集合と位相


15.Souslin空間とMartineau空間

 高々可算な集合からなる列 I{ Ik | kÎN }Ik+1 から Ik上への写像 pk の族 p{ pk | kÎN } の組をふるいとよびます。
 集合 X とふるい (I, p) が与えられたとき、各 Ik から X の冪集合 P (X ) への写像 jk の族 j :º { jk | nÎN } は、

(15-1a)  È{ j0(i) | I0 } = X

(15-1b)  Ik  Þ  È{ jk+1(i) | pk(i) = l } = jk(l)

を満たすとき、X 上のふるいがけ、あるいは(DeWildeがより狭い意味で用いた語Webの訳語の意味で)とよぶことにします。
 また、ふるい (I, p) に対し、各 Ik から元 ik を選んで集めた列 S{ ik | kÎN } は、すべての kÎN に対して pk(ik+1 ) = ik を満たすとき、とよびます。網 j が与えられている場合、この糸から構成した X の部分集合の列 { jk(ik ) | kÎN } のこともとよぶことがあります。(15-1) により

(15-2)  X É j0(i0 ) É j1(i1 ) É j2(i2 ) ¼

が成り立ちます。特に (15-2) の各元が空でないとき、この糸を空でない糸といいます。

 X を集合、{  fn : Xn ® X | nÎN } をふるい (I (n), p(n) ) に伴う網 j(n) が与えられた集合 Xn から X への写像の可算族で、

(15-3)  È{  fn [Xn ] | nÎN } = X

を満たすものとします。このとき

(15-4a)  I0 = N

(15-4b)  Ik+1 = Õ{ I (n)k | nÎN }

(15-4c)  p0(i) = n       ( I (n)0 Ì I1 )

(15-4d)  pk+1(i) = p(n)k(i)       ( I (n)k+1 Ì Ik+2 )

(15-4e)  j0(n) = fn [Xn ]       ( nÎN = I0 )

(15-4f)  jk+1(i) = fn [j(n)k(i)]       ( I (n)k Ì Ik+1 )

と置けば、明らかに I{ Ik | nÎN }p{ pk | nÎN } の組はふるいとなり、j :º { jk | nÎN } はそれに伴う X 上の網になります。これらをふるい (I (n), p(n) ) と網 j(n) の族の {  fn : Xn ® X | nÎN } によるといいます。

 また、{  fn : X ® Xn | nÎN } を集合 X からふるい (I (n), p(n) ) に伴う網 j(n) が与えられた集合 Xn への写像の可算族とします。このとき

(15-5a)  Ik = Õ{ I (n)k-n | 0 £ n £ k }

(15-5b)  pk(i0 , i1 ,¼, ik+1 ) = ( p(0)k(i0 ) ,  p(1)k-1(i1 ) ,¼p(k)0(ik ))       ( inÎI (n)k+1-n )

(15-5c)  jk(i0 , i1 ,¼, ik ) = Ç{  fn -(j(n)k-n(in )) | 0 £ n £ k }       ( inÎI (n)k-n )

と置けば、I{ Ik | nÎN }p{ pk | nÎN } の組もふるいとなり、j :º { jk | nÎN } はそれに伴う X 上の網になります。これらをふるい (I (n), p(n) ) と網 j(n) の族の {  fn : X ® Xn | nÎN } による逆像といいます。

 さて、位相空間 X は、あるふるい (I, p) に伴う X 上の網が存在して、その空でない任意の糸 { jn(in ) | nÎN }X収束フィルターの基底になるときSouslin空間とよび、 Xコンパクト・フィルター(第8節参照)の基底になるときMartineau空間Martineau自身はK-解析的空間とよんでいます)とよぶことにします。収束フィルターはコンパクトですから、Souslin空間はMartineau空間です。

 次に、これらの空間が安定性を持つ、すなわちこれらの空間の可算族の像や逆像がやはり同様な空間であることを確かめましょう。

 まず最初に、X を位相空間、{  fn : Xn ® X | nÎN }MartineauSouslin)空間 Xn から X への (15-3) を満たす(列的)連続写像の可算族とすれば、XMartineauSouslin)空間です。
 実際、各 Xn 上のふるい (I (n), p(n) ) とそれに伴う網 j(n) で、その空でない任意の糸がコンパクト(収束)フィルターの基底になるようなものを取り、それらの像を I , p , j とします。この j の空でない任意の糸 { jk(ik ) | kÎN } がコンパクト(収束)フィルターの基底であることを示せば十分です。ところが (15-4) により、

(15-6a)  n :º i0ÎN

(15-6b)  j0(n) = fn [Xn ]

