電磁気学


33.電磁気学と相対論

 本節では、座標変換後もMaxwell方程式が成り立つような座標変換を考察し、Lorentz力の式をそのような座標変換で変換すると、Newton力学と整合性がとれなくなり、整合性を持たせるためには運動方程式の方を相対論的力学というものに変更しなければならないことを説明します。なお、本節では真空中のMaxwell方程式を考察の対象にします。

 時間と空間座標をセットにした点 (t, s) の集合 R44次元時空と呼びます。これは4次元のアファイン空間(「微分多様体」第27節参照 )であり、従って多様体です。この多様体上で次のような1次微分形式(「微分多様体」第2節参照 )を考えます。

(33-1)  a = A · ds - jdt

 この右辺各項の外微分をとると、

(33-2)  d(A · ds) = rot A · dS + dt ^ A
—–
t
· ds      ( 「微分多様体」第20節 (20-7)t に関する微分 )

(33-3)  d(jdt) = grad j · ds ^ dt      ( 同第20節 (20-6) )

ですから
(33-4)  da = rot A · dS + dt ^ æ
è
A
—–
t
+ grad j ö
ø
· ds = B · dS + E · ds ^ dt

となります。これを更に微分すると、dd = 0 ですから、

(33-5)  0
= d(da)

= d(B · dS) + d(E · ds)^ dt

= div B dV + dt ^ B
—–
t
· dS + rot E · dS ^ dt + dt ^ E
—–
t
· ds ^ dt
= div B dV + æ
è
rot E + B
—–
t
ö
ø
· dS ^ dt

 これは dVdS ^ dt の係数がそれぞれ 0 であることと同値ですから、(33-5)Maxwell方程式の (M3),(M4) に他なりません。

 次に、Maxwell方程式の (M1),(M2) を考えるため、a をある実定数として、R4 の基準ベクトル空間(「微分多様体」第27節参照 )になっている R4 自身の上に、次のような計量(「微分多様体」第19節参照 )を入れます:

(33-6)  g(ξ, η) º ξη º x0 h0 + a ξ' · η'      ( ξ = (x0, ξ') , η = (h0, η') ÎR4 )

 ただし、R³ の内積と区別するため、やや大きめのドットを使うことにします。この計量のもとで、da の共役な2次形式 *da (「微分多様体」第24節参照 )を考えます。以下 t = x0 , s = (x¹, x², x³) とおき、ギリシャ文字の添字は 03 を表わし、ラテン添字は 13 を表わすものとし、また上下に現れる添字は 03 について和を取るものとします。gij = adijg0m = gm0 = d0m ですから

(33-7)  ì
í
î
dx0 = dx0 = dt
 
dxi = ad
xi

(33-8)  det gx = a³

(33-9)  ì
í
î
(dx1, dx2, dx3) = a(dx¹, dx², dx³) = ads
 
(dx2^dx3, dx3^dx1, dx1^dx2) = a²(dx²^dx³, dx³^dx¹, dx¹^dx²) = a²dS

 また、Fmn = da(m , n ) とおけば、(33-4) により

(33-10)  ì
í
î
E = (F10 , F20 , F30)
 
B = (F23 , F31 , F12)

となるので、「微分多様体」第24節 (25-15) により、

(33-11)  *da
= |det gx|-½
————
 2!2! 
eklmn Fkl dxm^dxn

= |a|- 3/2 {- F10 dx2^dx3 - F20 dx3^dx1 - F30 dx1^dx2 + F23 dx0^dx1 + F31 dx0^dx2 + F12 dx0^dx3 }

= |a|- 3/2 (- a²E · dS + adt ^ B · ds )

= |a|½ æ
è
- E · dS - B · ds ^ dt
————–
a
ö
ø

= |a|½
——
eo
æ
è
- D · dS - eomo
——
 a 
H · ds ^ dt ö
ø

 一方、

(33-12)  d(- D · dS) = - div D dV - dt ^ D
—–
t
· dS = - div D dV - D
—–
t
· dS ^ dt

