「数学の基礎」では一様空間のコンパクト性を定義しましたが(「数学の基礎」第20節参照)、排中律を仮定した場合は、コンパクトという概念を位相空間に対しても定義することができます。しかし本節ではこの概念を更に一般化して、フィルターに対してもコンパクト性を定義することにします。
位相空間 X の収束フィルターより細かいフィルターは収束し、集積フィルターより粗いフィルターは集積するのでした(「数学の基礎」第17節 (17-19)
の直後参照)。しかし集積フィルターより細かいフィルターについては何とも言えません。
そこで、X 上のフィルター F は、それより細かい任意のフィルターが集積するときコンパクトであるということにします。集積フィルターより粗いフィルターは集積するので、コンパクト・フィルターと共終なフィルターは集積することがわかります。また、収束フィルターは明らかにコンパクトです。
一般に、超フィルターは x に集積すれば x に収束しますから、コンパクト・フィルター F より細かい超フィルターは収束します。
逆に F より細かいすべての超フィルターが収束すれば、F より細かい任意のフィルター G に対し、超フィルターの定理により G より細かい超フィルター H が存在し、仮定により H は収束するので G は集積し、G は任意ですから F はコンパクトであることがわかります。
すなわち F がコンパクトであるための必要十分条件は、F より細かい任意の超フィルターが収束することです。
さて、(7-5)
によれば、F がコンパクトであるための必要十分条件は、F より細かい任意のフィルター G に対して
(8-1) |
となることです。S を X の閉集合からなる有限交叉的な集合で、fil
Sfil
S
(8-2) |
すなわち S は無限交叉性を持ちます。
逆に X の閉集合からなる有限交叉的な集合で、それに伴うフィルターが F と共終なら必ず無限交叉的であるとします。このとき F より細かい任意のフィルター G に対して = { A | A
ÎG }fil
S
これを S の元の補集合からなる集合 U の言葉で言い換えると、“ U の任意の有限部分集合 ÈU' ¹ XÎF \
ÈU' ¹ ÆÈU ¹ X
ところが \
ÈU' ¹ ÆÈU' ¹ XÎF \
ÈU' ¹ ÆÈU ¹ X
そこで更にこの対偶を取ることにより、X のフィルター F がコンパクトであるための必要十分条件は、X の任意の開被覆 U に対し、その有限部分集合 ÎF Ì ÈU' が成り立つことであることがわかりました。
このことを用いると、コンパクト・フィルターの連続写像による二重逆像もコンパクトであることが証明できます。
実際、F を位相空間 X のコンパクト・フィルター、 :
X ® Y #U
= { f -(O) | OÎU } Ì UÎF Ì È f #U'
= f -( ÈU' ) [A]
Ì ÈU' [A]
FÎ f##
F
また、Y を位相空間 X の閉部分空間とすると、Y のフィルター F は、X で生成するフィルター fil
F
なぜなら F より細かい Y のフィルター G が X で生成するフィルター fil
Gfil
Ffil
GÇ{ A | A
Îfil G } = Ç{ A | A
ÎG } ¹ ÆÎG Ì Y = Y
更に、位相空間の族 { Xi | i
ÎI }{ ( Xi , Fi ) | i
ÎI }( X, F )
実際、G を F より細かい超フィルターとすると、標準写像を piXi :
X ® pi#
Gpi#
Fpi#
Fpi#
G(18-9)
直後の注意により G は X で収束します。これで F はコンパクトであることが証明されました。
また、F を位相空間 X のコンパクト・フィルター、R を X とHausdorff
空間 Y の積 ´ Y
(8-3) |
が成り立ちます。
実際、y が左辺に属せば、任意の ÎV ( y)
ÎFÇR[A]
¹ Æ(A
´ V )ÇR ¹ Æ
