電磁気学


【付録】 電磁気学の単位系

 電荷密度 と電流密度 J'* が作る定常な電磁場 E , B において、電荷密度 r と電流密度 J* が受けるLorentzF は、第0節の (L) および第4節の (4-35a),(4-37a) により

(A-1)  F = òò (rE + J* ´ B) dV = k 
——
 4pe
o
òò rr'r
——
r
³
dVdV' -  kmo
——
4p 
òò (J* · J'* )r
————–
 r³ 
dVdV'

と書けます。ただし、k = 1 です。
 ここで、k , eo , mo の値をそれぞれ単位も含めて k 倍、e 倍、m 倍したとき、場の量 r , J* , E , B にもそれぞれある定数を乗じると、以下で解説するように、式 (A-1) の関係をそのまま維持することができます。

 まず (A-1) の左辺 F は電磁的量を含まないので不変ですから、右辺の値も不変であるためには、電荷密度である rÖe/k 倍、電流密度である J*J'*1 / Ökm 倍すればよいことがわかります。
 また、(A-1) 最初の等号により、Lorentz力の積分の中身も不変であればよく、これは電場 E と磁界 B にそれぞれ r 及び J* と逆の倍率を乗じることを意味しますから、EÖk/e 倍、BÖkm 倍すればよいことがわかります。
 一方、真空中の D = eoEB = moH の関係もそのまま維持するとすれば、DeoE の積なので Öke 倍、H1/moB の積なので Ök/m 倍すればよいことになります。
 またポテンシャルについては、定常な場合の E = - grad jB = rot A の関係もそのまま維持するとすれば、jE と連動するので Ök/e 倍、AB と連動するので Ökm 倍すればよいことになります。
 更に分極や磁化について、rP = - div PJ*M = rot M の関係もそのまま維持するとすれば、Pr と連動するので Öe/k 倍、MJ* と連動するので 1 / Ökm 倍すればよいことになります。
 なお、物質中の DH も真空中のそれと同じ倍率になるように定義する(後述の (A-14) 参照)ことにすれば、DE が比例関係にある場合は、その比例係数 ee 倍になり、同様に BH が比例関係にある場合は、その比例係数 mm 倍になります。

 さて、rJ* は倍率が違うため、第0節で提示した連続の式 (C) は、そのままでは最早成り立たなくなり、ある定数 a を用いて

(A-2)  ¶r
—–
 ¶
t
+ a div J* = 0

という形になってしまいます。そこで、(C) と全く同じ式が成り立つようにするために、J º aJ* と置いて、J を改めて電流密度とよぶことにします。この J は、連動する r と同じく Öe/k 倍されることになり、従って JJ* の比である aÖe/k ´ Ökm すなわち Öem 倍になります。
 ゆえに a²/(eomo ) の値は不変であることがわかり、しかもSI単位系においては、a = 1 であることに注意すれば、この値は c² となるので、一般に

(A-3)            ____
a = cÖ eomo

という関係が k , e , m の値に無関係に成り立つことがわかります。

 さて、他の量について考察を続けましょう。定常な場合の磁荷の定義式 rm = mo div M により rmÖm/k 倍、従って連続の式 (2-13) を通じて rm と連動する磁流 JmÖm/k 倍されることになります。
 次に、r の体積分である QJ の面積分である Ir と同じく Öe/k 倍、B の面積分である ΦB と同じく Ökm 倍、D の面積分である ΨD と同じく Öke 倍、E の線積分である VeE と同じく Ök/e 倍、H の線積分である VmH と同じく Ök/m 倍となります。
 従って L = Φ / IkÖm/e 倍、C = Q / Vee/k 倍、R = Ve / Ik/e 倍となることもわかります。
 ちなみに JE が比例関係にある場合は、その比例係数 se/k 倍になります。

