集合と位相


7.位相空間

 「数学の基礎」第17節では、位相を近傍系で定義し、それが内部を取る演算子 ° による定式化、開集合系による定式化と同等であることを示しました。それらを再掲しておきましょう:

開集合による定式化

 集合 X の部分集合からなる集合 O が次の条件:

(7-1a)  XÎO

(7-1b)  U, VÎO  Þ  UÇVÎO

(7-1c)  O' Ì O  Þ  ÈO' ÎO

を満たすとき、X に位相が与えられたといい、O の元を開集合という。

近傍系による定式化

 集合 X の各点 x に対して X 上のフィルター V (x) が与えられ、次の条件:

(7-2a)  UÎV (x)  Þ  xÎU

(7-2b)  UÎV (x)  Þ  { yÎX | UÎV ( y) }ÎV (x)

を満たすとき、X に位相が与えられたといい、V (x)x近傍系、その元を x近傍という。

内部による定式化

 集合 X の部分集合 AX の部分集合 A° を対応させる操作 ° が与えられ、次の条件:

(7-3a)  X ° = X

(7-3b)  A°Ì A

(7-3c)  A Ì B  Þ  A°Ì B°

(7-3d)  A°° = A°

(7-3e)  (AÇB)° = A°Ç B°

を満たすとき、X に位相が与えられたといい、A°A内部という。

 これらの定式化の間には次のような関連があります:

(7-4a)  O = {O Ì X | "xÎO : OÎV (x) } = {O Ì X | O° = O }

(7-4b)  V (x) = fil{OÎO | xÎO } = {U Ì X | xÎU° }

(7-4c)  A° = È{OÎO | O Ì A } = {xÎX | AÎV (x) }

 また、フィルター F は、V (x) より細かいとき x収束する(を極限に持つ)、V (x) と共終なとき x集積する(を集積点に持つ)といい、集合 A を元に持つフィルターの収束点(集積点でも同じ)の全体を A と書いて A閉包といい、A = A のとき A閉集合というのでした(「数学の基礎」第18節)。フィルター F の集積点の全体 は閉集合で、

(7-5)   = Ç{ A | AÎF }

が成り立ちます(「数学の基礎」第18節 (18-3) 参照)。

 集積と集積の概念を超フィルターを使って表現すれば、フィルター Fx に収束(集積)するための必要十分条件は、F より細かい任意の(ある)超フィルターが x に収束することです。
 実際、FF より細かいすべての超フィルターの下限でしたから、FV (x) より細かいことと、F より細かいすべての超フィルターが V (x) より細かいことは同値です。
 また、FV (x) が共終なら、このいずれよりも細かいフィルター G が存在しますが、超フィルターの定理により、G より細かい超フィルターが存在します。

 ところで (7-4c) から

(7-6)  (X \ A)° = {xÎX | X \ AÎV (x) } = {xÎX | $UÎV (x) : AÇU = Æ } = X  \ {xÎX | "UÎV (x) : AÇU ¹ Æ } = X \ A

が成り立つので、

(7-7)  (X \ A)° = X \ A  Û  A = A

すなわち、A が閉集合であるためには、A の補集合 X \ A が開集合であることが必要十分であることがわかりました。

 また、位相空間 X の部分集合 A に対し、A外部 AeA境界 A

(7-8a)  Ae (X \ A)°

(7-8b)  A A \ A° = AÇ (X \ A°)

で定義すると、Ae は開集合、A は閉集合になり、

(7-9a)  A Ì B  Þ  Be Ì Ae

(7-9b)  (AÈB)e = AeÇBe

(7-9c)  Ae = X \ A

(7-9d)  ( A )e = Ae

(7-9e)  Aee = ( A )°

(7-9f)  A = A Ç (X \ A)

(7-9g)  (A)° = Æ

(7-9h)  ¶¶A = ¶A

が成り立ちます。
 実際、(7-9a),(7-9b),(7-9d),(7-9g),(7-9h) は、それぞれ 「数学の基礎」第18節 (18-6a),(18-6b),(18-6d),(18-6e),(18-6f) で既に証明しました。
 また (7-9c) は、 (18-6c) により Ae Ì X \ A が成り立ち、逆に上で示したように、X \ A は閉集合の補集合なので開集合で、しかも A と交わらないので X \ A に含まれる開集合です。よって X \ A Ì Ae となって証明されました。
 また (7-9e) は、(7-8a),(7-9c) により、Aee = (X \ Ae)° = (X \ (X \ A))° = ( A )° となって証明されました。
 最後に (7-9f) は、(7-6)AX \ A を代入して両辺の補集合を取れば X \ A° = (X \ A) となるので、これと (7-8b) から明らかです。