一方、F と ( y)
fil { (A
´ V )ÇR | AÎF , VÎV ( y) }(x, z)
(x, z)
ÎÇ{ A | A
ÎF } = y(x, z)
ÎR(8-3)
の右辺に属します。
さて、位相空間 X は、すべてのフィルターが集積するときコンパクトであるといいます。 ¹ Æ{ X }
¹ Æ{ X }
(8-4a)X はコンパクト。 |
(8-4b)X の任意の超フィルターは収束する。 |
(8-4c)X の任意の開被覆は有限部分開被覆を持つ。 |
ところがこれらに加えて、更に次の条件:
(8-4d)任意の位相空間 Y に対し、Y への射影 p :X |
も同値であることが証明できます。
実際、X をコンパクト、F を ´ YÎp[F]
ÎV ( y)
[F]
ÇV ¹ Æ-(V )
ÇF ¹ Æ :º fil { p
-(V )ÇF | VÎV ( y) } ´ Y
一方、y は F の Y への射影の収束点ですから、これは (x, y)
(x, y)
ÎFÎp[F]
[F]
逆に、位相空間 X が、任意の位相空間 Y に対して Y への射影が閉写像と仮定します。X 上の任意のフィルター F に対し、X に一点 w を付け加えて得られる集合 :º X È{
w} :º { B | B
Ì X }È{ AÈ{w} | AÎF }
一方 ´ Y :º { (x, x)
ÎX ´ Y | xÎX }wÎp[D]
(x,
w)ÎDÎX
これは、X における x の任意の近傍 U と、Y における w の任意の近傍 V に対し、(U
´ V )ÇD ¹ Æ = AÈ{
w}(U
´ A)ÇD ¹ ÆÇA ¹ Æ
さて、位相空間の部分集合は、部分空間としてコンパクトであるときコンパクト集合とよびます。(8-4c)
により、コンパクト集合の有限個の合併はコンパクトです。また、あるコンパクト集合に含まれる集合は相対コンパクトであるといいます。
また、 :
X ® Y#{ X }
= { Y }
また、Y をコンパクト集合 X の閉部分空間とすると、X において集合 { Y }
fil { Y }
{ Y }
更に、位相空間の族 { Xi | i
ÎI }{ ( Xi , { Xi }) | i
ÎI } = Õ{ Xi | i
ÎI }( X, { X })
{ Xi }
{ X }
また、Hausdorff
空間 X のコンパクト集合 K は閉集合です。
実際、F を K を元に持つ X の収束フィルターとすると、X はHausdorff
なので F の極限 x は唯一つです。一方 = { K
ÇA | A ÎF }(x)
( y)
Hausdorff
性により = yÎK
この定理により、コンパクト空間 X からHausdorff
空間への連続写像 f に対し、X の任意の閉集合はコンパクトなので、その f による像はコンパクト、従って閉ですから、f は閉写像です。特に f が全単射の場合は -
特に f が同じ集合 X の恒等写像の場合を考えると、コンパクト空間 X において、X の位相より弱いHausdorff
位相はすべてもとの位相に一致することがわかります。
また Y がHausdorff
空間、K が位相空間 X のコンパクト集合、F が ´ Y[K ]
= { yÎY | $xÎK : (x, y)ÎF }
なぜなら、 = Æ[K ]
= Æ ¹ Æ = fil {K}
(8-3)
を適用すれば、[K ]
さて、可算基底を持つ任意のフィルターが集積する位相空間を可算コンパクトであるといいます。明らかにコンパクト空間は可算コンパクトです。
点列フィルターは可算基底を持ち、逆に第6節の議論により、可算基底を持つフィルターは、それより細かい点列フィルターの共分ですから、可算コンパクトの定義を任意の点列が集積する空間としても同じです。
さて、(8-1)
と同様に、X が可算コンパクトであるための必要十分条件は、可算基底を持つ任意のフィルター F に対して
(8-5) |