(33-13)  d(H · ds ^ dt) = d(H · ds)^ dt = rot H · dS ^ dt + dt ^ H
—–
t
· ds ^ dt = rot H · dS ^ dt

ですから、(33-11) の右辺に d を施したものの中に (M1) の左辺 rot H - ¶Dt が含まれるためには、- eomo/a = 1 を満たすように、a

(33-14)  a = - eomo = - 1
—–
c²

と置かなければなりません。このとき (33-11) は、両辺に |a|-½eo = ceo を乗じると、

(33-15)  ceo *da = - D · dS + H · ds ^ dt

となり、この外微分をとると、(33-12),(33-13) により

(33-16)  ceo d(*da) = d(- D · dS) + d(H · ds ^ dt) = - div D dV + æ
è
rot H - D
—–
t
ö
ø
· dS ^ dt

が成り立ちます。そこで4元ベクトル jdτ

(33-17)  j = (r, J )

(33-18)  dτ = (dt, ds)

で定義すると、1次形式:

(33-19)  j • dτ = gmn jmdxn = rdt - J · ds
——–
c²

に共役な3次形式は、「微分多様体」第24節 (25-20) により、

(33-20)  *( j • dτ)
= (-)g |det gx|½
————
 1!3! 
eklmn  j kdxl ^dxm ^dxn

= - c- 3 { j0dx¹^dx²^dx³ - j¹dx²^dx³^dx0 - j²ds³^dx¹^dx0 - j³dx¹^dx²^dx0}

= c- 3(- rdV + J · dS ^ dt)

となるので、(33-16)(33-20) を比較すれば、Maxwell方程式の (M1),(M2) はまとめて

(33-21)  eo
—–
 c² 
d(*da) = *( j • dτ)

と表すことができます。また、(33-21) の外微分をとれば、dd = 0 により d{*( j • dτ)} = 0 ですが、(33-20) を使って実際に計算すると、

(33-22)  0 = d{*( j • dτ)} = c- 3d(J · dS ^ dt - rdV) = c- 3 æ
è
div J dV ^ dt - ¶r
—–
t
dt ^ dV ö
ø
= c- 3 æ
è
div J + ¶r
—–
t
ö
ø
dV ^ dt

となって、連続の式が得られます。

 さて、一般にRiemann計量の与えられたアファイン多様体 M は、VM の任意の2点 p, q に対して

(33-23)  pq = x0 h0 - ξ' · η'
——–
c²
      ( x(p)=(x0, ξ'), x(q)=(h0, η')ÎR4 )

を満たすアファイン座標 x が存在するときMinkowski時空とよび、(33-22) を満たす座標 xMinkowski座標といいます。また VM の点 p のあるMinkowski座標 x(p)=(x0, ξ') から別のMinkowski座標 y(p)=(h0, η') への線形変換をLorentz変換といいます。例えば空間成分のみの直交変換はLorentz変換で、特に恒等変換はLorentz変換です。
 4次元時空における方程式は、あるMinkowski時空上のテンソルに対する方程式を、あるMinkowski座標によって成分表示したものになっているとき、Lorentz不変であるといいます。この名称の意味は、Lorentz不変な方程式は時空の変数をLorentz変換しても方程式の形が変わらないからです。(33-21)Minkowski時空 R4 上のテンソル(この場合は1次微分形式)に対する方程式ですから、Maxwell方程式はLorentz不変な方程式です。

 次にLorentz力について考えます。(33-17) を個々の荷電粒子について分けると、

(33-24)  j = åi ji

(33-25)  ji = (ri , Ji) = (ri , rivi)

 そこで、daji の内部積(「微分多様体」第6節参照)を施し、以下粒子の番号を表わす添字 i を省略すると、

(33-26)  ij(da)
= i(r, J )(B · dS + E · ds ^ dt)

= iJ (B · dS) + {iJ (E · ds)}^ dt - irdt ^ E · ds

= (B ´ J ) · ds + E · J dt - rE · ds      (「微分多様体」第20節 (20-28),(20-29) )

= J · E dt - (rE + J ´ B) · ds

= rv · E dt - r(E + v ´ B) · ds      ((33-25) )