(15-6c)  jk+1(ik+1 ) = fn [j(n)k(ik+1 )] ¹ Æ

(15-6d)  p(n)k(ik+2 ) = pk+1(ik+2 ) = ik+1

 ゆえに { ik | k ³ 1 } 従って { j(n)k(ik+1 ) | k ³ 0 }Xn の糸で、しかも (15-6c) により空ではありません。ゆえに仮定により、これは Xn のコンパクト(収束)フィルターの基底です。よってその fn による(列的)連続像はやはりコンパクト(収束)フィルターの基底になり、これは XMartineauSouslin)空間であることを示しています。

 次に、{  fn : X ® Xn | nÎN } を位相空間 X からMartineauSouslin)空間 Xn への写像の可算族で、X の(可算基底を持つ)任意のフィルターは、すべての fn による像が収束すれば収束するものとします。このとき XMartineauSouslin)空間であることを証明しましょう。
 実際、各 Xn 上のふるい (I (n), p(n) ) とそれに伴う網 j(n) で、その空でない任意の糸がコンパクト(収束)フィルターの基底になるようなものを取り、それらの逆像を I , p , j とします。この j の空でない任意の糸 { jk(i(k)0 , i(k)1 ,¼, i(k)k ) | kÎN } がコンパクト(収束)フィルターの基底であることを示せば十分です。ところが (15-5a),(15-5b) と糸の定義により、

(15-7a)  i(k)nÎI (n)k-n       ( 0 £ n £ k )

(15-7b)  p(n)k-n(i(k+1)n ) = i(k)n       ( 0 £ n £ k )

 すなわち Sn{ i(k)n | k ³ n }Xn の糸で、(15-5c) により

(15-7c)  Æ ¹ jk(i(k)0 , i(k)1 ,¼, i(k)k ) Ì  fn -(j(n)k-n(i(k)n ))

ですから、{ j(n)k-n(i(k)n ) | k ³ n }Xn の空でない糸です。よって仮定により、これは Xn のコンパクト(収束)フィルターの基底になっています。
 このことと (15-7c) により、XSuoslin空間の場合、F{ jk(i(k)0 , i(k)1 ,¼, i(k)k ) | kÎN }fn による像は、すべて収束するので、仮定により F は収束します。
 また XMartineau空間の場合は、F より細かい任意の超フィルター Gfn による像は、コンパクト・フィルターの基底 { j(n)k-n(i(k)n ) | k ³ n } より細かい超フィルターの基底なので収束し、仮定により GX で収束することがわかります。これは F がコンパクトであることを示しており、以上で証明は完成しました。

 さて、上記の議論では可算族の像と逆像を考えましたが、有限族の場合は、同じものの可算個コピーを付け加えれば上記の条件を満たすので、“可算族”のかわりに“高々可算な族”とすることができます。

 また、上記の像の例として、位相空間における可算個のMartineauSouslin)部分空間の合併はMartineauSouslin)部分空間です。従って特に、位相空間の圏における可算個のMartineauSouslin)空間の余積はMartineauSouslin)空間です。また一個の(列的)連続写像の場合を考えれば、MartineauSouslin)空間の(列的)連続像、特に商空間はMartineauSouslin)空間であることがわかります。
 また、上記の逆像の例として、可算個のMartineauSouslin)空間の積はMartineauSouslin)空間です。また一個の写像の場合を考えれば、MartineauSouslin)空間の(列的)閉部分空間は、(可算基底を持つ)フィルターの埋め込み写像による像が収束すれば収束するのでMartineauSouslin)空間であることがわかります。また、これらの組み合わせとして、位相空間の圏における可算個の対象を持つ図式の極限はMartineauSouslin)空間で、特に位相空間 X における可算個のMartineauSouslin)部分空間 Xn の共分は、

(15-8)  Ç{ Xn | nÎN } @ { xÎ Õ{ Xn | nÎN } | "i, jÎN : xi = xj }

から明らかなように、それらの積の閉部分空間と位相同型ですからMartineauSouslin)部分空間です。

 次にSouslin空間とMartineau空間を位相的に特徴付けてみましょう。

 X正則Souslin空間とし、j をふるい I , p に伴う X 上の網で、空でない任意の糸が収束するようなものとします。I の各可算集合 Ik に離散位相を入れ、それらの積に積位相を入れた位相空間を S とします:

(15-9)  S :º Õ{ Ik | kÎN }

 各 IkR の閉部分集合 Z の部分集合で、Z の任意の部分集合は閉ですから Ik は可分な完備距離空間です。ゆえにそれらの可算個の積である S も可分完備距離空間です。そこで