 さて、(7-3)A , B をそれぞれの補集合 X \ A , X \ B で置き換え、両辺の補集合を取れば、(7-6) により

(7-10a)  Æ = Æ

(7-10b)  A Ì A

(7-10c)  A Ì B  Þ  A Ì B

(7-10d)  =
A
= A
(7-10e)  _____
AÈB
= AÈB

が得られ、この逆の操作を行えば (7-10) から (7-3) も得られます(「数学の基礎」第18節 (18-1) と比較すると、最後の式 (18-1e)É= になっていることに注意)。すなわち (7-10) を満たす演算  ̄ で位相を定義することもできることがわかります。
 また、開集合と閉集合は互いに補集合の関係にあることがわかりましたから、閉集合の全体を C  と書いて、位相を

(7-11a)  ÆÎ

(7-11b)  A, BÎC  Þ  AÈBÎ

(7-11c)  C ' Ì C  Þ  ÇC ' Î

を満たす X の部分集合からなる集合 C  として規定することもできます。

 さて、位相空間 XY の近傍系をそれぞれ V (x)V '( y) と書くことにします。
 このとき X から Y への写像 f は、V '( f(x)) Ì f#V (x) すなわち "VÎV '( f(x)) : f -(V )ÎV (x) のとき x で連続といい、すべての xÎX で連続なとき連続であるというのでした(「数学の基礎」第17節参照)。

 f : X ® Yx で連続なら、もちろん x に収束する超フィルター の像(二重逆像でも同じ)は f(x) に収束します。
 逆に x に収束する任意の超フィルター F の像が f(x) に収束すれば、任意の VÎV '( f(x)) に対して f -(V )ÎF ですが、V (x) はこのような超フィルター全体の下限すなわち共分でしたから、f -(V )ÎV (x) となって f は連続になります。
 すなわち f : X ® Yx で連続であるための必要十分条件は、x に収束する任意の超フィルターの像が f(x) に収束することです。

 このことから、排中律が成り立つ場合は、擬連続「数学の基礎」第18節参照)と連続は同じ意味になることがわかります。
 実際、f : X ® Yx で擬連続とすると、x に収束する任意の超フィルター F に対し、擬連続の定義によりその二重逆像 f#Ff(x) に集積する、言い換えると V '( f(x)) と共終です。ところが超フィルター F の二重逆像 f#F は超フィルターですから、これは f#FV '( f(x)) より細かい、すなわち f(x) に収束することを意味し、fx で連続であることがわかります。
 したがって、「数学の基礎」第17節 (17-23),(17-21) 及び「数学の基礎」第18節 (18-7),(18-8) と、(18-9) 直後の注意により、f の連続性は、次のいずれの条件によっても表わすことができます:

(7-12a)  "xÎX : V '( f(x)) Ì f#V (x)

(7-12b)  O' Ì f#O

(7-12c)  C ' Ì f#C

(7-12d)  "B Ì Y :  f -(B°) Ì  f -(B)°

(7-12e)  "B Ì Y : _____
 f -(B)
Ì  f -(B)

(7-12f)  "A Ì X :  f [A] Ì  f [A]

 ただし、OO' はそれぞれ XY の開集合系、CC ' はそれぞれ XY の閉集合系を表わします。

 位相空間から位相空間への写像は、任意の開(閉)集合の像が開(閉)集合になるとき開(閉)写像といいます。このとき

(7-13a)   f : X ® Y は開写像。

(7-13b)  "A Ì X :  f [A°] Ì  f [A]°

(7-13c)  "B Ì Y :  f -(B)° Ì  f -(B°)

は互いに同値です(「数学の基礎」第17節 (17-34),(17-35) 参照)。また

(7-14a)   f : X ® Y は閉写像。

(7-14b)  "A Ì X :  f [A] Ì  f [A]

も互いに同値です(「数学の基礎」第18節 (18-14) 参照)。

 位相空間を対象、連続写像を射とする圏を位相空間の圏とよび、位相空間の圏から集合の圏への関手を考えたとき、位相空間 X の部分集合 A に埋め込み写像 i : A ® X による導入構造(「数学の基礎」第9節)を入れたものを部分位相といい、X の同値関係 @ による商空間 X/@ に標準写像 p : X ® X/@ による余導入構造(「数学の基礎」第9節)を入れたものを商位相というのでした(「数学の基礎」第17節参照)。位相空間の部分空間や商空間を考えるときは、断りない限り、これらの位相により位相空間とみなすことにします。

