集合と位相


6.フィルター

 集合 X の部分集合からなる集合 F

(6-1a)  ÆÏF

(6-1b)  XÎF 

(6-1c)  A, BÎF  Þ  AÇBÎ

(6-1d)  ( AÎF  Ù  A Ì B )  Þ  BÎ

をすべて満たすとき、これを X 上のフィルターといい、フィルター G は、フィルター F を含むとき F より細かいといい、FG を共に含むフィルターが存在するとき両者は共終であるというのでした(「数学の基礎」第17節参照)。

 さて、GF より細かいフィルターとすると、G より細かいフィルターは明らかに F と共終です。ところが排中律を用いると、その逆、すなわち G より細かい任意のフィルターが F と共終なら GF より細かいということが証明できます。
 実際、GF より細かくない、すなわち F Ë G とすると、G に属さない F の元 A が存在します。このとき任意の BÎG に対して B Ë A です。なぜならもし B Ì A となる BÎG が存在すれば、フィルターの定義 (6-1d) により AÎG となってしまうからです。
 ゆえに任意の BÎG に対して B \ A ¹ Æ なので、集合 { B \ A | BÎG } は有限交叉的(「数学の基礎」第17節参照)です。従ってこれを含むフィルター H が存在し、これは明らかに G より細かいにもかかわらず、F と共終ではありません。なぜなら、AÎF かつ B \ AÎH で、AÇ(B \ A) = Æ ですから、FH のいずれよりも細かいフィルターが存在すれば、それは Æ を元に持たねばならず、フィルターの条件 (6-1a) に反するからです。
 以上で証明すべき命題の対偶が証明されました。この命題を仮にフィルターの定理とよぶことにします。

 さて、一般に無限集合 S における有限集合の補集合の全体 FS におけるフィルターになりますが、特に SN のとき、F点列 f : N ® X による二重逆像 f#F を、点列 f に伴う点列フィルターとよぶことにします。

 もし X のフィルター F が可算基底を持つ、すなわちある有限交叉的で高々可算な集合 G が存在して F = fil G と書けるならば、F はそれより細かい点列フィルター全体の共分になることが証明できます。
 実際、F より細かい点列フィルター全体の共分を H とするとき、H Ì F を証明すれば十分です。そこで任意に BÏF を取ります。F = fil { Ai | iÎN } と書けますから、任意の nÎN に対して Ç{ Ai | i £ n } Ë B が成立します。 よって anÎÇ{ Ai | i £ n } \ B を取り、点列 { ai | iÎN } に伴う点列フィルターを G と書けば、{ an | n ³ i } Ì Ai ですから F Ì G で、{ ai | iÎN }Ç B = Æ ですから BÏG です。H Ì G ですからこれは BÏH を意味します。

 X 上のフィルターは、それより真に細かいフィルターが存在しないとき超フィルターといいます。

 超フィルター F と共終なフィルター G は、そのいずれよりも細かいフィルター H を持ちますが、F の極大性により実は H = F です。すなわち超フィルター F と共終なフィルターは F より粗いことがわかります。

 さて、FX 上の超フィルターならば、

(6-2)  ( "BÎF : AÇB ¹ Æ )  Þ  AÎ

が成り立ちます。実際、(6-2) の左辺は集合 {A} の生成するフィルター GF と共終であることを意味していますが、F は超フィルターなので、実は G Ì F となり、AÎG Ì F が得られます。

 次に、X 上のフィルター F(6-2) を満たせば

(6-3)  AÈBÎF   Þ  ( AÎF  Ú  BÎF )

が成り立ちます。実際、(6-3) が成り立たないと仮定すると、A, BÏF となるので、(6-2) の対偶により AÇC = BÇD = Æ となる C, DÎF が存在します。ところがフィルターの性質 (6-1c) により Æ = (AÇCÇD)È(BÇCÇD) = (AÈB)ÇCÇDÎF となって (6-1a) に反します。

 また、X 上のフィルター F(6-3) を満たせば

(6-4)  AÎF   Ú   X \ AÎ

が成り立ちます。実際、B = X \ A と置けば、フィルターの条件 (6-1b) により AÈB = XÎF ですから (6-3) の左辺が成り立ち、(6-3) の右辺から結論が得られます。