= v · f dt - f · ds      ((5-8),(5-9) )

= c² æ
è
v · f
——
c²
,  f ö
ø
• dτ

 さて、v0 º 1 と置くと、第5節の (5-12),(5-13) はそれぞれ

(33-27a)  f = ¶m(πvm)

(33-27b)  v · f = ¶m(kvm)

と書けますから、これらを代入すれば、

(33-28)  æ
è
v · f
——
c²
,  f ö
ø
= æ
è
m(kvm)
————
 c² 
, m(πvm) ö
ø
= m ì
í
î
vm æ
è
k
—–
c²
, π ö
ø
ü
ý
þ

となりますが、これを質量密度 h を使って変形してみましょう。h は質量に関する連続の式(「古典力学」第1節 (1-15) 参照 )

(33-29)  m(hvm) = ¶h
—–
t
+ div(hv) = 0

を満たし、Newton力学では、

(33-30a)  π = hv

(33-30b)  k = h|v
——
2

が成り立っています(「古典力学」第1節 (1-16),(1-22) 参照 )

 さて、(vm) = (1, v) = (dt, ds)/dt = dτ/dt を、その長さ

(33-31)  g-1 º    ____________
Ö(1, v) • (1, v)  =
 
Ö————
|v
1 - —–
c² 

で除した4元速度 u

(33-32)  u º (g, gv) = g(1, v) = g(v0, v)

で定義すれば、

(33-33)  uu º gmn um un = 1

を満たし、これはLorentz不変な関係式になります。また固有質量密度 ho

(33-34)  ho = h
—–
g

で定義し、これがLorentz不変なスカラーであると仮定すれば、

(33-35)  (h, hv) = (hog, hogv) = hou

ですから、連続の式 (33-29)

(33-36)  m(houm) = 0

というLorentz不変な方程式になります。では方程式 (33-26) の方はどうでしょうか。(33-28) を、更に (33-30),(33-35) を使って変形すれば、

(33-37)  æ
è
v · f
——
c²
,  f ö
ø
= m ì
í
î
hvm æ
è
|v
—–
2c²
, v ö
ø
ü
ý
þ
= m ì
í
î
houm æ
è
|v
—–
2c²
, v ö
ø
ü
ý
þ
= houmm æ
è
|v
—–
2c²
, v ö
ø

 ただし、最後の変形で (33-36) を使いました。
 さて、(33-37) 右辺の (|v/(2c²), v)Minkowski時空のベクトルの成分にはなっていません。したがって、Lorentz力の式 (33-26)Lorentz不変になっていないことがわかります。
 そこで、Lorentz力の式がLorentz不変となるようにNewton力学そのものを修正することを考えます。さて、

(33-38)  m æ
è
|v
—–
2c²
, v ö
ø
= m æ
è
1 + |v
—–
2c²
, v ö
ø

及び、vc に比べて十分小さいとき

(33-39)  æ
è
1 + |v
—–
2c²
, v ö
ø
» (g, gv) = u

が成り立ちます。そこで、Newton力学で成り立つ関係式 (33-30a),(33-30b) を捨て、かわりに π, k を、それぞれ g倍、2gc²/|v倍した式:

(33-40a)  π = hgv

(33-40b)  k = hgc²

で定義し直し、関係式 (33-36),(33-27a) はそのまま成立すると仮定した力学を相対論的力学といいます。(33-35),(33-36),(33-33) により

(33-41)  um(hvmu) = um(houmu) = houm umu = 1
—–
2
houmm(uu) = 0

が成り立ちますから、これに c²/g を乗じると、(33-40),(33-27a) により

(33-42)  0 = c²(1, v) • m(hvmu) = c²m(hvmg) - v · m(hvmgv) = ¶m(kvm) - v · m(πvm) = ¶m(kvm) - v · f

となるので、相対論的力学でも (33-27b) が成り立ちます。したがって (33-28) も成り立ちますが、その右辺に (33-40) を代入し、(33-35),(33-36) を用いれば、

