集合と位相


13.位相群

 群 G は、位相空間であって、かつ G の乗法を G ´ G から G への写像と見て、逆元を取る操作を G からそれ自身への写像と見ていずれも連続であるとき位相群とよぶのでした(「数学の基礎」第22節参照)。群 G が位相群であるための必要十分条件は、

(13-1a)  "UÎV : eÎU

(13-1b)  "UÎV : U -1Î

(13-1c)  "UÎV : $VÎV : V ² Ì U

(13-1d)  "UÎV : "aÎX : aUa-1Î

を満たすフィルター V が存在して、G の単位元 e の近傍系をなすことです( (22-4) 参照)。また、位相群がHausdorffであるための条件は、

(13-2)  ÇV = {e}

が成り立つことです。

 aÎG に対して la(x)ax , ra(x)xaと置くと、laraG から G への位相同型ですから(「数学の基礎」第22節参照)、G の部分集合 A が開集合、閉集合、又はコンパクト集合なら aAAa も開集合、閉集合、又はコンパクト集合です。

 従って、G の部分集合 AB の一方が開集合なら AB は開集合です。
 実際、例えば A が開集合の場合は AB = È{ Ab | bÎB } は開集合の合併ですから開集合です。B が開集合の場合も同様です。

 また、G部分群 H は、G開集合なら閉集合です。よって特に、連結な位相群の開部分群は G に一致します。
 なぜなら、H が開集合なら任意の aÎG に対して aH = la[H ] も開集合ですが、aÏH  Þ  aHÇH = Æ ですから、G \ H = È{ aH | aÎG \ H } で、右辺は開集合ですから、その補集合 H は閉集合です。

 また、Gコンパクト集合 A , B に対し、AB はコンパクトです。
 なぜならコンパクト集合の積 A ´ B はコンパクトで、AB は、その乗法という連続写像による像だからです。

 次に G の閉集合 F がコンパクト集合 K と共通点を持たないとき、UKUÇUFU = Æ となる単位元の近傍 U が存在することを証明しましょう。
 各 xÎG に対し、V を単位元の近傍とするときの VxV -1 の全体は x の近傍の基底になるので、各 xÎK に対して VxxUx-1ÇF = Æ となる単位元の近傍 Vx が存在します。そこで、各 xÎK に対し、Wx² Ì Vx となる単位元の近傍 Wx を取ります。
 一方 K はコンパクトですから、K の有限部分集合 I が存在して K Ì È{ WxxWx-1 | xÎI } となるので、WÇ{ Wx | xÎI } と置けば、これは単位元の近傍で、WKW -1ÇF = Æ が成り立ちます。ここで更に U -1 = U かつ U ² Ì W となる単位元の近傍 U を取れば、UKUÇUFU = Æ が成り立つことがわかります。

 このことから特に、G閉集合 F とコンパクト集合 K に対し、FKKF は閉集合であることがわかります。
 実際、xÏFK とすると、FÇxK -1 = Æ で、xK -1 もコンパクトですから、FÇUxK -1 = Æ となる単位元の近傍 U が存在し、これは FKÇUx = Æ を意味するので、xFK の外部に属すことがわかり、FK は補集合が開集合、すなわち閉集合であることがわかります。KF についても同様です。

 位相群 G において、

(13-3a)  UL { (x, y)ÎG ² | x-1yÎU }       ( U Ì G )

(13-3b)  UL fil{ UL | UÎV  }

と置けば ULG の一様構造を定めます。これを G左一様構造というのでした(「数学の基礎」第22節参照)。同様に、

(13-4a)  UR { (x, y)ÎG ² | xy-1ÎU }       ( U Ì G )

(13-4b)  UR fil{ UR | UÎV  }

と置けば URG の一様構造になり、これを G右一様構造といいます。

 ゆえに位相群は完全正則であり、また { e }G の閉集合なら、一点からなる集合はすべて閉、従って GHausdorff空間です。
 左右の一様構造は、そのいずれかが完備なら他方も完備です。また局所コンパクト位相群の両一様構造は完備です。なお、位相群の(左又は右)一様構造に関する完備化は必ずしも位相群になるとは限りませんが、位相Abel群の場合は完備化が位相群になるのでした。

 一般に、位相群の左一様構造を定める左不変な擬距離の族、すなわち

(13-5a)  dl(ax, ay) = dl(x, y)

を満たす擬距離の族が存在します(「数学の基礎」第26節 (26-40) 参照)。同様に、G の右一様構造を定める右不変:

(13-5b)  dl(xa, ya) = dl(x, y)

な擬距離の族が存在します。特に GAbel群の場合、群の乗法を加法的に書けば、両側不変:

(13-5c)  dl(x + a, y + a) = dl(x, y)