 さて、一般に k , eo , mo の値を任意に選ぶことを(電磁場の)単位系を定めるといいますが、上で示したように、任意に定めた単位系に対して、定数 a(A-3) で定義し、電磁場の量を (A-1) を満たすように定義することができます。

 なお、上で得られた結果により、次の各量が単位系の取り方によらない量になることがわかります:

(A-4a) 
  ____
Ö k/eo r
  ____
Ö k/eo J
  ____
Ö eo/k E
  ____
Ö mo/k H
        ___
D / Ö keo
        ___
B / Ö kmo
  ____
Ö eo/k j
        ___
A / Ö kmo
  ____
Ö k/eo P
  ___
Ö kmo M
  ____
Ö k/mo rm
  ____
Ö k/mo Jm

(A-4b) 
  ____
Ö k/eo Q
  ____
Ö k/eo I
        ___
Φ / Ö kmo
        ___
Ψ / Ö keo
  ____
Ö eo/k Ve
  ____
Ö mo/k Vm
  _____
Ö eo/mo L / k
k C / eo eo R / k
e / eo m / mo ks / eo

 これらの表を用いると、異なる単位系間の換算を行う際に便利です。

 さて、表 (A-4) により、rEJ ´ B / a は電磁場の単位系の取り方に無関係な値を取りますから、SI単位系で成り立つLorentzの式:

(A-5a)   f = rE + 1

 a
J ´ B

あるいは J = rv で、かつ電荷が一点に集中している場合の積分型:

(A-5b)   F = q æ
è
E + 1

 a
v ´ B ö
ø

は単位系の取り方に無関係に成り立つことがわかります。

 また、任意に選んだ倍率 k , e , m に対し、HD / ak J / a はすべて Ök/m 倍され、Dk r は共に Öke 倍され、EB / a は共に Ök/e 倍されるので、SI単位系で成立する真空中のMawell方程式

(A-6a)  rot H - 1

 a
D
—–
t
= k

 a
J

(A-6b)  div D = k r

(A-6c)  rot E + 1

 a
B
—–
t
= 0

(A-6d)  div B = 0

も単位系の取り方に無関係に成り立つことがわかります。また、(A-6a) ´ a / k の発散と (A-6b) / k の時間微分を取ることにより、通常の連続の式:

(A-7)  ¶r
—–
 ¶
t
+ div J = 0

が任意の単位系で成り立つことがわかります。

 また、任意に選んだ倍率 k , e , m に対し、EjA / a はすべて Ök/e 倍され、BA は共に Ökm 倍されるので、SI単位系で成立する電磁ポテンシャルの定義式:

(A-8a)  E = - grad j - 1

 a
A
—–
t

(A-8b)  B = rot A

も単位系の取り方に無関係に成り立つことがわかります。また、ポテンシャルが満たす式 (6-15) は、真空中ではSI単位系のもとで

(A-9a)  - £A + grad æ
è
div A +  a

 c²
¶j
—–
 ¶
t
ö
ø
= kmo
—–
 a
J           æ
è
  £ = D - 1

 c²
²
—–
t²
  ö
ø

(A-9b)  - £j - 1

 a

—–
 ¶
t
æ
è
div A +  a

 c²
¶j
—–
 ¶
t
ö
ø
= k 

 e
o
r

と書けますが、Aa jk mo / a はすべて Ökm 倍され、jA / ak r / eo はすべて Ök/e 倍されるので、(A-9) は単位系の取り方によらずに成立することがわかります。
 従って、Lorentz条件

(A-10)  div A +  a

 c²
¶j
—–
 ¶
t
= 0

となり、Lorentzゲージにおける (A-9) は、d'Alembert方程式:

(A-11a)  £A = - kmo
—–
 a
J

(A-11b)  £j = - k 

 e
o
r

となり、その遅延ポテンシャル解は

(A-12a)  A =  kmo
——
 4pa
ò J(t - r/c, s')
—————
r
dV'