(15-10)  S' { (ik )kÎNÎS | "kÎN : [ pk(ik+1 ) = ik  Ù  j(ik ) ¹ Æ ] }

と置くと、S' は空でない糸の全体で、しかも S の閉部分集合ですから、やはり可分完備距離空間です。XSouslin空間なので、各 i :º (ik )kÎNÎS' に対し、{ jk(ik ) | kÎN } は収束し、XHausdorffですから、その X における極限は一意に定まるので、その極限値を f(i) と書くことにします。
 まず fX の上への写像です。実際、任意に xÎX を取ると、(15-1) により、帰納的に xÎjk(ik ) かつ pk(ik+1 ) = ik となる ikÎIk を選ぶことができます。このとき i :º (ik )kÎNÎS' で、明らかに { jk(ik ) | kÎN }x に収束します。すなわち x = f(i) となり、f は全射であることがわかりました。
 また、fS' から X への連続写像です。実際、a = f(i) とし、a近傍 V を任意に取ります。{ jk(ik ) | kÎN }a に収束するので、ある自然数 k が存在して

(15-11)  jk(ik ) Ì V

となります。そこで S' の部分集合 UU{ (lk )kÎNÎS' | "i £ k : li = ii } で定義すれば、S' の位相の定義により、これは i の近傍です。
 また、任意の l = (li )iÎNÎU に対し、(15-1b)(15-11) により i ³ k のとき ji(li ) Ì jk(lk ) = jk(ik ) Ì V となるので、{ ji(li ) | iÎN } の極限、すなわち f(l)V に属し、V は閉集合なので f(l)ÎV となります。
 仮定により X は正則、すなわち閉集合からなる近傍の基底が存在するので、これは f が連続であることを意味しています。

 逆に X を任意の可分完備距離空間とします。X で稠密な可算部分集合 C を取り、自然数 k に対して C の各点の 1/(k + 1) 近傍の全体を Sk と書き、IkCk+1 と置き、pkjk

(15-12a)  pk(i0 , i1 ,¼, ik+1) = (i0 , i1 ,¼, ik )       ( inÎC )

(15-12b)  jk(i0 , i1 ,¼, ik ) = Ç{ B1/(n+1)(in ) | 0 £ n £ k }       ( inÎC )

で定義すれば、これらがふるいと網を構成し、その任意の空でない糸がコーシー列をなすことがわかります。ところが X は完備ですからこれは収束し、XSouslin空間であることが証明されました。
 既に証明したSouslin空間の安定性により、X の連続像もSouslin空間ですから、以上をまとめると、正則な位相空間 XSouslin空間であるためには、X が可分完備距離空間の連続像と表されることが必要十分であることがわかりました。

 次に X正則Martineau空間とし、j をふるい I , p に伴う X 上の網で、空でない任意の糸が収束するようなものとします。各 Ik に整列順序を入れ、yk : Ik ® P (X )

(15-13)  yk(i) :º jk(i) \ È{ jk(l) | l < i }

で定義すれば、y :º { yk | kÎN }I , p に伴う X 上の網で、しかも

(15-14)  i, Ik , i ¹ l  Þ  yk(i)Çyk(l) = Æ

が成り立ちます。さて、2 :º {0, 1} に離散位相を入れ、S :º 2P (X ) と置くと、2 はコンパクトHausdorff空間なので、それらの積 S もコンパクトHausdorff空間です。
 次に、X の超フィルターの全体を S' と書き、S' の任意の元 F に対して S すなわち c : P (X ) ® {0, 1} を、各 AÎP (X ) すなわち A Ì X に対して AÎF のとき c(A) = 1AÏF のとき c(A) = 0 と置いて定義すると、FÎS'S を対応させる写像は一対一です。従って F をこの c と同一視することにより、S' Ì S とみなすことができます。しかも S'S の閉部分集合ですからコンパクトです。
 そこで、各 kÎNIk に対し、Sk,i{ FÎS' | yk(i)ÎF } = { S' | c(yk(i)) = 1 } と置くと、これは S' の閉集合ですからコンパクトです。そこで