(33-43)  æ
è
v · f
——
c²
,  f ö
ø
= ¶m{vm (hg, hgv)} = ¶m(hvm u) = ¶m(houm u) = hoummu = hoÑuu

 ただし、Ñu は共変微分(「微分多様体」第21節参照)で、最後の等号は「微分多様体」第27節 (28-28) を用いました。(33-43)(33-26) に代入すれば、Lorentz力は

(33-44)  ij(da) = c²hoÑuu • dτ

というLorentz不変な形に書けることがわかります。以上で、Newton力学を相対論的力学に変更すれば、Lorentz力の式はLorentz不変になることがわかりました。

 ところで (33-44) は運動方程式の連続体表現なので、古典力学のNewton方程式(「古典力学」第0節 (D) 参照)と比較するために、これを質点の運動方程式の形に書き直してみましょう。
 t をパラメターとする関数 x = (t, s) = (t(t), s(t)) を、常微分方程式:

(33-45)  dx
—–
d
t
= u

の解で定義し、これを粒子の世界線といいます。これを (33-44) の右辺に代入すれば、

(33-46)  c²hoÑuu • dτ = c²houm u
—–
xm
 dτ = c²ho dxm
—–
dt 
u
—–
xm
 dτ = c²ho du
—–
d
t
 dτ = c²ho x
——
dt²
 dτ = c²ho t
——
dt²
dt - ho s
——
dt²
· ds

となります。(33-44) によれば、これが (33-26) に等しいので、両者の ds の係数を比較すれば、

(33-47)  f º r(E + v ´ B) = ho s
——
dt²

という運動方程式が得られます。さらにここから t を消去してみましょう。(33-45),(33-32) から

(33-48)  d
—–
d
t
=  dt
—–
d
t
d
—–
 d
t
= u0 d
—–
 d
t
= g d
—–
 d
t

が成り立つので、(33-47)

(33-49)  r(E + v ´ B) = hog d
—–
 d
t
ds
—–
d
t
= h d
—–
 d
t
æ
è
g ds
—–
 d
t
ö
ø
= h d
—–
 d
t
(gv)

と書くことができます。

 さてここで、電荷と質量の保存則を導いておきましょう。Minkowski空間において、ある座標におけるある時刻を表わす3次元部分空間を Π とします。(33-20) により、

(33-50)  w º rdV - J · dS ^ dt

と置けば、これはLorentz不変で dw = 0 であり、

(33-51)  q º ò r dV = òΠ w

ですから、「微分多様体」第15節 (15-14) により、q は座標および時刻の選び方によらない値を持つことがわかります。同様に、

(33-52)  w' º hdV - hv · dS ^ dt

と置くと、質量に関する連続の式 (33-29) により dw' = 0 なので、

(33-53)  m º ò h dV = òΠ w'

で定義される粒子の質量も座標および t に依存しないことがわかります。そこで、rh が、共通のスカラー c によって

(33-54a)  r = qc

(33-54b)  h = mc

と書かれる場合を考えると、(33-49) の両辺を c で割ることにより、

(33-55)  F º q(E + v ´ B) = m d
—–
 d
t
(gv) º d
—–
 d
t
(m* v)

というNewton力学と同じ形の運動方程式が得られます。ただし

(33-56)  m* = mg

で、これを相対論的質量とよびます。Newton力学と異なり、相対論的質量は速度に依存します。

 この節の最後に、第5節の結論が相対論的力学においても成立することを確かめておきましょう。(33-27) により、(5-13),(5-12) は相対論的力学のもとでも成り立ちますが、さらに、

(33-57)  λ = s ´ π

と置けば、

(33-58)  s ´ f = s ´ ¶m(πvm)      ( ∵ (33-27a) )

= ¶m(s ´ πvm) - ¶ms ´ πvm

= ¶m(λvm) - ej ´ πvj      ( (33-57) ,また ejj 方向の単位ベクトル )

= ¶m(λvm) - v ´ π

= ¶m(λvm) - hgv ´ v      ( (33-40a) )

= ¶m(λvm)

となって、(5-14) も成り立ちます。
 以上により、相対論的力学のもとでも第5節の議論はそのまま成立することがわかりました。

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