 最後に X 上のフィルター F(6-4) を満たせば F は超フィルターであることを証明しましょう。
 GF より細かいフィルターとし、任意に AÎG を取ります。X \ AÎF と仮定すると F Ì G ですから X \ AÎG となって、フィルターの性質 (6-1c) により Æ = AÇ(X \ A)ÎG となって、フィルターの条件 (6-1a) に反します。
 すなわち
X \ AÏF ですから、仮定 (6-4) により AÎF となります。これは G Ì F を意味していますから、F は極大、すなわち超フィルターです。

 以上により、F が超フィルターであることと、各条件 (6-2) , (6-3) , (6-4) はすべて同値であることがわかりました。

 さて、集合 X 上のフィルター全体からなる集合 Fil X は包含関係を順序とする順序集合ですが、任意の FÎFil X に対し、F を元に持つ任意の全順序部分集合 を取ると、È は明らかに (6-1) の全条件を満たすのでフィルターで、T の上界になっています。ゆえにZornの補題により、Fil XF より細かい極大元、すなわち超フィルターを持ちます。
 すなわち任意のフィルターに対してそれより細かい超フィルターが存在することがわかります(超フィルターの定理)

 さて、FX 上のフィルターとするとき、F より細かい超フィルターの全体を Φ と書くと、F = ÇΦ  が成り立ちます。
 実際、任意の GÎΦF より細かいので F Ì ÇΦ は明らかです。
 一方、F より細かい任意のフィルター G に対し、超フィルターの定理により G より細かい超フィルター H が存在し、Φ に属します。HÇΦ より細かいので、GÇΦ は共終です。ゆえにフィルターの定理により、FÇΦ より細かいことがわかり、従って両者は一致します。

 すなわち任意のフィルターは、それより細かいすべての超フィルターの下限であることがわかりました。

 次に f を集合 X から Y への写像、FX 上の超フィルターとします。このとき Ff による二重逆像 f#F「数学の基礎」第17節 (17-3) の直前参照)も超フィルターです。
 実際、X の任意の部分集合 A に対し、F が超フィルターであることと (6-4) により f -(A)Î 又は f -(X \ A) = X \ f -(A)Î が成り立ちますが、これは AÎf# 又は X \ AÎf# であることを示しており、再び (6-4) により f#F は超フィルターです。

 さて、集合 XX 上のフィルター F の組 ( X, F )対象と呼び、2つの対象 ( X, F ) , ( Y, G ) に対して写像 f : X ® YG Ì f#F を満たすものをとよべば、明らかに一つの圏が定まります。これをフィルターの圏といいます。この圏では、対象の任意の族 { ( Xi , Fi ) | iÎI } の積 ( X, F ) が存在して

(6-5a)  X = Õ{ Xi | iÎI }

(6-5b)  F = fil { pi-(A) | iÎI  Ù  AÎFi }

で与えられます。ただし Õ は集合の圏における積を表わし、pi : X ® Xi は標準写像です。
 実際、AÎFi なら pi-(A)ÎF 、すなわち Fi Ì pi#F ですから pi はフィルターの圏の射になります。
 また、別の対象 ( Y, G ) と射の族 { fi : Y ® Xi | iÎI } に対し、X は集合の圏における { Xi | iÎI } の積ですから、写像 f : Y ® Xi が存在して fi = pi ° f となり、fi : Y ® Xi はフィルターの圏の射ですから Fi Ì fi#G すなわち AÎFi なら f -(pi-(A)) = fi-(A)ÎG すなわち pi-(A)Î f#G となります。
 これは、F Ì f#G を意味するので、各 fi はフィルターの圏の射になります。また f の一意性は、集合の圏における一意性により明らかです。以上で ( X, F ) がフィルターの圏における { ( Xi , Fi ) | iÎI } の積になっていることがわかりました。
 特に ( X, F )( Y, G ) のフィルターの圏における積は、F ÏG = { A ´ B | AÎF , BÎG } と置くと ( X ´ Y, F ÏG ) で与えられます(「数学の基礎」第18節参照)。

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