な擬距離の族が存在します。位相群に距離が付く、すなわち一個の擬距離で定められる一様構造を持つための必要十分条件は、単位元の近傍フィルターが可算基底を持つことです。

 G を群、H をその閉部分群とするとき、

(13-6a)  G/H { aH | aÎG }

(13-6b)  G\H { Ha | aÎG }

と置くと、aH = bH  Û b-1aÎH および Ha = Hb  Û ab-1ÎH が成り立つので、G/HG\H はそれぞれ GH による左剰余類および右剰余類「数学の基礎」第14節参照)に他なりません。そこで U Ì G に対して

(13-7a)  UH { (xH, yH )Î(G/H )² | xy-1ÎU }

(13-7b)  UH fil{ UH | UÎV  }

と置くと、これは G/H の一様構造を定めることがわかります。
 実際、(13-1a),(13-1b) により、UH はそれぞれ (10-1d),(10-1e) を満たすことがわかります。また、

(13-8)  VH ° VH = { (xH, zH ) | $y, y'ÎG : xy-1, y'z-1ÎV  Ù  yH = y'H }

= { (xH, zH ) | $y, y'ÎG : xy-1, y'z-1ÎV  Ù  y-1y'ÎH }

= { (xH, zH ) | $y, y'ÎG : $hÎH : xy-1, y'z-1ÎV  Ù  y' = yh }

= { (xH, zH ) | $yÎG : $hÎH : xy-1, yhz-1ÎV }

= { (xH, zH ) | $yÎG : $hÎH : xy-1, yz' -1ÎV  Ù  z' = zh-1 }

= { (xH, z'hH ) | $yÎG : $hÎH : xy-1, yz' -1ÎV }

= { (xH, z'H ) | $yÎG : xy-1, yz' -1ÎV }

Ì { (xH, z'H ) | xz' -1ÎV ² }

= (V ²)H

ですから、(13-1c) により UH(10-1f) を満たすことがわかります。ゆえに UHG/H 上の一様構造を定めることがわかりました。
 同様に

(13-9a)  HU { (Hx, Hy )Î(G/H )² | x-1yÎU }

(13-9b)  HU fil{ HU | UÎV  }

と置けば、HUG\H 上の一様構造を定めることがわかります。

 G の元 a に対し、G/H からそれ自身への写像 jaja(xH ) = xaH で定義すれば、これは G から G/H への余作用「数学の基礎」第14節 (14-36) 参照)になり、しかも

(13-10)  (xH, yH )ÎUH  Û  (xa)( ya)-1 = xaa-1y-1 = xy-1ÎH  Û  (xaH, yaH ) = (ja(x), ja( y))ÎUH

ですから ja は一様空間の同型写像であることがわかります。
 従って、X の部分集合 B が開集合、閉集合、又はコンパクト集合なら ja[B] も開集合、閉集合、又はコンパクト集合です。また xH = jx(H ) ですから、特に { H }G/H の閉集合なら、一点からなる集合はすべて閉、従って G/HHausdorff空間です。
 ゆえに G/HHausdorff空間なら、H = p-({H }) は、閉集合の連続写像による逆像ですから閉集合です。

 さて、位相群 G に右一様構造を入れたとき、xÎGxHÎG/H を対応させる写像を p : G ® G/H と書けば、p は明らかに一様連続ですが、これは実は開写像でもあります。
 実際、O Ì G を開集合とし、任意に xÎO を取ると、G の単位元の近傍 U が存在して Ux Ì O となりますが、

(13-11)  p[O] É p[Ux] = { uxH | uÎU } = { yH | yx-1ÎU } = { yH | ( yH, xH )ÎUH }

で、この右辺は xH = p(x) の近傍ですから、p[O] は開集合です。

 このことから、H が閉部分群なら、その補集合 G \ H は開集合なので、(G/H ) \ {H } = p[G \ H ] は開集合、従って {H } は閉集合であることがわかります。つまり G の部分群 H に対する剰余類 G/HHausdorff空間であるためには、HG の閉部分群であることが必要十分です。

 また、左剰余類 G/H の一様構造に伴う位相は G の位相の p による余導入位相(「数学の基礎」第17節参照)に一致します。なぜなら Op-(O' )G の開集合なら p は全射で開写像なので O' = p[O] は開集合だからです。

 また、p が全射で開写像であることから、G がコンパクト、局所コンパクト又はσ-コンパクトなら、G/H も同様です。
 実際、G がコンパクトならその連続像 G/H はコンパクです。
 また、G が局所コンパクトなら コンパクト集合からなる G の単位元の基本近傍系 K が存在し、{ p[K ] | KÎK } はコンパクト集合からなる {H } の近傍の基底になります。
 また、G がσ-コンパクトなら、コンパクト集合からなる可算被覆 K がありますが、{ p[K ] | KÎK }G/H のコンパクト集合からなる可算被覆です。

