電磁気学

― 解説版( page 1 ) ―


目 次

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0. はじめに
1. Coulombの法則を分割する
2. 微分方程式への翻訳

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0.はじめに

 古典力学が、Newtonの運動方程式という大変シンプルな1個の式から議論がスタートできることに比べると、電磁気学の場合は電荷・磁荷に対するそれぞれのCoulombの法則やら、電流が作る磁場に関するBiot-Savartの法則とかAmpèreの法則、更には電磁誘導や非定常な場合の変位電流の項を付け加えたAmpèreの法則の拡張、など様々な方程式が登場し、その見かけの複雑さは古典力学の比ではありません。

 しかし、古典力学のNewtonの運動方程式に対応する電磁気学の基礎方程式、すなわちそこからあらゆる電磁現象をすべて純粋に演繹的に導くことができる、という方程式は、Maxwell方程式とよばれる次の4つの方程式:

(M1)  rot H - D
—–
t
= J

(M2)  div D = r
 
(M3)  rot E + B
—–
t
= 0

(M4)  div B = 0

と、電磁現象と力学の橋渡しをするLorentzと呼ばれる式:

(L)  F = q(E + v ´ B)

だけで十分であることがわかっています。

 しかしながら、いくら「だけで十分」と言っても、古典力学と違って5つも式があるし、それにMaxwell方程式の方は、div とか rot のような“見慣れない”微分演算子を含んでいる微分方程式であり、やはり古典力学に比べると敷居が高い面は否定できません。

 しかし、電磁気学におけるその敷居の高さは、実はほとんどすべて数学の敷居の高さに過ぎません。しかも使う数学は、ベクトル解析とよばれるものを含む微分幾何学の初歩と、偏微分方程式論の2つがほとんどを占めます。そこで、本文では数学の解説におけるこれらの箇所を参照することで、各項目を解説していますが、それらの数学に馴染みがないと非常に難解に感じられると思います。そこで本稿では、基礎方程式であるMaxwell方程式やLorentz力の式から要するにどういう方法でそれぞれの電磁現象を導いているのかということを、定性的に説明することにします。

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1.Coulombの法則を分割する

 電磁現象について最も早く知られていたのは電荷と磁荷に関するCoulombの法則、すなわち万有引力と同じく距離の2乗に反比例するという法則です。

(1-1)  F µ   qq'
—–
 r
²

 これは大変わかりやすいし、微分積分のような数学概念も出てこないし、2階微分が出てくるNewtonの運動方程式より初等的なくらいです。
 しかし、議論を深めようとしたとき、このままの形では、実は見かけに反して不便なのです。
 というのは、この式は電荷や磁荷が運動している場合には厳密には成り立たないし、力学で出てきた概念であるエネルギー保存則とか運動量保存則のような保存則が、電磁力が働く場でどうなるのか、といった、物理ではよく出てくる既出概念の拡張を考えるのに適していないからです。

 そこで、まず方程式 (1-1) を見ると、右辺の分子に qq' というのが出てきていますが、これらは2つの点電荷(点磁荷)が持つそれぞれの電気量磁気量)です。2つの点電荷(点磁荷)に A , B という名前を付けたとき、左辺の力というのは、例えば電気量 q を持つ点電荷(磁荷) A が電気量 q' を持つ点電荷(磁荷) B から受ける力を表します。
 つまり、この式 (1-1) は、一見簡単な形をしていますが、実は既に「力を与える側」と「力を受ける側」の法則という2つの法則を1つに纏めた形をしているのです!

 そこで、これを、電気量 q' を持つ点電荷(点磁荷) B が力を与える式と、電気量 q を持つ点電荷(点磁荷) A が力を受ける式の2つの式に分離してみることにしましょう:

(1-2a)  E = k  q'
—–
 r
²

(1-2b)  F = qE

 ただし式 (1-2a) に出てくる k は、もとの式 (1-1) の両辺の比例関係を表す比例定数です。

 さて、Coulombの法則をこのように書き直しただけでは、1つの式で表現できているものをわざわざ2本の式に分けただけで、何のメリットもないように思えますが、実はこれらの式を次のように解釈することにより、という新しい概念を導入することになり、この新概念の導入が物理的に飛躍的な発展をもたらすことになります。

 すなわち、点 B に電荷 q' を置くと、これが空間のすべての点に、式 (1-2a) で表されるような、すなわち大きさが B の電気量に比例し、点 B からの距離の2乗に反比例するような電場 E というものを生み、この電場の中に別の電気量 q を持った電荷 A を持ってくると、これは電場から (1-2b) の力、すなわち自身の持つ電気量と電場の強さの積で与えられた力を受ける、というように解釈し直すわけです。

 以上は電荷の場合ですが、磁荷の場合も同様で、

(1-3a)  E = k'  q'
—–
 r
²

(1-3b)  F = qH

という形に分離し、新たに導入した概念 H磁場といいます。

 このように、ある点電荷(点磁荷)が空間全体に作る電場や磁場のようなモノのことを物理では一般にとよびます。これは力学における質点のように、特定の位置を占める概念とは異なる新しい概念です。

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2.微分方程式への翻訳

 前節で導入した、電気量 q' を持つ点電荷 A が作る電場の強さを与える式 (1-2a) ですが、前節で最初に述べた「電荷や磁荷が運動している場合には厳密には成り立たないし、力学で出てきた概念であるエネルギー保存則とか運動量保存則のような保存則が、電磁力が働く場でどうなるのか、といった、物理ではよく出てくる既出概念の拡張を考えるのに適していない」という問題点は、この (1-2a) の方に引き継がれています。
 それと、「距離の2乗に反比例する」という法則も考えてみれば不思議で、なぜこれが3乗とか4乗とかでなく乗なのか?それにそもそも何で整数である必然性があるのか?もしかしたら、これは2乗ではなく 1.99999 乗とか 2.00001 乗とかいうことはないのか?、などの疑問もわいてきます。
 尤も、物理は「なぜ?」という質問に対して究極の答を出すことは本質的にできないのですが、理由のわからない特定の数値が出てくる法則を、特定の数値が出て来ない法則に書き換えることができれば、一つの謎が解明できたとみなすことはできるでしょう。