 集合 X 上の2つの位相構造 tt' について、X の恒等写像が ( X, t ) から ( X, t' ) への連続写像になるとき、tt' より強いt't より弱い)といいます。X には最も強い位相と最も弱い位相が存在します。前者を離散位相、後者を密着位相といいます。開集合系の言葉で言えば、離散位相とはすべての部分集合を開集合とする位相のことであり、密着位相とは全空間と空集合のみを開集合とする位相のことです。

 今後、“点列フィルターが収束(集積)する”というかわりに“点列が収束(集積)する”という言い方をすることにします。

 位相空間 X の部分集合 A に対し、A に含まれる点列の収束点の全体を A列的閉包といい、列的閉包がそれ自身と一致する集合を列的閉集合といいます。また、位相空間 X から位相空間 Y への写像 f は、xÎX に収束する点列の像が f(x) に収束するとき列的連続であるといいます。
 明らかに、閉集合は列的閉集合であり、連続なら列的連続ですが、位相空間 X の点 x の近傍系が可算基底を持てば、逆も成り立ちます。
 なぜなら、列的閉なら閉集合であることと列的連続なら擬連続であることは「数学の基礎」第18節で示したとおりですし、上に示したように、古典論理のもとでは擬連続なら連続だからです。

 近傍系が可算基底を持つ位相空間を第一可算公理を満たす空間ということがあります。これに対し、開集合の部分集合 O' で、任意の開集合が O' の部分集合の和集合として書けるようなものを開集合系の基底(開基)といいますが、高々可算な開基が存在する位相空間を第二可算公理を満たす空間といいます。(7-4b) により、第二可算公理を満たせば第一可算公理を満たすことがわかります。

 一般に、X の部分集合からなる集合 O で、その合併が X に一致するものを X被覆、その部分集合でやはり被覆になっているものを部分被覆、それが有限(高々可算)集合であるとき有限(可算)部分被覆といい、また開集合からなる被覆を開被覆といいますが、X の任意の開被覆が可算部分開被覆を持つような位相空間をLindelöf空間といいます。
 第二可算公理を満たす空間はLindelöf空間です。
 実際、任意の開被覆 O に対し、その各要素 O を可算開基 { Oi | iÎN } により O = È{ Oi | iÎIO } ( IO Ì N ) と表わし、I = È{ IO | OÎO } Ì N と置き、各 iÎI に対して OiÌ O を満たす代表元 OÎO を一つ選んで O(i) と書けば、{ O(i) | iÎI }O の可算部分開被覆になります。

 位相空間 X の部分集合からなる集合 A は、任意の xÎX に対し、AÇU ¹ Æ となるような AÎA が有限個しかないような x の近傍 U が存在するとき局所有限であるといいます。
 閉集合からなる局所有限族 A の合併 FÈA は閉集合です。
 実際、任意に xÎX \ F を取ると、AÇU ¹ Æ となる AÎA が有限個しかないような x の開近傍 U が存在します。CÈ{ AÎA | AÇU ¹ Æ } は閉集合の有限個の合併ですから閉集合で、しかも xÏC です。ゆえに U \ C = UÇ(X \ C)F と交わらない x の開近傍です。x は任意ですから F は閉集合であることがわかります。

 位相空間 X の部分集合は、その閉包が X に一致するとき稠密であるといい、特に高々可算な稠密集合が存在する位相空間は可分であるといいます。可分な空間の可算個の積は可分です(「数学の基礎」第18節参照)。また、明らかに第二可算公理を満たす位相空間は可分です。

 さて、X の部分集合 A は、任意の xÎA に対して UÇA が部分空間 U の閉集合であるような UÎV (x) が存在するとき局所閉であるといいます。
 開集合 O と閉集合 F の交わり A = OÇF は局所閉です。なぜなら xÎA なら xÎO ですから OÎV (x) 、従って i : O ® X を埋め込み写像とすれば、OÇA = OÇF = i-(F )O の閉集合だからです。
 逆に、任意の局所閉集合 A は、ある開集合 O と閉集合 F によって A = OÇF と書けることを証明しましょう。
 各 xÎA に対して x の近傍 UxX の閉集合 Fx が存在して AÇUx = FxÇUx と書けます。一方、(7-4b) により xÎOxÌ Ux となる開集合 Ox が存在しますから、AÇOx = FxÇOx となります。A Ì FxÈ(X \ Ox) ですから

