集合と位相


5.基数の演算

 { ai | iÎI } を基数の族とするとき、集合の圏におけるそれらの余積の濃度を { ai | iÎI }とよんで

(5-1)   
å

iÎI
ai = card (  
Õ

iÎI
ai )

と書きます。特に I が2点からなる集合 { 0, 1 } のときは

(5-2)   
å

iÎI
ai = a0 + a1

とも書いて、この二項演算を基数の加法といいます。また、集合の圏における { ai | iÎI } の積の濃度を { ai | iÎI }とよんで、紛れのない限り

(5-3)   
Õ

iÎI
ai = card (  
Õ

iÎI
ai )

と書きます。ただし右辺の Õ は集合の圏における積の意味です。特に I が2点からなる集合 { 0, 1 } のときは

(5-4)   
Õ

iÎI
ai = a0a1

とも書いて、この二項演算を基数の乗法といいます。
 圏における積、余積に関する一般的な性質として、添字を同じ添字集合内で入れ替えても積、余積は不変、すなわち sI からそれ自身への全単射とすると、

(5-5a)   
Õ

iÎI
Xs(i) @  
Õ

iÎI
Xi 

(5-5b)   
Õ

iÎI
Xs(i) @  
Õ

iÎI
Xi 

であり、添字集合 I をいくつかの集合 { Il | Λ } に分割して、それぞれの(余)積を集めたものの(余)積はもとの図式の(余)積と同型である:

(5-6a)   
Õ
Λ
 
Õ

iÎIl
Xi @  
Õ

iÎI
Xi 

(5-6b)   
Õ
Λ
 
Õ

iÎIl
Xi @  
Õ

iÎI
Xi 

という性質が成り立ちますから、特に次のような基数に関する加法と乗法の交換律:

(5-7a)  a + b = b + a

(5-7b)  ab = ba

と結合律:

(5-8a)  a + ( b + c ) = ( a + b ) + c

(5-8b)  a (bc ) = (ab )c

が成り立ちます。また、集合の圏における余積の表示(「数学の基礎」第8節 (8-3) 参照):

(5-9)   
Õ

iÎI
Xi = { (i, x) | iÎI , xÎXi }

と2個の集合の積の表示:

(5-10)  X ´ Y = { (x, y) | xÎX , yÎY }

により、

(5-11)  (  
Õ

iÎI
Xi ) ´ (  
Õ

jÎJ
Yj ) = { ((i, x), ( j, y)) | iÎI , jÎJ , xÎXi , yÎYj } @ { ((i, j), (x, y)) | (i, j)ÎI ´ J , (x, y)ÎXi ´ Yj } =  
Õ

(i, j)ÎI´J
Xi ´ Yj

となるので、加法と乗法に関する分配律:

(5-12)  ( a + b  )( c  + d  ) = ac  + ad  + bc  + bd

が成り立つことがわかります(ただし結合律が成り立つので右辺で括弧は省略しました)。

 また、2個の集合 X , Y の余積を X Å Y と書けば、(5-9),(5-10) により

(5-13a)  X Å Æ @ X

(5-13b)  X ´ Æ = Æ

(5-13c)  X ´{a} @ X

が成り立つので、空集合の濃度を 0 、1点からなる集合の濃度を 1 と書けば、

(5-14a)  a + 0 = 0 + a = a

(5-14b)  a 0 = 0a = 0

(5-14c)  a 1 = 1a = a

が成り立ち、基数 01 は、それぞれ基数の加法と乗法の単位元であることがわかります。

 さて、a , b を基数とし、(5-9) において I = a , Xi = b と置けば

(5-15)   
Õ

iÎa
b = { (i, x) | iÎa , xÎb } = a ´ b

ですから、

(5-16)   
å

iÎa
b = ab

が成り立ちます。そこで、(5-16) のアナロジーとして、その左辺の濃度の和 å を濃度の積 Õ に置き換えたものを ba と書いて baとよびます:

