーで、かつ w に依存しないならば、位相速度、光線速度、群速度はすべて一致することがわかります。さらに前節 (30-21),(30-22) により

(31-46)  vp = vr = vg = 1
——
Öme

が成り立つこともわかります。

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