(15-15a)  Sk È{ Sk,i | Ik }

(15-15b)  S" Ç{ Sk | kÎN }

と置きます。ここで任意に FÎS" を取ると、すべての自然数 k に対して ikÎIk が存在して FÎSk,ik すなわち yk(ik )ÎF となります。
 このとき { ik | kÎN } は糸になります。なぜなら、もしある k に対して pk(ik+1 ) ¹ ik となったとすると、(15-1b) により yk+1(ik+1 ) Ì yk( p(ik+1 )) ですから (15-14) により yk(ik )Çyk+1(ik+1 ) = Æ となり、左辺は F の2元の共分なので F の元となり、ÆÎF となって矛盾するからです。
 ところで XMartineau空間なので、糸 { yk(ik ) | kÎN } はコンパクト・フィルターの基底であり、F はそれより細かい超フィルターですから収束し、XHausdorffですから唯一の極限値を持つので、これを f(F ) と書くことにします。
 まず f : S" ® X は上への写像です。実際、任意に xÎX を取ると、(15-1) により、帰納的に xÎyk(ik ) かつ pk(ik+1 ) = ik となる ikÎIk を選ぶことができます。このとき { x } を元に持つ X の部分集合の全体 F は明らかに超フィルターで、{ yk(ik ) | kÎN } Ì F すなわち FÎS" で、しかも Fx に収束しますから、x = f(F ) となり、f は全射であることがわかりました。
 また、f は連続写像です。実際、a = f(F ) とし、a近傍 V を任意に取ります。Fa に収束するので VÎF 、従って

(15-16)  U { GÎS" | VÎG } = { S" | c(V ) = 1 }

と置くと、これは S" における F の近傍になります。しかも GÎU なら、f(G )G の極限値ですから、V に属しますが、V は閉なので f(G )ÎV となり、正則性の仮定により X は閉集合からなる近傍の基底を持つので、これは f が連続であることを示しています。

 逆に X がコンパクトHausdorff空間なら、Ik{0} , pk(0) :º 0 , jk(0)X と置くと、これらはふるいとそれに伴う網となり、しかも任意の糸 { X }X がコンパクト空間なのでコンパクト・フィルターになっています。すなわち XMartineau空間です。ゆえに既に証明した安定性により、コンパクト空間の可算個の合併も、その可算個の共分(可算個の積の閉部分集合である対角成分と位相同型)も、その連続像もMartineau空間です。
 以上をまとめると、正則な位相空間 XMartineau空間であるためには、X がコンパクトHausdorff空間の可算個の合併の可算個の共分と表される位相空間の連続像となることが必要十分であることがわかりました。

 この節の最後に、Souslin空間のSouslin部分空間について調べてみましょう。

 集合 X の部分集合族 B は、可算個の合併と X に対する補集合を取る操作について閉じているときs-代数といいます。明らかにs-代数は可算個の共分、有限個の合併、共分、差集合を取る操作についても閉じています。
 X 上のs-代数からなる族の共分は明らかにs-代数であり、P (X )X における最大のs-代数ですから、任意に与えられた X の部分集合族 A を含む最小のs-代数が存在します。これを A生成するs-代数といいます。
 位相空間 X の開集合全体(閉集合全体といっても同じ)の生成するs-代数を B(X ) と書き、この元を XBorel集合といいます。また X列的閉集合全体が生成するs-代数を列的Borel集合とよぶことにします。

 さて、正則なSouslin空間 X の任意の列的Borel集合は、X の部分空間としてSouslin空間であることを証明しましょう。
 その証明ですが、X の部分集合 A のうち、AX \ A が共にSouslin空間になっているものの全体を B と書くことにします。Bs-代数であることを確かめましょう。
 まず AÎB なら X \ AÎB であることは B の定義から明らかです。
 また { An | nÎN } Ì B なら、AnX \ AnSouslin空間なので、上で示した安定性により È{ An | nÎN }X \ È{ An | nÎN } = Ç{ X \ An | nÎN }Souslin空間ですから È{ An | nÎN }ÎB です。
 また X の列的閉集合 FSouslin空間の列的閉集合なのでSouslin空間ですから、あとは F の補集合 OX \ FSouslin空間であることを示せば FÎB がわかり、証明が終了します。
 X は正則なSouslin空間なので、可分完備距離空間 S と、S から X の上への連続写像 f が存在します。このとき f -(F )S の列的閉集合ですが、S は距離が付くので実は閉集合です。ゆえにこの補集合 Tf -(O)X の開集合です。
 一方 X は可分なので T も可分、すなわち T で稠密な可算集合 I が存在します。そこで C{ B1/k(a) Ì T | aÎI , kÎN , k ³ 1 } と置けば、C は可算集合で ÈC = T が成り立ちます。一方各 CB1/k(a)Souslin空間の閉部分空間ですからSouslin空間で、その連続像 f [C]Souslin空間です。よって O = È{ f [C] | CÎC }Souslin空間の可算個の合併なのでSouslin空間です。
 以上で B はすべての列的閉集合を含むs-代数であることがわかりました。ゆえに列的Borel集合の定義により、任意の列的Borel集合は B に含まれ、従って特にSouslin空間であることが証明されました。

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