(7-15)  A Ì ( È{Ox | xÎA } )Ç Ç{FxÈ(X \ Ox) | xÎA }

= È{OxÇ Ç{FyÈ(X \ Oy) | yÎA } | xÎA }

Ì È{OxÇ(FxÈ(X \ Ox)) | xÎA }

Ì È{OxÇFx | xÎA }

= È{AÇOx | xÎA }

= AÇ È{Ox | xÎA }

= A

 ゆえに

(7-16)  A = OÇF

 ただし

(7-17a)  O = È{Ox | xÎA }

(7-17b)  F = Ç{FxÈ(X \ Ox) | xÎA }

です。ここで O は開集合 Ox の合併ですから (7-1c) により開集合です。
 また、X \ Ox は開集合 Ox の補集合ですから閉集合、したがってそれと閉集合 Fx の合併である FxÈ(X \ Ox)(7-11b) により閉集合、従ってそれらの共分である F(7-11c) により閉集合です。
 以上により、A が局所閉であるための必要十分条件は、それがある開集合と閉集合の共分の形に書けることであることがわかりました。

 次に、位相空間の分離条件について説明します。位相空間 X は、任意の相異なる2点 x, yÎX に対して

(7-18a)  $UÎV (x) : yÏU

(7-18b)  $VÎV ( y) : xÏV

の少なくとも一方が成り立つとき T0-空間、両方とも成り立つとき T1-空間

(7-19)  $UÎV (x) : $VÎV ( y) : UÇV = Æ

が成り立つときHausdorff空間といいます。明らかに Hausdorff空間  Þ  T1-空間  Þ  T0-空間 となります。また、XHausdorff空間であるための条件は X ² の対角集合が閉集合であることです。
 なお、本節におけるHausdorff空間の定義は、「数学の基礎」第19節 (19-20) ではHausdorffと呼んだものに他なりませんが、その対偶を取れば

(7-20)  ( "UÎV (x), "VÎV ( y) : UÇV ¹ Æ )  Þ  x = y

すなわち V (x)V ( y) が共終なら x = y 、言い換えるとフィルターの極限は存在すれば一意的であることと同値です。これは「数学の基礎」第18節で定義したHausdorff性に他なりません。つまり排中律が成り立つ場合はHausdorffと強Hausdorffは同じ意味になります。
 ゆえに、「数学の基礎」第18節により、XHausdorff空間であることと、X ² の対角集合 DX{(x, x) | xÎX }X ² の閉集合であることとは同値であることがわかります。
 また、任意の xÎX に対して

(7-21)  {x} = { yÎX | "VÎV ( y) : {x}ÇV ¹ Æ } = { yÎX | "VÎV ( y) : xÎV }

となりますが、XT1-空間であるためには、(7-18b) が成り立てばよいことに注意します。実際、xy を入れ替えれば (7-18a) も成り立つからです。また、条件 (7-18b)

(7-22)  X  \ {x} = { yÎX | $VÎV ( y) : xÏV }

と書け、これは

(7-23)  {x} = { yÎX | "VÎV ( y) : xÎV }

と同値ですから、XT1-空間であるための必要十分条件は、1点からなる集合が閉集合であることであることがわかりました。

 更にHaussdorf空間以上の分離条件として、T1-空間であって、かつ任意の閉部分集合 A と一点 aÎX \ A に対して aÎU , A Ì V , UÇV = Æ となる開集合 U , V が存在するような位相空間 X正則空間といいます。
 任意の aÎXaÏF であるような閉集合に対して aÎU , F Ì V , UÇV = Æ となる開集合 U , V を考えることは、FV をそれぞれ補集合 O , C に置き換えると、a を元に持つ任意の開集合 O に対して aÎU Ì C Ì O を満たす開集合 U と閉集合 C の存在を意味しますから、正則性は一点からなる集合が閉集合で、かつ各点が閉集合からなる近傍の基底を持つという条件に言い換えることができます。

 正則空間の部分空間は正則です。実際、Y を正則空間 X の部分空間とし、aÎY と、a を元に持たない Y の閉集合 A を任意に取ると、X の閉集合 FA = FÇY となるものが存在します。このとき aÏF ですから、X の正則性により、aÎU , F Ì V , UÇV = Æ となる X の開集合 U , V が存在します。このとき U'UÇYV'VÇY は、aÎU' , A Ì V' , U'ÇV' = Æ となる Y の開集合です。

 また T1-空間であって、かつ交わらない2つの任意の閉部分集合 AB に対して A Ì U , B Ì V , UÇV = Æ となる開集合 U , V が存在するような位相空間 X正規空間といいます。
 これは、BV をそれぞれ補集合に対する定義に言い直すと、一点からなる集合が閉集合で、かつ任意の閉集合 F とそれを含む開集合 O に対し、F Ì O' Ì F' Ì O となる 閉集合 F' と開集合 O' が存在することを意味します。

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