(A-12b)  j = k 
——
4pe
o
ò r(t - r/c, s')
—————
r
dV'

となります。

 更に、任意に選んだ倍率 k , e , m に対し、分極電荷 rP と分極電流 JP と磁化電流 JMPa M はすべて Öe/k 倍されるので、SI単位系で成立する分極磁化との間の関係式:

(A-13a)  rP = - div P

(A-13b)  JP = P
—–
 ¶t

(A-13c)  JM = a rot M

も単位系の取り方に無関係に成り立ち、しかも eoEk P は真空中の D と同じく Öke 倍され、B / mok M は真空中の H と同じく Ök/m 倍されるので、SI単位系で成立する物質中の電束密度物質中の磁場の定義式:

(A-14a)  D = eoE + k P

(A-14b)  H =  1 
—–
 m
o
B - k M

も単位系の取り方に無関係に成り立ち、従って (A-6) が物質中のMaxwell方程式としても単位系の取り方に無関係に成り立つことがわかります。

 また磁荷と磁流については、任意に選んだ倍率 k , e , m に対し、rmJm a P / eomo M はすべて Öm/k 倍されるので、SI単位系で成立する磁荷磁流の定義式:

(A-15a)  rm = - mo div M

(A-15b)  Jm = - a 
—–
e
o
rot P + mo M
—–
t

も単位系の取り方に無関係に成り立ち、従って連続の式:

(A-16)  div Jm + ¶rm
——
t 
= 0

も単位系の取り方に無関係に成り立つことがわかります。

 更に、SI単位系のもとで成り立つ Poynting vector の定義式:

(A-17a)  S =  a

k
E ´ H

の右辺は任意に選んだ倍率 k , e , m に対して不変ですから、これも単位系の取り方によらず成立し、やはりSI単位系のもとで成り立つ電磁エネルギー密度の定義式:

(A-17b)  u = E · D
——–
2k
+ H · B
——–
2k

の右辺も任意に選んだ倍率 k , e , m に対して不変ですから、これも単位系の取り方によらず成立します。

 同様に、SI単位系のもとで成り立つ電磁運動量の定義式:

(A-18a)  g = 1
—–
 k
a
D ´ B

の右辺は任意に選んだ倍率 k , e , m に対して不変ですから、これも単位系の取り方によらず成立し、やはりSI単位系のもとで成り立つMaxwell応力の定義式:

(A-18b)  T = E#D
——–
2k
+ H#B
——–
2k

の右辺も任意に選んだ倍率 k , e , m に対して不変ですから、これも単位系の取り方によらず成立します。

 一般に、k = 1 と置いた単位系を有理単位系といい、これに対して静電磁界の力の表示式 (A-1) やポテンシャルの積分表示 (A-12)4p が出てこないように k = 4p と置いた単位系を非有理単位系といいます。非有理単位系では、逆にMaxwell方程式に 4p の因子が出てきます。
 次に eomo の決め方ですが、電流密度を再定義しなくて済むように、a = 1 すなわち c²eomo = 1 となるように eomo を定めると便利です。SI単位系はまさにそのような単位系の一つですが、他にも電荷の受ける力の式を簡単にするために eo = 1 , mo = 1/c² と置いた静電単位(e.s.u、逆に電流の受ける力の式を簡単にするために mo = 1 , eo = 1/c² と置いた電磁単位(e.m.uというものがあります。
 一方、電場と磁場を対称的に扱うために、eo = mo = 1 と置いた単位系も考えられ、その場合 a = c となります。この方式を採用した有理単位系をHeaviside単位系、非有理単位系をGauss単位系といいます。

 以上の単位系を一覧表にすれば次のようになります:

(A-19) 
mo eo    k       a  
(非有理)静電単位 1 / c² 1 4p 1
(非有理)電磁単位 1 1 / c² 4p 1
Gauss単位系 1 1 4p  c
Heaviside単位系 1 1 1  c
SI単位系 4p ´ 10-7 N/A² 1 / (c²mo ) 1 1