 さて、G の単位元の近傍が可算基底を持つ、言い換えると G に(右又は左)不変な距離が付く場合はその剰余類も可算基底を持ちますが、G の右一様構造を定める右不変な距離 d を取り、

(13-12)  d'(aH, bH ) inf { d(x, y) | xÎaH , yÎbH }

と置くと、これは G/H 上の擬距離になり、G/H の一様構造を定めます。
 実際、(11-3a),(11-3b) は明らかに成り立ちます。また、任意の e > 0 に対し、d(x, y) £ d'(aH, bH ) + e 及び d( y', z) £ d'(bH, cH ) + e となる xÎaHy, y'ÎbHzÎcH を取れば、y' -1yÎH なので zy' -1yÎzH = cH ですから、d(11-3c) を満たすことと d の右不変性により、

(13-13)  d'(aH, cH ) £ d(x, zy' -1y) £ d(x, y) + d( y, zy' -1y) = d(x, y) + d(e, zy' -1 ) = d(x, y) + d( y', z) £ d'(aH, bH ) + d'(bH, cH ) + 2e

となり、e は任意ですから、d'(11-3c) を満たし、擬距離になることがわかりました。また U{ xÎG | d(x, e) < e } と置くと、

(13-14)  d'(aH, cH ) < e  Û  $xÎaH : $yÎbH : d(x, y) < e  Û  $xÎaH : $yÎbH : xy-1ÎU  Û  $x, y ( aH = xH, bH = yH, xy-1ÎU )  Û  (aH, bH )ÎUH

ですから d'G/H の一様構造を定めます。
 このことから、G の単位元の近傍が可算基底を持ち、かつ完備な場合、G/H も完備であることがわかります。
 実際、{ akH | kÎN }G/H のコーシー列のとき、{ ak | kÎN } の部分列 { ak(i) | iÎN } が存在して d'(ak(i)H, ak(i+1)H ) < 2-i とすることができます。ゆえに d(bi, ci ) < 2-i かつ biÎak(i)H , ciÎak(i+1)H となる bi , ci が存在します。
 ここで、xiÎak(i)H かつ d(xi , xi+1 ) < 2-i となる G の列 { ai | iÎN } が存在することを帰納法で証明しましょう。
 まず x0 = b0 と置きます。xii £ n まで構成できたとし、xn+1 = cnbn-1xn と置くと、帰納法の仮定により bn-1xnÎH ですから xn+1Îcn+1H = ak(n+1)H となり、 更に d の右不変性により d(xn , xn+1 ) = d(bn , cn ) < 2-n となります。ところで j > i のとき

(13-15)  d(xi , xj ) £ j-1
å
k=i
2-k £ 2-i+1

ですから { xi | iÎN } はコーシー列であり、G は完備ですから、これはある xÎG に収束し、

(13-16)  d(xi , x) £ 2-i+1

となります。ゆえに

(13-17)  d'(ak(i)H , xH ) £ d(xi , x) £ 2-i+1

となって、{ akH | kÎN } は部分列が xH に収束するコーシー列なので xH に収束します。

 さて、ここで H正規部分群、すなわち任意の xÎG に対して x-1Hx Ì H である場合を考えます。
 このとき xx-1 を代入すれば xHx-1 Ì H が成り立ち、左から x-1 を、右から x を乗じれば H Ì x-1Hx となるので、x-1Hx = H が成り立ちます。
 ゆえに xHyH = xyy-1HyH = xy( y-1Hy)H = xyHH = xyH 及び (xH )-1 = H -1x-1 = Hx-1 = x-1xHx-1 = x-1H ですから G/H は群、p は群の準同型になり、G の単位元の近傍系 V に対して G/H の単位元 H の近傍 { p[U ] | UÎV } は明らかに (13-1) を満たすので、この位相のもとで G/H は位相群になります。また、その一様構造が位相群 G/H に伴う右一様構造であることも明らかです。

 このとき更に、(13-12) で定義した G/H 上の擬距離は右不変であることを確かめましょう。d が右不変であることと HG の正規部分群であることから

(13-18)  d'(aHcH, bHcH ) = d'(acH, bcH )

= inf { d(x, y) | xÎacH , yÎbcH }

= inf { d(xc-1, yc-1 ) | xÎacH , yÎbcH }

= inf { d(x', y' ) | x'ÎacHc-1, y'ÎbcHc-1 }       ( x' = xc-1, y' = yc-1 )

= inf { d(x', y' ) | x'ÎaH , y'ÎbH }

= d'(aH, bH )

となって、d' が位相群 G/H の一様構造を定める右不変な擬距離になることがわかりました。

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