となることです。S を X の閉集合からなる高々可算で有限交叉的な集合とします。このとき fil
S
(8-6) |
すなわち S は無限交叉性を持ちます。
逆に X の閉集合からなる有限交叉的な集合は必ず無限交叉的であるとします。このとき任意のフィルター F に対して = { A | A
ÎF }
これを S の元の補集合からなる集合 U の言葉で言い換えると、“ U の任意の有限部分集合 ÈU' ¹ XÈU ¹ X
このことから、可算コンパクト集合の有限個の合併が可算コンパクトであること、Lindelöf
空間ではコンパクト性と可算コンパクト性が同値になることがわかります。
また、コンパクトの場合と同様にして、可算コンパクト集合の連続像が可算コンパクトであること、Hausdorff
空間の可算コンパクト部分集合は列的閉であることがわかります。
さて、可算コンパクトの定義では任意の点列が集積することを要請しましたが、ここで点列の集積より強い概念を定義しましょう。
点列 : N
® XN
から自分自身への単調増加な一対一写像 i を合成した ° i
点列は、その任意の部分列に対して、さらにその部分列で a に収束するものが存在すれば a に収束します。
実際、点列 : N
® XÎN
(k)
ÏU > nN
からそれ自身への単調増加な一対一写像 i で、任意の ÎN
(i(k))
ÏU ° i
また、X が第一可算公理を満たすときは、集積点 a を持つ点列は a に収束する部分列を持つのでした(「数学の基礎」第18節)。
この部分列の概念を用いて、任意の点列が収束する部分列を持つ位相空間のことを点列コンパクトであると定義します。上述の議論により、点列コンパクトなら可算コンパクトであり、第一可算公理を満たす位相空間では可算コンパクトと点列コンパクトの概念は同値になります。
点列コンパクト集合 K の列的連続写像 f による像は点列コンパクトです。
実際、 [K ]
{ yi | i
ÎN } Ì f [K ](xk)
= yk{ xk | k
ÎN } Ì K{ xi(k) | k
ÎN }{ yi(k) | k
ÎN } [K ]
また、点列コンパクト集合の有限個の合併 = È{ Ki | i
ÎI }
実際、K に含まれる点列 { xk | k
ÎN }{ xk | k
ÎJ }N
の無限部分集合です。このとき単調増加な全単射 : N
® J{ xi(k) | k
ÎN }{ xk | k
ÎN }
コンパクト性と点列コンパクト性の間には一般に関係はありませんが、第二可算公理を満たす空間の場合、第一可算公理が成り立ち、更にLindelöf
空間になるので、コンパクト、可算コンパクト、点列コンパクトの三概念はすべて同値になります(第10節で示すように、可算基底を持つ一様空間の場合でも同値になります)。
さて、一般に、開被覆 O の任意の元が開被覆 Hausdorff
空間 X は、その任意の開被覆に対してそれより細かい局所有限開被覆が存在するときパラコンパクトであるといいます。
有限被覆は局所有限であり、部分被覆はもとの被覆より細かいので、コンパクトHausdorff
空間はパラコンパクトです。
パラコンパクト空間 X の閉部分空間 F の開被覆 O に対し、{ X \ F }
ÈO \
F
また、パラコンパクト空間は正規です。
実際、まず X が正則であることを証明しましょう。A を X の閉集合、a を A に属さない X の点とします。任意の ÎAHausdorff
ですから、互いに交わらない開近傍 ÎV (a)
ÎV (x)
{ X \ A }
È{ Vx | xÎA }(
0 £ i £ n )ÎV (a)
ゆえに {
0, 1 ,¼, n }ÎA( i
ÎJ )Ì X \
A( i
ÎI )Ì Vxi( i
ÎJ )
(8-7a) U' |
(8-7b) V' |
と置けば、U' と V' は互いに交わらない開集合で、ÎU' Ì V'
次に A , B を X の互いに交わらない閉集合とします。任意の ÎA ' x É B{ X \ A }