 これらの各単位系間の、電磁場の各量の換算式を、(A-4) の各値が単位系の取り方によらないことを利用して求めてみましょう。SI単位系X と書かれる電磁場の量に対応する、(非有理)静電単位による場を Xesu と書き、(非有理)電磁単位による場を Xemu と書き、Gauss単位系による場を XG と書き、Heaviside単位系による場を XH と書けば、

(A-20a)  X / Öeo = Ö4p Xesu = Ö4p c Xemu = Ö4p XG = XH       (  X = r , J , P , Q , I  )

(A-20b)  Öeo X = Xesu / Ö4p = Xemu / ( Ö4p c ) = XG / Ö4p = XH       (  X = E , j , Ve  )

(A-20c)  X / Ömo = c Xesu / Ö4p = Xemu / Ö4p = XG / Ö4p = XH       (  X = B , A , Φ  )

(A-20d)  Ömo X = Xesu / ( Ö4p c ) = Xemu / Ö4p = XG / Ö4p = XH       (  X = H , Vm  )

(A-20e)  X / Öeo = Xesu / Ö4p = c Xemu / Ö4p = XG / Ö4p = XH       (  X = D , Ψ  )

(A-20f)  X / Ömo = Ö4p c Xesu = Ö4p Xemu = Ö4p XG = XH       (  X = rm , Jm  )

(A-20g)  Ömo M = Ö4p Mesu / c = Ö4p Memu = Ö4p MG = MH
(A-20h)    _____
Ö eo/mo L = c Lesu / ( 4p ) = Lemu / ( 4pc ) = LG / ( 4p ) = LH

(A-20i)  eo R = Resu / ( 4p ) = Remu / ( 4pc² ) = RG / ( 4p ) = RH

(A-20j)  X / eo = 4p Xesu = 4pc² Xemu = 4p XG = XH       (  X = C , s  )

(A-20k)  e / eo = eesu = c² eemu = eG = eH

(A-20l)  m / mo = c² mesu = memu = mG = mH

となります。ただし eomo の値はSI単位系での値を表すものとします。
 通常、SI単位系以外の単位系では、力学的単位としてCGS単位系を採用するので、

(A-21)  mo = 4p ´ 10-7 N/A² = 4p ´ 10-2 dyn /A²

 従って、

(A-22a)  Ömo = Ö4p ´ 10-1 Ödyn /A

(A-22b)  Öeo = 1 / ( c Ömo ) = 10 / ( Ö4p c ) A /Ödyn
(A-22c)    _____
Ö eo/mo  = 10² / ( 4pc ) A²/ dyn

となり、(A-20a)~(A-20c)(A-20g)~(A-20j) の各式において、SI単位系CGS非有理電磁単位の間で換算率が 10 の単なる冪になる、という性質があることがわかります。これは、実用単位であるSI単位系を定めるとき、非有理系から有理系に変更しながら、それまで使われていたCGS非有理電磁単位との間で、主だった電磁的量の値の換算が便利になるように、SI単位系における mo の値を定めたことによります。

 最後に、単位系の話ではありませんが、磁化 M のかわりに磁気分極 Pm º mo M を用いて記述することを E-H 対応とよび、これに対して磁化 M を用いて記述する方法を E-B 対応とよびます。E-H 対応では、見た目の対称性をよくするために分極 P電気分極とよびかえて Pe と書くことにすると、(A-13),(A-14),(A-15) はそれぞれ

(A-13a)*  rP = - div Pe

(A-13b)*  JP = Pe
——
 t

(A-13c)*  JM = a 
—–
m
o
rot Pm

(A-14a)*  D = eoE + k Pe

(A-14b)*  B = moH + k Pm

(A-15a)*  rm = - div Pm

(A-15b)*  Jm = - a 
—–
e
o
rot Pe + Pm
——
 

となります。

INDEX