中学受験  国語の学習と子どもの成長  

中学受験のための勉強で学習の基礎基本を鍛えることは、その後の子どもの成長に大きく関わると言えます。今回は「国語の読解訓練と子どもの成長」についてお話しいたします。

最近の中学入試における国語の問題では、長文読解を出題する学校の比率が高まっています。5000字以上の長文を50分程度で読み解く入試問題に対応するために、多くの子どもは文章を全文読むのではなく、問題文の傍線の前後だけを読んでは答えを探し、解答欄を埋めることを最優先します。これでは読むことで養われる思考力、想像力、創造力、広い教養を身につけることはできません。常に時間に追われる勉強をしているために、子どもたちは「読む」という当たり前のことができなくなっているのです。今こそ時間をかけて「丁寧に読む」練習をさせなければなりません。

 それでは、具体的にどうすればいいのか。第一に、問題文を音読させ、確実に読ませます。読み通して大方の内容把握ができても、長文ですので前半の記憶があいまいになることがあります。そこで、今、読み取っていることに印をつけ、ちょこっとメモ書きをするというやり方をします。このような手作業は、全文を一気に読み通す集中力と根気を養うと同時に、「丁寧に読む」姿勢も作ります。「答え探しの国語」から脱することができるのです。
 
 正しい読解練習で、丁寧に読む習慣がついた子どもたちは、中学、高校での授業の精読へとスムーズに進みます。「デミアン」、「羅生門」、「人間失格」、「こころ」と、人間の心を深く考える文章を読むことで、内面を探り、自分を重ね合わせて自分の見えない部分を知り、そして悩み・・。その繰り返しで、こどもから青年へと成長します。多感な思春期に多くの文章を読むことが、自己形成に深く関わるのでしょう。

「丁寧に読む」読解訓練は、このように子どもの成長に結びついていきます。しかし、そのためには練習段階で時間の枠を外し、辛抱強く導く必要があります。それが小学6年生の秋以降の「丁寧な読み」と「集中力」、そして最大の関門である「スピード」にもつながります。
 受験勉強が、子どもたちの心身の成長に結びつくことを心から望みます。 

             読売ウイークリー カリスマ講師の教え 第1  2007.4.29