È{ Ux | xÎA }ÎO' Þ O Ì X \
AÎO" Þ $xÎA :
O Ì Ux = ÈO"
一方、任意の ÎB(
0 £ i £ n ) Ì UyiÎA(x)
= WxÇ Ç{ Vyi | 0 £ i £ n }(x)
= È{ V(x) | x
ÎB }
特に、コンパクトHausdorff
空間は正規です。
さて、Hausdorff
空間 X は、その各点がコンパクトな近傍を持つとき局所コンパクトであるといいます。
局所コンパクト空間の各点には、コンパクト集合からなる近傍系の基底が存在します。
実際、各 ÎX
一方 K は正規、従って正則なので、K における x の近傍 ÇUÎKÇO Ì KÇF Ì KÇUÇF°ÇO
Hausdorff
空間 X のコンパクト集合は閉集合ですから、特に局所コンパクト空間は正則であることもわかります。
コンパクトHausdorff
空間 X から1点を除いてできる集合 = X \ {a}
逆に Y を局所コンパクト空間とすると、Y に属さない点 w を持ってきて = YÈ{
w}w を付け加えたもの”を X の開集合とよべば、これは X 上のHausdorff
な位相を定め、Y は X の部分空間になります。また X の任意の開被覆 O は wÎO
Hausdorff
空間 X は、高々可算個のコンパクト集合の合併と表わされるときσ-
コンパクトであるといいます。明らかに、σ-
コンパクト空間の閉部分集合はσ-
コンパクトです。
チホノフの定理により、局所コンパクト(σ-
コンパクト)空間の有限個の積は局所コンパクト(σ-
コンパクト)です。また局所コンパクト(σ-
コンパクト)空間の無限個の積 Õ{ Xi | i
ÎI }-
コンパクト)であることは明らかです。
さて、局所コンパクトかつσ-
コンパクトな位相空間はパラコンパクトです。
実際、局所コンパクト空間 X が可算個のコンパクト集合 ( i
ÎN ) = È{ K'i | i
ÎN } Ì K'i+1°{ K'i | i
ÎN }
ÎK'k{ Ax
° | xÎK'k }ÎK'k(
0 £ i £ n ) = È{ Axi
° | 0 £ i £ n }K'k+1 = Kk+1È È{ Axi |
0 £ i £ n }
さて、X の任意の開被覆 O に対し、各 k に対するコンパクト集合 \
K'k-1°
(8-8a) O'k |
(8-8b) O' |
と置けば、
また、Hausdorff
空間 X は、任意の開被覆に対してそれより細かい局所有限閉被覆が存在すればパラコンパクトです。
実際、任意の開被覆 O に対し、それより細かい局所有限被覆 A を取り、各 ÎA Ì OAÎO
次に、各点 ÎXÎO :º { Vx | x
ÎX }
そこで、ÎA :º È{ F
ÎF | FÇA = Æ } :º OA \
CA Ì GA Ì OA :º { GA | A
ÎA }
任意の ÎF Ì VÎO'ÎA \
AFÇV = ÆÇF = Æ Ì CAÇGA = Æ
任意に ÎX :º È{ AF | F
ÎF ' }ÎA \
AxÎF 'ÇGA = Æ Ì ÈF 'ÇGA = Æ
更に、X が正則な位相空間なら、任意の開被覆に対してそれより細かい局所有限被覆が存在すればパラコンパクトです。
実際、任意の開被覆 O に対し、各点 ÎXÎO :º { Vx | x
ÎX }
そこで、 :º { A | A
ÎA }
まず任意の ÎA Ì VÎO'Ì OÎO Ì V Ì O
また、A は局所有限なので、任意の ÎXÎAÇU = ÆÇU = Æ
さて、上記の結果の応用として、正則なLindelöf
空間はパラコンパクトであることを証明しましょう。
O を正則なLindelöf
空間 X の開被覆とすると、O は可算部分開被覆 { Ok | k
ÎN }ÎN
:º Ok \
È{ Oi | i < k } :º { Ak | k
ÎN }ÎXÎAk > kÇAi = Æ