(5-17)   
Õ

iÎa
b = ba

 ba とは a から b への写像全体の集合 F(a, b ) の濃度のことに他なりません。

 特に、0 が集合の圏の始対象の濃度、1 が終対象の濃度であることに注意すれば、

(5-18a)  a 0 = 1

(5-18b)  1a = 1

がわかります。また、空でない集合から空集合への写像は存在しないことと、一点からなる集合から集合 X への写像全体の集合は X と等濃であることに注意すれば、

(5-19b)  0a = 0       ( a ¹ 0 )

(5-19a)  a 1 = a

がわかります。

 さて、一般に完備な圏において、対象の族 { ai | iÎI } の積を a とし、b を任意の対象とし、a から ai への標準射を pi と書けば、射 H(b, a) に対して射の族 { piH(b, ai) | iÎI } を対応させる H(b, a) から集合の積 Õ{ H(b, ai) | iÎI } への写像は、圏における積の定義により、一対一上への写像となります。すなわち集合として

(5-20a)  H(b, a) @  
Õ

iÎI
H(b, ai)       ( a =  
Õ

iÎI
ai )

が成り立ちます(「数学の基礎」第8節 (8-14) 参照)。ただし左の Õ は集合の積を、右の Õ は考えている圏における積を表わします。双対的に、余完備な圏では

(5-20b)  H(a, b) @  
Õ

iÎI
H(ai, b)       ( a =  
Õ

iÎI
ai )

が成り立ちます(「数学の基礎」第8節 (8-19) 参照)。特に I が2個の元からなる場合を考えると、

(5-21a)  H(a, b ´ c) @ H(a, b) ´ H(a, c)

(5-21b)  H(bÅc, a) @ H(b, a) ´ H(c, a)

 ゆえにそれぞれの両辺の濃度を取って、card a = a , card b = b , card c = c  と書けば、基数に関する指数法則:

(5-22a)  (bc )a = baca

(5-22b)  ab+c = abac

が得られます。
 また、Y ´ Z から X への写像 f は、各 zÎZ を与えるごとに yÎYf( y, z)ÎX を対応させる Y から X への写像とみなせ、その逆も成り立つので、

(5-23)  F(Y ´ Z, X ) @ F(Z, F(Y, X ))

が成り立ちます。これを濃度の言葉で表わすと、残りの指数法則:

(5-24)  abc = (ab )c

が得られます。

 次に基数の不等号について考察します。集合の積と余積について、一般に Xi Ì Yi ( iÎI ) ならば

(5-25a)   
Õ

iÎI
Xi Ì  
Õ

iÎI
Yi 

(5-25b)   
Õ

iÎI
Xi Ì  
Õ

iÎI
Yi 

ですから、ai £ bi ( iÎI ) であるような基数の族について

(5-26a)   
å

iÎI
ai £  
å

iÎI
bi 

(5-26a)   
Õ

iÎI
ai £  
Õ

iÎI
bi 

が成り立ちます。特に I が2個の元からなる場合を考えると、a £ a' , b £ b' ならば

(5-27a)  a + b £ a' + b'

(5-27b)  ab £ a'b'

が成り立ちます。
 また、X Ì X' , Y Ì Y' ¹ Æ のとき、元 aÎY' を任意に取って固定し、任意の f : X ® Y に対し、f' : X' ® Y' を、xÎX に対しては f'(x) = f(x)xÎX' \ X に対しては f'(x) = a で定義すれば、f に対して f' を対応させる写像は X から Y への写像全体の集合から X' から Y' への写像全体の集合への写像として一対一です。これを基数の言葉で表わせば、a £ a' , b £ b' ¹ 0 のとき

(5-28)  b a £ b' a'

となることがわかります。

 さて、集合 X の部分集合 A に対し、その特性関数、すなわち xÎA のとき 1 、そうでないとき 0 を対応させる X から 2 = {0, 1} への写像 cA を考えると、AcA を対応させる写像は、P (X )X から 2 への写像全体の集合との間の一対一対応を定めます。これを濃度の言葉で表現すると、

(5-29)  card P (X ) = 2card X

となります。ゆえにCantorの定理の基数による表現として

(5-30)  a < 2a

が得られます。

 さて次に、任意の無限集合 X に対して

(5-31)  X ´ X @ X

が成り立つことを証明しましょう。
 まず X = w の場合を考えます。
 i : w ® w ´ wi(n) = (n, 0) で定義すれば i は一対一です。一方 f : w ´ w ® wf(n, m) = 2n 3m で定義すれば、素因数分解の一意性(「数学の基礎」第12節 (12-21) 参照)により、f も一対一です。ゆえに w £ w ´ w かつ w ´ w £ w なので、Bernsteinの定理により w @ w ´ w となります。
 次に一般の無限集合 X の場合を考えます。無限集合の定義により、X は可算部分集合 N を含みます。そこで、N Ì A Ì X となる集合 A と全単射 f : A ® A ´ A の組 (A, f ) の全体を S と書けば、今証明したことにより S ¹ Æ です。
 また、S の2元に対する2項関係 (A, f ) £ (B, g) を、A Ì B かつ g|A = f で定義すると、明らかにこれは S 上の順序関係になり、しかも TS の全順序部分集合とすれば、

(5-32a)  A = È{ B | (B, g)ÎT }

(5-32b)  f = È{ g | (B, g)ÎT }

と置くと、明らかに N Ì A Ì X かつ f : A ® A ´ A は全単射になり、したがって (A, f )ÎST の上界になります。ゆえにZornの補題により S は極大元 (A, f ) を持ちます。あとは A @ X を示せば証明が完了します。
 そこで A < X と仮定して矛盾を導くことにします。まず、

(5-33a)  2 £ A @ A ´ A

ですから A £ A Å A @ 2 ´ A £ A ´ A @ A となるので、Bernsteinの定理により

(5-33b)  A Å A @ A

が成り立つことに注意します。
 さて、X \ A £ A と仮定すると、(5-33b) により

(5-34)  A £ X = A È (X \ A) @ A Å (X \ A) £ A Å A @ A

となるのでBernsteinの定理により A @ X となって仮定に反します。よって (4-17) により X \ A > A 、すなわち一対一写像 i : A ® X \ A が存在するので B = AÈi[A] と置くと、B ´ B = (A ´ A) È (A ´ i[A]) È (i[A] ´ A) È (i[A] ´ i[A]) となり、(5-33a),(5-33b) により

(5-35)  (A ´ i[A]) È (i[A] ´ A) È (i[A] ´ i[A]) @ (A ´ A) Å (A ´ A) Å (A ´ A) @ A Å A Å A @ A Å A @ A @ i(A)

ですから i[A] から (A ´ i[A]) È (i[A] ´ A) È (i[A] ´ i[A]) への全単射 g が存在します。すると、写像 h : B ® B ´ B を、A 上は f に等しく、i[A] 上は g に等しいとして定義すれば、明らかに h は全単射、すなわち (B, h)ÎS で、かつこれは (A, f ) より真に大きいので、(A, f ) の極大性に反します。
 以上で (5-31) は証明されました。これを基数の言葉で表現すると、

(5-36)  a ³ w  Þ  a ² = a

となります。ゆえに a を無限基数、1 £ b £ a とすれば、(5-14c),(5-27b),(5-36) により a = a1 £ ab £ aa = a ² = a ですから、

(5-37)  ( a ³ w  Ù  1 £ b £ a )  Þ  ab = a

 また a を無限基数、b £ a とすれば、(5-14a),(5-27),(5-14c),(5-12),(5-36) により a = a + 0 £ a + b £ a + a = 1a + 1a = 2a £ aa = a ² = a ですから、

(5-38)  ( a ³ w  Ù  b £ a )  Þ  a + b = a

 更に、a を無限基数、2 £ b £ a とすれば、(5-28),(5-30),(5-24),(5-36) により 2a £ ba £ aa £ (2a)a = 2aa = 2a ² = 2a ですから

(5-39)  ( a ³ w  Ù  2 £ b £ a )  Þ  ba = 2a

が成り立ちます。
 また、無限集合 A とその部分集合 B に対し、(4-21)(5-38) により card A = card B + card (A \ B) = max { card B, card (A \ B) } ですから

(5-40)  card B < card A  Þ  card (A \ B) = card A

が成り立つことがわかります。

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